色々と文書が酷かったり今は全く書いてない一人称だったりするので、初投稿です。
匿名だから初投稿ということにしておいてください。何でもしませんから!
『神様転生』という言葉がある。
主に版権作品の二次創作等に用いられるそれの意味は言葉の通り。
現世で死亡した人が神様に生き返らせてもらって、違う世界に新しく産まれ直させてくれる。
所謂、転生。それを神様がやるから『神様転生』だ。
その神様転生にも色々と種類がある。僕もそれなりにこのジャンルには興味があったので、生前はこれに関した二次小説を読み漁ってたから知っている。
ただ転生をさせるだけなら、神様を経由する必要なんて無い。なら、何で神様なのか。
答えは簡単だ、その転生者に様々な能力を付加させることが出来るから。
オリ主TUEEEEE!! がしたい作者にとって、こんなに便利なものは無い。
基礎能力を上げるだの、特殊能力を付与するだの、まぁとにかくバリエーションに富んだことが可能になる。
可能性は無限大だ。人のアイデアが続く限り、この手の転生物の物語は続々と書かれていく。
そんな物語を読みながら人は考える。
『もし自分が転生するなら、どんな能力を貰うんだろう?』
そう考えずにはいられない。男は皆が厨二病だ、有りもしない出来事に妄想力を働かせて悦に入る。
僕も悲しいことにその一人になってしまうわけだが、仕方無い。ちゃんとした妄想と割り切ってるだけ、マシだと思って許してもらいたい。
このジャンルを知っている人なら、誰だって自分がチート能力を持った時の事を妄想する筈だ。
やれ魔法だの、超能力だの、人間の域を超えた身体能力だの。どんなチートを選ぶかは自分次第、妄想の幅は留まる所を知らない。
僕にも、自分だったらこうするっていう考えぐらいはあった。ちょっと真面目に考えてみて、直ぐに恥ずかしくなってやめたけど。
とにかく、発想は無限大だ。好き勝手に自分の作った主人公を動かして、原作キャラとどう絡ませていくのも自由。
ハーレムを目指すのも良し、平穏な暮らしを望むのも良し、原作ブレイクを狙うのも良し。あくまでも二次創作の範疇、限度を弁えた範囲なら好きにすればいい。
ちなみに僕だったら平穏を望む。ハーレムなんかに興味は無いし、原作を変えてしまうことが許されるぐらい、自分が偉くなった憶えも無いからだ。
小市民は小市民らしく大人しくしてる、それが長生きをするコツ。普通に平和な世界、結局はそれが一番楽だ。
だから僕もそれに則って生きて来た。そう、生きて来た。生きていた。
その筈だった。
さて、現実逃避もこれぐらいにしておこう。長々と神様転生について説明していたわけだけども、理由はもちろんある。
何故ならば、僕がたった今それに巻き込まれてしまっているからだ。
周囲は真っ白な空間、黒一つ無いそれは不思議と眩しさを感じない。
そして佇んでいる僕の目の前に打ち立てられているのは、神社にある物販とかを行なっている社のそれ。
絵馬とか御札とかそんな物を売ってそうな、何処か懐かしい境内にありそうな社だ。
「どうした、振らんのか?」
「あぁいや……ちょっと、まだ頭の中の整理が付いてないんですよ」
カウンター越しに僕に向かい立つのは、陰陽師のような格好をしたダンディなお爺ちゃん。
御察しの通り、神様っていうやつです。死んだから転生させると、丸っきりテンプレな事をぬかしてくれやがった。
そして僕の手の中にはこれまたテンプレな、おみくじのじゃらじゃら振って棒を出すやつ。同じテンプレでも意味が違う、何だこれ。
そしてこれまたお察しの通り、僕は死んだらしい。自分に関する記憶が全体的に曖昧だから、らしいっていう表現を使わせてもらった。
名前、年齢、境遇、全て不明。ただ全部の記憶が無くなったんじゃなくて、例えば好きなゲームだのアニメだのぐらいは分かる。
日常生活に必要な知識も残ってるみたいだ、もしかしたら目の前の神様に良いように記憶を調整されたのかもしれない。
まぁ、どうでもいいと思う。
今から転生するわけだし、昔の自分のことを引き摺ってても仕方無い。昔よりも今が重要とか、知ったような口でよく言われる言葉だ。
それ自体には同意するけどさ、こんな事態になってしまった以上はそう考えざるをえない。
とりあえずこのお爺ちゃんがぬかすには、このおみくじで出た能力が僕に与えられるということだ。
自由に決めさせろよ、これが転生物の醍醐味だろうが。等と言ってはみたけど、決まりだから変えられないの一点張り。
終いに折れたのは僕の方で、精神力をかなり削られながらもこうしておみくじを引こうとしているわけだ。
「よいしょっと……」
やる気無さげに箱を振ると、小さな穴から細い棒が一本姿を現した。
手に取って内容を見てみると、そこには漢数字で四十四と書かれている。
死々、嫌な数字が見えたと天を仰ぎながら、怪訝そうな顔をする神様に結果を伝えてみる。すると、その顔は気まずそうな、哀れむようなものに変わった。
「四十四か……ご愁傷様じゃな」
「はい?」
「とにかく読んでみぃ」
差し出された、綺麗に畳まれている一枚の紙。正に神社でもらえる、おみくじの結果が書いてあるやつだ。
こんな時に普通のおみくじだったら、「わぁ~、どんな結果になるんだろ~!」と笑いながら楽しくこれを開けることだろう。
けど、今はこれを開けるのが怖い。ただただ嫌な予感しかしなくて、怖くて堪らない。
震える手をなけなしの精神力で押さえ付けながら、ゆっくりと紙を開く。
ちらりと見えた、本来なら吉とか凶とか書いてありそうな場所の文字。
最上部の大きな枠内に記載されているその重要な文字列は、絶望だけを僕に与えてくれる。
『能力名:スペランカー』
一。体質がスペランカーの主人公のものと同等になる。
二。初期の残機は十、一日経過するごとに五だけ回復する。
三。死亡した十秒後に、全快してその場で復活。
四。その他の身体能力は、一般男性の平均並み。
五。残機が零になると復活せずに、そのまま死亡。
六。才能だけは無限大。
「っざけんなあぁぁぁぁぁ!!」
叫ぶ、溢れる涙が止まらない。
僕の転生ハッピーライフは終わりを告げた、儚い夢と消え去って届かぬ星と成り果てた。
それだけの衝撃的な能力だ、これは。というかもう、能力じゃなくてただの特異体質でしかない。
スペランカー。それは有名で人気のある、『死にゲー』と呼ばれるゲームの先駆けとなったものだ。
酸素が無くなれば死ぬ、高いところから落ちれば死ぬ、敵に当たれば死ぬ。
こんなのはまだ序の口だ、問題はその条件と頻度。
例えばこの、高いところから落ちれば死ぬという部分。そりゃあもう死ぬ、自分の身長の半分の高さから落ちれば死ぬ。
スペランカーは日本語で言えば、『無謀な洞窟探検者』。もうこの、無謀という言葉が指し示す通りだ。
とにかく虚弱体質、それがスペランカー。
果てには、幾度となく死にながら洞窟を進むその姿に感銘を受けた者達から、『スペランカー先生』と敬称で呼ばれる始末。
この虚弱体質の程度は、それはもう計り知れない。
実は最近になってこの『スペランカー先生』はアニメ化されていたりするのだが、その中での描写がとにかく酷い。
顔面にサッカーボールがぶつかる。死亡。
生水にあたる。死亡。
ジャンプ一番、自らの膝の高さ辺りから落下。死亡。
夢の中で死んだことにショックを受ける。死亡。
あくまでも一例だ。こんなことがそれはもう、何度も何度も繰り返される。
こんな体質になってみろ、不幸になる未来しか見えない。残機があれば不死身とはいえ、日常的に死に続けるに決まってる。
「チェンジで」
「さて、次は転生先についてじゃが……」
「チェンジでぇぇぇぇぇぇ!!」
「喧しい!! 決まってしまったものは諦めんか、自らの不運を呪え!!」
すがり付いて慈悲を乞うが、神様は鬱陶しそうに僕を振り払う。
「せめて、せめて平和な世界に……」
「その体質の言い訳が通る世界ならば、自由に選べるが?」
「例えば?」
「超能力、魔法。それに準ずるものならばどうにかなるかもしれんな。平和な日常は諦めろ。それとも、スペランカーらしく先生でもやってみるか?」
「スペランカーで先生ですか、なら……禁書世界でお願いします。原石って言えば誤魔化せるでしょうし」
「学園都市で教職ということか? 妥当と言えば妥当じゃな」
「開始年齢とか決めれます?」
「簡単にならば」
「なら、十五歳。高校からお願いします」
「了解した。それなりに特典はおまけしてやる、そう気を落とすな」
「あっははー、ありがとうございます……」
多分、今の僕の眼は死んだ魚みたいになってると思う。
もういいや、諦めた。アニメのスペランカー先生だってそれなりに幸せそうにやってたんだ、僕だって何とかなるだろう。
「設定終了、今からお前を『とある魔術の禁書目録』の世界に送るわけじゃが……まずはこれを渡しておく」
瞬時に神様の手の中に現れた何か、投げ渡された。
落としそうになりながら慌てて受け止めると、それはボタン一つで開けられる、折り畳み式の懐中時計のような丸い物。
チェーンが付いているから、首から掛けて持ち運べるように配慮されてるみたいだ。
試しに開けると、確かにそれは時計だった。今は未設定なのかゼロが並んでいるけど、年月と秒単位まできっちりと表示されている。
ただ気になるのは、右上にある細長い何かのゲージみたいなもの。見た覚えがある、スペランカーのゲームの中で。
そして左上に表示されている、スペランカーの顔と×十の文字。明らかに残機だ。
「この残機は解りますけど、日常生活にゲージなんか必要あるんですか?」
「言ってしまえば体力のようなものじゃな。疲労すれば減り、一撃では死なんような衝撃でも、蓄積されればその身体は崩壊する。その蓄積を、目測でも確認出来るようにしたゲージじゃ」
「あぁなるほど、これはありがたいですね」
納得して、その懐中時計……みたいな何かを首にぶら下げる。ちゃんと胸元に本体が来る辺り、地味な気遣いが感じられた。
これは便利だ、ゲージはともかく残機をいちいち管理する必要が無くなる。
「転送の準備は完了したが、何か最後に質問はあるか?」
「一つだけ。何で、俺が転生の対象に選ばれたんですか?」
「偶然じゃよ。一万人に一人、娯楽を求めるバカ共によって転生者が産み出される。御主には、迷惑を掛けてしまうが……」
「いいですよ、別に。楽しくはなりそうですし、もう一度やり直せるのに文句なんかありません」
無表情のままな神様に向かって、精一杯の虚勢を張り付けてそう言う。
本当は怖いけど、この人が悪いわけじゃない。だから、とりあえず笑ってみた。
「ふん、強がりを言いおって。……ではな、良い人生を」
「はい、ありがとうございました」
「とりあえず足下に注意しろ、死ぬほど痛いぞ」
「へっ?」
何がと聞こうとした瞬間、視界がブレて急激に変わっていく。
そして目の前に現れたのは、何処かの路地裏の風景。多分、禁書の世界の学園都市の一角だ。
その上空、約二メートル。
「あっ」
気付いた時にはもう遅くて、叫び声を出す暇も無い。景色がゆっくり流れるこれは走馬灯なんだろうか。
短い、人生だった。生まれて一瞬で、僕は今、死ぬ。
着地、グキッと足の骨が折れる音がした。
「ぎゃあああぁぁぁぁぁぁ!?」
テンテテンテテンテテンテテッテッテ。と、軽い音楽が聴こえたような気がした。
同じテンプレでも意味が違う。という一文に自分でちょっとクスッときたので投稿した、それだけです。
続き? んなもんねーよ……
この後は上条さんと不幸の二台巨塔的な関係にしようと思ってましたが、本当に戦闘やらが何も出来ないので関わらせようがなかったのです。