シロクロ!   作:zienN

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第16話 恋愛事情

「うう…。また大貧民…」

「ふっふっふ。兄貴に勝る妹なんていないんだよ。さあ妹よ。次も貢物、期待してるぞ」

「絶対いつか、逆の立場に立ってやるんだから!」

 

テレビゲーム、ボードゲーム、ままごと、トランプ。3人で色々と遊んで時間を潰しているうちに、ついに時計の短針は一日の一周目の終わりに差し掛かろうとしていた。

テーブルに置いていた敦也のスマホが、小刻みに震える。

 

「…っと。涼香からか。なんかもう駅につくらしいから、迎えに行ってくる」

「今日は一段と早いな。まだ集合には早いからうちに連れてきなよ」

「おう。それじゃ一旦、お邪魔しました」

「いってらっしゃいっ!」

 

敦也を見送って、俺と悠は散らかった部屋を片付ける。

 

「午後はなにしよっか?」

 

悠がボードゲームの道具であるおもちゃの札束をまとめながら尋ねてきた。

 

「ああ、午後はちょっと、俺たち仕事があるんだ」

「仕事?お兄ちゃんの高校ってバイト禁止じゃなかったっけ?」

 

仕事と言ったが、バイトと勘違いされてしまったようだ。

そういえば悠にはまだ部活始めたって言ってなかったっけ。

 

「実は俺たち部活を初めてさ。簡単に言うと、困ってる人の悩みを聞くのが仕事なんだけど、今日の午後から話を聞きに行かないといけないんだよ」

「へえー。そうだったんだー。じゃあ仕方ないね。頑張ってきてね!」

 

いまいち納得してるんだかしてないんだか、少々棒読みに近い返答が帰ってきた。

まあ、意味わかんないよな。俺だってモテるためじゃなかったらこんな部活入らないし…。

 

「ああ、ついでに買い物してくるけど、晩飯なにがいい?」

「んー、あ、そうだ!今日はあつやくんも誘ってカレーがいい!」

「カレーね。敦也がいいって言ったらいいんじゃない?」

「うんっ。戻ったら聞いてみる!」

 

なんだか最近、俺の妹が敦也にべったりな気がするんだが。

まあ反抗期が来るよりは全然ましだけど、普通は俺に懐くもんじゃないの?

 

「昼飯は適当でいいか」

 

片付けもある程度終わり、俺は帰って来る敦也と涼香の分も合わせて、4人分の昼食を作り始めた。

 

 

 

 

ピンポーン。

 

炒め物をしている最中、チャイムが鳴った。

 

「悠ちょっと出てくれ。今手が離せないからさ」

「はーい」

 

パタパタと玄関に向かう悠の足音は、少しして3人の足音になってリビングに帰ってきた。

 

「くろくん、お邪魔しまーす!」

「もっかいお邪魔します」

「はい、いらっしゃい」

 

敦也に連れられて、涼香も家にやってきた。

正直女の子を家にあげるのとか緊張して舞い上がっちゃうんだけど、涼香くらいになるとそこまで意識する間柄でもないので、別に舞い上がったりもしない。

 

「早かったね。もう直ぐ昼できるからさ。テーブル座って待ってて」

「おう。悪いね」

 

敦也と悠が座り、会話が始まり食卓は再び賑やかになった。

涼香はバッグをソファに置くと、キッチンにやってきた。

 

「ほ〜。くろくん、上手になったね〜」

「おかげさまで。先生」

 

一年の時、カレーとチャーハンくらいしか作れなかった俺に料理を教えてくれた涼香のおかげで、俺もすっかり自炊ができるようになっていた。

確かあの時は料理ができる男はモテるとかなんとか言われてやらされたんだっけ。

本当のところは『成長期の妹にコンビニ飯ばっか食わせるんじゃねえ』と言って敦也が仕向けたらしいが。

 

「なんかくろくん見てたら、私も作りたくなっちゃった。ちょっと一品作ってもいい?」

「どうぞ。卵は冷蔵庫の上の方に新しいのあるから好きに使ってくれ」

「えへへ、ばれちゃった?」

 

敦也がいるときに涼香が作るものなんて大体わかる。

食器棚から容器を取り出し、片手で卵を割って、素早くかき混ぜる。

そしてさじを使わずに調味料を入れ、ねぎを細かく刻んで入れる。

この目分量だけはどうやっても真似できないんだよなあ。

涼香にしか作れない、世界にひとつだけの卵焼きといったところか。

 

少しして、涼香の作った卵焼きも並び、全員が席に着く。

 

「いただきます!」

 

悠の高い声の合図で、少し早い昼食の時間がはじまった。

食卓には、俺特製のチャーハンと野菜炒め、そして涼香の作った卵焼きが並べられていた。

 

「ん…。くろくん腕あげたね」

「ありがとう」

「安定のうまさだな」

 

俺は料理の師である涼香に料理を褒めてもらえたので、とりあえず安心した。

 

「へえ、ネギ入りの卵焼きもあるのか。これもやっぱりうまいな」

「えへへ、よかった♪」

 

涼香も敦也に褒めてもらえたので安心している様子。

悠がそんな二人を見ながら、感心したようにいった。

 

「なんか、家族みたいでいいね」

「はっは。そうなると、家族構成はどうなるんすかねえ?」

 

ニヤけながら言うこの顔は悪ノリの時の顔だ。

 

「玄人お父さんと涼香お母さん。長男の僕に妹にハル。お、全然違和感ないな」

「面白そう!朝のままごとの続きする?」

「JKと一緒にやると洒落にならないからやらない」

「じぇい、けえ?」

 

悠の誘いを片手を振りながらあしらい、敦也は再び卵焼きに手を伸ばす。

JKとやるとか以前に、この歳でやる遊びじゃないから!

 

「うーん。私的には敦也くんが旦那様がいいなあ…」

「まあ、毎日この卵焼きが食えてこのスペックなら、僕も役得だけど」

「えへへ…♪」

「…」

 

今日の涼香、だいぶ攻めるな…。

前々から敦也にアプローチをかけてるのは見ていてわかったが今のは強烈だった。

涼香が敦也に気があるのは、見ていればすぐわかる。

敦也のために弁当の卵焼きのスペース多くしたりしてるし、よく帰りに店に誘うし、後ちょいちょい休みの日に遊びに行ってるらしいし。

甘いものは逆効果になっているけど。

しかしこんな涼香のアプローチに対しても、敦也は揺るがない。

その理由はなんとも言えず。

 

「つっても、独身貴族志望の僕には縁のない話っすね」

 

いつも決まってこういう。

スペックは悪くないのに、本人はなぜか恋愛を諦めている。

青春の象徴とも言える高校生の時点で。

 

「もったいないなあ」

「なんとでも言え。ほら、さっさと食って、ままごとするぞ」

「もうそんな時間ないよ!もう少しで集合の時間だよ!」

 

この二人の進展は難しそうだ。

いつか涼香が相談者になって俺たちに相談する日がくるんじゃないか?

 

「あつやくん。今日の晩御飯、うちでカレーにしない?」

「お、いいじゃん、じゃあ帰ったら…」

 

何も知らない悠の気楽さが、今は少しだけ羨ましく思えた。




最後まで読んでいただきありがとうございます。
今日は世に聞くセンター試験がありましたが、今年も試験にネタが仕込まれていないかと、Twitterに流れてくるのを心待ちにしています。_φ( ̄ー ̄ )
受験生の方には明日も頑張って欲しいですね。
それでは次回、またお会いしましょう。
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