地球の地方都市、海鳴市のショッピングストリートは街の中心部に位置し、休日には多くの家族連れや若者で賑わいを見せ、最近では雑誌やテレビで紹介を受ける店も増えるなど、注目を集める存在として近隣の都市からも足を運ぶ者が現われたりと、盛り上がりを見せていたのだが――
「なに、これ……!」
街は、“大樹”に蹂躙されていた。ショッピングモールの中心に植わっていた木が急激に生長し、あっと言う間に街が飲み込まれていく。先の呟きの主は、端正な顔を悔恨で歪ませながら、その様を空から眺めていた。
「なのは、呆けてちゃ駄目だ! 早くジュエルシードを封印しないと、結界を破られたら建物だけじゃ済まなくなる!」
なのは、と呼ばれた少女は、自分の肩に乗るフェレットを見る。焦りを感じるが、それ以上に「止めなければ」という強い決意を感じる。この決意に絆されて私は――そこまで考えて、頭を振る。今は目の前の事を何とかしよう、それ以外は後にしよう。白を基調にした制服に、少女が持つには無骨にも見える機械の杖を携え、なのはは大樹と向き合った。
「取りあえず暴れまわる木の根を何とかしないと! レイジングハート!」
『Divine Shooter』
機械音声と同時に、なのはの周りに二つの桜色の光球が出現、そこから分離する様に光球が飛び出し、桜色の軌跡を伴って街を蹂躙する木の根に高速で迫る。
「よし、このまま……っ! 嘘、何で!?」
高速で飛び交う光球は次々に木の根を破壊していくが、破砕面から新たな根が生えてなのはに襲い掛かってきた! 幸いシールドが即座に張られた為難を逃れたが、このままではジリ貧になるのは避けられない。
「なのは、木の根は恐らく分身の様なものだから、何度壊しても無駄だ。それより、本体の場所を探り当ててディバインバスターで撃ち抜いた方が確実、簡単だよ。だから時間を稼いで欲しいんだ」
「時間を稼ぐって言っても、あんなに直ぐ復活しちゃうんじゃ止めようが無いよ」
「壊す必要は無いよ。あの根は魔力に反応して動いてるだけだから、シューターをコントロールして注意を引き付けるだけでいい。時間さえ稼いでくれれば、活路は開くよ」
フェレットの言は自信に満ちている。まだ出会って一週間程しか経っていないが、なのはには彼の実力を確認するのに充分な機会があった。だからこそ確信する、彼なら私の道を開いてくれると。
「……うん。じゃあよろしくね、ユーノ君」
「任せてよ。ああいう大きな物から小さな手がかりを探すのは、発掘者の仕事だからね」
ユーノ、と呼ばれたフェレットは、両目を瞑って高速で言葉を紡ぎ始める。力の迸りをひしひしと感じながら、なのははシューターを操り木の根を自分達に届かない様に誘導していく。それは機械の杖、『レイジングハート』の助力もあってこそだが、なのはの類まれな才覚がそれを吸収して己の力の領分を凄まじいスピードで広げているから、でもある。
『マスター、三つ目のスフィアを生み出して下さい。今の貴方ならそれが出来る筈です』
故にレイジングハートは、なのはに成長を提示する。彼女(機械音声が女声の為)はデバイスと呼ばれる、なのはやユーノの様な“魔導師”と呼ばれる者達のパートナーとなるべく生を受けた存在であり、そんな彼女が未熟な主を教え導くのは当然で、主の才を伸ばしたいと考えるのは当然の帰結。
「……出来るかな、私に」
『サポートはお任せ下さい。その為に私は在るのです』
不安の声を漏らした主に、彼女は自分を信じる様に言う。梯子を上る為の準備はしてあります、後は貴方が上り始めるだけですよ――と。
「……分かった、レイジングハート!」
『Third Sphere』
なのはの周囲に新たな光球が現われ、先と同じ様に桜色の光球が射出される。三つになったシューターは最初こそ動きに陰りを見せたものの、レイジングハートの助言とそれを直ぐ様実現してみせるなのはの才も相まってか、気が付けば二つであった時の動きを取り戻していた。そして操るシューターが三つになった事で誘導にも幾分余裕が出来た頃、なのはがユーノを見やると、目を見開いてキョロキョロと周囲を見回し始めた。彼の視線は大樹ではなくその上空に向いている様で、なのはも釣られて視線を上に向けると、空に黒い点が生まれ、そこから黒い点が零れ落ちる。何だろう、そう思いなのはが首を捻ったのと同時に「ああっ!」と、ユーノの叫びが耳元で響いた。
「ユ、ユーノ君、どうしたの?」
「なのは、今落ちた黒い点、アレ“人”だよ!」
歯が凄く痛いです。考えが纏まらないです。