魔法少女リリカルなのは ストラーノ   作:ゆきだるま

9 / 44
第八話

 

 

 

早朝。フェイトとアリシアが起き出す前にテスタロッサ家を後にしたフレディは、海鳴の街を眼下に望める山の天辺に足を運んでいた。

 

 

 

「それじゃあグロウル、頼むわ」

 

 

「あいあい。――索敵術式起動、範囲海鳴市、対象は魔力起源体」

 

 

 

地面に胡坐を掻くフレディを中心に三角の陣が発生。生み出された紅い光が大地に溶け、山から連なる流れに沿って海鳴の街を駆けていく。手綱を握るのはグロウル、街の隅々まで魔力を渡らせ得られた情報をその都度その都度精査していく。主の友人が抱いた推測が、本物であるかを確かめる為に。

 

 

 

「……海沿いで二個引っかかった。それと、プレシア嬢ちゃんの推測は間違ってなかった。確かに海鳴市一帯が“魔力磁場”だ、管理外世界にこんな所が出来るなんて滅多に無いのに、よく推測が持てたな。驚きだぜ」

 

 

 

魔力磁場。磁界ともいう。どちらも意味は魔力を引き寄せる性質を持った土地のこと。長い時間を掛けて魔力が土地に馴染んでいく過程で、何らかの要因により変質した魔力が土地に強力な引力を持たせるに至った土地のことを指す。管理世界では長い戦乱に見舞われた土地に多くあることから、短期間に数多くの魔力が放出され、それらが大地に還る際に混ざり合う事で変異を遂げるのでは、というのが一般論として存在する。

 

 

プレシアは二十一個あるジュエルシードの内、なのはが五つ、フレディが一つ、フェイトが二つと総数の半分近くが海鳴市で見つかっている事から、この近辺が魔力磁場ではないかという推論をフレディに語っていた。状況から調べる価値があると踏んだフレディは、プレシアとの情報交換が終わって直ぐ此処へやって来た。アリシアと徹夜明けで出くわしたくなかったからではない、断じて。

 

 

 

「となると、捜索範囲は縮めても良さそうだな。世界全土を回るのは色々と骨が折れるから、此処だけで済みそうでなによりだ」

 

 

「全くだね。けれどまあ、これで益々陰謀論が加速しちゃったね、面白いくらいに」

 

 

「俺を巻き込んで何のメリットがあるのかは知らんが、巻き込まれた以上落とし前はつけてやるさ。必ずな」

 

 

 

仮にこの一帯が魔力磁場だった場合、貴方は此処に誘き寄せられた事になる。フレディが地球に来た理由を語った時にプレシアが口にしたものは、フレディが薄々感じていた懸念そのものだった。テスタロッサ一家は巻き込まれただけだろう、居合わせてしまったのは不運としか言い様がない。だがフレディは違う、何者かの意思が働いた結果だ。

 

 

部下の女性は言った、本局からの指令であると。フレディに命令を与えられる権限を持った人間は限られる。彼は一佐、現場の最高責任者であり、何より地上部隊の人間。管轄の違う人間には例え階級が上であろうと容易に言を下すことは出来ない。そういったものを全て突破した結果がフレディの地球派遣に繋がっている訳だが、その理由も、誰が命じたのかもフレディは分かっていない。唯一の情報は彼が信を置く部下が口を閉ざす程の人物、ただそれだけだ。

 

 

 

「とは言うものの、現状はなのはちゃんが怪我しない様に見守る以外ないんだよねえ」

 

 

「それについてはフェイトに任せようと思う。同い年で同姓、なのはちゃんの性格を考えると、人見知りがちなフェイトでもいい友人になれそうだしな。捜索に関してはフェイトの在り様を見たなのはちゃんには刺激になるだろうし、万一の場合でも戦える魔導師が一人居れば俺が間に合う可能性も高まる。憶測でしかないが、上手くいくと思う」

 

 

「了解。確かなのはちゃん早朝に訓練やってるーとか言ってたし、その時一緒に出向けばいいっしょ。取り敢えず海沿いの二個を回収に行こうや」

 

 

 

グロウルに促されたフレディは腰を上げ尻に付いた土や草を払うと、軽く準備体操をしてから走り出す。彼はフェイトやなのはの様な飛行魔法をあまり得意としていない。飛べないことはないのだが、彼の場合直進しか出来ない。なのに彼の飛行は加速力と最高速がべらぼうに高く、秒速六十キロ、最高時速は八百キロオーバーという殺人的スピードを叩き出す。よって、例え結界を張ったとしても彼は飛行魔法を使わない。制動するのが面倒だから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジュエルシードを回収したフレディは、テスタロッサ家に戻って朝食を馳走になっていた。調査に赴く直前朝食を作っておくから終わったら食べに来なさい、とプレシアから伝えられていた為だ。微糖のブラックコーヒーとフレンチトースト、それと一口大に切ったバナナ。それらを満遍なく口に含みながら、フレディは朝から元気な双子の片割れの怒りを受けていた。

 

 

 

「どうして朝居なかったの? 起こしてあげようと思ったのに!」

 

 

「俺は此処に仕事をしに来てるんだよ。アリシアと遊ぶ為じゃねえの。分かったらゆっくり飯食わせろ」

 

 

 

おかーさーん! 昨夜の再現とばかりに母親に不満を訴えるアリシア。だが徹夜明けで少々疲れ気味のプレシアお母さんは、子煩悩が顔を出すことなく娘を冷静に宥めている。その姿に安心してフレンチトーストを頬張っているフレディの視界に、第二陣が現れる。

 

 

 

「フレディ、お仕事って何してるの?」

 

 

「今回は宝探しだな。今朝二つ見つけてな、今のところ順調だよ」

 

 

「宝って……ジュエルシードのこと? それなら私も集めてるよ」

 

 

「おお、そうなのか。ならフェイトにも手伝ってもらおうかな」

 

 

 

プレシアとアルフからフェイトがジュエルシード集めをしていることを聞き出しているくせに白々しいセリフを吐くフレディ。お手伝い出来る! と目を爛々と輝かせるフェイト。だがそんな二人の甘いひと時は、第一陣の切り返しによって断たれる。

 

 

 

「ズルイよフェイト! 私もお手伝いする!」

 

 

「姉さんは駄目だよ! まだ魔力をちゃんと制御出来てないんだから!」

 

 

 

お手伝いを巡って繰り広げられる姉妹の喧嘩。言葉も手の出し方もそっくりな二人のキャットファイトは、当事者が部屋を後にするのも気付かず、母親から昼食が出来たと声が掛けられるまで続いた。

 

 

 

 




一期を見たときなんとなく不思議に思っていたことに適当な理由付けをする。ただそれだけの話。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。