魔法少女リリカルなのは ストラーノ   作:ゆきだるま

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過去最短の執筆一時間。俺がビックリ。


第十三話

 

 

「ありがとうございましたー」

 

 

 

 時刻は午後十一時を回った頃、閉店まで打った結果十万円弱の浮きを手にしたフレディは、近くにあるコンビニで酒やつまみ等を購入し、定型の挨拶に見送られてゆっくりした足取りで帰路につく。口に先程購入した煙草(アメリカンスピリッツ・レギュラー)を銜えているのだが、これが普段から初対面で良い印象を抱かれない攻撃的な面貌をより凶悪なものにしており、たまに擦れ違う人間はフレディを視認した瞬間そそくさと道を空ける。

 

 

 

『擦れ違う人間が悉く怯えた表情をする旦那の顔マジ凶悪』

 

 

『くだらねえことにサーチャー使ってんじゃねえよ』

 

 

『旦那だってスロット打ってる時に使ってたじゃん!』

 

 

『俺は生活が懸かってるからいいんだよ』

 

 

 

 屁理屈だー、横暴だーと文句を言うグロウルの主張を無視して一定距離を保って滞空しているサーチャー――一眼カメラを模した物体――を掻き消すフレディ。グロウルは作成されてから非常に長い年月が経ったAIで、広域索敵に関わる魔法はフレディの許可を得ずとも使用できる裁量が与えられている。しかし当然の事だがマスターであるフレディの権限は絶対であり、彼が命じればグロウルがどれ程働き掛けても発動することはない。ちなみにグロウルは海鳴市に百程のサーチャーを常時放ち、ジュエルシードや“執務官狩り”の動向をチェックしている。

 

 

 

『しかし生活かあ。此処来てもう二週間でしょ、流石に一月空けるとヤバイよねえ』

 

 

『まあ、書類は溜まってるだろうな。三日くらいデスクに張り付いてればどうにかなるだろ』

 

 

『旦那が七十二時間連続稼動出来る人外の所為で俺の回路がイカレル未来が見える』

 

 

『前回百五十時間連続で動いてピンピンしてたクセに何言ってやがる』

 

 

『あの時は全盛期だったんだよ!』

 

 

『一切中身変わってねえだろお前』

 

 

 

 グロウルと念話で雑談しながら人気の少ない道を選んで歩くフレディ。街灯の数が少なく方へ、ブラインドの多い道へ、月明かりが照らす道へ。そうしている内に辿り着いたコンクリートと土との境界には、先日拳を交えた男がバリアジャケット姿で立っていた。

 

 

 

「よお、わざわざ足労感謝するぜ」

 

 

「そう思うなら縄につけや。言葉よりそっちの方が嬉しいね」

 

 

 

 中身の詰まったレジ袋を借りているホテルの部屋に転送したフレディは、ケタケタと笑う“執務官狩り”に嫌悪感を示す様に表情の険しさを強める。

 

 

 

「悪いね、捕まる訳にはいかんのよ。雇い主が満足するまでは」

 

 

「次に聞くのはそれだ。吐け」

 

 

「カカカッ! そういう直球なのは好きだぜ、情報は吐かねえけど」

 

 

「素直に吐いた方が身の為だぜ、この前みたいな無様晒したくねえだろ?」

 

 

「ああ、そりゃ確かに。けど俺、お前ともう一度会うまで自分の“使い方”が分からなくてよ……」

 

 

 

 男の両手にファルシオンが現われると同時に、男の像がブレ始める。三、五、七、九、足音はしない、何の力も通っていない。けれど見えるし、恐らく触れられる。――質量のある残像(ドッペルゲンガー)、とでも言うべきか。

 

 

 

「試したいことが山ほどあるから、慣らしに付き合ってくれや。俺にとっては仕事も出来て満足、お前も仕事出来る機会が出来て満足。どうよ?」

 

 

「俺を相手に試運転が出来ると思ってるなら好都合だ。小突き回して腹ん中も頭ん中も空にしてやる」

 

 

 

 バリアジャケットを展開したフレディが意気を示す様に睨みを利かせると、男は背筋に走る悪寒に体を震わせ、次いで湧き上がる歓喜に身を震わせた。

 

 

 

「そうだそうだ、そうこなくちゃ。俺の知ってるフレディ=アイン=クロイツはそういう人間だよな、昔と何ら変わってねえ、嬉しい、嬉しいねえ!」

 

 

「テメェは奇天烈さが更に上がったみたいだな。擁護や我慢をする必要も今はない、お前を炙って全部引き摺りだしてやるから覚悟しろ」

 

 

 

 月が雲に隠れ、辺りを闇が覆った瞬間、咆哮と金属音と火花が散る。笑い声と怒鳴り声が戦場(いくさば)を作り上げていく。死ね、死ね、死ね。死ね、死ね、死ね! 死ね、死ね、死ね。死ね、死ね、死ね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アロンソ=テスタロッサが異変に気付いたのは、子供達を寝かしつけて親達の親睦を深めていた時だった。既に時刻は午後十一時、子供達を寝かしつけて二時間が経過している。なのに何故、“外”でなのはとフェイトとユーノの魔力が感じられるのか。

 

 

 

(糞がッ! 完全に失態だ、サーチャーの目を欺かれたばかりか気配が失せた事に気付かんとは!)

 

 

 

 アロンソが異変に気付いた瞬間、サーチャーの映像が切り替わり子供達の姿が失せた部屋の様子が網膜に浮かんだ。不甲斐なさに猛る感情を全力で抑え付け、プレシアに事の次第を念話で伝えると言い訳もそこそこに大部屋を後にし子供達を救うべくその身を闇に委ねた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アーッハッハッハッハッ! よく耐えるなあ、単騎で俺の砲撃を止めるなんて大したもんだ。誇っていいぜ?」

 

 

 

 大きな筒から放たれ続ける茜色をした特大口径の砲撃を、ユーノがありったけの魔力を注いだ障壁で防いでいる。その後ろには眠ったままのアリサとすずか、二人を余波から守る為に障壁を張っているなのはとフェイト、そして月明かりで鈍く輝く銀色の十字架を握り締めて涙を零すアリシアの姿がある。

 

 

 

「これが僕の取り柄なんでね。それで、君は一体何なのさ?」

 

 

「何って、あー、……ジュエルシードを集めに来た」

 

 

 

 頭を掻いて、面倒そうに目的を伝える少年。黒い髪に紫の瞳、彫像の様な整い過ぎた顔の下は黒いコートとブーツと皮手袋の下に覆われて判然としないが、背格好から見るになのはやフェイトと“同年代”といったところか。

 

 

 

「ふーん。随分と取ってつけたような話だね」

 

 

「ついでだからな。フレディ=アイン=クロイツとアロンソ=テスタロッサを分断するって仕事と」

 

 

「へえ、あっさり吐くんだ」

 

 

「いいんだよ別に。どうせお前等此処で殺すし」

 

 

 

 軽い調子で放たれた言葉に乗せられて、砲撃の威力が段違いに増した。障壁にヒビが入り、それを塞ぐ以上のスピードでヒビが広がっていく。ユーノ君! と自分達より遥かに小さいフェレットが踏ん張る姿に耐え切れなくなったなのはが叫ぶと、どこからともなく『大丈夫』と聞こえた。

 

 

 

「……こらたまげた。お前人間だったのかよ」

 

 

「喋るフェレットなんて居る訳がないだろ。まあ、君と同じ考えをさせてた子も居るけど」

 

 

 

 拮抗の光が収まり視界が回復したなのはの目に飛び込んできたのは、完璧に修復され元の姿を取り戻した障壁とフェレット“だった”少年。金髪碧眼、女の子と見紛う様な中世的な容貌。服装は足元から白のスニーカーと砂色のショートパンツ、前面に独特の意匠が施されたノースリーブ仕立ての前掛けをベルトで押さえ、その下には袖の先が砂色に縁取られた黒のインナー、極めつけは黒のフィンガーレスグローブと胸の前で紐を用いて止めた砂色のマント。考古学者というより冒険者と言われた方が納得出来る出で立ちは、ユーノ少年がスクライアの部族服をアレンジしてデザインしたバリアジャケットだ。

 

 

 ユーノが人間であることを知らなかったなのは、使い魔だと思っていたフェイトは驚きの余り目が点になっている。

 

 

 

「フェレットの姿は力を隠す為の擬態ってことか。舐めた真似してくれるじゃねえか、ええ?」

 

 

「僕をフェレットだと思ってた君が悪い。それに、時間稼ぎって意味じゃ有効な策だからね。一回きりだけど」

 

 

 

 クスクスと笑うユーノに嘲られている様に感じた少年は、端正な顔を怒りで歪ませてユーノに言葉と魔力を叩き付ける。更に威力を増した砲撃がユーノを障壁ごと圧して苦悶の表情を浮かべさせ、状況に笑みを浮かべた少年は更に魔力を込めるべく大筒を見上げた瞬間、それが二つに断ち割れて爆散し理解が追いついた時には何者かの打撃を受けて吹き飛ばされていた。

 

 

 

「貴様が子供達を拐かした下手人か。同じ子供とはいえ容赦はせん、罪を犯した以上、その償いはキッチリ受けてもらう。覚悟はいいな?」

 

 

 

 右手に無骨なクレイモアを握り、その身を鈍銀の甲冑に包んだ金色の髪が揺らめく“法義の騎士”は口上を述べ終えると苛烈な雰囲気を身に纏い、裁かれるべき罪人たる少年を睨みつけていた。

 

 

 




ちと短いですが煽りには充分かな、と。もうすぐ休みなんでその間にゆっくり考えます。
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