魔法少女リリカルなのは ストラーノ   作:ゆきだるま

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この作品は中年が強い。


第四話

 

 

 フレディがユーニアとおっぱじめ、プレシアがジェイルに会っていた頃、竜二と直人は地上本部の敷地内にある転送施設に足を運んでいた。

 

「お疲れさんです。首都航空防衛隊の戦闘訓練参加要請を受けました、八神と山口ですけども」

 

「リュウジ=ヤガミ様とナオト=ヤマグチ様ですね。話は伺っています、部隊は既に市街戦区画にて訓練を開始しておりますので、御急ぎ下さい」

 

 了解しました、ありがとうございます、と受付嬢に言い残した二人は気持ち足を速めて訓練区画への転移装置を目指す。

 地上本部の訓練施設は首都クラナガンには存在せず、市街戦、平地戦、閉所戦、森林戦、山岳戦等々用途毎に整備されたミッドチルダ各地の施設へ転移する形を取っている。

 

「あの受付のお姉さん、ちょっと憐れみの目やったな」

 

「多分俺等が絡まれたの噂になってんでしょう。やし、遅刻に文句言われることはないと思いますけど……」

 

「ああいうの見るたんび、あの人の存在の重たさがよう分かるの」

 

「ですね。別に悪い人じゃないんですけど、ええ人かって言われたら、違うって首振るタイプの人ですから」

 

「どっちやねん」

 

「でも先輩かてそう思てるでしょ?」

 

 まあな。それだけ返して、竜二は転移装置の中へ足を踏み入れる。一足遅れて直人も輪に入ると、眩い光が二人を包み、粒子となってその場から失せる。

 

「腕を上げたなゼスト。我が奥義を凌ぎきるとは」

 

「いえ。反撃も、もう一度も出来ません。これではまだ、素直に喜べませんよ」

 

 転瞬、視界の開けた二人の目に映ったのは、この場に居る筈の無い者が、本来相手をする筈だった者に膝をつかせている様。あまりの出来事に驚いて、竜二は近くに居た局員に声を掛ける。

 

「すまん! 遅れてきて早々申し訳無いんやけど、何でハラオウン中将が居るんや?」

 

「ああリュウジさん。いや、此処に来たら一人で鍛錬されてましてね。ゼスト隊長を見るなり、久しぶりに合わせようと言い出されて、隊長もお二人が遅刻させられているから、それまでならって事で受けられたんですが……」

 

「一足遅かった、ちゅうことか。しくったなあ」

 

(待ち伏せじゃないですかやだー)

 

(ゼストさんか、俺等か、その両方か……両方なんやろうなあ……)

 

 今回竜二と直人が此処にやってきた理由の一つは、ゼストを始めとした首都航空防衛隊に所属する高ランク魔導師達との模擬戦を行う為だ。

 実力部隊として百万を有に超える人員を有している管理局であるが、その中でも高ランクとして分類されるAA以上の魔導師の数は全体の一割で、AAAはその二割、Sランクはそこから更に十分の一。

 総数としてはそれなりの数を抱えているものの、現在の保持者の多くは部隊長及び副隊長を務めている者が大半を占め、立場の問題もあって前線に出向く事はあっても実戦を行う事は多くない。そこで提案されたのが、賞金稼ぎとして活躍する高ランク魔導師と模擬戦を行うことで少しでも勘を錆び付かせない様にする、というもの。

 管理局としては外に居る魔導師の実力をチェックし、かつ実戦に飢えている実力者達を腐らせずに済み、賞金稼ぎ達も己の実力の向上を図り物差しを作れる他、管理局に呼ばれるということは即ち実力者の証になる上、正式な依頼でもある為金もきっちり支払われる。その行動様式から友好関係にあるとは言い難い両者であるが、こうした持ちつ持たれつが必要であることは理解している。

 

「遅かったな二人共。フレディに捕まった程度で遅刻とは、精進が足りんぞ」

 

「そんなこと言えるのは貴方らくらいです、一緒にせんとって下さい」

 

「中将の言う精進てフレディさんに会った瞬間殺しに掛かれ、いうやつでしょ? 無理ですから」

 

 クライド=ハラオウン中将。リンディの夫でクロノの父親、かつてミッドチルダにあった王朝にて公爵の位を賜ったハラオウン家の末裔にして現当主。

 ハラオウン流棒術最高師範、魔導師ランクSS、年間事件解決率九十%超を幾度も記録するなど、直系六百年を超えるハラオウン家当主でありながら一代の傑物と称される程の人物である。

 が、同時に“理性ある戦狂い”と形容される戦闘狂としても名が知られ、“愉悦卿”と仇名される、管理局最高戦力の一人。

 現在は昨年起こしたフレディとの騒動の責任を取る形で渉外統括官として勤務している。

 

「奴の責任で死に掛けたら私の権限でどうにかしてやるといつも言っているだろう、一度くらい無理を通してみろ」

 

「無理無茶無謀は賞金稼ぎの天敵ですから無理です」

 

「自爆特攻にしかならないので無理です」

 

 そんな彼は、竜二と直人を“一握りの強者”になれる器の持ち主と評しており、事あるごとにフレディや自身、機動隊二番隊々長や五番隊副隊長に戦いを挑んで感覚を養えと迫ってくるのだが、大人しく言うことを聞いて酷い目に遭っている二人は真面目に拒否する。

 

「クライド中将、その辺で。彼らにはこれから部隊の皆と戦ってもらわねばなりませんので」

 

 二人の態度に少し苦言を呈そうとしたクライドを、ようやく立ち上がったゼストが言葉と共に間に入って抑える。

 ゼスト=グランガイツ一佐。首都航空防衛隊々長を務める、地上本部ではフレディと並んで実力部隊のトップに立つ凄腕の魔導師。

 魔導師ランクS+、ベルカ伝統槍術の一つ“ヴァルクルーン流”皆伝、実力は高くとも性格に難のある人間の多い一佐達の中では屈指の常識人と知られ、次代の将官として期待されている。ちなみに既婚者で、最近一人娘を授かっている。

 

「……仕方ない、今日の私は部外者だ、大人しく身を引こう。ただ見学させて欲しいのだが、構わないか?」

 

「構いませんが、御時間の方はよろしいので?」

 

「ああ、問題は無い。準備が出来次第、始めてくれ」

 

 竜二と直人をチラと見てから、クライドは隊員達が開けた道を通り、近くのビルに背を預けた。

 

「先ずは、久しぶり。本当に君達は悪運に恵まれているな」

 

「お久しぶりです。ええ、今正に実感してますわ」

 

「ええことなんか悪いことなんか分からんのが難儀なとこですけど」

 

「確かに、釣り合っているかと言われれば、少し悩んでしまう話だな」

 

 苦笑を浮かべつつ挨拶を交わした三人は、それから更に二三言葉を交わした後、二佐の階級章を付けた女性士官が近付いてきた。

「隊長、歓談中の所申し訳ありませんが、そろそろ模擬戦の方を始めてよろしいですか?」

 

「ん、そうだな。あまり長くなると中将に威圧されてしまう」

 

「ほな、どっちからします?」

 

「直人君に頼みたいのだが」

 

「了解しました。相手は決まってるんですか?」

 

 既にスタンバイしている様だ。そう言われて指された方に直人が目を向けると、見知った顔が腕を組み仁王立ちして直人を真っ直ぐに見据えていた。

 

「……誰にガン飛ばしとんねんあのボケ」

 

 低い声で呟くと、行ってきますわと肩を鳴らしながら離れていく直人。

 

「相変わらず沸点低いやっちゃのう……」

 

「君らくらいの年なら、戦う時はあれくらい気合が入っていると、我々としては嬉しい話なのだがね」

 

「でもアイツくらいになると少し扱いにくいんとちゃいます?」

 

「落ち着くこと、冷静になることは確かに大事だが、戦闘の段に入って気分を高揚させられないのも問題だ。私達とて、時には自ら最前線に飛び込み、士気を軒昂させることも必要になってくる」

 

「武威を示せる人間は居った方がいい、ちゅう話ですか」

 

「そうだ。いつだったか、グレアム大将は直人君を三佐相当の実力者と評していたが、ああした気性の面も含めて、なのだろう」

 

 長くコンビで活動してきた竜二が知る直人の戦法は、多少のトリッキーさはあれど、相手に張り付き至近で戦うことを旨としている。

 そうしたスタイルの為か、戦闘中の直人は気性が荒い。近接戦を得意としている者は多かれ少なかれ気合をぶつけあうものなので悪いことではないのだが、賞金稼ぎの視点で竜二はそれを危惧し、管理局員の視点でゼストは歓迎した。

 私を第一に置くものと、公を第一に置くもの。立場が違えば、考えも変わる。

 

「おうおうおう。何やワレ、一丁前にガン飛ばしよって、まだ諦めとらんのけ?」

 

「抜かせチンピラ。確かに俺はテメェに連敗中だが、だからといって、今の俺がテメェに勝てないと考えてるなら間抜けもいいとこだぜ」

 

「ケケッ。まあ、そやの。確かに今の優劣は決まっとらんわ、けどの……」

 

 直人の腕に巻きつけられたシルバーチェーンが赤黒く光を放ち、それに呼応して舌戦をしていた相手も浅緑の魔力光に包まれる。

 

「それだけで勝てる思われんのだけは我慢ならんのう!」

 

「ハッ! 今日こそテメェに勝って、そのイカレ面を歪ませてやんぜ!」

 

 裏地の赤が印象的な黒のロングコートの下にに白のタンクトップと黒のレザーパンツ、腰の両側に備えられたホルスターから大型の拳銃が姿を覗かせ、背中には柄に漆黒の逆十字が嵌め込まれたクレイモア、そして首下には長方形に細工されたサファイアを掴む手をモチーフにしたネックレス、という出で立ちの直人。

 それに対するは空手や柔道等でよく見る胴着を下半身だけ纏い、裾を絞り、丹田付近で紐を括り、額には“滅殺”とやたら達筆で描かれた鉢巻を装備しているこの男が、首都航空防衛隊中隊長を務めるトウヤ=イガラシ三佐である。

 

「チェェェアアァァッ!」

 

「ウオアァァァァァッ!」

 

 気迫の篭った声を上げてお互いの得物を握り締め吶喊する。背中の剣に手を掛けていた直人が、一拍早く足を踏み込む。正面に、垂直に振り下ろされる剣は、トウヤの速力を見越した一撃。

 

「舐め腐ってんじゃねえぞ!」

 

 昔の自分を計りに使われたトウヤは反撃の言葉を吐き捨てると、僅かに腰を落として溜めの動作に入り、足元で魔力を爆発させて強引にその軌道を変質させた。

 斜め方向へ、振り下ろされる剣を横目に通り過ぎていくトウヤ。その拳には既に、浅緑の光が宿っている。

 

「これが今の俺だあっ!」

 

 下から上へと振り切られた拳から、浅緑の散弾が放出される。視界が一瞬で色に染められた直人は、振り切った剣を即座に正中線を守るように構えるも、至近で撃たれたが為に脇腹や肩、太ももなどに着弾し、弾丸の勢いに引き摺られて後退していく。

 

「へっ、ザマァねえなチンピラァッ!」」

 

 トウヤは追い討ちを掛けるべく、足で踏ん張り後退の勢いを殺している直人に迫る。意気を強く、両手に光を漲らせて、必殺の流れを作ろうと力を込める。後方への勢いに対して直人の力が勝り、僅かに上体が力を取り戻した瞬間、状況の把握に思考を割いたその瞬間を突く為に。

 

「……やったらおどれは犬ッころじゃボケェ!」

 

 トウヤが必殺への一手を打とうとした正にその時、直人は罵声と同時に剣を地面に突き刺して体をその場に縫いとめると、足を滑らせ空へ投げ出し、自然落下の最中にホルスターから拳銃を引き抜く。

 

「穿てッ! ジキル&ハイドォ!」

 

 ドンッ、と腹に響く低い連続音と共に、大口径の魔力弾が吐き出される。潔い回避を強要される部位――膝下を集中して。

 

「こなくそっ!」

 

 ただ飛ぶだけでは拙い、そう判断して前方へ飛び掛る様に跳躍するトウヤ。罠である可能性は十二分、しかし飛び込んで仕掛けていかなくては相手の思う壺。右腕を引き、拳の光を膨らませて、着地の隙を突く!

 

「スマック・ショットォ!」

 

 腹這いに着地した直人では回避が間に合わない、故の面攻撃。範囲こそ狭くなるが、中心に捉えていれば直撃の三つや四つ――そんな考えが頭を過ぎった矢先。

 

「んなっ!?」

 

 直人の纏っていたロングコートが主の下から独りでに離れ、その面積を大きくして弾幕から主を守ったではないか! 直下に居た直人は至近弾が生んだ砂煙とコートに阻まれて目視が利かない、トウヤが感覚に頼む為咄嗟に目を瞑った刹那、背後から血の香がした。

 

「去ねや!」

 

「そこかあっ!」

 

 直人の奇襲から僅かに遅れてトウヤの逆撃が放たれる。直人は銃底を使った鎖骨狙いの殴打、トウヤは傷ついているであろう脇腹への肘鉄。打撃音は二回、両者の打撃は届いた。

 

「つあっ……!」

 

「んぐぅっ……!」

 

 しかしその深さは違う。直人が僅かに早く右肩を穿ち、それに因って生まれた痺れが巡って僅かに打点がずれ、傷口ではなくその周辺を穿つ結果となり有効打に至らなかった。だが振り切ったことで衝撃は徹り、呻き声を漏らしつつ二人の距離は離れていく。

 

「……なかなか成長したようやのう犬ッころ」

 

「……テメェも、まだ色々隠してるみてえじゃねえか」

 

 一回転して着地を決めた二人は、敢えて背中を向けて互いを称えあう。それは信頼であり、また不器用さの表れでもある。

 

{けど、だ}

 

 同じ言葉、同じ動作で、二人は再び向き合うと

 

「その程度で勝てる思とんのやったら大間違いやけんのう!」

 

「隠しギミック全部出させて素裸にして放り出してやんよ!」

 

 中指を立て、今日二度目の宣戦布告を交わした。

 

 

 




クライドさんキャラ分かんないぞ……→CV中田譲治?→こ れ だ。

クライドさんのキャラはそんな風に決まりました。前回感想乞食になってみたものの一つも来なくて泣いたのは俺です。ギブミー感想。
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