この世に戻ってきてから一か月程経った
今日は1936年の5月だ
私は戦争を始める前、つまり政治家として前回と同じ行動を取っている
しかしこの世界の歴史は前の時と同じように刻まれている
記憶に残っている範囲ならば、他のドイツ人の発言、行動もほとんど変わらないと思う
もう既に生き返ったということは揺るぎない事実だ
ならばやることは一つ
ドイツに勝利を!
コンコン
「総統、お呼びですか?」
「おお、ボルマン君か。入りたまえ」
丁度呼びつけておいた私の個人秘書及びナチ党官房長官が入ってきた
彼の名はマルティン・ボルマン
恰幅のよい男、まあ言ってしまうとデブなのだが意外と動きは俊敏だ
彼は私が死ぬまで忠実な男だった
未来が分かっているので、少し早めに秘書として採用したのである
本人はいきなりすぎて面食らっていたが
「で...話とは何でしょうか?」
ボルマンは椅子に座ると私の方を向き、メモを取り出しそう言った
私は数枚の紙を渡した
この一か月間、何もしてこなかった訳ではない
「メモはいりませんね。では拝見します」
「見ての通り一枚目から四枚目はリスト、五枚目は人事異動のリストについてだ」
「ふむふむ、何のリストかは分かりかねますが有名人の名前多いですね。ヒムラーとかマンシュタインとか」
「人事異動については五枚目に書かれている人物を私の権限で異動させる。後で直接任命するつもりだがね」
「分かりました...で、四枚目までのリストの意味は?」
「まあ簡単に言うとだね、そいつらは私にとって『気に食わない』連中さ」
「あー...把握です」ニヤニヤ
ボルマンはにやつきながら何度も頷く
この一ヶ月間私は『粛清するべき者』を吟味してきた
ハインリヒ・ヒムラー、こいつは裏切り者である
エーリヒ・フォン・マンシュタイン、私の完璧な作戦を何度も妨害した
他の将校なども同じような理由だ
無能なゲーリングは生かしておくことにしよう
奴も裏切った、と言うが奴は一応事前に連合国との交渉について意見してたからな
無断で交渉していたヒムラーよりはまだ可愛げがある
「どのように抹消を?」
「そうだな、親衛隊のラインハルト・ハイドリヒに私の言ったことを全て伝えろ。あいつは必ず実行できる」
「しかし、ラインハルトの上官はヒムラーです」
「その為の人事異動だ。この二人の地位は3日以内に変わるだろうよ。粛清は半年以内には必ず終わらせろ、とも伝えておけ」
ボルマンはしばらく粛清リストを見ていたが、失礼します、と一言言うと部屋を去っていった
1936年6月2日
ラインハルトが親衛隊全国指導者に任命され
ヒムラーが『名誉指導者』という新しい地位に左遷された
そこからはとても速かった
まず、粛清リストの者たちにスパイ疑惑がかかる
そいつらの大半はそれを無視したり反論したりした
始めのうちは国民も皆彼らに同情的だった
次に、ラインハルトが偽造、捏造した大量の『証拠』を新聞などに提出した
新聞はすぐにそれを掲載し、ニュースはそれを大袈裟に報道した
国民は感情的になり即刻排除を求め始めた
実際、リンチで数人が死亡
やがて保安警察が動き始める
当然である、そのトップがラインハルトなのだから
1936年の9月には裁判及び粛清は全て終わっていた
マンシュタインなどはあっけなく処刑、ヒムラーは裁判の為の拘留中に自殺した
因みにこの数か月間、私は何をしていたかというと
~ドイツ海軍司令部~
「レーダー君、君をドイツ海軍元帥に任命しよう」
「ファ!?、えええ、い、いっや、大変な栄光であります!突然すぎてびっくりしましたが!」
「君の頑張りには心打たれてね、まあこれからも頑張ってくれ」
「は、はい!はい!はい!はい!ドイツ海軍をこの手で再建させて見せます!」
「あ、あとこの前起工した戦艦と空母のことなんだが」
「それなら順調に『建造を中心して、今すぐUボートの建造に切り替えろ』...え?」
「あ、あとデーニッツ君も海軍元帥にしたから」
「嘘...でしょう。あのデーニッツでもこんな指示はしない...」
「建造については私の独断だ。言い忘れていたが、元帥を辞めることは禁じる」
「嫌だああああああああああああ!戦艦!戦艦!戦艦んんんんんんん!」
「じゃあ私はこれで」ガチャ
「お"ね"か"い"て"す"か"ら"ら"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!」ドゲザ
「.....」スタスタ
~ドイツ陸軍司令部~
「グデーリアン君、君を陸軍元帥に任命しよう」
「え、マジすか?いきなり?」
「ああ、陸軍は君の好きなようにしていい。自分の持つ構想を最大限に生かすように」
「分かりました」
「では私はこれで」ガチャ
「新しい戦術とかは?」
「勿論だとも」スタスタ
「..........」
「電撃戦やるぜええええええええええええええ!」
~ドイツ空軍司令部~
「ケッセルリンク君、君を空軍元帥に任命しよう」
「あ、そうですか」ショルイカキカキ
「ゲーリングと一緒に頑張ってくれたまえ」
「分かりました」カキカキ
「ゲーリングには言っておいたから」
「左様ですか」カキカキ
「では私はこれで...」
「さようなら」カキカキ
「.....」スタスタ
「.....」カキカキ
「.....」ピタッ
「ふふふふふふふふふふふふふふふ」ニコニコ
元帥を任命していた
他にも軍需大臣にシュペーアを就任させたり
外交面では1936年7月に始まっていたスペイン内戦に遠征軍を派遣した
戦線は順調にフランコ側へと傾いている
こうして慌ただしく1936年は終わろうとして
ソ連では予定通り大粛清が始まっていた
今回はいい流れだ
裏切り者を事前に排除し、有能な人材を元帥その他諸々につけることができた
ラインハルトにはあとで礼を言わねばな
さて1937年はどうするか...
ドイツにふさわしいメンバーを決めようか
今度こそ真の『枢軸』を作るのだ
史実の点で間違っていることがありましたらご指摘お願い致します