魔法少女リリカルなのは ストラーノ   作:ゆきだるま

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にじふぁんから移ってきました。タイトル変えました。作者名も変わっていますが書いていたのは私なので無問題。


Erst
プロローグ


「いいね、休暇って。大仕事を終えた後とかは特に」

 

 

とあるスラムの奥まった所にある一軒の酒場。そこで一人の男がウイスキー瓶を片手に酒を楽しんでいる。男以外の客は一人も居らず、BGMは壮年のマスターが日課にしているグラス磨きの音だけ。男はそれが気に入っている様で、微笑みながら瓶を銜えてウイスキーを体の中へ流し込んでいく。一定のテンポで鳴る喉、それに割り込む様に甲高いアラームが鳴った。

 

 

「旦那、通信きてんぜ」

 

 

気分よく飲んでいたところに無粋な音が鳴ったとあって、不機嫌さを隠そうとせず無視を決め込もうとした男に向けて、どこからか聞こえた声。男はそれに気付いて、アラームの発信元である右腕に目を向けた。

 

 

「俺は今休暇中だ。例え緊急であろうと俺にはそれを無視して休む権利がある」

 

 

「緊急っつうか秘匿回線だな、お前さんの愛人からだ」

 

 

アラームの発信元、見た目は所々に宝石があしらわれた黒い腕輪の様な物だが、声もコレから聞こえる。

 

 

「……チッ、仕方ねえ、映像出せ」

 

 

「曲がりなりにも愛人が連絡入れてきたってのに随分な態度だなオイ」

 

 

声が聞こえている間、それに合わせて腕輪の宝石が明滅を繰り返していた。マスターが未だにグラスと戯れているのを鑑みるに、先程からの声の主はこの腕輪なのだろう。その腕輪が宝石から空中にモニターを投影する。モニターに映ったのは二十歳前後の女性だ、ポニーテールにした朱色の長髪と空色の瞳、そして真っ直ぐ男を見つめる様は秀麗な容姿も相まって見るものにクールな印象を与える事だろう。傍目には堅物にも思える女性だが、なかなかどうして男はやり手の様だ。

 

 

「休暇中の所申し訳ありません、フレディ一佐。緊急でお伝えしたい事があります」

 

 

「手短にな。今機嫌が悪い」

 

 

フレディと呼ばれた男が簡潔に告げると、女性の表情に怯えの色が走る。直ぐに繕われたそれを目敏く察したフレディは、心中で舌打ちながら女性の言葉を待った。

 

 

「……第九十七管理外世界『地球』の次元航路上で輸送船の事故が発生し、積荷であるロストロギア『ジュエルシード』が『地球』に散逸。緊急事態故直ちに現地へ赴き回収と調査を行う様に、との指令が本局から出されました」

 

 

「地上本部じゃなくて本局から、ねえ。そりゃ突っぱねるのは無理だわな。で、位置情報渡したのは誰よ?」

 

 

フレディが休暇地としているのは第九十六管理世界『ベルクヴェルク』、先程女性が述べた第九十七管理外世界『地球』とは隣り合う世界だ。事故が起きたので近隣にいる人間に手伝って欲しい、普通なら有り得る話だが、今回はそうではない。フレディが休暇中なのは申請記録を調べれば検索可能だが、何処で休暇を取っているかを知るのはモニターに映る女性を含めて五人しか居ない。つまり、休暇中であるにも関わらず話が回って来たという事は、その内の誰かが開示したという事だ。

 

 

「私です。私が本局に情報を提供致しました」

 

 

モニターの女性が、苦々しい表情を浮かべながらもフレディを見据えて名乗り出た。

 

 

「理由は? お前さんは強行に出られた所で屈するタマじゃなかろうに」

 

 

口調に咎めの色を感じさせない、純粋な疑問を向けられた女性は、先程と同じ怯えた表情を浮かべて直ぐ俯いてしまい、答えを返そうとしない。問い詰めて吐かせるのは得意分野だが、目の前の女性はフレディの中で最も信を置いている部下だ。答えられないという事は、相応の理由があるのだろう。確信に似た当たりを付けたフレディは「言えないなら構わん」と告げて、『地球』の情報を送信する様に命ずると、通信を切った。

 

 

「グロウル、この一件どう思う」

 

 

「きな臭い匂いがプンプンするなあ。幾ら近いといっても、地上本部勤めの俺らに本局から指令が下りるなんて、何か裏がありますよと宣言してる様なもんだろ」

 

 

腕輪改めグロウルの見解は、フレディと一致している。彼の所属する組織は“時空管理局”といい、次元世界――我々とは違う歴史を辿った世界、人類の可能性の一端である。新暦以前に提唱された多次元理論より抜粋――の秩序を守る法の番人を標榜する巨大組織だ。その発祥の地である“ミッドチルダ”の治安を守るのが地上本部、そこから次元の海へ旅立ち次元世界を股に掛けているのが時空管理局本局。この二つは元を同じとしながら対立関係にあり、領分を侵される事を特に嫌っている。そして先のグロウルの言葉にもあったように、フレディは地上本部の人間だ。

 

 

「拒否権はないが、嫌な予感しかしない。面白い話だな」

 

 

「面白いなんてレベルじゃねえよ。旦那もしかして死ぬんじゃね?」

 

 

「ハハッ! そうなったら最高だな、最近部隊の人間に人間扱いされなくなってきたし、死んだら流石に同類と認めるだろ!」

 

 

「違いねえ! ロストロギアの暴走に巻き込まれたら流石の旦那も木っ端微塵になると俺は思うぜ」

 

 

「SSSクラスの爆発か、バリアジャケット解いておくのも手だな」

 

 

「やめてくれ! 俺も木っ端微塵になっちまう!」

 

 

「つれねえ相棒だな、くたばる時も付き合えや!」

 

 

実に楽しそうな二人(?)。待ち受けているであろう陰謀は、彼らにとっては笑い話の種でしかない様だ。

 

 

「おっ、嬢ちゃんからデータ届いたぜ。ロストロギアの情報も付随してら」

 

 

「流石俺の部下。やる事に抜かりなくて助かる」

 

 

「旦那に手抜かりが多い所為だろうな」

 

 

「やかましいわアンティーク」

 

 

グロウルに悪態を吐くと、フレディは飲みかけのウイスキーを一気に飲み干し、札束を机に置きその上に空き瓶を乗せ、椅子にかけていた黒革のジャケットを羽織って店を後にする。穏やかな夜風の心地よさを肌で感じているフレディの足元に、深紅の逆三角の陣が現われた。

 

 

「座標登録完了、亜空間接続完了。旦那、いつでも飛べんぜ」

 

 

「OK。じゃあ、行こうか」

 

 

逆三角の陣が回転を始め、そこから生まれた光にフレディの全身が包まれると、バチンッ! と弾けた音が響いて光が霧散し、跡には何も残っていなかった。




この作品は原作をぶっ壊しに掛かっているので、受け付けないなと思ったら即座に退避すると精神に負担が掛からないのでお勧めです。
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