「久しぶりだねえフレディ。フェイトに代わって私が案内するよ」
結界の境界まで辿り着いたフレディに声を掛けたのは、サニーオレンジの髪を腰ほどまで伸ばし、白地に黒抜きで文字が描かれたシャツの上に黒のベスト、デニムのホットパンツにロングブーツを履いた、活動的なイメージを抱かせる風貌の女性。年の頃はフレディより少し下といった具合だが、フレディの肩近くある身長の為か、横に並んでも然程違和感はない。
「アルフ、フェイトのそそっかしさは何とかならんのか? 相手するのが面倒なんだ」
「まあまあ、目くじら立てないでおくれよ。アンタが来なかった間、寂しそうにしてたからさ」
アルフと呼ばれた女性は、苦笑いを浮かべながらフェイトの心持ちを伝えた。前に会ったのが二ヶ月前、という事もあって言葉を返しづらいフレディはそうかい、と呟きアルフに案内を促した。不満が少し和らいだ様子のフレディにアルフは満足そうに微笑むと、こっちだよとフェイトと同じ言葉を使って歩き出す。
「それで、フレディはどうしてこんな辺境に来てるんだい? アンタ確か休暇貰ったって聞いてたけど」
「その代わりに仕事が入ったんだよ。目的は分かるだろ?」
「ああ、ジュエルシードのことか。ってちょっと待って、アンタ地上部隊の人間なのに何で此処に来てんの?」
「本局からのお達しでな、一番近くに居た俺にお鉢が回ってきたんだよ。つーか、俺もお前が何でジュエルシードのこと知ってるのか聞きたいんだが」
「姉御が言ってたんだよ、多分管理局のデータベースから引っ張ってきたんじゃない? 私はフェイトと一緒に集めるよう言われて、その時の注意事項を伝えられただけだし。ああ、注意事項といえばさ、私ら以外にも集めてるのがいるんだよ、ジュエルシード」
アルフの発言にフレディが僅かに反応する。しかし、彼女はその後“フェイトと同じくらい”“白いバリアジャケットを着た女の子”と続けた。それを聞いたフレディは脳裏になのはを連想した。決定的だったのは“桃色の魔力光”。推測が確信に変わったフレディは、グロウルを介してなのはの映像をアルフの網膜に映し出した。念話の概念を利用した念写という技術によるものだ。
「おお、そうそうこんな子だよ。――って何でアンタが映像持ってんのさ。まさか」
「さっきグロウルが同じネタを披露して軋ませてやったんだが、お前の頭なら小気味良い音が鳴るかもしれんなあ」
わざとらしく音を鳴らしながら手を開閉させるフレディ。その顔にはグロウルの時によく似た怒りを湛えた笑み。確かに笑っている、笑っているが、これは期待に満ちたものだ。彼が想定した続きを言わせない為であると同時に、言えば制裁を加えられるという嗜虐趣味が滲み出した産物だ。ユーノが口にしていた“殺人警察”という渾名は、こういう所から来ているのかもしれない。
「やだねフレディ、映像持ってるってことは話をしてきたんだろう? どういう形で落としたのか聞いておいていいかい? 次見かけた時の行動の指針になるしさ」
そんなフレディと相対したアルフは浮かび上がった悪戯っ子を叩き伏せ、表情を引きつらせて乾いた声で応対した。それに伴いフレディの怒気が霧散し、ホッと溜め息をついた時不意打ち気味に怒気が当てられ涙目になってしまったのはご愛嬌。
それからは普通に雑談を楽しんでいた二人は、十階建てのマンションの前で立ち止まる。此処の七階にアルフやフェイトが住んでいるとのこと。
「なかなかいいとこだな。駅に近くてスーパーも徒歩十分圏内。コンビニにパチ屋も揃ってる、俺もこの辺りで賃貸探すかね」
「探すくらいだったら家に来なよ。フェイトやアリシアが喜ぶし、拠点を探す手間が省けていいじゃないか」
「プライベートまであの姉妹に束縛されたかねえよ」
即答したフレディ。そっけない態度に思わず反論しそうになったアルフは、フレディが訪ねてきた時の反応を思い出して「うーん、それ言われると強く出れないねえ」と苦笑いを浮かべた。それから間もなくエレベーターが七階に到着。アルフの案内でやってきたのは角部屋の前。表札には“アロンソ=テスタロッサ”と書かれている。
「ただいま、フレディ連れてきたよー!」
先に入ったアルフが呼びかけると、ドタドタと駆けて来る音が聞こえてくる。目に入ったのは金糸の様な髪を靡かせ迫り来る黒のワンピース姿のフェイトと、白のワンピースを着たフェイトと瓜二つの少女。足音が近くなり、それがスタッカートになった瞬間アルフの体が横に逸れ、視界に映るはフレディに向かって満面の笑みで飛び込んでくる少女が二人。そして此処で、フレディはある事に気付く。
――高さが足りない!
二人はまだ幼い子供でその身体能力はまだまだ未熟、驚かせようとアルフを隠れ蓑にしたのが裏目に出て踏み切り位置が遠くなってしまった為に、このままだとフレディに届かず強かに玄関の石畳に顔を打ちつけてしまう! 瞬時にそれを理解したフレディは体を沈ませ、さながらアマレスのタックルが如く二人の下に入り込むと、両の腕で掬い上げそこから起立。いつの間にか抱え上げられていた二人は「スゴイスゴイ!」と言いながら無邪気に笑っていて、フレディは二人の様子に怒りも起こらず「……久しぶりだなあ」と疲れをありありと浮かべた笑みで二人の歓迎を受けているところに、エプロン姿の妙齢の女性がリビングから姿を現した。
「久しぶりねフレディ。来て早々子供達の相手をしてくれてありがとう。そのついでに夕食にも付き合ってもらえるかしら? 貴方が来るって聞いて二人共一緒がいいって聞かないのよ」
「……ああ、馳走になるよ。それとその後、お前に聞きたいことがある。時間取れるか?」
「ええ勿論。今の私は専業主婦だから時間の融通は利くのよ。何でも聞いて頂戴な」
さあ、早く食べましょう。そう言い残し女性はリビングに戻る。アルフもご飯ご飯~と鼻歌混じりにそれに続き、フレディも頭上で繰り広げられる“どっちが隣に座るか”という不毛な争いをBGMにテスタロッサ家の食卓へ足を向けた。
結構書いたつもりなのに2600ちょい。うーん、まだ修行が足りんようだ。次はもう少し頑張ります。