戦国†恋姫~水野の荒武者~   作:玄猫

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今回も少し短めですが、丁度いい区切りだからです。
次回からまた文字数が増えますのでご安心(?)を!


14話 葵の選択、藤十郎の選択

「藤十郎っ!!」

 

 葵の周囲には悠季しかいないからだろうか、感情を隠すことなく藤十郎に抱きつく。

 

「心配かけたな……葵」

「……久々に名前を呼んでくれたわね」

「色々思うところがあってな。人前では簡便してくれると助かる」

「……して、藤十郎どの。感動の再会の中真に申しわけないのですが……何者ですかな、この者は」

 

 悠季が少し頬を引きつらせながら藤十郎の背後に立っている鬼の面をつけた女を指さす。

 

「あぁ……諸事情でこれから俺の槍となってくれる……」

「桐琴だ。ほかの名はいらぬ」

「桐琴……?まさか、森の……」

「桐琴だ。ワシは藤十郎の言葉しか聞かぬ。そこのワカメ娘も覚えておけ」

「なんですとー!?」

 

 軽く説明をする藤十郎。内容を聞き終わり葵が静かに頷く。

 

「……分かりました。それなら藤十郎、彼女は貴方が責任持って使いなさい」

「あぁ」

「ほう、松平の小娘は分かっておるな」

「裏切りの危険はないので?」

「はっ!ワシを舐めてもらっては困る。藤十郎の敵でなければ裏切らぬ」

「ならば安心ということですな」

 

 悠季がうんうんと頷く。

 

「……藤十郎、これからの私たちの動きを説明するわ。悠季」

「はっ。まず……これからの我らの動きですが、織田……いえ、新田剣丞中心の同盟に……我らは参加しないことを決めました」

「ほぉ……」

 

 桐琴がなにやら納得した様子で頷く。

 

「それで大丈夫なのか?……これからのことを考えれば……」

「はぁ、それを藤十郎どのがいいますか。まったく葵さまが家中の者を説得するのにどれだけ苦労を……」

「ちょ、ちょっと悠季!今それはいいから!」

 

 葵が慌てて止める。

 

「こほん。とはいえ、実際に事を起こすのは鬼の大規模討伐が終わった後のことよ。そして、そのときが来る事を見越して一つの手を打っているわ」

「それは?」

「……それには今の状況を知ってもらう必要があるわね」

 

 

「はっはっはっ!あの孺子、やはり傑物だったか!!」

「まさか、長尾、武田の両家まで蕩しやがったのか」

 

 笑う桐琴と、呆れたように頬を引きつらせる藤十郎。

 

「つまりは、織田と『敵対』すれば、長尾、武田の両家とも同時に戦う……全方向が敵ということになりますな」

「だから、手を打ったの。……関東の覇者、北条と手を組むわ」

「……北条は甲相駿三国同盟を結んでいたり、確か長尾には血族がいなかったか?」

「それなら、問題ありますまい。北条もまた、新田剣丞を中心とした同盟には加わらぬ、と。自らの地盤を更に固めていくようですな」

「先を見越しているということだな。……その件は後にするとして、まだ何かあるのか?」

 

 悠季が力強く頷く。

 

「こちらが本題、といったところですな。……これは某よりも葵さまから」

「えぇ。……これより、私は松平元康改め……徳川家康を名乗ります」

「それに伴い、葵さまは従五位下・三河守を叙任。名実共に三河の支配者となられたということです!」

「それは……今川と、本当の意味での決別と覚悟、だな」

「……えぇ。綾那と歌夜、小波には今は剣丞さまと一緒に居て貰っています。直接ではなくとも、松平の……いいえ、徳川の武を天下に知らしめる為に」

「それも今後の方針というわけだな。……それで、鬼は動くのか?」

 

 

 夜。藤十郎は約束を果たすべく悠季と杯を交わしていた。

 

「鬼の本拠は京、そして首魁はエーリカ。ふむ、あのとき感じた違和感はこれか。だが……駿府屋形までもが鬼の居城となっているとはな」

「違和感、とは?」

「あのエーリカという女と初めて会ったときだ。遥か格上……小さい頃に酒井の婆さんに扱かれたときを思い出したよ。人じゃない、というか明らかに俺じゃ勝てんよ」

 

 杯が空になったのを見て悠季が酌をする。

 

「……藤十郎どのでも勝てぬと?」

「う~む。なんとも言えんな。刀が通じるのであれば負ける気はないが……鬼を操る相手とは戦いたくないのも事実だ。それが無尽蔵に増やしていけるものなのであればな」

「厄介ですなぁ。まぁ、まずは目の前の駿府屋形でございましょうが」

 

 駿府屋形を落とし、今現在鬼の首魁と見られているのが武田信虎。甲斐武田の先代にあたる人物だ。烈火の如き気性で武者としては恐ろしいほどの腕であったというが。

 

「鬼になった武者、ね。俺や綾那、桐琴であれば狩れるだろうな」

「ほほぅ。気になっていたのですが、桐琴どのはどれほどの腕前で?」

「御家流、御留流を抜きにすれば俺と同等かそれ以上。綾那よりは下かも知れんが」

「従妹どのは頭はアレですが、武者振りは認めております故。藤十郎どの以外の言うことを聞かないというのは厄介ですが、これからの戦いでは頼りになりそうですな」

「あぁ。それは保障する」

 

 言葉を交わしながら、藤十郎が返杯する。

 

「……いやはや、藤十郎どのの合流が遅れたときはどうしたものかと思いましたぞ。しかも今回はかなりの長期間でしたからな」

「それはすまん。俺も桐琴も動けるようになるまでにかなりの時間がかかったからな」

「剣丞どのの元で武を振るえと言ってもあの綾那が聞き分けず、説得するのに苦労したのですぞ」

「……そうか」

 

 未だに自身の無事を伝えることができていない綾那、歌夜、小波。彼女たちともまもなく合流することになる。

 

「心配ですかな?」

「そうだな。……剣丞に蕩されてなければいいが」

「へ……?はっはっはっ!藤十郎どのは面白いことを仰りますなぁ!ご自身のことを棚に上げて!」

「?」

「……本気で分かっておられぬ様子。藤十郎どの、一つだけ某から忠告がありますぞ」

「何だ?」

「此度の葵さまの決断。徳川家康として家中を纏めることも、剣丞どのを中心とした連合からの事実上の脱退……まぁこちらは予定ですが。この両方が、たった一人の為に行われている、ということです。藤十郎どの、悠季からの頼みです。葵さまのこと、どうかお頼み申します」

 

 真剣な顔で酒を置き、丁寧に正座での礼をする悠季。

 

「……あぁ、何があろうと俺は葵を守ると誓う。その為の準備もしてきた」

 

 胸元から一枚の書状を出すと、悠季へと差し出す。

 

「……!これは……」

「母上に今日お会いして書いてもらった。俺が頼んだら笑っていたよ」

「……忠重どのが」

「家なぞいつでも譲ってやった。お前の覚悟があるかを試していただけだ、とさ」

「家督を勝成に譲る、ですか。あの忠重どのがとは正直思えないのですが」

「母上に言われたよ。覚悟が出来たのなら、早く幼馴染の一人くらい娶れと」

「それはそれは……聞く者が聞けば謀反人扱いされてしまいますぞ」

「俺の具足、母上が作ってくれていたものに少し手を加えた。水野の家紋と……もう一つ。明日見せる」

 

 

 次の日、二人の『鬼』が家臣団を引き連れて葵の前に姿を現す。

 

 片方は漆黒の鎧に身を包み、背には真紅の外套。外套の紋は織田から授かりし永楽を逆にした裏永楽。面頬はまるで鬼か般若の口元を模したかのような形をしている。腰に佩いた正宗と、背に負った朱槍。現水野家棟梁となった水野勝成である。

 もう一人は今までと大差ない服装に見えるが、背には同じく裏永楽。新たな槍には水野の家紋。失った腕を隠すことなく堂々と歩いてくる彼女こそ桐琴。いまや名を捨て家を捨てた無頼人である。

 

「待たせたな」

「え、えぇ。藤十郎、気合が入っているわね」

「あぁ。葵の覚悟、しかと受け取った。だから、俺も今一度、此処で誓おう!」

 

 後ろに付き従っていた水野家の家臣が葵の旗印である葵の御紋、そして厭離穢土(おんりえど)欣求浄土(ごんぐじょうど)の文字。

 

「葵が目指す天下は争いのない平和な世だ、そう言っていたな」

「えぇ、そうよ。それこそが私の目指す……目指す天下」

「何れは俺たち武辺者がいらぬ世が来るだろう。だが、それの何が悪い!自らが愛する民が、自らが愛する相手が幸せな世。それこそが葵の、徳川家康の目指す世だというのならば、俺はその天下を手にする為に槍を振るおう!」

 

 藤十郎が膝を突くのと同時に桐琴も、家臣団も膝を突く。

 

「水野家棟梁、水野勝成が、藤十郎が。我が魂の全てを捧げ、家康公の覇道を成し遂げると此処に誓う!!槍が折れれば太刀を振るい、太刀が折れれば拳を振るおう!万難を排して道を作ろう!」

 

 立ち上がり、静かに葵の目の前へと歩を進める。

 

「……葵、俺はお前と共に生き、未来が見たい。葵が夢を見、その生涯を賭けて創り上げる明日を」

「藤十郎……」

「葵、全てが終わった後……俺と祝言を挙げてくれ」

 

 

 ……次の瞬間、場が歓声に包まれた。




サプライズプロポーズの先駆け(ぉぃ

と、いうわけで葵さまが松平元康から徳川家康へと進化しました!
藤十郎が演説キャラみたいになっている気がする今日この頃です。
作中で北条の名前だけ出てきましたが、戦国†恋姫Xで追加されたキャラです!
タグ追加したほうがいいかな……?

史実の流れなど一切無視した形になっていきますので、お嫌いな方はご注意を!

UA6000、お気に入り100突破記念(?)で閑話を書きます。
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