戦国†恋姫~水野の荒武者~   作:玄猫

32 / 60
導入部 2話 もう一つの御免状

「あーっ!御大将、居たっすよ!」

 

 藤十郎を指差しながら叫ぶのは柘榴。

 

「ん?……確か長尾の……柿崎だったか?」

「柘榴っていうっす。別に柘榴でいいっすよ、って御大将~!」

「聞こえてるわよ!……久しぶりね、藤十郎」

「おぉ、長尾の。戦のときはすまなかったな」

 

 藤十郎がそういうと、頬をぴくぴくとさせながら藤十郎を指差す。

 

「美空よ。通称でいいわ!戦のことは別にいいわよ、私よりアンタのほうが強かったってだけのことでしょ。……それよりも、何よあの文!!」

「あの文?……あぁ」

「何で戦う前に書いたはずの文の時点で会ったこともない私に勝つ前提の内容なのよ!」

「いやぁ、あれはびっくりしたっすねぇ。読んでいるときの御大将の顔、忘れられないっす」

 

 あはは~と笑いながら言う柘榴を軽く睨む美空は視線を藤十郎に戻す。

 

「とにかく!負けたままでは済ませないから覚悟しておきなさい!」

「柘榴もっす!綾那ちんにも伝えておいて欲しいっす!」

「あ、あぁ。わかった」

「ふん!」

 

 戦よりも文のほうで怒っている様子の美空と笑顔で手を振る柘榴を見送る。

 

「……何なんだ、あれ」

「……美空は変な子。いつもあんな感じ」

「うぉっ!?た、武田の」

「光璃」

「あー……武田の」

「光璃」

「……」

「……」

 

 相変わらず何を考えているか読めない視線を藤十郎に向ける光璃。

 

「光璃、でいいのか?」

 

 藤十郎の問いにコクリと頷く。

 

「無事で、よかった」

「……あぁ。お陰様でな」

「……そう」

 

 それだけ言うとスタスタと立ち去っていく。

 

「……ふむ、美空も光璃も十分におかしな奴だな」

「……お前も十分変な奴だと思いやがりますが?」

 

 そういって歩いてきたのは先ほどの光璃の妹。

 

「あー典厩どのだったか?」

「で、やがります。姉上と同じく通称の夕霧でお願いしやがります」

「あぁ、宜しく頼む夕霧。それで、どうして俺が変わっているんだ?」

「……まぁ、基本的に自分が変だと自覚するのは難しいでやがりますからなぁ。とはいえ、姉上が気に入った相手と聞いたでやがりますが……」

 

 すっと悪戯っ子のような目になる夕霧。

 

「兄上と何処か似た雰囲気、姉上が気に入るわけでやがります」

「俺が剣丞と?……う~む……」

「ま、すぐに分かるでやがりますよ。それじゃ夕霧は行くでやがります。武田の家中には藤十郎と戦ってみたいと言う者がたくさんいるでやがりますから相手を頼むでやがります」

 

 

 その後、案内された場所は本来であれば公方が座るであろう場所に剣丞、久遠、一葉、葵が座っており、普段であればそちら側に座っているであろう美空や光璃も上座ではあるが下に座っていた。よく見てみれば、北条の面々の顔もある。

 

「藤十郎、こちらへ」

「あ、あぁ」

 

 葵の夫となった以上、そちらに座ることに違和感は感じないが藤十郎に向けられる視線は様々だ。敵意のようなものはあまり感じないが、獲物を見るような視線もあることに若干の違和感を感じる。

 

 藤十郎が、葵の隣に座ったことで場の全員が揃ったのだろうか、久遠が口を開く。

 

「皆の者、よく集まってくれた!此度は今後の同盟の形、動きについての話をしようと思う。そしてその前に……」

 

 久遠が視線を藤十郎へと移す。間の全員の視線が藤十郎に集まる。

 

「先だっての戦の際に、吉野を討った藤十郎……水野勝成が無事帰還した。それに伴い、葵と祝言を挙げたのは周知のことと思う。そして」

 

 そこまで久遠が言って、視線を一葉に移す。

 

「余らは考えた。これからの時代を担っていく者を、そして余の夫たる剣丞と同じく英雄の器を持つものを一つの家で独占してしまうことの危険性を」

 

 一葉の言葉に驚いたのは藤十郎だ。場のほかの面々が驚いた様子がないのは、ある程度内容を知っていたからだろうか。

 

「……この場にて一つの宣言をします」

 

 葵が口を開く。

 

「剣丞どのと同じく、藤十郎を徳川を中心とした同盟の要とすること。そして……望むのであれば、日の本を共に平定していく仲間として全ての者の夫と出来ると」

 

 一葉が一つの書簡を取り出す。

 

「内裏より賜った『御免状』が此処にある。これを、久遠、足利公方である余一葉。そして」

「徳川家康として、此処に宣言します。……日の本を想う気持ちがあれば、身分の上下なく藤十郎を夫と出来ることを」

 

 静まる場。そして、一番目に口を開いたのは。

 

「……は?」

 

 唖然とした様子の藤十郎であった。

 

 

「お疲れ、藤十郎」

「剣丞か」

 

 話が終わり、葵と話がしたかったのだが女性陣で話があるということで先に藤十郎と剣丞の二人が部屋を後にした。

 

「……まさか、俺がお前と同じことになるとはな」

「あはは、俺は聞いてたから知ってたけどね」

「知ってたなら教えろ」

「口止めされちゃってね。……でも、藤十郎なら皆を幸せにしてくれるって思うから大丈夫」

 

 うんうん、と頷く剣丞に苦笑いの藤十郎。

 

「……葵が決めたことだ。それなら俺は応えるだけだがな」

「藤十郎ならそういうと思ってたよ。……俺も久遠から言われたとき、似たようなことを言ったよ。久遠は皆を愛してやれって言ってた」

「ふぅ……とはいえ、そんなに俺が好かれるとは思っていないが」

「……本気で言ってる?」

「ん?あぁ、綾那や歌夜は好きだと言っていたが……」

「はぁ、こりゃ皆大変だ」

 

 

「藤十郎!」

 

 話が終わったのだろうか、葵が駆け寄ってくる。

 

「葵……」

「ごめんなさい。貴方に相談なくこんなことを決めてしまって……」

「いや、構わんよ。……これからの時代に必要だと葵が判断したんだろう?それなら俺は全力で協力するだけだ」

「藤十郎……」

「葵……」

「……こほん!藤十郎どの、葵さまからお聞きしたと思いますがそういうことですので、各家の面々と仲良くお願いいたしますぞ」

 

 悠季がニヤニヤしながら言う。

 

「……分かった。悠季もな」

「なっ!」

「ふふ、そうね。悠季とも仲良くして頂戴」

「あ、葵さままで!」

「まぁ、何をしたらいいのかは分からないが色々とやってみるさ」

 

 

「藤十郎ーっ!!」

 

 いつものように突撃してくる綾那を抱きとめる。

 

「おっと。綾那、どうした?」

「藤十郎と綾那、結婚できるですか!」

「む……」

 

 目を輝かせながらたずねて来る綾那。

 

「そうだな……確かに綾那であれば問題なく出来る……な」

「ふふ、なら私もですね」

 

 ニコニコとしながら歌夜も声をかけてくる。

 

「前にもいいましたが、私も綾那もずっと待ってたんですよ?それに今回は葵さまからの許可も直接頂いてきてます。……ふふ、覚悟してくださいね?」

「う、うむ」

「でも、綾那。今はとりあえず藤十郎さんを放してあげて。他の人たちともお話しないといけないから」

「う~……分かったのです」

 

 渋々といった感じではあるが綾那は藤十郎から離れる。

 

「そういうわけですので、藤十郎さん。私と綾那は藤十郎さんの妻になるためにもう一度後で行きますので……ちゃんと受け止めてくださいね?」

 

 

「……ふぅ。綾那と歌夜は二回目か。流石にしっかり受け止めてやらないとな」

 

 流石に此処まで直球で来られたら藤十郎も理解せざるを得ない。二人は藤十郎のことをずっと想っていてくれたのだろう。

 

「あら~?藤十郎ちゃんじゃない」

「おぉ、朔夜どの」

「藤十郎ちゃん、何か面白いことになってるわね~」

「はは、面白いかどうかは分からんが……まぁ、頑張ってみるしかないな」

「そうねぇ。たぶんだけど、うちの娘たちとかもお世話になるから宜しく頼むわね。あと、お姉さんもお願いしていいかしら?資格はあるわよね?」

「……は?」

 

 

「全く、朔夜どのは相変わらず冗談か本気か分からんな」

 

 朔夜がなんと言おうが、最後に大切なのは本人の意思だと藤十郎は思っているので、この期に及んでまだそんなことはないだろうと思っているのは経験が浅いからだろうか。

 

「あ、藤十郎っす」

「久しぶり、第二のスケベ」

「久しぶり……って、何だ第二のスケベって」

「スケベが剣丞。第二のスケベが藤十郎」

「まぁ、仕方ないっすよねぇ。あんな宣言されたっすから。それより、藤十郎勝負っす!」

「松葉も負けたままでは終われない」

 

 そういって槍と傘を取り出す柘榴と松葉。

 

「ふむ、まぁいいだろう。こっちのほうが……分かりやすい!」

 

 

「うわー!また負けたっすー!!」

「不覚……」

「っていうか、御家流盗むのずるいっす!」

「俺の技だから仕方ないだろう」

「御大将が使いすぎると危険って言ってたっすけど」

「何故かは分からんが帰ってきてから一日に使える回数が制限されはしたが反動は疲れるだけになったな」

「……反則」

「何とか破る手段を御大将と考えるっす!!あ、あと」

 

 柘榴が思い出したように。

 

「各家中からスケべさんと結婚してない人の中で藤十郎と結婚したい人を募ってるみたいっすよ。柘榴たちも宜しくするっす」

「宜しく。第二のスケベ」

「ちょ、ちょっと待て!そっちのほうが重要な話じゃないのか!?」

「松葉、藤十郎はこういうのが苦手みたいっすね」

「次のとき使ってみる」

 

 言いたいことを言って二人は立ち去る。後には呆然とした藤十郎が一人残っていた。

 

 

「で、だ。今各家で剣丞に蕩らされていない者はいるのか?」

「ウチは……まぁ、慕ってはいるけど結婚までは行ってない者もいる……はずよ」

「武田も同じ。……兄のように慕っている子が多い」

「ふむ、織田は……そうだな、桐琴を家中の者と捉えてよいかにもよるが恐らくは桐琴が藤十郎を好いておろうことは間違いないだろうな」

「……徳川家中は……」

「分かっておる。恐らく全員であろう?……もし剣丞と出会っていなければ、ここにいた全員が蕩らされた可能性もあるな」

 

 冗談交じりで久遠が言うが全員が否定しない。

 

「……藤十郎にとってはこれからが大変であるな。……葵も遠慮せずに藤十郎に甘えていくのだぞ?お前が無理をしては意味がないからな」

「久遠姉さま……はい」

「よく言うわね。自分が素直に甘えられていないくせに」

「……珍しく美空が正しいことを言った」

 

 

 此処に、剣丞と藤十郎を中心とした同盟が完全に発足することになる。




剣丞ハーレムの一端は崩します(いまさら

無印時代に関係を持っていなさそうな子たちや北条編まで発展してなさそうな子を中心に
藤十郎のヒロインに格上げします!
それと、閑話に登場したサブキャラも再登場しますのでお楽しみに!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。