戦国†恋姫~水野の荒武者~   作:玄猫

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題名で誰と誰の戦いが起こるか予想できますね(ぉぃ


21話 桐琴と小夜叉、藤十郎と剣丞

「「はあああああっ!!」」

 

 桐琴と小夜叉の戦いは熾烈を極めた。互いに加減のひとつもない、突きの一つ一つが必殺の一撃。激しい攻防は拮抗していた。

 

「成長したな、クソガキ!」

「はっ!裏切ったテメェに褒められても嬉しくねぇ!!」

 

 桐琴の言葉を切って捨てる。それと同時に放たれた一撃が桐琴の左腕を掠める。

 

「ちっ、はずした……!?」

 

 小夜叉の槍は腕を掠めたが、その槍はしっかりと桐琴の漆黒の篭手から伸びる無機質な指によって掴まれていた。

 

「な、何だよ、その腕!」

「ん、あぁこれか?藤十郎に救われる前に鬼に奪われてな。代わりの絡繰だ」

 

 ぐいっと槍を引く桐琴。小夜叉の身体ごと引き寄せる形になる。近づいてきた小夜叉に対して篭手で殴りかかる。それを小夜叉は頭突きで受ける。

 

「舐めんなっ!」

 

 篭手に対して生身で頭突きをしたからか、額から血が流れる。それを無造作に拭うと再度槍を構える。

 

「いくぜぇ!!御家流」

「ふん!御家流」

 

 小夜叉の構えに対して桐琴も同じように構える。二人とも槍の穂先が激しく輝きを放つ。

 

刎頸二十七宿(ふんけいにじゅうななしゅく)!」

「森羅万勝!!」

 

 桐琴は地面に槍を突き刺し、小夜叉は光を纏った槍を桐琴に向けて繰り出す。地面が裂け、湧き出る光が小夜叉を襲う。

 

「はあああああっ!!」

 

 体中を傷だらけにしながら突撃する小夜叉。

 

「そう、言い忘れたが」

 

 小夜叉の槍が桐琴に届こうかというその瞬間。

 

「ワシの篭手は特別製でな」

 

 ガチャリという音と共に篭手から禍々しい気が放たれる。

 

「殺してきた鬼の数だけ、硬度が増すのだ」

 

 二十七人の頸を一瞬で刎ねたといわれる小夜叉の一撃を篭手で悠々と弾き、篭手から漆黒の気を放ち小夜叉に叩きつける。

 

「ぐっ!!」

 

 グラリと身体が揺れる小夜叉。右の拳で容赦なく桐琴が殴りつけ吹き飛ばす。

 

「まだまだ甘いな。言ったはずだぞ、最後まで気を抜くなとな。でなければ、クソガキもまた獲物に過ぎんわ!ふん、次は孺子だな」

 

 小夜叉に対して吐き捨てるように言った後、呟いた一言に地に伏していた小夜叉の手がピクリと反応する。

 

「……待てよ」

 

 槍を杖代わりにつき、立ち上がる小夜叉。

 

「何だ、まだ何かあるのか?」

「剣丞をどうするつもりだよ」

「知れたこと。……孺子が消えれば、連合は瓦解する。ならば」

「させるかよっ!!」

 

 天に吼えるように声を上げた小夜叉の瞳にはまだ闘志が揺らめいている。それを見て、薄っすらと口元に笑みを浮かべる。

 

「はっ!ならば、止めてみせよ!」

 

 

「壬月さま」

「あぁ。ここは小夜叉に任せる。……桐琴のことを孺子や殿に伝えねば、下手な動揺を誘ってはそこを突かれる可能性がある」

 

 小夜叉に手を貸したいところではあるが、貸せば場合によっては小夜叉がこちらへと攻撃を仕掛ける可能性すらある。

 

「……それに、桐琴があそこにいるということは、藤十郎が攻め込んでくる可能性もある。私たちでなければあやつは止められん」

「はい。……周囲の部隊を突破して殿の下へすぐに行きましょう」

 

 

「……あれ」

「あれは……剣丞さまの仰っていた水野の!?」

「一騎駆けでやがりますか!この大軍に対しては無謀にも感じるでやがりますが……!?」

「……全軍、止まる」

 

 静かな声でありながら、武田の全軍は進軍を止める。それを止めたのはたった一人の黒武者。

 

「俺は、水野家当主水野勝成!武田晴信公とお見受けする!」

「……」

「長尾景虎、柿崎景家、甘粕景持の三名は徳川が捕らえさせてもらった。抵抗をやめ、そこを通してもらえるか?」

「……それは無理。美空が捕まったのは自分の責任。光璃には関係ない」

 

 感情をつかみ辛い視線を藤十郎に向ける光璃。

 

「ほう?そうなのか。……そんな言葉で騙せるとでも思っているのか?」

「……」

「まぁ、この際感情はどうでもいい。だが、本当にここで長尾を見捨てるという選択をお前たちが取ることが出来るのか?」

「……厄介」

「それはどうも。長尾を見捨てれば俺たちを倒せる可能性は出るだろう。だが、その事実が知れ渡れば同盟は瓦解する。それはそうだろう、同盟相手を見捨てるような相手と誰が同盟を結ぶ?」

 

 光璃を守るように前に出たのは心。

 

「お屋形様、ここは私が」

「……いい。光璃が相手する」

「待つでやがります、姉上!」

「……何が狙い?」

「お前たちを止め、剣丞を討つ。それ以外に目的があると思うか?」

「……そう」

 

 手に持った軍配を藤十郎に向ける。

 

「武田光璃晴信」

 

 その言葉ににやりと笑う藤十郎。

 

「水野藤十郎勝成」

「「いざ」」

 

 

 決着はすぐであった。美空の御家流・三昧耶曼荼羅と光璃が使った御家流・風林火山。その二つを使い、武田軍に壊滅的な打撃を与えたのだ。

 

「……水野勝成。その力、使うのはやめたほうがいい」

「何故だ」

「……それは貴方が知っている筈」

 

 死屍累々といった様子の武田軍に背を向け、藤十郎は一言だけ光璃に告げる。

 

「知っている。だが、葵の明日の為だ」

「……違う。それだけじゃ……」

「……お前は知りすぎ(・・・・)だな。俺の邪魔になるようなら今、この場で始末しても俺は構わんのだが。……長尾と武田の主要な将はこれでほとんどがこちらの手中だ。余計なことは言わず大人しくしていれば葵の世でも生きてはいけるだろう」

 

 藤十郎の目が本気であると感じ、光璃が言葉を止める。

 

「……今、この瞬間に討ち取らねばならん相手は剣丞と久遠、後は公方か?葵の治める世に邪魔な者たちは全てこの戦で始末する」

「剣丞は……!」

「友だろうが、想いを違えば殺し合うしかないだろう?その覚悟が剣丞にないのなら」

 

 

「殺してやるのも友情だろう?」

 

 

「ふふふ……朕の予想とは違うが、事は進んでいる。主要な軍勢は鬼日向が捕らえ、戦闘は出来ぬ状態。荒加賀が裔を朕が抑えれば事は終わる。……さぁ、もう一芝居うってもらうとしようか。己が役割を全うせよ……明智光秀」

 

 

 剣丞は焦っていた。藤十郎と最後に別れたときに、殺し合いになってしまう可能性は覚悟していた。だが、まさか美空と速攻で戦うことになるとは。戦闘を避ける方法があるかもしれない中で、こういった事態は避けたかった。

 

「くそっ!小夜叉とも合流できないし……」

「主様、余がいるではないか。主様が求めるならば藤十郎を生け捕りにしてやるぞ」

「一葉……」

「しかし、それがしとしましては剣丞隊を置いてきたのは愚作ではないかと想うのですが」

「幽……でも、鉄砲を使ったら間違いなく殺してしまう。勿論、一葉たちとどちらかを選べといわれたら一葉たちを選ぶ。でも、出来ることなら両方助けたい」

「偽善か?それともまだ甘えが抜けんのか?どちらにせよ、話にならんな」

 

 聞こえてきたのは懐かしい友の声。だが、その声には怒気が含まれている。

 

「藤十郎!?こ、ここにいるってことはまさか……!」

「あぁ。長尾家の長尾景虎、柿崎景家、甘粕景持。武田家の武田晴信、武田信繁、内藤昌秀。この六名は……俺が討ち取った」

「……え……?」

 

 剣丞が固まる。そんな剣丞を見下すように藤十郎は続ける。

 

「そういえば、俺の御家流は見たことあるだろうが、御留流は知らんだろう?いい機会だ、教えてやろう。俺の御留流は」

 

 

「自らの手で殺した相手の御家流を奪い取るものだ」

 

 

「!主様下がれ!!」

「御家流・風林火山」

 

 藤十郎の言葉とともに現れたのは剣丞も見覚えのある御家流。光璃の、武田の当主にしか使えないはずの技だった。

 

 

「くっ……!幽よ、主様を頼むぞ!」

「……はっ」

「余の知るところの刀剣よ。余の知らぬところの秋水よ。存在しながら実在せぬ、幻の如き宝刀よ。今、その存在を星天の下に顕現せよ!!」

 

 一葉の周りに無数の刀剣が舞い上がる。

 

「足利御家流、その身に受けよ!!三千世界!!」

 

 全ての刀剣が藤十郎を目掛け、襲い掛かる。

 

「御家流・三昧耶曼荼羅」

 

 巨大な陣が足元に浮かび上がり、その刀剣のことごとくを消滅させる。

 

「ちっ……これは美空の……まさか本当にそんな御家流があるとは!」

「あ……あぁ……っ!」

 

 崩れ落ちるように膝をつく剣丞。

 

「俺が、俺の覚悟が足りなかったから……皆を……」

「剣丞どの!落ち込むのは今では御座らん!今は逃げるとき、すぐに久遠どのと合流し……」

「させると思うか?御家流・鬼哭槍攘!!」

 

 藤十郎が鬼の形をした気を纏う。

 

「剣豪将軍の技……貰うぞ」

 

 槍を頭上でくるくると回す。その速度は段々と速くなり、周囲を風が吹き荒れる。

 

「吹き飛べ」

 

 槍を横薙ぎに振るう。その速度は神速の域まで達していたが、それを一葉はかろうじて刀で受ける。だが、その力を受け止めきることは出来ずに大きく吹き飛ばされる。

 

「剣丞。この後に及んで俺を殺さぬと言うのか?目の前でこのまま公方を嬲り殺しにすれば考えを変えるか?」

「……藤十郎どの。それがしは剣丞どのから伺っていた藤十郎どのとは様子が違うようで……」

「戦場でそのようなことを言うか。貴様らがいたから剣丞は甘いままなのか。ならば貴様もここで散るか?」

「……やれやれ、まるで人の話を聞かぬ子童ですな。……っ!剣丞どの!?」

 

 刀を抜き、立ち上がる剣丞。その目からは涙が流れ落ちていた。

 

「藤十郎……っ!!」

「来い、剣丞。俺もお前も、我侭を通すのであればそれなりの対価が必要だ。お前がまだ嫁たちを守りたいと思うのであれば俺を討ってみよ!!お前が止められなければ俺はそのまま信長を討つ!!」

「藤十郎ーっ!!」

 

 剣丞が駆け出す。その動きは恐らくこれまでの剣丞の人生の中でも最高の切れがあっただろう。だが、相手は藤十郎だ。

 

「ぬるい!」

 

 槍の石突で腹部を突かれ、剣丞は一瞬崩れ落ちそうになる。それを気合で耐え、鈍くなった動きで藤十郎に切りかかる。

 

「その程度で……その程度の覚悟で戦場に出た、戦場に送り出したお前に全ての責はある!!俺たちを生け捕りにする?」

 

 槍を捨て、拳で殴りつける。地面に倒れ伏した剣丞が刀を杖に立ち上がる。

 

「葵を……徳川を……天下を舐めるなよ、孺子!!!」

 

 最後の言葉はまるで今の剣丞を、少しであっても成長させることが出来た女性の言葉に似ていた。




いつも感想などありがとう御座います!

武田が少し噛ませ犬な感じになったのは、後の展開のために必要だからです。
それと藤十郎が剣丞に対して少し嘘を言った理由は……?

後数話で物語が完結します。
もう少しお付き合いくださいませ!

ちなみに、終わった後に後日談も予定しております。
そちらも楽しみにしていただけると幸いです!
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