「うおっ、眩し…!」
カーテンを開け放つと、外から差し込む光が部屋を満たし、今まで暗い部屋にいて目が慣れてしまった俺は、反射的にそう言った。
ベッドには敦也が腰掛け、その敦也の前で正座をしている優希君が向き合っているのを見ると、どこから見ても説教をしているようにしか見えない。俺は勉強机の椅子に腰掛け、この場を見守ることにした。
「それで、ユウキ。質問なんだが…」
「な、なんですか?」
「何でこんなことしてんの、お前?」
近くにあったモデルガンを指差し、敦也が問う。
おそらく、「病気」のことについて聞いているんだろう。
「中二病にかかるのに理由なんてあるの?病気なんだから、そんなの本人にはわからないんじゃないの?」
病気というくらいなんだから、原因はあれども理由なんてないんじゃないんだろうか。
俺の質問に対して、敦也は淡々と説明をする。
「クロ。中二病ってのは確かに厄介な病気だ。でもな、その症状にかかるのは病原体が体の中で暴れたりするとかそんなもんじゃない、自分の意志でなるんだ。理由は色々あるけど、単にカッコいいからっていう奴が大体だ」
「へえ…」
どうやら俺にはわからない世界のようだ。
かっこいいから?まあ確かにアニメのキャラとか黒いコートとか着ててかっこいいとか思う時もあるけど、別に現実でやったとして女が惚れるようなかっこよさじゃないというか、自分の評価で満足したかっこよさ感が否めない気がするんだが。しかし当の本人の前でそんな否定的な事を言えるはずもなく、俺は言葉を飲み込む。
「えっと、それはその…」
「後、さっきのネットの文章。僕が知ってる限り、中二病ならああいうのは一字一句完璧に記憶して設定とかもこだわってるのが多い気がするんだけど、お前にはそれがない。ユウキ、なんか理由があってこんな事してるんじゃないか?」
「…」
俺は机の上のパソコンで中二病、と検索エンジンに入れて見た。
少しの読み込みで現れた画面には、中二病の起源からその症例についての記事が大量に記されていたが、どれを取っても、最終的に分かることは「妄想と自己愛の混ざった
あれ?あ、危ない…俺にもちょっと移ってしまった…!
「おい、移ってんじゃねーか」
「うえ!?」
声に出てた、だって…?
うわあ、恥ずかしい…!
湧き上がってくる羞恥心に顔が赤く染まり、冷や汗がいたるところから溢れ出す。妙な暑さに耐えきれず、俺はジャケットを脱ぐ。
「はあ。まあ、カッコつけるのはいいけど、姉ちゃんの前では普通にしたほうがいいぞ。学校でも、包帯巻いたり変な魔法陣とか書かないように。ましてや好きな子の前でやったら、内心何思われるかわからないからな…」
「ええぇそうなんですか!?」
黙っていた優希君が突然声を上げる。
この反応、もしかして…。
「優希君、もしかして、好きな子いるの?」
「す、好きな子!?い、いませんよそんな!」
「マジか」
分かり易すぎるその反応に、敦也が小さくこぼした。
「えー。いいじゃん!恋愛は自由なんだからどんどんやろうよ!中学校どこだっけ?」
「制服の校章を見たかんじ、第四中学校だな」
「や、やめてくださいよ!そんな、何にもないですって!」
敦也がかけてあった制服の襟を確認する。
顔が赤くなって恥ずかしそうな優希君だが、俺は恋心を抱く戦友は放って置けない。
中二病とかどうでもいい、この子の恋愛、精一杯サポートせねば!
「四中か!俺の妹も通ってるとこだ!」
「玄人さんの妹さんも四中なんですか!?」
「そうだよ!悠って言うんだけど知ってる!?」
「…ぇ!」
悠のことを知ってるのか、優希君のびくっと肩が跳ねた。
「ちなみに、玄人さんの苗字って…?」
「ん、ああ、言い忘れてたっけ。一条、一条玄人だよ!」
「…っ!一条さんの、お兄さん?えぇぇ…」
「そんなことより優希君、好きな子って同じクラス?それとも部活仲間?もしそういういつも近い位置にいるなら、俺としておすすめのシチュは…」
「落ち着け」
俺の恋愛についてのいろはを教えようとしたところへ、俺の頭に重圧がかかる。俺の頭を包むように全方向から力が加わりそれは俺の頭を締め付け始め…。
「いだだだだだだだ!!何だよ!アイアンクローは痛いからやめてって前に言ったじゃん!」
「悪かったよ。でも一回、落ち着いてユウキを見てみろ」
「ええ?よく見ろったって…」
敦也に言われ、目の前に座る優希君を見てハッとする。
「玄人さんが…一条さんの、お兄さん…」
赤みがかった優希君の顔が真っ赤になっているのを見て、俺は悟った。
「もしかして、でも、ええ?」
「そう、そのまさか」
聞きたくなかった続きを、敦也は遠慮なく言ってみせた。
「こいつ、ユウキは一条悠、ハルに惚れてる」
最後まで読んでいただきありがとうございますm(_ _)m
そろそろ中二病編も終わりそうなのでちょっと頑張って見ました。
それでは、また次の話でお会いしましょう。