カレン「ようこそおいでなさいました。哀れな金の亡者共……。失礼、迷える罪人たちよ」
士郎「……言い直したにしては、どっちにしろ失礼なこと言ってないか?」
凛「呼び出したのはアンタの方でしょうに……。今回は一体何なの?」
アーチャー「……このメンツには見覚えがあるぞ。もしかして、また『聖壺』絡みの話ではないだろうね?」
カレン「あら、察しが良いですね、アーチャー。そこの駄犬の成れの果てにしては上出来です」
桜「ええ!?聖壺って……まさか、あの……?」
ライダー「アレにはあまりいい思い出がないのですが……」
凛「げぇ!?嘘でしょ!?アレはとっくに解体されたはずじゃ……」
凛「というか、お断りよ!そんな話!私達はあのせいで散々痛い目見たんだから!」
セイバー「なかなかあの奇妙な話し方が抜けず、凛たちは学校で大恥をかき……大河に至っては寝込んでしまいましたからね」
士郎「しばらく、クラスの連中から変な目で見られたよ……。それだけならともかく、慎二や一成にまで避けられるようになったのはショックだったな……」
アーチャー「私も、あのランサーや金ピカにとことん笑いものにされたのは屈辱の極みだ」
アーチャー「と、いうわけで、満場一致でそちらの話は断らせてもらう。悪いが他を当たってくれたまえ」
カレン「内容も聞かずにその対応とは、所詮は早漏には変わりないようですね。迂闊に断ってしまって本当にいいのですか?」
桜「どういうことでしょうか?」
カレン「わかってるとは思いますが、これは私の個人的な依頼ではありません」
士郎「ああ、どうせまた聖堂教会の依頼だろ?資金源確保とかどうとか」
カレン「いいえ、それだけではありません。今回は聖堂教会だけではなく魔術協会……それも、『あの』アトラス院からの支援要請でもあるのです」
凛「アトラス院ですって!?錬金術にしか興味ないような連中が、どうしてあんなものにまで興味を示すわけ?」
カレン「そこまであなた達に教える義理はありません。いい加減、依頼内容を話してもいいでしょうか?」
アーチャー「……続けてくれ」
カレン「では、簡潔に。あなた達にやってもらうことは、破損した『聖壺戦争』のデータの修復、及びデバック」
士郎「おいおい、俺達はプログラマーじゃないんだ。そんなこと、どうやって……」
カレン「黙って話を聞けない駄犬は去勢してしまおうかしら?魔力で作り上げた電脳世界のデータを修復する方法は一つ」
セイバー「……再び我々に、『聖壺戦争』の中に入れ、ということですか?」
カレン「その通りです。ですが、その後が問題なのです」
ライダー「と、いうと?」
カレン「あなた方も知っているとおり、『聖壺戦争』のデータはどこかの誰かさんのせいでデータの殆どが破損し、不安定な状態になっています」
カレン「その状況でログイン、つまりは肉体をゲーム内に取り込むということは、最悪の場合肉体そのものも破損し、そのまま死へと至るでしょう」
アーチャー「……ああ、それは前回、充分に身にしみたよ」
カレン「ゲーム内で、『自身の存在』が曖昧になってしまい、肉体……即ち自身の情報を維持することができなくなり、霧散してしまう……並大抵の魔術師ではそうなってしまうでしょう」
カレン「その為、作業者はログインしたあと一番最初に『壺のサーヴァント』を召喚してもらいます。サーヴァントとの間にパスをつなげることで、ゲーム内での自身の存在を『マスター』という形で確固たるものとする」
桜「じゃあ、私達が呼ばれたのは、そこに関係があるんですか?」
カレン「ええ、あなた達は『第五次聖壺戦争』を通じて、サーヴァント達との間に『縁』ができている。正確に言えばゲーム上に残った『記録』ですが」
カレン「そこら辺の魔術師が作業に当たるよりも、遥かに召喚の成功確率が高い、と上の連中は考えているのでしょう」
凛「話はわかった。けど、それは私達の命に関わるかなり危険な仕事よね?当然、それに見合った対価はもらえるんでしょうね?」
カレン「相変わらず、がめついですね遠坂凛。ですが、それももっともな話。……『彼ら』は、これだけの報酬を用意しているようです」ピラッ
士郎「どれどれ……。…………!?」
セイバー「どうしました、士郎?」
士郎「こ、これが…この額が本当なら……俺の卒業までの生活費は余裕で賄える!セイバーのおかずを毎食一品増やすことも……いや、それどころか家のリフォームだって……!」
カレン「……はぁ、早とちりしてしまっては困りますね、衛宮士郎」
士郎「あっ……。そ、そうだよな!いくらなんでもこの額を独り占めにできるなんて、そんな……」
カレン「……それは、一人分の『前金』です。実際に作業を行ったら成果を問わず『依頼金』が支払われます。更に、期待通りの成果が得られれば『成功報酬』が支給される予定です」
士郎「……な、なんだって!?ただでさえ大金なのにそんな事になったら……うわあああああああ!」
桜「せ、先輩!落ち着いてください!」
カレン「本当は私だって、あなた達にこんないい話を持って来たくはなかったのですが……はぁ」
ライダー「聖職者としてその姿勢は如何なものでしょう?」
凛「よし!乗ったわ!いいわよね、アーチャー?」
アーチャー「私は君のサーヴァントだ。異存はない」
士郎「お、俺も受けるぞ……いいか、セイバー?」
セイバー「私はあなたの剣です、士郎。常にあなたと共にあります」
桜「むっ……。ライダー!私達も行きましょう?」
ライダー「ええ、桜。私はお金には興味はないのですが……前回の心残りを払拭するいい機会です」
カレン「では、決まりのようですね。ですが、先ほど説明したようにこれは危険を伴う過酷な作業です。今すぐに、というわけにも行きません」
カレン「決行は一ヶ月後です。それまでに準備を整えるなり、周りの人間に別れを告げるなりしてくると良いでしょう」
凛「不吉なこと言わないでよ……」
???「……」
???「……ネットワーク上限定ではあるが、望みを叶える万能の願望器、『聖壺』。そして、魔力によって構築されたゲーム世界『聖壺戦争』」
???「もしかしたら、そこにこそ――」
天草四郎「――『人類救済』の道が示されているのかもしれませんね」