「どういうことですの」
ダイヤさんの叫ぶ声が聞こえる。
俺は今、マリーがダイヤと二人きりで話したいからと言ってきたので俺は理事長室から理事長室の前で出て話が終わるのを待っている。
それにしても、ダイヤさんとマリーのやつなんの話ししてるんだ?いつものマリーのセクハラに怒っている叫び方じゃなかったしな。それから導き出すとしたら多分「統廃合」の話だろうな。時々マリーに頼まれて書類の整理を手伝ってた時に見る統廃合についての書類。たぶん、マリーはそれを止めたいんだろうな。
そんなことを考えてるとダイヤさんが出てきた。ダイヤさんは俺を見たあと無言でどこかへ行ってしまった。そして、そのあとマリーも出てきた。
「ごめんね、愛護。追い出して」
「別に気にしてない。大事な話だったんだろ?」
「うん」
「少し休憩したらどうだ?コーヒー淹れてやる」
「ありがとう。でも、大丈夫よ。あっ、でもコーヒーは淹れてね」
「わかった」
俺とマリーは理事長に入りマリーは理事長用のイスに座り、俺はペーパードリップでコーヒーを入れ、マリーの前に置いた。
「ありがとう」
「どういたしまして」
俺はもう一つ置いてあるイスに座った。
「統廃合するの」
マリーが呟いた。急に喋り出したことにより一瞬驚いたがすぐに冷静になり俺も一言呟くように言った。
「知ってる」
「やっぱり、知ってたのね。別に構わないから書類の整理を手伝っててもらってたんだけど、今日発表するつもりだったから」
「そうか。で、俺は何をすればいい?」
「へ?」
「マリーのことだ。阻止したいんだろ?それなら、とっとといつも通り命令してくれ。俺はお前の味方だからな」
「愛護………うん、ありがとう。じゃあ、Aqoursのみんなのサポートよろしくね」
「それっていつもと変わらなくないか?」
「うん、でもそれが一番大事なの。愛護、スクールアイドルのことそんなに知らないけどμ'sは知ってるよね」
「まあな、あの人たちがどうかしたのか?」
「μ'sの学校も廃校になりかけたけど彼女たちの頑張りによって学校に人気が出て廃校を阻止したの。だから……」
「だから、Aqoursのみんなにも人気になって入学希望者を集めてもらわないといけないってわけか」
「うん」
「わかった。まかせろ」
「……ありがとう、愛護大好き」
ちょっと落ち込んでいたが、最後にからかう余裕が出てくるほど元気になったらしい。
「じゃあ、早速彼女たちを手伝ってくるな」
「うん、お願いね」
そして俺は立ち上がり、部屋を出て部室に向かった。
●●●
「……とは言ったもののどうすればいいんだ?」
全然、いい考えが浮かばないまま体育館の近くまできた。その時、千歌が走り回っているのが見えた。
「はあ、あいつは元気だな」
少し苦笑した。
しかし、よく千歌の声を聞いてると
「廃校だよぉぉぉ!」
待て待て、は?廃校のことを知ってるのはいいとしてあいつなんでそれで嬉しそうなんだよ。さっきのマリーの悲しそうな顔見てからだとなんていうか神経疑う反応なんだが…何か考えがあって言ってるなら良いんだが…
そして、俺は部室に入るとちょうど走り終わった千歌が反対側の扉から入ってきた。
「あ、愛くん!廃校の話知ってる?」
「知ってるけど」
俺は自分でも無意識に質問をかなりキツイ言い方で返した。たぶん少し無神経な千歌に少し怒ってるんだろう。
「愛くん、何かあったの?」
俺が機嫌悪いのに気づいたのか曜が俺だけに聞こえるように話しかけてきた。
「いや、廃校をあんなに嬉しそうにしてさ、そんなにこの学校が嫌いなのかなって思ってさ」
「違うよ。千歌ちゃんはこの学校のことが大好きだよ」
「じゃあ、なんで?」
「μ'sと同じ状況なのと。あと、単純に事の重大さにイマイチにわかってないんだと思う」
「そっか、わかった」
曜の説明で一応、自分の中で納得し落ち着かせた。
「愛護さんはどう思います?廃校について」
ルビィちゃんが廃校について聞いてきた。
そして、考えてみてわかった。確かに俺もマリーに言われて廃校阻止するために動こうとしたが…俺自身はこの学校に来て間もないし大して愛着もない。それにもし沼津の学校と統廃合になれば共学になるかもしれないから肩身も狭くなくなるしで正直統廃合の方がメリットがある。……俺も人のこと言えないな。
(ごめん、千歌)
俺は心の中でさっきの態度について千歌に謝った。そして、ルビィちゃんに率直な感想を伝えた。
「正直、どうでも良いかな」
「そうですか…花丸ちゃんは?」
ルビィちゃんは花丸ちゃんにも聞いてみた。
「統廃合‼︎」
なんか、かなり眼を輝かせてるんだが…
「統廃合ってことは沼津の学校に通えるずら?そしたらあの街に通えるずらか!?」
「相変わらずねずら丸。昔っからこうだったわ」
そんな、善子ちゃんが言うには昔センサーライトを見て「未来じゅらー」と言ったらしい。
「善子ちゃんはどう思う?」
ルビィちゃんが善子ちゃんにも聞いてみた。
「そりゃ、統合した方がいいに決まってるでしょ!私みたいに流行に敏感な子がいっぱいいるんだから」
「中学の時の友達にも会えるしね」
「統廃合絶対阻止!」
なるほど、善子ちゃんにはあの過去があるもんな。それにしても花丸ちゃん、今のは本心で善子ちゃんに良かれと思って言ったのか、腹黒いのかどっちだ?
「とにかく!学校のピンチとなれば私たちAqoursも学校を救うため行動します!」
千歌のこの一言でAqoursも統廃合阻止に動き出す方向に活動することが決まった。
「ところで、何をするの?」
「……へっ?」
梨子の質問に気の抜けた返答がきたのでみんな幸先が不安になった。
●●●
「PV?」
「うん、東京と違ってみんな内浦のことよく知らないでしょ。だから、まずは知ってもらえればいいなって」
「だからPVか」
「うん」
こうして、千歌の提案でPVを撮ることになった。確かに千歌の言うことには一理ある。
「というわけでよろしくね」
千歌の指示で曜が花丸ちゃんとルビィちゃんにカメラを向けたが…
「おらには無理ずらー」
「ピギィ!」
二人は逃げた。ていうか、堕天使衣装はオッケーでこれはダメって彼女たちの基準がわからないんだが。
「二人とも、逃げてちゃ撮影が進まない」
「「ごめんなさい」」
二人は俺に注意されて戻ってきた。そして、なんとか撮影を始めたが…
「どうですか、この綺麗な富士山、そして綺麗な海。みかんもどっさりそして、街には……街には……特に何もないです」
「「それ言っちゃダメだろ(でしょ)」」
千歌がPVにおいてタブーな事を言ったので俺と曜は同時にツッコんだ。
それからというものの…実際はバスで500円以上かかる沼津をちょっと行ったらとか言い出すし、坂を息をゼエハア言わせながら登った先にある伊豆長岡の商店街をまたもやちょっと行ったらで片付けるし、最終的には善子ちゃんにヨハネをやらせるしでダメだなこりゃ。
まあ、一応一通り撮影したので千歌の喫茶店にやってきた俺たち。
「ていうか、なんで喫茶店なんだ?」
「そうよ!」
俺と善子ちゃんが率直に思った事を聞いてみた。いつもなら千歌の家だし(まあ、いつもお邪魔するのもどうかと思うが)、学生としては出来るだけ出費は減らしたい。
「梨子ちゃんがしいたけいるなら来ないって」
「行かないとは言ってないでしょ。ちゃんと繋いどいてくれたら大丈夫よ!」
あー、なるほど犬嫌いの梨子のためか。でもさ…この店もいるよな、しいたけほど大きくないが。
「キャン」
やっぱり、犬だよな。
「エェー‼︎」
梨子がかなり驚いて足を椅子の上まであげた。
「こんなに小さいのに!?」
「大きさは関係ないのその牙!そんなので噛まれたら死んじゃう」
「噛まないよねわたちゃん」
千歌は子犬をわたちゃんと呼びながら抱き上げた。
「あっ、そうだ。わたちゃんで慣れてみたら」
千歌はそう言って、梨子の顔にわたちゃんを近づけた。確かに子犬で慣れるのはいいと思うが…結局、わたちゃんが梨子の鼻を舐めてしまったことにより梨子は隠れてしまった。
「はあ、ダメか」
「梨子、怖いにしても流石にその反応はどうかと思うぞ」
俺はそう言いながら、千歌からわたちゃんを受け取り頭の上に乗せた。
「どういうこと?」
「動物だって感情はある。せっかく仲良くなろうと近づいてきたのにそんな反応されたらおまえだって傷つくよな」
「クゥン?」
「まっ、梨子が心構えする前に無理やり近づけた千歌も悪いけど」
「あはは、ごめんね梨子ちゃん」
「う、うん。愛護くんその子に謝っといてくれる」
「はいよ。だってさ」
「キャン」
そして、俺はわたちゃんを頭に乗せながらさっき座ってた所に戻った。ちなみに善子ちゃんの目の前だ。席に戻ると善子ちゃんが編集作業をしていた。
「どうだ?」
「一通り出来たけど…」
「ん?どうした?」
「視線が二つあるからちょっと変な気分ね」
俺の上に乗っかってるわたちゃんも善子ちゃんをじっと見つめてるらしい。
「まあ、いいわ。出来だけど、お世辞にも魅力的とは言えないわね」
「もう一度、一から考えないとね。あっ!終バス来ちゃった!」
曜がそう言うと、曜と善子ちゃんは慌てて荷物をまとめて店を飛び出していった。
そのあと、花丸ちゃんとルビィちゃんも時間なのか慌てて飛び出していった。
三人と一匹になった。喫茶店は一瞬にして静かになった。
「難しいんだね、魅力を伝えるって」
「そうだね」
「でも、やってみてわかった。無くさせちゃダメだって。私、浦の星が大好きなんだって」
「そうか」
「じゃあー、みんなで頑張ろう!」
こうして、千歌は決意を新たにして廃校に向き合う事を決めた。
●●●
その夜…
俺たちの家に果南さんが訪ねて来た。
「来るなら、来るって言ってよ。急に来たら愛護が激おこプンプン丸だよ」
待て、確かに急に来て驚いたのは認めるが激おこプンプン丸ではない。
「なんで、彼がここにいるの?」
「果南、愛護のこと知ってたの?」
「千歌たちと走ってるのを見たことがあるだけ」
「そうなんだ。ちなみに愛護は私の執事」
「そう、本題なんだけど廃校になるって本当?」
「ううん、そんなことさせない。でもそのためには果南の力が必要なの」
マリーは復学届を果南さんに見せた。
「本気?」
「私は果南のストーカーだから…」