戦国†恋姫~水野の荒武者~   作:玄猫

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遅くなりました!
これからも遅くても一週間に一度は更新できるように頑張ります!


7話 松平の未来

「ふむ……墨俣の一夜城…ね」

 

 葵からの文、それと悠季からの伝達を受け取った藤十郎が呟く。

 

「はい。私も実際に見たわけではありませんが、斉藤側の話を聞くに事実のようです」

 

 藤十郎にそう告げたのは松平の忍の一人、服部正成。通称は小波といい、伊賀の忍を親に持つ少女だ。本人も草としての訓練を受け、葵や悠季からの命を受けてどのような任務であっても完遂している。

 

「話だけでは分からんが……悠季は何と言っていた?」

「いかにも怪しい天人らしい話だ、と。いくつかの可能性を仰っていましたが……」

「可能性か。……川を利用するとしても一夜でできるわけはないしなぁ」

 

 人や物の搬送には使えるだろうが、一夜で城を……となると話は変わってくる。

 

「正信さまも同じことを仰ってました。流石は藤十郎さま」

「小波、俺のことは呼び捨てで構わんと言っているだろう?」

「いえっ!そんな恐れ多いことは……」

 

 必死で拒否の姿勢をとる小波に藤十郎は苦笑いを浮かべながら考えを続ける。新田剣丞がどのような手段を用いて一夜で城を築いたのか。もしそれが敵に回った際に使われるのであれば、非常に厄介なことこの上ない。墨俣という土地故か、それとも新田剣丞だからこそなのか。

 

「藤十郎さま?」

「あぁ、すまんな。それで小波、お前はどう見る?」

「どう見るとは……新田剣丞、田楽狭間に降り立った天人について、ですか?」

 

 藤十郎が首肯するのを見て、小波は少し考える。

 

「お会いしたことがないのでなんとも言えませんが、もし本当に天から来たのであれば敵に回すことは避けたい、葵さまも正信さまもそうお考えになられるかと。正信さまはどのような行動に出られるか正直予想できませんが」

「いや、いつもと変わらんだろうな。しかし墨俣に城を築いたとなると、一気に織田に軍配が上がる可能性が高まったな。一向衆の討伐ももうすぐ終わる」

「藤十郎ー!あれ、小波もいるのです」

 

 綾那が藤十郎の元に駆け寄ってくる。

 

「綾那さま、お久しぶりです」

「なのです!それでそれで、藤十郎!もうすぐ全部終わるのですよ!」

「あぁ、お疲れ様。歌夜は前線で指揮を執ってるのか。……まぁ、何はともあれ小波」

「はっ」

「近いうちに大きな戦、動きがあるかもしれん。伊賀衆を動かす可能性も考えられるから準備は進めておいてくれ。それと……」

 

 予感と確信。その二つを感じ、藤十郎は小波に一つの頼みをするのだった。

 

 

 それから幾らかの月日が流れた。三河も平定され、鬼への対策を講じ……そして、一つの決定を葵が家中へ伝えることになる。

 

「織田との同盟が本格的に結ばれ、上洛へ動く……ね」

 

 今朝方、尾張からの使者が訪れ今は葵に面通しをしているところだという。使者として訪れたのは、元斉藤家の家臣にして『今孔明』といわれるほどの智謀を誇る竹中重治。聞いた話によると剣丞に惚れ込んで間接的に織田に仕えているらしいが……。

 

「益々もって新田剣丞という存在が分からなくなってきたな……」

 

 怪しい出自でありながら、独自の部隊を持ち有能な人間を引き抜くだけの魅力を持つ存在だというのだろうか。智を誇る者であれば、そういった輩には注意したとしても惚れ込む可能性は低いだろう。

 

「今孔明という噂のほうが誤りか?……いや、実際の指揮を伝聞で聞いたことがあるが、あの鬼柴田ですら認める智謀……誤りとは考えにくい。う~む」

 

 ぶつぶつと独り言を言いながら城を歩く。すれ違う武将たちが不思議そうな顔をしているが完全に無視である。

 

「まぁ、本格的に同盟、そして出陣となれば自ずと会うことになるだろう。その前に重治どのに聞いてみるというのも手かもしれんな」

 

 

「お話は伺っております。水野勝成どの」

 

 前髪で目元が若干隠れた少女……彼女が竹中重治、通称は詩乃。新田剣丞が率いる部隊の知恵として活躍しているという。

 

「松平が誇る武の一角と聞き及んでおります」

 

 丁寧な言葉で告げてくる詩乃の言葉には特に感情を感じられない。

 

「重治殿ほどまでに目立つものでもないかと。ご存知のようだが、一応挨拶させてもらう。水野勝成、通称藤十郎だ」

「私は竹中重治、通称は詩乃と申します」

 

 互いに腹を探りながら会話を続ける。

 

 

「……それでは、藤十郎どのもあの文献に関しては間違いがあるとお考えで?」

「うむ。やはりあの部分が……」

 

 意気投合していた。腹の探り合いはいつの間にやらただの雑談のようになっていることに二人は気づいていない。

 

「ふふ、ここまで語り合ったのは久々な気がします」

「織田には……ふむ、俺が会った限りでは確かにそういった話ができそうな相手は思い浮かばんな」

 

 藤十郎が織田で深く関わった相手が森家しかないのだから当たり前といえば当たり前だが、それを抜きにしても将には武闘派が多いのも事実だ。

 

「剣丞さまはそういったことにもお詳しいのですが、語り合うほどではありませんし」

「ほう、噂の天人か。書にも通ずるところがあるとは……流石というかなんと言うか。織田にいる間に会うことがなかったのが残念だ」

「そういえば、森家のお二人から言伝を受けておりますよ」

 

 

「三左どのは早く合流して鬼退治に行くぞ、孺子……と。子供夜叉からは早く遊びに来いと」

 

 詩乃との会話を終えた後、藤十郎は森の二人からの言伝を思い返す。

 

「変わらんな、あの二人は」

 

 きっと再会しても変わらぬ態度で接してくるだろう。仮に戦場であっても嬉々として槍を振るう姿が思い浮かぶ。

 

「あいつらともまた会うことになるんだろうな」

「あら、藤十郎。何かいいことでもあった?」

 

 前から歩いてきた葵が声をかけてくる。

 

「あぁ、姫さんか。織田と合流するんだろ?」

「また姫と……はぁ、久遠姉さまと合流して鬼を叩く。私たちが鬼のことを知っている前提で話は進んでいるわ。今後どうして行くかの流れを悠季と今から話をするから、藤十郎も来て」

 

 

「おや、藤十郎どの。先ほどまで織田の使者どのと楽しく歓談されていたと記憶しているのですが?」

「相変わらずよく聞こえる耳を持ってるな、悠季」

「……藤十郎、どういうことかしら?」

 

 一緒に来たはずの葵が突然怒ったような反応をして藤十郎は固まる。反して悠季はニヤリと笑う。

 

「ひ、姫さん?」

「竹中どのとどのような話で盛り上がったのか、先に説明してくれるかしら?」

「お、おい。悠季なんとか言ってくれ。なんで姫さんが怒ってる?」

「私にはまったく分かりませぬなぁ?使者どのとどのような会話を楽しんだのかしっかりと説明していただければいいと私は思いますが」

 

 

「こほん、少し取り乱しました」

「……何かすみません」

 

 気迫に負けてすべて説明した後、悠季だけが楽しそうに笑っていたが本題に入る。

 

「織田との同盟、その後の動きについて、でしたね」

「えぇ。藤十郎、悠季はどう考えてるか聞かせて欲しいの」

 

 葵の言葉に藤十郎と悠季が視線を交わす。

 

「……私が考えますには、葵さまが目指す天下を創るために行動を始める好機かと」

「私の考える天下……」

「以前から仰っている日の本を守り、導くということです」

 

 悠季が言葉を切る。葵は静かに頷くと言葉を引き継ぐ。

 

「そうね。藤十郎も知っているわよね?」

「あぁ。現状での日の本を守る……というのは、鬼のことか?」

「えぇ。日の本から鬼を根絶しなければ、天下泰平は訪れないわ」

 

 確かにそうだろう。今までであれば、人同士の争いだったが鬼という不確定要素に近い敵が出てきた以上、まずはそちらを殲滅しなければ天下どころの騒ぎではないだろう。

 

「まずは久遠姉さま……織田との同盟、そして公方さまと合流。その後に朝倉を攻める予定よ」

「朝倉、ね」

 

 藤十郎は記憶をたどり危険な武将を考える。確か真柄とか言う猛将がいたはずだが……。

 

「姫さん、重要なのは『引き際』だ。何処まで織田と組み、どのくらい松平の被害を減らせるか、だ」

「藤十郎どのの言うことも一理ありますね。我らの兵を疲弊させないことが一番の収穫と考えることもできます故」

「戦で手を抜くというの?」

「まさか。姫さんに忠誠を誓う三河武士が戦で本気を出さないなんてありえんだろう」

 

 きっぱりと言い切る藤十郎の言葉に頷き同意する悠季。

 

「そうですねぇ。むしろ、葵さまには織田の壁として使われないように交渉をしていただく必要もあるかもしれませぬ」

 

 藤十郎の知る久遠であれば、そういったことはしないだろうが家臣全員のことを知っているわけではない。戦であれば被害を減らそうとするのは常識であるから、可能性がないとは言い切れないだろう。

 

「今のところの方針は被害を最小限に抑える……か」

「ふむ、そうなると藤十郎どのには本気を出していただかなければいけませぬなぁ」

 

 悠季の言葉に、藤十郎は頷く。

 

「……それは私が判断するわ。いい、藤十郎。私が指示するまでは御家流は使わないように」

「善処する」

 

 藤十郎の御家流を知る者は少ない。本当の意味で知っているのは葵、悠季くらいのものだろうか。

 

「それと、竹中どのが美濃へ帰る際に私たちも美濃へ向かうのだけれど……先行して合流する人員を決めないといけないわ」

「私としましては、綾那と歌夜を向かわせようと考えているのですが」

「……悪くはない気がするが、俺も行こうか」

「おやおや、藤十郎どのはそんなに今孔明がお気に入りで?」

「藤十郎……?」

「ち、違う違う。……新田剣丞を見極めるために早く会ってみたい」

 

 その言葉に葵も悠季も目を細める。恐らくは二人とも調べてはいるが気になっていたのだろう。

 

「それに、綾那がえらく興味津々でな。阿弥陀如来の化身だとかなんとかで……綾那が懐く可能性がある」

「藤十郎どのは意外と独占欲が強いようですなぁ」

 

 そう言う意味じゃない、と藤十郎は言うが悠季は取り合わない。

 

「……それじゃあ、藤十郎もお願いしていい?」

「あぁ。任せておけ」

 

 この後、藤十郎と綾那、歌夜が詩乃と共に三河を立つことになる。

 

 

 新田剣丞と水野藤十郎。

 二人の出会いは、もう目の前まで着ている。




感想やアドバイスなどありがとうございます!
拙い文章ですが、楽しんでいただけたら幸いです!

もうすぐ原作の剣丞と松平勢の合流地点です。
オリジナル展開も増えていきますのでよろしくお願いします!
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