では第2話です。今回はあいつと出会います。そう、原作読者、アニメ視聴者にトラウマを植え付けたあいつです。
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俺は目が覚めるとカーテンと窓を少し開け、空を見た。空は少し暗めの青い色をしていた。午前4時半ごろといったところか。日が昇るまでそう時間はかからないだろう。サヨと二クスはまだ寝ている。ランニングがしたい気分だが、二クスが起きた時に俺がいなかったらまた拗ねるだろうし、かといって俺の気分で気持ちよさそうに寝ている小鳥を起こすのは気がひける。
「筋トレでもしとくか……」
俺は上を脱ぎ、半裸になり、右手の親指で指立て伏せを始める。100回やると指を変えていき、片手五本分終わると、次は腕を変えてまた同じように100本ずつやっていく。これは修行時代から毎日の日課にしている。
今の間にサヨと二クスがなぜ一緒に寝ているかを説明しよう。
昨日拗ねた二クスをいつもの調子に戻せたのは、実はサヨのおかげなのだ。俺が何を言っても機嫌を直さない二クスに困り果てている時に、部屋の外にいたサヨが入ってきて
「どうしたの?わぁ‼︎可愛い小鳥‼︎この子って昼間も一緒にいた小鳥だよね?可愛い〜♡」
と目を輝かせ、二クスを手に乗せ、頬ずりをした。
「そいつ、俺がそいつの寝ている間に外出したのを知って、自分も行きたかったって拗ねてるんだ。」
「え⁉︎そうなの⁉︎可愛い〜♡ 拗ねてるの?」
そうサヨが二クスに話しかけると…
「キュ、キュイ〜‼︎」
二クスがサヨの手から勢いよく飛び立ち、サヨの頭の上を嬉しそうに高速で回り出した。
「え⁉︎どうしたの⁉︎」
「嬉しいんだろうよ。俺以外の人に話しかけられたの初めてだからな。」
理由はそれだけじゃないだろう。こんな可愛い子に顔を近付けられたら男なら誰だって喜ぶ。それにしても二クス、こいつ男だったのか…知らなかった。
「そんじゃ、ぼちぼち寝るとするか。」
「ねえ、この子名前はなんていうの?」
「そいつは二クスだ。」
「二クスちゃんか……二クスちゃん、いっしょに寝よ〜」
「キュイ‼︎」
二クスは頭上から降り、再びサヨの手の上に乗った。こいつ、完全にサヨに懐いたな…元々人懐っこいやつなのか、それともサヨだから懐いたのか。
「サヨは二クスとベッドで寝てくれ。」
「え?じゃあレイジはどこで寝るの?」
「うーん…床かな」
「そんなのダメ‼︎ただでさえ今日ずっと助けてもらってるのに‼︎そんなの絶対ダメ‼︎」
サヨの気持ちも分からないわけではない。俺も向こうの立場なら同じようにベッドで寝るよう頼んだだろう。だが俺も男だ。レディを床で寝かせるなんてことは絶対に出来ない。
「見たところ俺より君の方が疲れている。それに俺の中の『漢』が君を床で寝させて俺がベッドで寝るなんて行為を許さん。」
「でも…」
「でもじゃない。さ、早く寝て明日に備えよう。」
「うん…」
サヨはまだ納得していないような顔をしていたが、ベッドに横になり、自分の枕の上に二クスを乗せると、すぐに寝てしまった。
これが昨日この部屋であったことだ。
「んん……ふああ〜」
お、丁度起きてきたようだ。俺も朝の日課は終わったし、本当に丁度いい。
「ん、んん……あ、レイジもう起きてたんだ…おはよう。」
「キュ、キュイ……」
「二クスちゃんもおはよう。」
サヨは完全にもう起きているが二クスはまだ少し眠そうだ。
「今日は取り敢えずこの部屋に花を置くのと、この帝都の探索、あとついでにサヨの職探しかな。」
「ちょっと、ついでってなによ。私にとっては死活問題よ⁉︎」
「ハハハッ」
サヨは頰を膨らましている。日はもう昇り、宿の前の道路には人が増えてきていた。
「とりあえず朝食にするか。」
「キュイ‼︎」
さっきまで眠そうな目をしていた二クスが急に目を輝かせて俺の肩に留まる。欲望に忠実だな……
俺たちは宿を出て、近くの軽食屋で朝食を食べ、昨日見つけた花屋に向かった。
サヨside
もう‼︎こっちは死活問題なのについでってなによついでって‼︎
私は少し不機嫌なのだが……
「キュイ〜」
二クスちゃんのこの愛らしい姿の前では自分は不機嫌だということを忘れてしまう……
「着いたぞ。すいませーん。」
「はいいらっしゃい。ちょっと待ってねぇ、すぐ行くからねぇ。」
レイジが店の中に呼びかけると、腰の曲がったお婆ちゃんが店の中から出てきた。
「おぉ、これはこれはお若いカップルだねぇ。今日はこの古びた花屋に何用かな?」
「ッ‼︎そんな!カップルだなんて!」
「悪いね。俺たちはカップルじゃないんだ。今日は泊まっている宿の部屋が殺風景なもんだから何か花でも置こうと思ってね。」
そんな少しも動揺せずに否定されるとちょっと傷つくな…にしてもこのお店、色とりどりの花が置いてあって、見てるだけでも気分が明るくなる。それにお婆ちゃんの優しい笑顔も凄い落ち着く。
「ほぉ、そうかいそうかい。じゃあどんな花がいいかねぇ。」
「そうだな……これがいいな。」
レイジは綺麗な紫色の花の鉢植えをとり、お婆ちゃんに渡した。
「これでいいのかい?」
「ああ、この花が気に入った。」
「そうかい、それじゃお会計しようかね。……実はこの店、そろそろ閉じようと思っているんだよ。最近は不景気で花を買ってくれる人が減ってしまってねぇ、それに私ももう歳だしねぇ。そろそろ引き側なのかねぇ…」
お婆ちゃんは少し悲しそうな顏をしている。この帝都からこのお婆ちゃんのお店が消えるのだけはダメ‼︎私はなぜかそう思った。
「私、ここで働きたいです‼︎花も色とりどりで見てるだけでも気分が上がるし、私、帝都に来たばかりだけど、お婆ちゃんの笑顔がここから消えたらダメな気がするんです‼︎だからお願いします‼︎お給料少なくても大丈夫です‼︎ここで働かせてください‼︎」
「……でも……いいのかい?ここじゃなくても帝都には沢山お店あるよ?」
「ここがいいんです‼︎」
「お給料そんなに出せないよ?」
「大丈夫です‼︎」
お婆ちゃんの顏が、悲しみの顏から最初に見た笑顔に変わった。
「じゃあ、お願いしようかねぇ。こんなこと言う子、初めてだよ。お婆ちゃんも元気出たよ。ありがとねぇ。」
「はい‼︎レイジ、私ここで働く‼︎連れて来てくれてありがとう‼︎」
「お、おう。俺はただ花を買いに来ただけだけどな。」
これから本当に帝都での生活が始まる。甘くはないと思うけど絶対成功して村を救うんだから‼︎
レイジside
俺は花屋で花を買った後、二クスと宿に戻った。サヨは今からすぐに働くらしい。最近良いのか悪いのか、段々この帝都のドス黒い気に慣れてきてしまい、相手の気を探ることが出来るようになってきた。それで花屋の老婆の気を探ったところ、悪意の欠片もない暖かく優しい気をしていた。こんな気を持った人の運営する店だ。サヨも気持ちよく働くことが出来るだろう。
そんなことを考えつつ、窓の前に花を飾って見た。うん、花の鉢植えが一つあるだけで部屋の雰囲気がガラリと変わる。俺は花に水をやると、再び二クスを連れ帝都の探索を始めた。
5時間くらい経っただろうか、帝都を見てまわることに夢中になっていると、道に迷ってしまった。飛んでサヨの気がある場所まで行き、そこからまた探索するのも良いが、それだとかなり目立ってしまい、探索どころではなくなってしまう。さてどうしようか……困ったぞ……
「二クス、どうしよう……夜までに帰れないかもしれん……」
「キュイ……」
「ややっ‼︎私の正義センサーに反応アリ‼︎そこな君、何かお困りですかな?」
防具を着たポニーテールの少女が俺に話しかけてきた。歳は俺と同じくらいに見える。
「……あんたは?」
「帝都警備隊セリュー、正義の味方です‼︎」
「キュウウン」
セリューの近くで鳴く、犬のような生物を発見した。
「それは?」
「この子は帝具【ヘカトンケイル】です。ご心配なく、悪には無害ですから。」
帝具持ちの警備隊員、そしてセリューという名前、あの正義に狂った狂女か。記憶力に自信があるといっても10年以上前のことだ。もうほとんど『アカメが斬る!』の話の内容はほぼ覚えていない。覚えていることと言えばナイトレイドという殺し屋集団の存在と悲劇の再開を果たした主人公とその仲間、イカれたサド貴族くらいなもんだ。今回この狂女のことを思い出せたのも奇跡だ。
「ところで何を困っていたんです?」
「いや〜道に迷ってしまって。さっきまで昼飯を食べていた店は覚えているんだが……」
「それは大変!パトロールがてら送りますよ。店の名前は?」
「鳴桜亭。」
「鳴桜亭はこっちです。逸れないでくださいね!」
セリューは俺の手を引き、先を急ぐ。
「そういえば、なぜ警備隊員が『帝具』を?」
「コロちゃん…あ、私が付けた名前なんですけど、この子は相性が良くない使い手だと動こうともしないんです。上層部には使えるがいなくて、私達ヒラまで適性検査を受けまして、その時私の正義の心にこの子が応じてくれたんです。だから今では私の相棒なんですよ。ね、コロちゃん‼︎」
「キューッ♡」
「さっきから聞いてて思ったんだけどさ、
あんたの正義ってなんだ?」
俺は立ち止まると、掴まれてた手を振り払い、セリューの話を聞いてる時に抱いた疑問を投げかけた。
「私の正義ですか?それは悪を消滅させることです!殉職したパパが言っていました!正義は悪に屈してはならないと!」
「ならあんたにとっての悪ってなんだ?」
「市民に危害を加える賊です!ナイトレイドを筆頭とする帝国を脅かす輩は全員悪です!」
「なるほどな……市民に危害を加える輩は悪だと……そう言うんだな?」
「はい‼︎」
「ということはお前は悪を消滅させると言っておきながら悪に仕えているというわけだ。面白すぎて笑えねえよ。」
「ん?帝国は正義ですよ?」
「ならなぜ帝国は不況なのにお前ら警備隊の上層部や軍の連中はあんなに裕福な暮らしをしている?なぜ地方の村が重税で苦しんでいるのに貴族どもは何不自由なく生活できている?」
「それは……」
「それに今日、市民に危害を加えている貴族や軍人を何人も見た。路地裏であんたと同じ格好をした奴が貴族から金を受け取っているのを何回も見た。確かにこれだけで全体が悪だというのは愚かだ。賊も大半が極悪非道の連中だ。だがな、市民や地方の村人が苦しんでいる中、自分の権力を過剰に乱用して私腹を肥やしている奴がいるんだよ、大勢な。中には権力者に目をつけられ、賊に仕立て上げられて処刑された善良な市民もいただろうよ。これでもまだ自分が仕えている帝都は正義だと言えるのか?」
俺は自分が思った事を全て吐き出した。セリューは顔を下に向けている。
「嘘だ……嘘だ嘘だ嘘だ‼︎そんな筈は無い‼︎帝国は正義だ‼︎賊は全て悪だ‼︎そんな非道な連中が警備隊や軍にいる筈がない‼︎」
「だがこれが現実だ。」
「そんな筈はない‼︎」
「なら今日警備隊の宿舎に帰った時にでも隊長に聞いてみろよ。
……もうここまで来たら道はわかる。ここまで連れて来てくれてありがとうな。あんたの正義の心は確かに伝わった。だが自分の正義を振りかざす相手を間違えるな。」
「ッ‼︎待ちなさい‼︎」
セリューが顔を上げると、そこにはもうすでに俺の姿はなかった。
俺は遥か上空でセリューがその場から走り去るのを見ると、近くの路地裏に急降下し、また探索をした。
日が傾き、空がオレンジ色になったのを見ると、俺は帰路についた。丁度サヨも仕事を終えたらしく、帰りにばったり会い、夕飯を一緒に食べ、宿に戻った。もちろん今日からはサヨとは別の部屋だ。本人は少し残念そうだった。なぜだ?まあいいか。
俺と二クスはそのまま部屋に入り、今日見た事を振り返り、それが終わるとすぐに寝た。
月は少し欠けている。満月まで数日といったところか。
セリューside
私はパトロールを終え、隊長と組手をしていた。
あの人なんだったんだろう…確かに言っていることは筋が通っていた。だけどこの帝国が悪だとは思えない‼︎もしかしてあいつは賊⁉︎
「おいセリュー、今日は全く気合が入っとらんぞ。なんかあったか?」
「いえ……その……隊長の正義って何ですか?」
「どうした急に、まあいい。俺の正義は俺自身だ‼︎俺が正しいと思ったことは全て正しい‼︎俺が悪だと思ったものは全て悪だ‼︎」
「それが隊長の正義ですか?」
「ああそうだ。そうだ、セリュー、今日はお前にいいもん見せてやるよ。」
「いいもの……ですか?」
「ああ……今日はこれで訓練終了だ。着替えて10分後に俺の部屋に来い。」
「は、はい‼︎」
私は着替えて隊長の部屋に向かった。
「セリュー、只今到着いたしました‼︎」
「おう、俺の横にいろ。もうすぐ来るぞ……クックック」
隊長が奇妙な笑い声を上げていると、部屋に、背の低い、蛙のような顔をした中年くらいの男が入って来た。
「オーガさん、この娘は?」
「ああ、俺の部下でな、少し勉強させようと思ってな。さて、さっさと出せよ
「全く人が悪い。こんな可愛い娘をこちらに引きずり込むなど……はい、今回の分です。」
「隊長、これは……?」
「あ?こいつは度々事件起こすからよ、その度に金で他の誰かに代わりに償って貰ってんだ。なあ?」
「これをやっている時点でオーガさんも同罪ですよヒャッヒャッヒャ‼︎」
「クックックックック、やはりこれは辞められんな‼︎」
何が起こっているの?今自分の目の前で……え?オーガ隊長が賄賂を……?なんで……?あの人が言っていたこと……本当なの……?
「いいかセリュー、これが俺の正義だ‼︎俺が正しいと思ったものは全てが正しい‼︎ギャッハッハッハッハ‼︎これ誰にも言うなよ?」
「……は……はい。」
私は……これから……どうすれ……ば……?
私はその後力なく自分の部屋に戻っていった。
サヨは花屋に就職しました。
今後セリューがどうなるか、ご期待ください。