「はい。じゃ部活頑張れよ。帰宅部も全国目指して励むように。さよーならっと」
ひと笑いして放課後。
新しい担任は適当だが、洒落が利いていて面白いおかげでクラスでは人気を集め始めていた。
鞄にホームルームで配られた色々な用紙をしまっていると、敦也と涼香がやってきた。
「クロ、顧問との面談だったか?早くいこうぜ」
「ああ、いこうか」
「楽しみだなぁ!」
ついでに二神さんも…
そう思って教室を見回すが、すでに彼女の姿は見当たらない。
おい、どんだけ教室出るの早いんだよ。
マジで帰宅部で全国狙えるんじゃないの。
「ま、いいか。案内するよ」
プリントをしまい終わり、俺たちはまだ賑わう教室を後にした。
「それにしても、いちいち生徒と面談したいって、そんな律儀な先生がいたとは知らなかったよ」
手提げの鞄を肩の背負って不良っぽく歩く敦也が感心するように言う。
「ああ、何でも部活内でうまくやっていけるようなやつかどうか、直接会って判断したいんだってさ」
正確には我が部の
「品定めってことか。新設の部活だから、そう言うこともあるのかね」
「でも、顧問の先生ってどんな人だろう?怖い先生だったらどうしよう…」
両手を抱いて小さくなる涼香。
喜んでテンション上がったかと思えば、ビビってテンション下がって、忙しいな。
「喜んでテンション上がったかと思えば、ビビってテンション下がって、いちいち忙しいやつだな」
俺の思考とほとんど同じことを敦也が言いだした。
なんだ、お前読心術でも極めてるのか?
「だってさ、これっていわゆる面接だよ?最悪先生が気に入らなかったら、落とされるかもしれないんだよ!?」
「何言ってるんだか。その点なら、心配いらねえよっ」
「あうっ!」
敦也の手刀が涼香の頭に炸裂する。
敦也も手加減してるんだろうが、痛そうに頭を抑える涼香が涙目で敦也を見る。
「いたた…。どうして?」
「どうしてって…考えても見ろ。部活立ち上げるのに五人、同好会で三人必要って言ってるのに、わざわざ入りたい奴落としに来るわけないだろ。それに部活はバイトや仕事じゃないんだ。部活の参加は生徒の自由意志だ。それを拒んでいいなんてことは、普通ありえないんだよ」
「…なるほど」
適当なことを言うかと思ったが、案外筋が通った敦也の意見に、俺は素直に納得して感嘆の声が漏れた。
「だから何があっても堂々としてればいい。教師からの点数なんて挨拶が元気にできれば、第一印象で稼げるからな。女なんて特に、愛嬌があればブサイクだろうがなんとでもなる」
「なんか達観してるな…」
「ねえ、敦也くん。そのブサイクでも愛嬌があればって、遠回しに私に言ってるの?」
ブサイクという言葉が引っかかった涼香は頰を膨らませて敦也を見上げていたが、敦也はそれを見ることなく平然と答える。
「いや?涼香はうちの学校でも整ってる方だろ。信じられないなら今年の十桜祭のミスコンでも出て見たらいいだろ。最終選考までは余裕で残れると思うけどな」
敦也、すげえ。
涼香、赤面。
「…っ!あ、そ、そうかな…?」
「おう、もし出るなら一票は確実だ。期待しとけ」
「え?あ、ありがとう」
「…」
甘酸っぱ!何この薔薇色な会話!
羨ましすぎるんだけど!?
俺もこんな会話したいなあ!
顔を赤くする涼香の横で、平然と歩く敦也の余裕っぷり。
俺もこんな風に打算無しに相手を褒められれば、今頃はフラグの一つでも立っていたんだろうか…?
しかしそんな敦也の表情は、保健室の前にたどり着くと同時に陰りが生じた。
「ほら、着いたよ」
「保健室?もしかして顧問って、ここの先生が受け持ってんの?」
「ああ、言い忘れてたね。そうだよ。俺たちの悩みを解決するための部活だからね。顧問も責任取って引き受けてくれたんじゃないかな」
「そうなのか…」
何故か先ほどまでどっしりと構えていた敦也が少し落ち着きをなくしていた。
「ええっと、と言うことは顧問の先生って…」
気づくと涼香も固まっていて、ランドセルを背負う小学生のようにリュックの肩のベルトの部分を固く握り締めていた。
「涼香、いいのか悪いのかわからないけど、とりあえず大丈夫そうだな…」
「そうだね、敦也くん…」
「ん?まあいいや。いくよ?」
ノックをして、向こうから五十嵐先生の「は〜い」という返事が聞こえたので、ドアを開ける。
「失礼します。昨日言ってた、入部希望の件で、二人集まったので顔合わせに来たんですけど」
「あ!そうだったわね!それじゃ、隣の部屋に移りましょうか」
先生は少し嬉しそうに、保健室とカウンセリング室をつなぐ扉を開けて隣の部屋に移った。俺たちは廊下側から、隣のカウンセリング室へ足を踏み入れる。
「それで、その子達は?どうして入ってこないの?」
「え?」
一緒に入ったと思っていた二人はまだ廊下にいて、教室に入ろうとしない。
「どうしたんだ?入ってこいよ」
「失礼します…」
その呼びかけから少しして、涼香がひょこっと入り口顔を出す。
「…えっと。俺
「涼香ちゃんじゃない!久しぶりねぇ!」
俺の紹介が終わるよりも先に、先生は涼香の前に駆け寄り、そして抱きついた。
「うわぁ!もう先生!子どもじゃないんですから、抱きつかないでくださいよ〜」
「ずっとこないから、心配してたのよ〜」
「え、えっと…」
突然の出来事に戸惑う俺。
何?涼香さん?面識あったの?
その戸惑いに追い討ちをかけるように、敦也が面倒そうに教室に入ってくる。
「全く。やっぱり
「おお、誰かと思えば敦也くんも!?一条くん、随分と良いカードを引いたわね!合格よ!」
「え?え?え?」
戸惑う俺を見た敦也が俺の隣にやってきて手短に説明する。
「実は僕たち一年前から、面識あるんだよ」
「…は?」
俺にそれだけ言って、涼香に抱きつく五十嵐先生に敦也は頭を下げた。
「ご無沙汰してます、先生。…形式的な挨拶はこんなもんでいいだろ。久しぶり、梨紗姉」
「うん、ご無沙汰です♪」
「先生、そろそろ離して…!」
「ええぇぇぇ…」
顔合わせの場が、一瞬にして感動の再会の場になり、俺は敦也の言葉に対して、ただ驚きの音を垂れ流すことしかできなかった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
ルビの振り方について調べて見たら結構簡単にできたので、今までの話でも振り直して見ました。
これで当面の名前の読みにくさは解決して、ルビが振れたので人物紹介をする必要がなくなってしまいましたが、これについては読んでいただいた方からのご要望があるか、自分が書きたくなったら書くことにします。
何かご意見ご要望などございましたら、お気軽にお声掛けください。
それでは、また。