シロクロ!   作:zienN

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第14話 一条家の日常

「クロ、また明日な」

「ああ、明日。じゃあね」

 

シロと別れ、駅で涼香を見送り、最後に敦也と自転車置き場で別れ、俺も家へと帰る。

 

「どうしたもんかなぁ」

 

今日のことを思い出して、明日のことに不安が募る。

正直1回目がいじめとかハードル高すぎるんだが。

それにしても中二か。

あいつと同じ歳か。

 

そうこう考えながら歩くともう家に着いた。

玄関横の学校指定のシールが貼られた自転車をみて、玄関の扉を開ける。

 

「ただいま〜」

「あ、お兄ちゃんおかえり!」

 

リビングでは我が妹、(はるか)がすでに帰っていて、いつものお気に入りの寝間着用のジャージに着替えていて、ほんのり赤く火照った頰と肩にかかる真っ黒な髪が濡れているのを見るに、風呂上がりだということに気づく。

そこまでは良かったんだけど。

 

「お、おお。悠、お前…。なんか、色々増えたな…」

「ふっふっふ。どうこの装備!カッコよくない!?」

「…」

 

腕に巻いた包帯と眼帯を俺に見せつけてくる悠を見て、俺は「風呂上がりなのに勿体無い」に勝るフレーズが出てこなかった。

最近、ずっとこうなんだ。

カッコいい、という理由だけで包帯とか巻いて、今日は眼帯まで…。

もしかして…。

 

「悠、お前もしかして、いじめられてないか?」

「え、何で?ってちょっと!やめてよぉ!」

 

カッコいいという理由は建前で、俺に見せたくない傷を隠しているんじゃないだろうか。

今日のことを思い出して不安に駆られた俺は妹の抵抗を無視して包帯を剥がしたが、成長期の妹の細い腕には傷一つなく、不自然な痣すら見当たらない。

 

「じゃあ目は…!」

「だからなにも…ああ、引っ張らないでよ!伸びちゃうよ!」

 

今度は眼帯を掴んで引っ張るが、そこにも傷はなかった。

眼帯の奥には大きくて真っ黒な目が、不機嫌そうに俺を睨む。

呆気に取られた俺は脱力して、眼帯から手を離す。

眼帯は、痛々しい音を立てて悠の目に収まった。

 

「ぁいたっ!」

「何もない?じゃあ眼帯と包帯をつけている理由は本当に…」

「もう、だからカッコいいだけだって言ってるじゃん!」

「あ、そうなんだ…。その、なんかごめん」

「もういいから、早くご飯作ってよねっ」

「はい」

 

包帯を巻きながら不機嫌な表情を浮かべる悠を背に、俺は台所に向かった。

とりあえずいじめじゃなくてよかったけど、カッコいいってだけで包帯とか眼帯つけられてもそれはそれで困るんだけど。

嬉しいのやら悲しいのやら。

悠、お兄ちゃんちょっとわかんないぞ。

 

「今日は餃子でも作るか」

 

無心で包んで思考を停止させるために、俺はひき肉を取り出し、早速料理に取り掛かった。

 

 

 

 

 

 

「ごちそうさまー!」

「はい、お粗末様」

「中々美味しかったじゃん」

「まあな。料理のデキる男はやっぱかっこいいだろ」

 

夕食も食べ終わり、二人で食器を洗う。

両親が全然家にいないので家事は二人で分担しているが、料理は毎日俺が作っている。

料理もできるんだぜ?俺、超優良物件じゃね!?

 

「何だかなあ…」

「どうしたの、お兄ちゃん」

「いや、なんでも。それよりさ」

 

ふと、隣で俺が洗った皿を拭いている悠の包帯が再び気になった。

 

「その包帯と眼帯ってモデルとかいるの?」

「あ、うん!あつやくん!」

「敦也?」

 

あいつ、包帯なんて巻いてたっけ…?

 

「ちょっと待っててね〜」

 

ちょうど皿洗いが終わり、悠はリビングを飛び出した。

食器棚に皿をしまっていると、悠が戻ってきて俺に一枚の写真を突きつける。

 

「ほら、これ!あつやくん!」

「これは…中学時代か?」

 

何で持っているのか、悠の写真の中に収められているのは中学校の制服をきた敦也だった。

包帯と眼帯、絆創膏までつけていて痛々しい様子の敦也が、隣にいる指ぬきグローブと包帯を装着した生徒と一緒に包帯を巻いた方の腕を見せつけるようなポーズで写っていた。

 

「カッコいいよね!あつやくん!」

「う、うんまあ。ちょっとその写真写メっていい?」

「いいよ。はい、ちーず!」

「悠は写らなくていいんだけど…。まあいいや、ちーず」

 

本当は許可を取るべきは敦也なんだけどな…。

天文部のグループラインにでも貼って聞いてみよう。

最新式のスマホは寸前の狂いもなく、悠と写真を綺麗に抑えることに成功した。

 

 

 

 

 

「ふう。いいお湯だった。なんかあったっけなあ」

 

風呂を上がって、冷蔵庫の中身を漁る。

涼香の甘党が移ったのか、時たま口が寂しくなるようになり、風呂上がりに何となく冷蔵庫を漁る習慣がついてしまった。

 

「お、お宝発見」

 

冷蔵庫の奥にあったのはカラメルと生クリームの層が食欲をそそるプリン。確かコンビニの700円買ったおまけで引けるくじで当たったやつだったな。

テレビを見ている妹が座るソファの向かいに座る。

 

「お兄ちゃんいつもお風呂長いね〜。なんか携帯鳴ってたよ」

「ん、そうか」

 

ロックを解除して通知を開くと、いつものようにグループトークが栄えていた。

プリンを食べながらスクロールして会話を追う。

 

『明日は午後1時に駅に集まって欲しいとのことです』21:11

『了解d( ̄  ̄)がんばろうね☆』21:12

『おっけ』21:18

『明日って、もしかしたら早く終わるの?』21:18

『ちょっと話して帰る予定だからすぐ終わる気がする』21:22

『そっか、じゃあ明日帰りにクレープ屋さん行かない?』21:23

『いかない』21:23

『なんで!?ってか返信はやいよ!Σ(・□・;)』21:23

 

「はは」

 

行きたくなさが返信の時間に現れていて思わず口元が緩んだ。

涼香、クレープって言っちゃダメだ。そこは嘘でもラーメン屋って言わないと、敦也が食いつかないぞ。

 

そこからの会話は割愛して一気に一番下までスクロールする。

ってか多すぎ、そしてまだ続いてんの?

個人トークでやってくれよ…。

 

『ごめん風呂入ってた 明日は1時ね 了解』21:37

『くろくん!くろくんもあつやくんになんとか言ってあげて!』21:38

『クロの頼みでも僕は動かない おごりでだっていくもんか』21:39

『そんなに行きたくないんだ…今度絶対いこうね(`・ω・´)』21:39

 

涼香が諦めたみたいだ。

ひとまず今日のところは終わりかな。

でも俺は悠からもらっていた写真が気になったので、敦也の個人トークで聞くことにした。

 

『一条玄人さんが写真を送信しました』21:40

 

これいつの写真?と聞こうとした打ち込んでいる最中、写真の横に既読の二文字がついた瞬間だった。

 

『やっぱいく』21:40

 

天文部のグループトークで、敦也がそう言った。

 

『なんかすげー行きたくなってきた 是非行こう(╹◡╹)』21:40

『え!?嬉しいけど、どうしたの?Σ(・□・;)』21:41

『よし決まりな 以上、解散』21:41

 

そして意味不明なスタンプで無理やり会話が閉められた後、俺のところへメッセージが届く。

 

『これでいいのか?』21:42

『いや、脅しとかで貼ったんじゃないんだけど…』21:42

『後これに写ってるちびに話があるから午前中に家いっていい?』21:43

『ああわかった』21:43

『いつもの通り早めにいくから じゃあまた明日』21:43

 

殺伐とした会話も終わり、俺はスマホをテーブルに置いてテレビを見る悠を見つめる。

 

「ん?どうしたの?」

「…明日午前中に敦也が遊びに来るってさ」

「え、ほんと!?」

 

パァっと嬉しそうな表情をすると悠はテレビを消した。

 

「私もう寝るね!あつやくん来るなら早起きしなくちゃ!じゃ、おやすみ!」

「ああ、おやすみ。包帯と眼帯、外して寝ろよ」

 

敦也が来るというといつもすぐに寝るのは何故だろう。

とは言え、明日怒られるってのに、随分とご機嫌だったな。

 

「…はあ、俺も寝るかな」

 

明日は忙しくなりそうだ。

俺も悠に見習って、今日は早めに寝ることにした。




最後まで読んでいただいてありがとうございます。
こういう小話を挟むと結構話が進まないなと反省をしつつ、やっぱりこういうの書きたいという自分もいます…。
やっぱり難しいですね…。
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