フレディさん、フレディさん! それでいいよ――なのはが嬉しそうに自分の名前を連呼するのを見て、思わず微笑んでしまうフレディ。
「フレディさんって、時空管理局で働いてるんですか?」
「そうだよ。特別悪い奴をぶちのめすのが俺の仕事。今回はそういう奴らが出そうだから、って事で来たんだわ」
そう言うと、ホッとした様子を見せるなのは。使われているだけかと思考を巡らせるフレディ。警戒感が感じられない内に情報を搾っておかないといけない、その為の一手を打ちに掛かる。
「なのはちゃん、さっき友達の探し物って言ってたけど、その子の名前は知ってる? 良かったら教えて欲しいんだけど」
「ユーノ君って言うんです。フェレットなんですけど、凄く頭が良いみたいで、喋れるんですよ!」
嬉々として話すなのは。笑顔の眩しさが心に突き刺さってジクジクとした幻痛に見舞われるフレディ。こうした“質問”は今まで幾度も行ってきているが、こうも素直に答えられると何だか悪いことをしている気分になる。
「ユーノ君ね。その子は今何処に居るの?」
「此処に来る前に怪我した人が居ないか見てくる、って言って何処かに行っちゃいました。何か焦ってたみたいだから、もしかしたら、大怪我を負った人が……」
そこまで言って、言葉が途切れた。表情を悲しみに歪ませ、目には涙が溜まっていく。やがて目尻からそれが零れ落ちたと同時に、なのはは嗚咽を漏らし始める。私のせいで、私のせいで。うわ言の様に繰り返される嘆きに、フレディは少し困惑したものの直ぐに持ち直す。
「どうしたなのはちゃん、いきなり泣き出したりして」
「……街がこんなになっちゃったのは、私のせいなんです。私が、私がちゃんとしてれば、こんな事にならなかったのに」
「結界が張ってあるから、現実の街には被害が無い筈だよ?」
遅かった。首を横に振って漏らした呟きは、先ほどの爛漫さからは想像もつかない責任感に満ちている。フレディは胸に沸きあがる嫌悪感に蓋をし、笑顔とそれに準ずる口調となるよう意識して、なのはに向ける言葉を選んだ。
「それを言うなら俺もだよなのはちゃん。此処にはもっと早く来れた、けど俺はそれをしなかった、その結果がこれだ。こうならない様にするのが俺の仕事なのに間に合わなかった、挙句の果てになのはちゃんを泣かしてる。ごめんな、なのはちゃん。俺が間に合わなかったばっかりに、辛い思いをさせちまった。本当に、悪かった」
最後に頭を下げると、なのはが驚いて上げる様に言う。けれどフレディはしなきゃいけないことだと言い、再び悪かったと言う。するとなのはが気付いていたのに止められなかった私が、とあくまで責は自分にあることを主張するが、フレディは譲らない。
「フレディさんは悪くないです! 悪いのは気付けたのに止められなかった私です!」
「……なのはちゃん、なのはちゃんの魔法はさ、何でも出来るのかい?」
不意に掛けられた問いに、なのはが言葉に詰まった。
「俺やなのはちゃんが使う魔法ってやつは、人によって出来ることと出来ないことがある。そして、俺の魔法は街がこうなる前に止める事が出来た。なのはちゃんの魔法は、どうなのかな?」
出来ます、その言葉は喉まで出掛けて霧散した。ジュエルシードの発見からその確保に至るまでの戦術など、戦闘以外の事はユーノとレイジングハートが担当している。まだ発動していないジュエルシードは見た目はただの宝石で、ユーノですら感知するのは難しいと言っていた。
「私の魔法じゃ、出来ないです……」
俯いて、再び声を震わせるなのは。
「そっか。けどなのはちゃん、それは悪いことじゃないんだよ?」
「……ふえ?」
「なのはちゃんは自分に出来ることをやろうとしたんだろう? それはいいことだ、悪いことなんて一つもない。けど出来なかった事をいつまでも悔しがってちゃ駄目だ、次は出来る様に頑張るんだ。そうすれば、君の魔法は君に応えてくれる。君が出来る様に導いてくれる」
なのはは自分の手にあるレイジングハートを見る。その杖の先端、彼女の意思の象徴である宝石は点滅し、意思を発している。
『マスター、貴方が望むならそれが私の意思になります。貴方がこうなりたいと願うなら、貴方に適した形でそうなれるよう導きましょう。私はレイジングハート、貴方の相棒であり、貴方が信じる“魔法”そのものです』
出来る事は、これから幾らでも増やせます――締めの言葉が、胸に響いた。涙を拭うと、フレディが笑っていた。照れくさくなって視線を外して、ありがとうございますと感謝を口にすると、それは俺に言うセリフじゃないよと諭す様に言われた。視線を戻すと苦笑に変わっているのが分かって、少し笑ってしまう。
「何で笑われているのか少し気になるけど、まあいいや。一段落ついたし、ユーノ君だっけ? その子にも聞きたいことあるから、何処に居るのか聞いてもらえるかな?」
理由。二話と雰囲気が違いすぎた。流石に割りとほんわか終わった二話にくつけるのはなあ、と。次回はユーノ君ピンチ。