戦国†恋姫~水野の荒武者~   作:玄猫

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前回の話のタイトル変更で新婚旅行になりました。
ヒロイン表記はなくてもいいかなーとも思いましたが、一応書いてます。

後、少し短めにして更新頻度を上げようと思いますのでご了承ください!


10話 葵との新婚旅行~浅井編その壱~【葵】

「藤十郎、今向かっているのは江北かしら?」

「あぁ。はじめに浅井の二人……当主の長政どのとその奥方の市どのに会うように、と悠季からの文に書いてある」

 

 葵には見せていない悠季から直接渡された文には「いい加減に落ち着いて葵さまと新婚旅行にいってくるように。ちなみに新婚旅行というのは剣丞どのからの意見であり……」と、説教と助言がつらつらと書かれていた。

 

「どうしたの?」

「いや、なんでもない」

 

 二人で一頭の馬に乗っているため葵は時折、少し背後を見上げるように藤十郎へと顔を向ける。そのたびに葵を抱きしめたい衝動に駆られるのを必死に抑えているのは誰にも分からないだろう。内心を隠すように優しく馬の黒い毛を優しくなでる。

 

「白石、疲れたらすぐに言えよ。時間には余裕があるのだからな」

 

 そう言う藤十郎の言葉に答えるように軽く嘶く白石。

 

「本当に白石は藤十郎に懐いているわね」

「ふふ、白石が最も好きなのは葵だ。その次くらいに俺のことを好いてくれていれば嬉しいがな」

「それなら、私と藤十郎を乗せている白石は今幸せってことかしら?」

 

 尋ねるように葵も優しく撫でると嬉しそうに再び嘶く。

 

「そのようだな。ならば白石、少し走るか?」

 

 

「……まさかここまで走るとは思わなかった」

「予定よりも早くついてしまったわね」

 

 藤十郎の言葉に喜んだ白石が疾走したおかげで予定よりも早くに浅井の本城である小谷城に到着していた。すると、門の前にまるで二人を待つかのように立つ人影が。

 

「お、お待ちしておりました!徳川家康殿と水野勝成殿とお見受けしますっ!!」

 

 何故かガチガチに緊張している少女。……とはいえ、面識がないわけではないから若干おかしな状態なのだが。

 

「まぁ、間違いではないが。そちらは久しいな、長政どの」

「そそそ、そんな!まさか勝成殿に名前を覚えられているなんて……」

「はいはい、まこっちゃんそこまで!このままじゃ藤十郎さんたち、ずーっとここに居ることになっちゃうよ。……元気そうだね、葵ちゃんも藤十郎さんも」

「えぇ。お市さんもお元気そうで」

 

 白石からひらりと飛び降りた藤十郎が葵の手を取り優しくおろす。

 

「藤十郎さん、変わったねぇ。私の知ってる頃の藤十郎さんだったらそんなに気の利いたこと出来なかったよ」

「ちょ、市!なんて失礼なこと言ってるの!?」

「ははは、かまわんさ。俺と葵はらぶらぶ……とやららしいからな。かまわんだろう?」

「うん!市は今の藤十郎さんのほうがいいって思うな!って、こんなところで話し込むために着たんじゃなかった。ようこそ、小谷へっ!」

「あぁっ!?市、それ僕の台詞~!!」

 

 

 軽い自己紹介(実は二回目)と真名を交し合っていつものように(?)藤十郎と市の仕合という流れとなった。

 

「あぁ、もう市ったら。……すみません、葵さま」

「いえ、構いませんよ。きっと藤十郎ならこうなるだろうと思っていましたから。眞琴どのは良いのですか?藤十郎は強いですよ?」

「市も言っても聞かないですし……ここのところ相手がいなくて暇そうでしたし」

「あら、藤十郎は暇つぶしの相手ですか?」

「あぁっ!?そ、そんなつもりじゃ!」

 

 クスクスと笑う葵とあわてる眞琴の前で戦いが始まる。藤十郎は槍や刀を近くに置き無手で武具を着けた市の相手をする。

 

「藤十郎さまって素手でも戦えるんですね。ああ見えて市は柴田どのと一騎打ちが出来るほどの腕前なんですけど」

「藤十郎が本気になればいまや日の本広しと言えど藤十郎に勝てる相手は数人しかいないでしょう」

「その内の一人が平八郎どの、ですよね?……徳川家は凄いですね」

「江北も兵の質であれば我ら三河にも負けるとも劣らないですよ」

 

 

「てやぁっ!!」

 

 繰り出される鋭い拳の一撃を紙一重でひらりと避けた藤十郎が躊躇なく膝で市を蹴り上げる。突き出した手を逆の手で膝に触れ、市はその勢いのまま宙へと舞い上がる。追撃に出ようとした藤十郎は拳を握り締めたまま、一歩下がる。

 

「流石藤十郎さんだね。今動いてたら勝てたかも知れなかったのに」

「ふっ、そう簡単にやられては楽しくなかろう?」

「うん!胸を借りるつもりで……本気でいくよーっ!!」

 

 疾風。そう例えるのが最も正しいと感じさせる速度で市は藤十郎との距離をつめる。流石にこの速度は予想していなかったのか、一瞬藤十郎が目を見開く。

 

「ふっ!」

 

 鋭い呼気と共に繰り出された拳は藤十郎の腹部に触れるかと思われた。

 

「甘い」

 

 手首を掴んだ藤十郎はそのまま市をグイと自身のほうへと引き寄せる。引き上げるように引っ張られた市の脇はがら空きになる。そこへと容赦なく繰り出される肘打ち。そのまま吹き飛んだ市は地面を滑るように壁へとぶつかりそうになる。……が、それも計算のうちだったのだろう。両手に高まる気が集まっていき、それを見た藤十郎がニヤリと笑う。

 

「来い」

「御家流っ!!」

 

 市の手に握られた愛と染の篭手が光り輝く。

 

「愛染挽歌っ!!」

「もらうぞ、その技」

 

 藤十郎の両腕が漆黒の気に包まれ鬼のような手が現れる。

 

「御家流・愛染挽歌」

 

 二人の拳が交差する。衝撃の余波で周囲に甚大な被害を与えるほどの爆発。その中心には市を抱かかえた藤十郎が立っていた。

 

 

「すっごく強いよ、藤十郎さん!久々に本気で戦えて楽しかった!」

「はっはっはっ、満足してもらえたようで何よりだ」

「……」

「もう、藤十郎ったら」

 

 眞琴の予想をはるかに超えた戦いだったのだろう、ぽかんとした表情からなかなか元に戻らない。

 

「ん、眞琴はどうしたんだ」

「まこっちゃん?」

「ちょ、ちょ、ちょっと市大丈夫なの!?」

「うん、ぴんぴんしてるよ」

「互いにある程度は加減していたからな」

「……でも、藤十郎。また御留流つかったわね?」

「……あ、葵、あれはだな」

「言い訳は聞きません。お市さん、すみませんが部屋をお貸しいただけますか?」

「あ、うん。二人のための部屋、ちゃーんと準備したから安心して!あと、葵ちゃん、私のことはちゃんでいいって!」

「あ、葵。出来ればこの場のほうが……」

「部屋に戻ってしっかり聞くわ。覚悟しておくように」

「……はい」

「……なんでだろう、憧れていた藤十郎どのにどこか親近感が沸くような……」

 

 

 夕餉は共に取ることになる。この場には上も下もないということで四人で四角く座して食事を取っていた。

 

「これが噂の鮒寿司か」

「不思議なにおいね。……久遠姉さまは人の食べ物じゃないって言ってたけど」

「お姉ちゃんは本当に嫌いだからねぇ。あ、二人とも無理そうだったら別の料理準備するから言ってね」

「……うむ、うまい!」

「私も平気だから気にしないで大丈夫よ」

 

 そんな感じで食事は続き、会話も弾む。

 

「二人の仲の良さは三河でも有名だぞ」

「えぇ、そうなんですかっ!?」

「あはは、嬉しいねまこっちゃん!」

「う、うん。でも少し恥ずかしくない?」

「全然っ!」

「ふふっ、市ちゃんらしい反応ね」

「で、でも、お二人のことも有名ですよ。天下に最も近き織田と徳川の頂点に君臨するお方ですから。それに藤十郎殿も徳川四天王に数えられていますし。東国無双の本多忠勝、知勇兼備の将榊原康政、戦国の謀狐こと本多正信、そして漆黒の鬼日向水野勝成」

「……やめてくれ、その呼ばれ方をすると背筋がかゆくなる」

「いいじゃない、私は好きよ?」

「……」

 

 葵の言葉に目を瞑り茶を啜る藤十郎を見て笑う一同。

 

「それに、お姉ちゃんからの文には葵ちゃんが羨ましいって書いてあったよ?」

「そうなんですか?」

「うん、お兄ちゃんはフラフラして全然我の元に帰ってこん!って」

「ははは、剣丞は相変わらずだな」

「藤十郎も人のことは言えないわよ」

 

 

「風呂も、布団もひとつ。それが小谷式、か」

「ふふ、まだ結ばれる前の久遠姉さまと剣丞どのもこの流れでとっても苦労したって言っていたわ」

「ふむ、今でこそ平気……平気だが、どちらも気が休まらんかっただろうな」

「そうね。私は今でも少しドキドキするわ」

「……そうか」

 

 そっと寄り添ってくる葵の肩を抱く藤十郎。自然と顔と顔が近づき接吻を交わす。月だけが部屋の中を薄らと照らす中、静かに布団へと倒れこんだ二人。雲がそんな二人を隠すように月を朧にしていた。




だだ甘でした(ぉぃ

白石は実際に史実でも家康の愛馬として有名です。
黒い毛なのに白石……不思議ですよねぇ。

戦国時代の名馬はたくさんいますが、恋姫世界ではきっと小夜叉の百段が最強の馬なんでしょうね(ぉぃ
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