戦国†恋姫~水野の荒武者~   作:玄猫

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今回は短くなってます。


23話 越後が二天【柘榴&松葉】

「藤十郎ー!朝早くから精が出るっすねぇ」

「柘榴か。人のことは言えんが早いな」

「そっすか?越後は朝早いっすからね。柘榴も一緒していいっすか?」

「構わんぞ」

 

 振っていた刀を腰に差し、次は愛槍を手に取るとそれを振り始める。

 

「藤十郎は刀も使うんすね」

「あぁ、基本的に何でも使うぞ。一番の武器は肉体だと思っているがな」

「藤十郎らしいっす」

 

 笑いながら隣で同じように槍を振るう柘榴。

 

「藤十郎の槍って変わった型っすよね」

「母上の……水野の技が中心だがな。あとは御家流の修行中に覚えた技だ」

「あの反則の技っすか?」

「反則って。まぁ使い方を間違わなければ強力な技なのは認めるがな」

 

 チラチラと藤十郎を伺うようにしながら槍を振る柘榴。

 

「そんなに俺の槍が気になるか?」

「そ、そうっすね。柘榴の槍より重そうっすよね」

「多分な。ちなみにだが、桐琴はこの槍を普通に片手で扱ったぞ」

「……あー、小夜叉のお母さんっすよね?藤十郎の側近の」

 

 桐琴の姿を思い浮かべながら納得する柘榴。

 

「あの小夜叉のお母さんなら納得っすね」

「ははっ、まぁそうだな。折角だ、柘榴。軽く手合わせするか?」

「今度は負けないっすよ!」

 

 

 手合わせは予想通りの結果に終わったが、その後柘榴は藤十郎から槍の型などを教わる形になっていた。

 

「とはいえ、柘榴の槍は完成しているからなぁ」

「そんなこと言わずに教えて欲しいっす!」

「まぁ、出来る限りはな。だが、あまり自分の形を崩すのはお勧めしないぞ?」

「大丈夫っす!それくらいは分かってるっすから。……そして本当に手ごわいっすね」

「ん、何か言ったか?」

「何も言ってないっすよ~」

 

 柘榴の踏み込み、槍の突き。体裁きを見て隙を指摘していく。

 

「……そのまま止まれ」

「へ?」

 

 すっと藤十郎が近づいてくる。柘榴の腕を腰を掴み、形を調整する。

 

「……このくらいか。今の部分、ここに隙があった……って、どうした?」

 

 顔が少し赤くなっている柘榴に気付き顔を覗き込む藤十郎。さらに朱に染まったように感じるが状況をよく把握できていないようだ。

 

「な、な、何でもないっす!」

「そうか?ならいいが」

 

 そう言って離れる藤十郎にホッとしたような、何処か残念そうな表情を浮かべた柘榴。

 

「……柘榴」

「へ……ま、松葉!」

「柘榴、抜け駆けはずるい」

「ち、違うっすよ!?偶然会って一緒に鍛錬してただけっす!」

「言い訳無用。罰として藤十郎は今日松葉のもの」

「……いや、俺は別にお前らの物じゃないぞ?」

 

 

「……」

「松葉、一体これは何だ?」

 

 腕にしがみつくような形で寄り添われて困惑する藤十郎。

 

「スケベならこれで喜ぶはず」

「いや、それは剣丞のことだよな?」

「男は皆狼だって言ってた」

「……誰だそんなわけの分からんことを言っているのは……」

 

 かといって特に松葉を払うことはしない藤十郎である。

 

「……まんざらでもない?」

「嫌なわけではないからな。理由が分からんだけで。……後、柘榴は何してる?」

「うぅ~……松葉ずるいっすー!柘榴も混ぜるっすよ!」

「駄目。違反したのは柘榴のほう」

 

 唸りながら言う柘榴に速攻で拒否の言葉を投げつける松葉。

 

「お前らの言っている抜け駆けとか違反とかって一体何なんだ?」

「秘密」

「もう少ししたら分かるっすよ。……たぶん」

 

 松葉に拒否されたからか少し拗ねたような様子で言う柘榴。

 

「あー……よく分からんが柘榴を許してやってくれ。俺と鍛錬してたのは俺が誘っただけだ」

「藤十郎……」

 

 本当は柘榴から誘ったのだが、とも思ったが槍の型などは藤十郎も率先して教えていた部分もあるから完全に嘘というわけでもない。

 

「……柘榴、許す」

「やったっす!」

 

 そういって藤十郎の頭に背後から抱きつく。

 

「……なんだこれは」

「藤十郎も抱き心地いいっすね!柘榴気に入ったっすよ」

「スケベにもやってた」

「抱きつき癖か?あー……家中のほかの者が見たら勘違いするぞ?」

「いいっすよ~。柘榴はしたいようにしてるだけっすから」

「右に同じ」

「そ、そうか」

 

 葵に見られるのはちょっと、などと少し考えた藤十郎だったが。

 

「あら、藤十郎?」

「何してんのよ、柘榴、松葉」

 

 狙い済ましたように現れる葵と美空に藤十郎が固まる。

 

「あ、御大将っす。藤十郎と遊んでるっすー」

「御大将、混ざる?」

「混ざるわけないでしょ!……で、藤十郎は何で固まってるのよ」

「い、いや」

 

 全く動揺の色を見せない美空とニコニコと微笑んでいる葵。

 

「ったく。アンタたち少しは場所を選びなさいよ」

「はーいっす」

「分かった」

 

 

「……は?」

「だから、既にあの二人は藤十郎の嫁として調整していたのよ」

 

 少し遅い朝食は葵と藤十郎二人でとっていた。そのときに葵から言われた言葉だ。

 

「何であの二人なんだ」

「だって、藤十郎と仲が良かったでしょう?恐らく美空どのから既に二人には話が行ってたんじゃないかと思うんだけど」

「……それで柘榴はすぐに分かるといったのか……」

「ふふ、だからあの二人に関しては特に怒るつもりはないわ。でも、あまり増やしすぎちゃ駄目よ?」

「わ、分かっている。そんなつもりはないのだがなぁ」

「本当に剣丞どのと似たことを言うようになったわね」

「……だからそれは褒め言葉ではないだろう?」

 

 

「全く!本当にアンタは一体どんだけうちの家臣とっていくつもりなのよ」

「いや、そんなつもりはないんだがなぁ」

 

 美空に部屋に来るようにと言われ来た藤十郎はすぐさま小言を言われていた。

 

「その手腕には恐れ入るわね」

「はっはっはっ!剣丞ほどではないだろう?」

「……五月蝿いわね」

 

 剣丞に結果としては蕩らされた身であるから耳が痛い言葉だったのだろうか。

 

「で、アンタはどうするつもりなの?」

「どうするつもりとは?」

「柘榴と松葉よ。同盟相手だから別に駄目とは言わないけど、古兎と貞子も貰うんでしょ」

「そう、なっているな」

「葵からも聞いてると思うけど、アンタの気持ちも大切なのよ。アンタが嫌っていうなら別に二人を貰わなくたっていいんだから」

「……」

「ま、少なくともあの二人はアンタに貰われるつもりみたいだけど」

「むぅ」

「……葵に少しは同情するわ」

「……」

「女っていうのは本当は好きな相手を独占したいものよ」

「それは……実体験か?」

「……想像に任せるわ」

 

 視線を藤十郎からはずして茶を啜る美空。

 

「でも、剣丞もアンタも日の本を一つにするために必要な存在だってことは否定しないわ。……だからこそ葵のこと大事にしてあげなさいよ」

「ふふっ、意外と優しいのだな美空」

「別にアンタのためじゃないわよ。葵は我慢する癖があるでしょ。それが心配なだけよ」

「やはり優しいではないか。……だが、ありがとう。葵を大事に想ってくれて」

「ふん!一応同盟相手だしね」

「柘榴たちの言うように素直ではないなぁ」

「う、五月蝿いわよっ!」

 

 

「葵、よい友を持ったな」

「どうしたの、急に」

 

 その日の夜。

 

「いや、美空とも話をしたのだがな。お前のことを心配していたぞ」

「ふふ、お優しい方だから」

「剣丞曰く、つんでれとやららしいがな」

「えっと……素直じゃない、とかだったかしら」

「よく分からん」

「藤十郎もつんでれなのかしら?」

「俺は素直だぞ?」

 

 寄り添っている葵の頭を優しく撫でる。

 

「ふふ、そうかもね」

「……藤千代は元気にしているだろうか……」

「心配?」

「心配、というよりは会いたくなるな。もう結構な時間会っていないからな」

「そうね。……でも、これからの戦を考えると」

「もっと長期間で会えないことも多いだろうな。……戦がなければずっと共にいることが出来るのだがなぁ」

「早く、平和な世界を作らないとね」

「だな。……それよりも最近考えていたのだが、剣丞に藤千代を近づけていいものだろうか」

「……どうしたの、急に」

「いや、あの蕩らしに近づけて娘が蕩らされたら……俺は剣丞を殺さねばならん」

「断定なのね」

 

 クスクスと笑う葵。

 

「いやいや!あの可愛い藤千代が剣丞の嫁になりたいといった日には……」

「ふふ、大丈夫よ。あの子は私の子なんだから……きっと藤十郎のお嫁さんになるって言うわ」

「そ、そうか?」

「そうよ」

「……ならいいか。だが剣丞には要注意だな」

 

 

「ん、どうした、剣丞」

「い、いや。何か寒気が……」

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