「うわ!」
ニティアの視界は突然開けた。
異世界の上空4000mに放り出されたからだ。
「え?!何処ここ!?」
ニティアは戸惑いながらも、状況を把握すべく周りを見渡した。
そして、彼女は生まれて初めて、光に照らされた世界というものを見た。
雄大な森に、天幕に覆われた巨大な都市、そして世界の果ての大瀑布。
彼女はその美しさに息をのみ、魅力された。
「きれい……」
元の世界において、景色と言えるものは、深い暗闇と心許ない火が届く範囲のものしかなかった。
彼女はその光景に心奪われているうちに、四千メートルの落下は終わりを迎え、
ボチャーン
湖に落ちた。
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途中にあった水膜で勢いが衰えていたため、落ちてきた四人は無傷で着水することが出来た。
が、一人着物を着て、泳いだこともなかったニティアは―
「ブクブクブクブク……」
―当然の様に溺れていた。
「だ、大丈夫?」
そんなニティアを見かねてか、猫を抱えた少女がニティアの腕を引っ張り上げて呼吸が出来るようにしてくれていた。
「う、うん。ありがとう。…ごめんね?」
「ううん、コレくらいならまだ平気。捕まって。岸までつれていくから」
ニティアは、猫を抱えた少女に捕まり、陸地まで連れてってもらった。
服を絞りながら、ニティアは礼を言う。
「本当にありがとう。先は助かったよ」
「…あれぐらいなら平気だから気にしないで」
「いやいや、気にするよ。いつか必ず恩はかえすから、期待して待ってて!」
「うん、じゃあ楽しみに待ってる」
受け答えの後、猫を抱えた少女は、ポツリと疑問をもらした。
「此処……どこだろう?」
「さあな。まあ、世界の果てっぽいものが見えたし、どこぞの大亀の背中じゃねえか?」
その疑問に、ヘッドホンをつけた金髪の少年が答える。
「まず間違いないだろうけど、一応確認しておくぞ。もしかしてお前達にも変な手紙が?」
「そうだけど、まずは“オマエ”って呼び方を訂正して。―私は久遠飛鳥よ。以後は気を付けて。それで、そこの猫を抱きかかえている貴女は?」
「……春日部耀。以下同文」
「そう。よろしく春日部さん。じゃあ、そこの絢爛な着物を着た貴女は?」
「私は、ニティア!好きなことは皆と笑うこと!よろしくね!」
「ええ、素敵な趣味ね。よろしくねニティアさん。最後に、野蛮で凶暴そうなそこの貴方は?」
「高圧的な自己紹介をありがとよ。見たまんま野蛮で凶暴な逆廻十六夜です。粗野で凶悪で快楽主義と三拍子そろった駄目人間なので、用法と容量を守った上で適切な態度で接してくれお嬢様」
「そう。取り扱い説明書をくれたら考えてあげるわ、十六夜君」
「ハハ、マジかよ。今度作っとくから覚悟しとけ、お嬢様」
この時点での四人は正に四者四様だった。
心からケラケラと笑う逆廻十六夜。
傲慢そうに顔を背ける九遠飛鳥。
我関せず無関心を装う春日部耀。
そして、そんな彼らを見て微笑むニティア。
そして、物陰から彼らを覗いている五人目―黒ウサギは思う、
(うわぁ……問題児の割合、高くないですか……)
と。
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「で、呼び出されたはいいけど何で誰もいねえんだよ。この状況だと、招待状に書かれていた箱庭とかいうものの説明をする人間が現れるもんじゃねえのか?」
「そうね。なんの説明もないままでは動きようがないもの」
「……。この状況に対して落ち着き過ぎているのもどうかと思うけど」
「そこまで慌てるような状況でもないよ。だって、もう人来てるっぽいし」
ニティアは何でもないように、黒ウサギが隠れている物陰を指差す。
暗闇の世界に生きてきた彼女にとって、人の気配読むことなどさほど難しいことでもなかった。
「そうだな、そいつから話を聞くことにするか」
「なんだ、貴方達も気づいてたの?」
「まあ、私の世界はこんなに明るくなかったからねえ」
「当然だ。かくれんぼじゃ負けなしだぜ?それに、そっちの猫を抱いてる奴も気づいてたんだろ?」
「風上に立たれたら嫌でもわかる」
「……へえ?面白いなお前」
軽口を叩いてている彼らだが、ニティア以外の三人は理不尽な召集を受けて怒り、殺気の篭った冷ややかな視線を物陰に向けた。
ニティアは、落下最中にきれいな景色を見たため、さほど怒りはないようだ。
「や、やだなあ。そんな狼みたいな怖い顔で見られると黒ウサギは死んじゃいますよ?ええ、ええ、古来より孤独と狼はウサギの天敵でございます。そんな黒ウサギの脆弱な心臓に免じてここは一つ穏便に御話を聞いていただけたら嬉しいでございますヨ?」
「断る」
「脚下」
「お断りします」
「無理そうだね」
「あっは、取りつくシマもないですね♪」
「穏便に済ませたかったのなら、もっと早く出てきた方が良かったと思うよ?」
ニティアの問い掛けに対し、黒ウサギは咄嗟に答えることができず、言葉を必死に探した。そのせいで、
「そ、それは此方にも事情があったと言いますか~、えっと、
「えい」フギャ!」
春日部耀が黒ウサギの耳を鷲掴み、引き抜こうとしてることに気が付かなかった。
「ちょ、ちょっとお待ちを!触るまでなら黙って受け入れますが、まさか初対面で遠慮無用に黒ウサギの素敵耳を引き抜きにかかるとは、どういう了見ですか!?
」
「好奇心の為せる業」
「自由にも程があります!」
「へえ?このウサ耳って本物なのか?」
「……。じゃあ私も」
「ちょ、ちょっと待――!」
十六夜が右を、飛鳥が左を、力一杯引っ張られた黒ウサギは言葉にならない悲鳴を上げた。
そして、ニティアに助けを求めるも、
「流石に、どうにもできないかなぁ」
苦笑いとともに、そう言われ断られてしまった。
黒ウサギの、絶叫は暫く、森林に響き渡り続けた。
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「あ、あり得ない。あり得ないのですよ。まさか話を聞いてもらうために小一時間も消費してしまうとは。学級崩壊とはきっとこのような状況を言うに違いないのデス」
「いいからさっさと進めろ」
辛辣な言葉ではあるが、先程までと違い話を聞こうという姿勢になっているため、黒ウサギは気を取り直して、話を始める。
それは“箱庭”という世界の説明だった。
“ギフトゲーム”や“コミュニティ”、“主催者”のことなどを話し、出てくる質問にもテンポよく答えていった。
暫くして、黒ウサギはある程度の説明を終えたのか、一枚の封書を取り出した。
「さて。皆さんの召喚を依頼した黒ウサギには、箱庭の世界における全ての質問に答える義務がございます。が、それら全てを語るには少々お時間がかかるでしょう。新たな同士候補である皆さんを何時までも野外に出しておくのは忍びない。ここから先は我らのコミュニティでお話させていただきたいのですが……よろしいです?」
「待てよ。まだ俺が質問してないだろ」
今まで静聴してきた十六夜からの言葉に黒ウサギは身構えた。
「……どういった質問です?ルールですか?ゲームそのものですか?」
「そんなことはどうでもいい。腹の底からどうでもいいぜ、黒ウサギ。ここでオマエに向かってルールを問いただしたところで何かが変わるわけじゃねえんだ。世界のルールを変えようとするのは革命家の仕事であって、プレイヤーの仕事じゃねえ。俺が聞きたいのは……たった一つ、手紙に書いてあったことだけだ」
「この世界は……面白いか?」
九遠飛鳥と春日部耀もこの質問に食い付く。
世界の全てを捨ててまで来る価値が果たしてこの世界にあるのか?という質問は三人にとって一番重要なことだった。
「――yes!『ギフトゲーム』は人を超えたものたちだけが参加できる神魔の遊戯。箱庭の世界は外界より格段に面白いと、黒ウサギは保証します♪」
ニティアのキャクラターが上手く掴めていない為、暫く影は薄めかもしれませんが、ご容赦をm(__)m