「お前等、尻尾巻いて逃げるなら今の内だぞ」
高町家々長高町士郎が、木製の小太刀を携え居並ぶ益荒男共に告げる。面に浮かぶは凄絶な笑み、己の意を満たせる刹那との巡り合いに心躍らせ、昂っているようだ。
「おい士郎、こんな時に無粋な台詞を吐くんじゃねえ。楽しむ前に壊すぞ?」
応じて、高笑いを上げたのはフレディ=アイン=クロイツ。異国の徒は、異国で邂逅を果たした兵共に魅せられ、当てられ、無遠慮に殺意を振り撒いている。
「貴様こそ高笑いを止めたらどうだ。耳障りで、不快だ」
窘めたのはテスタロッサ家々長アロンソ=テスタロッサ。唯一人瞳を閉じ、木刀を地に付け、己の内に渦巻く闘志を解き放つ時を今か今かと待っている。
「ハハッ、戦の前に言葉を交わすのは良いが、少し長くないかね? 私達は戦士ではない、己が力を持って己を示す獣。そうだろう?」
耳目を集めたのはバニングス家々長デビット=バニングス。感触を確かめる様に掌を開閉させ、漢達を睨め付ける。
北に高町士郎、南にフレディ=アイン=クロイツ、西にアロンソ=テスタロッサ、東にデビット=バニングス。此れより始まるのは益荒男共が己の抱く想いの強さをぶつけ合う戦。誰が強いか、そんなものに興味は無い。目の前に居る奴らを超える。他は全てが重しだ。ひたすらに目の前を踏破する事を望んだ者だけが他者を踏み締め他を圧する権利を得る。果たして、生き残るのは誰か。
事の始まりは、なのはがテスタロッサ姉妹と知り合って最初の休日に翠屋でアリサとすずかに姉妹を紹介し、気後れ気味のフェイトをフォローしながら昼食を取っていた時、アリシアがふと呟いた一言が切っ掛けだった。
「明日、お父さんが怪我を治して帰ってくる」
此方に越して来る際に事故に巻き込まれ、今まで入院していた――事実を的確にぼかした言い方で話すアリシアの顔は本当に嬉しそうで、隣に居たフェイトも話を聞いて顔を綻ばせていた。そんな姉妹の様子を見たなのはが、お父さんの退院祝いと、フェイト達が海鳴に来たこと、一緒にお祝いしよう! と提案。そしてアリサとすずかが手帳を取り出してスケジュールを確認、明日なら都合がつくと言った事で本格化。
唯一遠慮する姿勢を見せていたフェイトがアリシアに完封された為にとんとん拍子に話が進み、夜になった頃には高町家、テスタロッサ家、バニングス家、月村家の人間が一同に介する宴へと発展。夕食を食べに来たフレディも話に巻き込まれ、主催翠屋・協力バニングスコンツェルンという海鳴市史上に残りそうな“テスタロッサ家歓迎会”の開催が決定された。
次の日、日曜日。昼頃に到着する主賓を迎える為に、翠屋の店内はテスタロッサ家を除く全員で準備が進められていた。料理は高町家から母親の桃子が前菜とスープとサラダとデザート、月村家から従者のファリンが魚、肉、メインディッシュを担当。ドリンクはバニングス家から母親のキャリルが自宅、会社を問わず良い物を集めさせている。
店内では男性陣が揃ってテーブルや椅子の配置替え、届けられた食材の運搬に飾り付け等々、全員が汗水を流して所狭しと動き回っている。特にバニングス家々長デビットの働きが素晴らしく、拘束時間の長い立場もあって寂しい想いをさせている娘と妻の為にと、爽やかな風貌に熱さを滾らせて精力的に動いていた。
そうこうしている内に太陽も天辺に昇り、飾り付けを終えた店内ではなのは、アリサ、すずかの三人がクラッカーを携えてフェイト達の到着を今か今かと待っていた。念話を用いる為に携帯で連絡を取る振りをしているなのはがもうすぐ着くみたい、と店内に響かせると子供達の緊張が高まっていく。紐に手を掛け、入り口の扉の前に陣取り、少し顔を強張らせている様は、後ろで見ていた大人達にも伝わっていて、微笑ましい光景に笑みを零していた。それから少しして、鐘の音が響く。
「皆さん、海鳴の街にようこそ!」
クラッカーが弾け、中に込められていた紙片やレールテープが勢揃いのテスタロッサ家を出迎える。口を半開きにして固まっている姉妹、奥に居る大人達の姿を見て笑顔で会釈する夫妻。やがてアリシアがありがとう! と叫んで三人の中に飛び込み、フェイトも喜びを露にして輪の中に入る。それを横目に姉妹の父、アロンソと交流のあるフレディが二人を先にその場から連れ出し、後ろに控えていたアルフと珍しい銀鼠色の髪を腰まで伸ばした女性が子供達をそれについて行かせる。
カウンター席を撤去し広くなった店内に持ち込んだ組み立て式の長大なテーブルの上には、一流のパティシエと従者が腕によりを掛けて作った色とりどりの料理が並べられており、鼻と胃を刺激する香りに姉妹は大喜び。夫妻の方も歓迎の為に徹夜で用意された品と知り方々回って感謝の言葉を述べている。そうしている内に月村家のもう一人の従者であるファリンが席を回って大人達にはワインを、子供達にはジュースをグラスに注いでいき、フレディの野次から発案者であるなのはが乾杯の音頭を取る事に。
「う、うう…………ふう。それじゃあみんな、乾杯!」
「カンパーイ!」
立ち上がると同時に一斉に視線を向けられてビックリしたなのはだったが、一度深呼吸した後に元気な声を響かせ、続いてフレディの声が目立って響く。隣に座っているアロンソから「お前が目立ってどうする!」とツッコミが飛んで笑いがおき、和やかな雰囲気でパーティーが始まった。
肉料理ばかりを皿に乗せてアリサと銀鼠髪の女性――リニスから野菜も食べなさいとお叱りを受け、同じく肉ばかり食べるアルフを引き合いに出して抵抗するアリシア。
桃子、キャリル、プレシア、すずかの姉の忍は食事そっちのけで歓談を楽しみ、傍に控える従者二人が明け透けな話に顔を赤らめていたり。
フレディ、士郎、アロンソ、デビットの四人は適度に料理をつまみながら恐ろしいペースで酒を消費しているが、顔に出たり呂律が回らないという事もなく素面と変わらない様子なのに対し、その四人につき合わされている高町家の長子恭也は顔が若干青くなり、勧められる酒を飲むだけの機械と化しており、長姉の美由紀が助け出す機会を窺っている。今入り込んだら間違いなく自分も付き合わされるという恐怖があっての事ではない、断じて。
なのは、フェイト、すずかの三人は周りの喧騒を尻目にのんびり料理に舌鼓を打ちながら取り留めのない会話を楽しんでいて、そこに混じろうとアリシアが画策しては野菜をフォークに差したリニスが満面の笑みで立ち塞がっていてアリサの抜け駆けを許したり。
午後三時を回ると桃子が用意したデザートが登場し、子供達はショートケーキやタルト等果物を使ったものを、女性陣は抹茶や餡子等を用いた和菓子風デザートを中心に、男性陣はビターチョコを使用したホールケーキを四等分して酒のつまみにし、一口食べた恭也は気分が悪いと言ってトイレの中に消えた。
そして午後六時、空が暗くなり始めた頃、歓迎会は終了。デビットが手配した車にフレディ、士郎、アロンソ、デビットを除く全員が乗り込み、走り出す。人気が少なくなり、静かになった店内に、重たい音が響く。士郎とデビットの二人掛りで運んできた巨大な樽には“1barrel”と印字されており、蓋を開けると中には赤ワインが淵までギッシリ。
「夜は長い、じっくり飲もうじゃないか」
デビットの言葉に、居並ぶ三人は口角をつり上げて笑う。歓迎会中一人頭二十本以上ワイン瓶を空にした男達――まだ飲むのか。そんなツッコミが聞こえて来そうな光景だ。士郎が店の中から持ってきた大きなジョッキを持った四人は、樽の中にジョッキを潜らせた後頭上に掲げ、打ち鳴らした。第二ラウンド開始である。
「おいフレディ、お前娘と風呂に入ったそうだな?」
第二ラウンド開始から三時間が経過し、樽の中のワインが三分の一ほどになり、ようやく四人に酔いの兆しが現れた頃、アロンソが切り出した一言が切っ掛けで、雰囲気が変わり始める。
「せがまれてしょうがなくだ。頭洗わされるわ一緒に数を数えるわ、上がった後も頭拭いて髪を結って、良い様に使われただけだっつーの」
「ふざけるなよフレディ、俺なんて最近一緒にお風呂に入ろうと誘ったら、また今度と既に二十日連続連続で断られているというのに! 羨ましい!」
「デビット、その気持ちは俺もよく分かる……」
猛烈に悔しがっているデビットに、士郎が頷きながら手を置く。最近娘に誘いを断られ続けている二人は、樽の中に腕を突っ込み凄まじい勢いでワインを呷る。それをフレディが笑っている時、アロンソの口から更なる火種が投下される。
「ふん。貴様は見目麗しい女であれば構わず手を出す犬畜生にも劣る存在だからな。表では面倒そうに振る舞いながら、内心は信用を利用して娘達を手篭めにするつもりなのだろう? 死ね」
アロンソが投下した火種は士郎とデビット、父親二人に即引火。フレディを見る顔は鬼を連想させ、纏う気配は殺意そのものと言っていい。
「おいフレディ、貴様道に迷ったのは嘘で、本当はなのはと仲良くなってあわよくばという魂胆だったんだな。殺す」
「最近お前の名前がアリサちゃんの口の端に上っている理由がよく分かった。今なら何とでも言い訳が出来よう、覚悟はいいな? 俺は出来てる」
二人は立ち上がり、フレディを見下ろす形でガンをつける。酒と場の雰囲気に酔ったフレディが、それに乗らない筈もなく。
「いいだろう、買ってやるから纏めてこいや。」
売り言葉に買い言葉。フレディも立ち上がり額がぶつかる程の至近で睨み合う三人。剣呑な雰囲気が三人を中心に広がり、釣られて新たな流れがやってきた。
「コイツに怨み骨髄なのは俺だ。コイツを殺すのは俺だ。お前達は引っ込んでいろ、匹夫めらが」
士郎とデビットにそう告げる事で場に参戦したアロンソ。全員が自分以外を睨みつけ一歩も退かない、頭に血が上った事で酔いの回ってきた四人に話し合いという選択肢は無く、脇目も振らず全速で至ったのは――
{よろしい、ならば戦争だ!}
そして、冒頭に至る。舞台は高町家の敷地内に存在する武道場、濃厚な殺意が充満した空間に、半裸の益荒男達。彼らは待っている、そう遠くない、意識の中では刹那に等しかろう、その時を。漲らせた殺意が殺気へと昇華され、背を駆け抜けるその時を。
{――――ッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!}
一瞬だった、同時だった。道場を溢れんばかりに満たしていた殺意が四人の内に凄まじい勢いで飲み込まれ、昇華され、全身を駆け巡ったのは!
鎖から解き放たれた餓獣共は、己の視界を最初に犯した相手を撃滅すべく四肢を疾駆させる。前傾し、己の得物を構え、最も強い一撃を加えられる位置を直感で測る。前進しか選ばぬ者共、己が敵しか見えていない者共、それらは当然の如く中心でぶつかり――爆ぜた音が響く。
「外国人で若々しい金髪のパパ……貴様は俺とキャラが被る。此処で屠り、俺が再び唯一となってやる!」
「俺を打倒するというか。お前の様な人間は久しく会っていなかった、剣に費やした我が人生、全て賭して挑もう!」
木刀にて左腕を叩き折られたデビット=バニングス、掌打に因り内臓にダメージを負ったアロンソ=テスタロッサ。
「やはり、やはりか。俺の目に狂いはなかった、やはり強者かフレディ!」
「嬉しい、嬉しいねえ、こんなに嬉しい喧嘩は久しぶりだ! さあ、次は楽しむとしようぜ、士郎!」
胸に減り込んだ拳に肋骨を折られた高町士郎、左右の鎖骨を砕かれたフレディ=アイン=クロイツ。
狂乱の宴が、始まる。
弾ける音が聞こえる。アロンソが木刀を振るい、防ぐ為にデビットが掌で受け止める。木刀を振るう腕が、振るわれる木刀が霞む連撃を最短で受け止め弾く。それが行われる音が十二十三十四十五十、となった時に一際強く弾けた。アロンソが軌道を変え胴を狙い、それをデビットが左腕を庇う形で弾いた故に体が右によれた。作り上げられようとした流れから外れた行動、仕掛けた側の優秀さは止まらずそのまま追撃に至る。狙うは自身の正面たる、壊れかけの左腕。
「何ッ!?」
空を裂く音がした。肉に減り込む音がした。しかし、笑ったのはデビット。圧し折られた部分を第二の関節として、圧し切ろうとした木刀を受け止めている。驚愕に目を剥き隙を晒したアロンソの顎に掌打を食らわせ、眩ませた視界にありったけの攻撃を叩き込む。掌を、拳を、肘を、膝を、踵を、爪先を、額を。己が十全に扱える部位を以って嵐の如く攻め立てる。大地に根を張り、聳え立つ幹の様に仁王立ちするアロンソを。
不意に、アロンソの体が大きく後退した。拳を振り抜いた状態のデビットの息は荒れている。取り込んだ酸素を悉く攻撃に回した為に、体がこれ以上の消耗を拒んだのだ。深呼吸をして酸素を取り込もうとするデビット、そして嵐が去ったアロンソは床に血液をぶちまけた。体に溜まった不純物を吐き出すように。
「……惜しかった、あと二つ耐え切れば反撃を加えられたというのに」
「それなら私のスタミナ不足を嘆いてくれ。鍛錬に時間を割くには、制約の多い立場でね」
軽口を叩く二人の顔は笑っている。アロンソは踏ん張ったのが仇になり掻き混ぜられている様な痛みと感覚に苛まれ、頭を揺らされた衝撃で今も視界が定まっていない。デビットの方も左腕を感覚の続く限り酷使した結果、指先一つ震わせることも叶わない状態に陥っている。しかし、それでも二人は笑っている。敵を討たんとする為に足を進める。まだ出来ると、自分を誇示する様に。
「こちらは左腕が動かん。そちらは?」
「内臓が荒れているのでスタミナに不安はあるが、それ以外は十全だ」
「何だ、それでは私の方が不利ではないじゃかね」
「お前より疲れやすくなっている。持久戦に持ち込めば勝ちは堅いだろうさ」
「そうかね」
「そうだろう」
{――では、始めようか!}
その頃、士郎とフレディの方はというと。
「フレディ、お前随分と速いじゃないか! 俺について来れる人間なんてのは久しぶりに見たぞ!」
「ついていく? 馬鹿を言うな、お前のスピードに合わせてやってんだ、ありがたく思え!」
間合いを探り合い、奪い合う中で作りあがったスペースを縦横無尽に駆けている。間合いに入った瞬間それに対応する技が放たれ、返され、離れてを繰り返しているがそのスピードはまるで靄が動いている様だ。攻撃を交わす際に発せられる音と声が人の行いであることを示しているが、それがなければ夜という時間と月光と蝋燭の灯りだけが頼りの空間では幽霊に間違われてもおかしくはなく、ある意味、二人は人間でないのかもしれない。
「ハハハ、言うじゃないかフレディ! ならば更に速くなろうか!」
士郎の宣言が耳に届いた時、その時にはもうフレディの視界は士郎に埋められていた。完全に虚を突かれた、しかしフレディの思考だけはこの状況に対応する! 肩から伸びる腕の位置から攻撃の回避は困難、先程までの交差、そして今のスピードを鑑みるに――――が妥当。
思考に沿って体を前に出すフレディ、数瞬遅れて振り下ろされた小太刀は両肩の骨を叩き折った、その感触があった、しかしフレディの腕は動いた! 隙だらけの胴を掴み、肩が爆ぜ今にも千切れ飛びそうな痛みを全身で堪えて士郎の体を持ち上げ、体を反らして頭から叩き付けた! 板張りの床が砕け、圧し折れ、爆心地に頭を埋めた士郎はピクリともしない。やがて首を起点にゆっくりと体が倒れていき、
「やってくれたな、フレディ」
倒れた足がフレディの肩に引っかかり、そこを支点に士郎が体を引っ張り上げた! 力を加えられたことにより走った尋常でない痛みを堪える為に硬直したフレディの体は意図せぬ形で支点としての役割を果たし、士郎の復帰を許してしまう。悠々とフレディの前に降り立った士郎は、頭からの出血を気にも留めず、持ち上げられた際に手放した小太刀を拾い上げ、左を肩に乗せ、右をフレディに突きつける。
「クソッタレ、テメエさっきのわざと食らいやがったな?」
「それでもこの様だ。お前の膂力と精神を甘く見ていた。肩を壊した奴にあれだけ力の篭った投げが出来るなんて、思わなかったからな」
「ケケッ、そいつはどうも。で、どうする。まだやるか?」
「当たり前だ。お前こそ、イカれた肩で拳が振るえるのか?」
「さっき投げ食らってビビった自分を忘れたのか? 頭大丈夫か?」
「ククッ、問題ない。今度は何処を壊そうかと考えていたところだ」
「そうかいそうかい。そいつは重畳」
フレディが腰を落とし、士郎が腕を下ろす。互いに怪我の状況を考えた構えを取り、ニヤリと笑いあう。
{死ねや、クソ野郎!}
「うわあ…………なんだい、この臭いは」
夜の名残がまだ色濃い時間。高町家の武道場に訪れた女は、中に篭った臭いに顔を顰めた。酒の臭い、血の臭い、汗の臭い等色んな臭いがない交ぜになって、敏感な女の鼻をくすぐる。
「でもま、様子を見に来て正解だったね。こんなの人目についたら耐性ないとショック死だよ。これだから酒飲みってやつは嫌いなんだ、後先考えないし」
頭をかち割られて上半身が血に塗れ、右腕と左足があらぬ方向に曲がり、右脇腹と左太ももが一部千切り取られ、胸の一部が拳大に凹んでいる小太刀を握り締めた男。
肩周りの骨が全て砕け、その他にも左足の小指が千切れ飛び、残った指も繋がっているのが奇跡といった具合の、腹に小太刀が突き刺さった、血と同じ色をした髪の男。
体の至る所、特に内臓の集中した部分が打撃によるものと思われる青痣で完膚無きまでに犯され、首の周りに吐血したであろう血が固まって張り付いている、木刀を握り締めている男。
執拗に左半身を打たれたのか腕に四つの関節、足に三つの関節を作られた上に肘や膝の骨が飛び出しており皿に当たる部分が粉々に砕けている、金色の髪が煌いている男。
「……何をどうやれば此処まで酷い有様になるんだよ。丸一日掛ければどうにかなるけどさあ……」
倒れ伏しているいる男達の下に、オレンジ色の魔法陣が展開され、同色の粒子が体を包み込んでいく。地平線から顔を出し始めた太陽の光と重なって暖かなそれは、“治癒”の意が込められた想いの欠片である。
「この代償は高くつくからね、きっちり払ってもらうよ?」
膝枕をしている赤褐色の男の頬を撫ぜながら笑いかける女。その瞳は得物を定めた狼の様であったが、顔に浮かべていたのは艶やかさを感じさせるもので、男の体が一瞬跳ねたのは何を意味するものだったのか――――それは男と女の秘密、である。
……ふう。衝動に任せるって、よくないね。此処まで書いて正気に戻ったので、続きは日曜日までに書きます。
追記:勢いで書いたものに冷静さは要らないってのがよく分かった。