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いつもよりは少し遅い目覚めだろうか。隣で眠る葵よりも先に目が覚めてしまった藤十郎は、ゆっくりと身体を起こそうとする。が、腕に葵がしっかりと抱きついており、無理やり引き剥がすわけにもいかなさそうだ。葵の寝相はかなりいいのだが、肌蹴た柔らかな胸元が藤十郎の腕に直接触れており、あまりいい状況とはいえない。いや、ある意味ではいい状況なのだが。
「ともあれ、俺のせいなのだがな」
昨晩のことを思い出し、苦笑いを浮かべる藤十郎。葵には少し無理をさせたかもしれない。
「……たまには良いか」
再び静かにまどろみへと身を任せる藤十郎は人生においても数えるほどしか経験のない二度寝をすることにした。
「おっはよー!葵ちゃん藤十郎お兄ちゃん!」
「おはよう、市ちゃん」
「おう。おはよう。……で、何だそのお兄ちゃんって」
「お兄ちゃんはお姉ちゃんのお婿さんでしょ?だから葵ちゃんのお婿さんだから藤十郎お兄ちゃん!……いや?」
「いやではないが。まぁ、いいか。慣れてなくて驚いたが」
「えへへ、あ、お湯の準備できてるよっ!それと……」
コホンと一つ咳払いをした市に首をかしげる藤十郎と葵に満面の笑みで市が言い放つ。
「昨晩は、お楽しみでしたねっ!」
「絶対に殴ってやる」
「ふふ、藤十郎落ちついて」
葵に身体を洗ってもらいながら藤十郎が呟く。先ほどの市の言葉はどうやら剣丞が教えたものらしい。
「なぜか分からんが馬鹿にされた気がしてな」
「そう?市ちゃんが言ってるから私はそんなに感じなかったけど」
「市に言わせて自分は許してもらおうとしている感じが許せん。やっぱり殴る」
「本当に仲が良いわね」
「俺が唯一友と認めた男だからな」
「ホント、似た者同士ね」
「む、それは聞き捨てならんぞ?俺はあ奴のように蕩らし回ってはおらん!」
「……綾那」
「……」
「歌夜、きよ、小波、姫野。まだ数人怪しい子もいるけれど?」
「……む、むぅ」
困ったような顔で何かを考える藤十郎。否定しようとしているがいい手が思い浮かばないといったところだろう。それを分かっているからこそ葵はくすくすと笑う。
「勿論、私は藤十郎のほうがいい男だと思うから、綾那たちの選択は仕方がないと思っているわ。……綾那と歌夜は、ね」
「あ、葵?少し力が強くなってきている気がするが」
「気のせいです」
朝餉の後、なにやら妻は妻同士で話があるということで葵は市と何処かへ行ってしまった。故に今、藤十郎は眞琴と二人なのだが。
「……」
「……」
場を支配しているのは重い沈黙。藤十郎自身、別にそこまで沈黙が嫌いというわけではないが、なぜか今の状況は少し居心地が悪い。
「ふむ、敬称はいらんということだったから眞琴」
「は、はいっ!」
「お前、何でそんなに緊張している?」
「そ、それは……藤十郎……さんは日の本を救ってくださった英雄ですし、そんな偉大な方とご一緒していると思うと……」
眞琴がモジモジしながら言うのを聞いてきょとんとした顔になる藤十郎。次の瞬間、破願して笑い出す。
「はっはっはっ!俺が英雄?それは買いかぶりすぎだ」
「そんなこと!」
「眞琴、俺はな。俺は自分のやりたいことをやりたいようにやっただけだ。自分自身に嘘をつかず、ただひたすらと、な。……たとえばだが、市が鬼の群れの真ん中で助けを求めていたとしよう。眞琴、お前はどうする?」
「そんなの助けに行くに決まっています!」
「だろう?俺がやったのはそういうことだ。俺は葵の天下取りを手伝いたいと思った。日の本に蔓延しつつあった鬼を駆逐したいと思った。だから戦い、打ち勝った。ただそれだけのことさ」
「……」
……何故か藤十郎の予定とは違い、さらにきらきらとした目で眞琴が見ている気がする。
「僕も……藤十郎さんのようになれるでしょうか?」
「どうだろうな。だが、まぁ俺のようになる必要なはいんじゃないか?俺は毎日のように葵に怒られっぱなしだぞ」
「あはは、僕も市によく怒られます」
「ならば、目指すまでも無く俺たちは似た者同士かもしれんな」
そう言うと眞琴の肩を叩く。
「……それで、話は変わるが越前はどうなった。俺のいない間に大きく状況が変わったとだけ聞いていたが」
「はい。鬼のほとんどは駆逐し、今は少しずつ人が住める土地に戻していっている最中……といったところです。……鬼に荒らされた土地は、土地そのものがまるで腐ったかのような瘴気に纏われていて……それを払えるものと土地を開拓するもの、そしてまだ隠れている鬼を倒す者とかなりの時間はかかりそうです」
眞琴の言葉を聴いてため息をつく。
「まだ時間は必要か。人が住めるようにするためならば徳川も力を貸すことを惜しまん。葵も知っているだろうが、一応俺からも伝えておく」
「ありがとうございます」
「しかし……確かお前も剣丞に蕩らされた一人だったな?」
「たらっ!?……お兄様は確かに僕たちの夫でもありますが……」
「はっはっはっ!やはり剣丞は蕩らしの君だな。葵には俺も同類だといわれたがやはりそんなことはないな!」
「……そうかなぁ。お兄様に似てると思うけど」
「ん、何か言ったか?」
「い、いえ何も!」
「まこっちゃーん!藤十郎お兄ちゃーん!」
門のほうから葵と市が歩いてくる。市は楽しそうに満面の笑みで手を振っている。
「市、おかえり。楽しめた?」
「うん、勿論!」
「おかえり、葵。楽しかったか?」
「えぇ。あんなお店、初めていったわ」
「葵ちゃん、お仕事忙しくて普段城から出られないだろうから、色々なお店見て回ったの!まこっちゃんもお兄ちゃんと仲良くなれた?」
「うん。……で、いいですよね?」
「あぁ。少しは分かり合えただろう。憧れているといわれたときは驚いたが」
「と、藤十郎さん!?」
「あー、まこっちゃんって公方様にも憧れてたし双葉様にもあこがれてたもんねぇ。有名人に弱いタイプだーってお兄ちゃんが言ってたよ」
「たいぷ、という言葉は分からんがなんとなく眞琴がどういう性格なのか分かった気がするな」
「と、藤十郎さんまで!」
「もう行っちゃうの?」
「うむ。まぁ、なんだかんだで一週間ほど滞在させてもらった。堪能させてもらったよ」
「そっか。またいつか遊びに着てね!」
「ふふ、次は市ちゃんたちが私たちのところに来てくれたら嬉しいわ」
「うん!そのときはまこっちゃんと一緒に、ね!」
「ちゃんと小谷式の部屋割りにしておくさ」
「ふふ、藤十郎兄様ったら」
「……結局まこっちゃんも兄様呼びになったんだねぇ」
「……ごめんね、市ちゃん」
「ううん!私も藤十郎お兄ちゃんのことは好きだしいいよ!それに旦那様はまこっちゃんとお兄ちゃんだし」
「……よし、話は尽きんが行くとするか」
「えぇ。それじゃ、二人とも」
「またお会いしましょう!」
「またねー!二人ともー!」
小谷を離れ次なる地を目指す。次は最大の同盟国である剣丞率いる織田の安土である。
「今は剣丞たちも安土にいるらしいな」
「えぇ。久遠姉さまとも直接お会いできるわ」
「それは楽しみだな」
再び白石に二人で乗り、ゆっくりと安土を目指して進んでいった。
私も葵ちゃんといちゃいちゃしたいです(ぉぃ