機動戦士ガンダムSEED 哀しみの傭兵の軌跡 作:TBの狙撃手
空中で、シグーの重斬刀をキャリバーが回収した対ビームシールドで防ぐ
ほぼ互角に戦う、傭兵 カレンデュラ・オブリヴィオンとザフトのトップエース ラウ・ル・クルーゼ。
「私についてくるとは、地球連合にもこれ程のパイロットがいるとは!」
クルーゼが相手の技量を皮肉気味に吐きつつも、シールドに内蔵されたバルカン砲で弾幕を張る
無数に発射される弾丸を掻い潜るかのように避けながらキャリバーはシグーに接近する
キャリバーはビームサーベルをシグーに向けて振り下ろす
シグーはキャリバーの剣戟をかわして距離をとる
それを見たカレンデュラはこちらも回収したデュエルのビームライフルを取り出し、シグーに向けて放つ
放たれるビームはどれも正確にシグーの関節等を狙う
しかし、経験豊富なラウにとって、それらをかわすのは容易いことだ
「ふむ、動きは見事なものだが、経験不足だな」
そう、カレンデュラは見事にキャリバーを駆っているが、傭兵部隊に入ってまだ数ヶ月・・・・経験が不足している
先程の射撃も狙いはどれも正確にシグーを狙っていた
だが、単純だったのだ
どれもこちらを正確に狙っていたため、簡単にかわすことが出来たのだ
そして、
「戦闘経験が少ないのならば、やりようはいくらでもある!」
ラウはバルカンを狙いをあまりつけずに発射する
「!?」
カレンデュラは、無闇に動かずに対ビームシールドで防ぎながら細かく回避する
いくらあまり狙いを付けずに発射したとはいえ、
それでも乱射された弾丸は所々でキャリバーに当たる起動でとんでくる
しかし、自分の居る傭兵部隊の先輩から聞いた事を思い出す
『相手の撃ち方には、いくつかパターンがある。1つは、デタラメにバラ撒くことだ。コレは、初陣または新兵によくありがちな行動だ。』
『もう1つは、牽制だ。何か重要な物か母艦を守る時や自分の距離を保ちたい時に行うものだ』
『そして、入ったばかりのお前には掛かりやすい物がある。
陽動の為だ。コレは、上手くバラ撒いて 向こうにとって都合の良い進路を作らされる時にやる物だ。』
カレンデュラはバーニアを小刻みには吹かし、最小限の軌道で回避する
「ふむ、そこまで素人では無いか……」
シグーは、重斬刀をしまい 機銃を手にし バルカンと同時に撃ちかける
「っ!!」
キャリバーの機動性にものを言わせての回避で弾幕を抜ける
「しまった!?」
「もらった…!」
回避した先にシグーが来る
あまりに突然のことでカレンデュラは反応に遅れる
シグーは重斬刀を振るう
カレンデュラは何とかシールドを割り込ませ、この攻撃はやり過ごす
しかし不安定な体制で防いだせいか、シグーが振りぬいた重斬刀の衝撃でさらに体制を崩す
「知識はあっても経験が少ないようだね!咄嗟の対応が遅れ、どちらに動くのか読みやすい!」
ラウは大きな砲撃をキャリバーに向けて撃とうとする
このタイミングでかわすことはできない
ここでやられるのか…
カレンデュラはモニターに映るシグーを睨み、最後まで生き残るという意思は消えない
間に合わないとなら刺し違えようと、カレンデュラは力一杯操縦桿を倒す
その時―――
凄まじい轟音と共に鉱山の岩盤が崩れ落ちた
「なんだ!?」
ラウは突然響いた轟音が鳴った方向を見る
大きな土煙の中をかきわけるように現われたのは白く輝く巨大な戦艦であった
白亜の戦艦、アークエンジェル
その艦長席に座っているのは、ナタル・バジルール少尉である
「アークエンジェルの状態、問題ないな」
「はい、全システム、オールグリーンです」
ナタルの問いかけにアークエンジェルの操縦士、アーノルド・ノイマンが答える
「X-111、ザフトの新型と戦闘中です!」
「なにっ!?」
ジャッキー・トノムラが戦況をナタルに報告する
画面に光学映像が出される
そこには、こちらを向いているシグーが映されていた
「戦艦だと…、コロニー内部に?」
ラウは、急に出てきた戦艦を見て驚愕する
新型のMSだけでなく、戦艦までも作られていたとはな……!
「チィッ!」
ラウは、今度は戦艦に狙いを向ける
その瞬間、ラウを途轍もない衝撃を与える
「くっ…!被弾したか…!」
シグーは、ストライクの砲撃を受けていた
さらに見てみると、コロニーに穴をあけていた
その穴をあけたのは間違いなくストライクだろう
「MSにこれほどの火力を持たせるとは…。ヴェサリウス!被弾した!帰投する!」
「ラミアス大尉!よくぞご無事で!」
「バジルール少尉…、あなたこそ、よくアークエンジェルを守ってくれました」
マリューとナタルがお互いの生存を称えあう
「守れたのは…」
「えぇ…、この2機だけよ…」
ナタルがXナンバーの機体を気にする
あの機体は軍の全技術力、さらにオーブの力を借りて完成させた機体なのだ
スペックだけなら、ジンを軽く凌駕する
それらがザフトの手に渡ることを考えたくはないのだが
残ったのは、この2機だけなのだ
バシュウッとハッチが開く音がする
この場にいる全員が、キャリバーとストライクに目を向ける
そこから降りてきたのは、1人の少年と赤いザフトのパイロットだった
「民間人…、子供じゃないですか!それに、キャリバーにはザフト!?」
ナタルは、根っからの軍人である
当然規律には厳しい
その彼女がこの光景を見てどう思うかなど、容易に想像がつくだろう
近くに居た連合兵にアサルトライフルを向けられる
「待った待った、そのパイロットは俺達の味方だ」
険悪な空気になりかけた所に1人の男性が現れた
少しくせのついた金髪
身にまとう紫色のパイロットスーツ
「地球連合軍第7機動艦隊所属、ムウ・ラ・フラガ大尉だ。乗艦許可をもらいたいんだが、この艦の責任者は?」
男性は敬礼をしながらこちらに問いかける
マリューとナタルが、その言葉に返事をするために敬礼する
「第2宙域第5特務師団所属、マリュー・ラミアス大尉です」
「同じく、ナタル・バジルール少尉であります。艦長以下、艦の主だった士官は皆戦死されましたので、今はラミアス大尉がその任にあると思います」
「え…艦長が…」
ナタルの言葉を聞き、マリューは少なくないショックを受ける
その人物には何かとお世話になっていたのだ
戦死…、戦争は…
「あー、ともかく許可をくれよ。俺の母艦が落とされちまってさ」
「あ…はい。許可します」
「フラガ大尉・・・!」
キャリバーに乗っていた赤いザフトスーツのパイロットがムウに駆け寄った
「お前さんも、生き残ってたのか…。だが、まさかアレに乗ってたとはな」
「自分の任務を考えれば、最善の方法だったので」
「ん?お前さん、自分のは?」
「はい、奇跡的にも破壊されて無いので後で回収したいのですが。
それと、まだ集めたトレーラーの中には使える武器や装備が」
「分かった、ラミアス大尉に許可を貰っていけ」
「了解……」
カレンデュラはヘリオポリスに来る際に同じ母艦に乗っていたムウと再開を果たし、自分の機体と地上に置いてきてしまった武器・装備を回収する許可を得るためにマリューの元へ向かう
マリューから乗艦許可をもらい 同じ母艦に乗っていた傭兵の青年と再会を果たし 少し笑みを浮かべたムウは、トールたちと談笑しているキラのもとに歩み寄る
キラが、近くまで寄ってきたムウに気がつく
「なんですか?」
キラはムウを訝しげな眼で見る
そして、ムウは口を開く
「君、コーディネイターでしょ?」
「!」
ムウが口にした言葉にこの場にいる一部を除いて、全員が驚愕する
そして、多くの連合軍の兵士がキラに銃を向けていた
「…」
ザフトの兵、アスラン・ザラは、X-303イージスのOSの整理を行っていた
しかし、その頭の中では全く別のことを考えていた
イージスに乗り込む直前
地球軍の士官の傍らにいた少年
キラ・ヤマト
アスランとキラは、月の幼年学校で一緒だった
とても仲が良く、いつも一緒にいた
「いや、違う。キラじゃない。あいつなはずがない」
[クルーゼ隊長機、帰艦。被弾あり。消火班、医療班はすぐさまBデッキへ]
隊長が…、被弾?
シグーが帰投し、クルーゼがコックピットから出てくる
『隊長!?お怪我は!?』
艦橋に居るアデスから通信が入り、安否を確認する
しかし、本人には外傷など全く無かった
「大丈夫だ。だが良くない状況だ。戦艦も生きている」
『!?』
艦内に衝撃がはしる
新型のMSだけではなく、戦艦まで開発しているとは
ますます中立とは信じがたくなってくる
「あれを放置するわけにはいかない。使えるジンに全てD装備に換装させろ」
『D装備……ですか?』
D装備・・・・それは、要塞攻略戦用の最重装備の事である
確かに、その装備でなら戦艦を沈める位は容易い火力ではある
「急いで換装させろ、あの戦艦をここで沈める」
「!」
これからもう一度攻めにいくのだろうか
アスランは決心する
もう一度、ヘリオポリスに行くと
キラは連合軍の人たちに銃を向けられていた
ムウが口にしたコーディネイター
今、地球軍はコーディネイターと戦っているのだ
正確にはザフトとなのだが、ザフトはコーディネイターで構成された集団なので、
まあ一応同義なのだが、今の地球軍はコーディネイターは敵、と意識している
よって、たとえ民間人だとわかっていても警戒してしまうのだ
「なんだよそれは!コーディネイターでもキラは敵じゃねえよ!」
このキラへの対応にトールが激昂する
ミリアリアたちもトールのように言葉には出さないものの
兵に向けている視線は鋭くなっている
更に、マリューに許可を得ようとしたカレンデュラはキラの元へ走り、庇うように立ち ホルスターから拳銃を抜き 連合兵達に向ける
「この民間人に向けるなら、俺にも向けろ………。俺もコーディネイターだ」
そう言い放つと、カレンデュラにも銃を向けられる
しかし、カレンデュラの握る拳銃に一切の揺らぎも感じられない
「あんたら、さっきの見てなかったのか!?こいつらはザフトの機体とたたかってたんだぞ!?」
さらにトールが言葉を重ねる
「銃をおろしなさい。ここは中立よ?戦争が嫌で移り住むコーディネーターはたくさんいるはずよ
傭兵にだって、コーディネイターが居ても不思議じゃないわ」
「いや、悪かったな。とんだ騒ぎにしちまって。俺はただ確かめたかっただけなんだ。それに、そこの傭兵はあのクルーゼと互角に戦える奴なんだ」
「!ラウ・ル・クルーゼ…ですか?」
軍人たちの会話についていけなかったキラたちにムウたちが説明してくれた
ラウ・ル・クルーゼ
ザフトのトップエース
この男によって討たれた人数は数知れず
「おいおい…、この人ってそんな化け物と戦ってたのかよ…」
「あぁ、ほんとに信じられねえ。俺はな、ここに来る前からこれをなんとか操縦しようと四苦八苦してきた奴らを見てきたんだ。それをここまで簡単に操縦しちまうんだからなあ…。…、と。ま、それは置いといて、これからどうすんだ?」
物思いに耽りながらつぶやくが、それに区切りをつけ、ムウは今のことに目を向ける
「奴はしつこいぜ?これで帰るとは思えねえ」
「しかし、ここは中立…」
「おいおい、ここまでしておいて今更中立なんて言えるわけねえだろ」
マリューの希望的観測をムウはすっぱり切る
「ともかくもう一度ザフトは攻めてくる。それに備えて準備しておこうぜ?」
「コレから自分の機体と装備などを回収するので、またキャリバーを貸してもらえないでしょうか?」
「分かったわ、なら一度アークエンジェルを着陸させる必要があるわね・・・・」
議論が纏まり、モルゲンレーテからさほど離れない地点にアークエンジェルを着陸させ 集めた装備やパーツの回収作業に入った
カレンデュラは自分の機体を持ってきたついでに、赤と白と言う派手なカラーリングのジンも連れてきていた
「シルヴァさん、その方は?」
「同じ傭兵のレントさんです、自分のように部隊ではなく1人で傭兵家業をやってる人です」
「おう、よろしく頼むぜ?俺も母艦も無くなっちまって困ってたんだよ」
「マリュー・ラミアス大尉です、あの艦・・・・アークエンジェルの責任者です」
「そうか、俺は別方向の警備していたんだが工場区画から爆発が見えて向かったんだが もう既に破壊し尽くされていた後だったんだ」
「それでも駆けつけてくれた事に感謝します」
ある程度 会話をし、状況などを報告し これからの事をマリューから聞き 一先ず物資の積み込み等を行い 戦力も増えて 早急にコロニーから脱出を始めようとしていた
が、既に次の攻撃部隊が迫りつつあった