東京から帰って来た俺たちは学校のみんなに迎えられた。でも、ルビィちゃんが迎えに来ていたダイヤさんを見てから悔しかったのか急に泣き出したのでみんな何かを感じて今日は何も言わず帰ってくれた。
そのあと、ダイヤさんに起こったことを伝えた。勿論得票数0のことも…
「得票数0ですか。いつかこういうことになると思ってましたわ。でも、勘違いしないでください。あなたたちは別にダメだった訳ではないんです。たくさんの練習を積み観ている人を楽しませるパフォーマンスをしている。でも、それだけではダメなのです」
「どういうことです?」
「7,236。何の数字かわかります?」
「ヨハネのリト…「違うずら」ツッコミ早!」
「去年、最終的にラブライブにエントリーしたスクールアイドルの数ですわ。第一回大会の十倍以上」
「…そんなに」
「スクールアイドルは以前から人気がありました。しかし、ラブライブの大会の開催によってそれは爆発的なものになった。A-RISEとμ'sによりその人気は揺るぎないものになりアキバドームで決勝が行われるようになった。そして、レベルの向上を生んだのですわ」
「じゃあ…」
「そう、あなたたちが支持されなかったのも私たちが歌えなかったのも仕方のないことなのです」
「歌えなかった?」
「どういうこと?」
「二年前から浦の星には統廃合になるかもと噂はあったのですわ。だから、私たちはスクールアイドルを始めたのですわ。そして、あなたたちのように東京に呼ばれましたの…でも、歌えなかったのですわ。他のグループのパフォーマンスの凄さ、たくさんの観客に圧倒されて何も歌えなかった…あなたたちは歌えただけ立派ですわ。でも、いつかこうなると思ってきたから…」
ダイヤさんは知っていたのだろう上にあがることがどれほど難しいか。一生懸命に練習をしたって立ちはだかる壁があることを。だから、彼女は俺たちの為に嫌われ役にまでなって止めようとしたり注意したりしてたのだろう。
話が終わると俺たちはそれぞれの家へと帰った。今日のこと、ダイヤさんの話のことを考えてるのだろう。みんな俯いて終始無言だった。
●●●
次の日、曇天の中俺は朝起きると砂浜を歩いていた。何がしたかったのかはわからないが気づいたら歩いていた。
すると、海に向かって走っている千歌の姿が見えた。俺は何事かと思い彼女の元へと走っていった。すると、違う方向から梨子もやって来た。多分、家から千歌の様子が見えたのだろう。
「梨子!」
「愛護くん!千歌ちゃん見なかった?」
「見たぞ。海に飛び込んでいった」
「嘘!千歌ちゃーん!千歌ちゃーん!」
梨子は千歌のことが心配なのか必死に叫ぶと千歌が何食わぬ顔で海から顔を出した。
「どうしたの?愛くんも梨子ちゃんもそんなに慌てて」
「どうしたの?じゃないわよ!いったい何してるの!」
「えっ!?あー、何か見えないかなぁ?って」
「えっ!?」
「は?」
「ほら、梨子ちゃん海の音を探して潜ってたでしょ」
「そんなことしてたのか!?」
「えっ!?…うん」
「そういえば、愛くん知らなかったね。そう、梨子ちゃんそんなことしてたの。で、今度は私もなんか見えないかな?って思ったの」
「それで、何か見えたの?」
「ううん、何も」
「何も?」
「うん、何も見えなかった。でもね、だから思った。続けなきゃって…私、まだ何も見えてないんだって先にあるものが何なのか、このまま続けても0なのかそれとも1になるのか10になるのか…ここでやめたら全部わからないままだって」
「「…千歌(ちゃん)」」
「だから、続けるよスクールアイドル。だってまだ0だもん!…0だもん、0なんだよ。あれだけみんなで練習してみんなで歌を作って衣装もPVも作って、頑張って頑張ってみんなにいい歌聞いて欲しくてスクールアイドルとして輝きたいって…なのに0だったんだよ!差がすごいあるとか昔とは違うとかそんなのどうでもいい!悔しい!」
誰から聞いても分かるほど千歌の声は途中から震えていた。今まで悔しいという気持ちを溜め込んでいたのを爆発させて喋り続ける。
「…悔しいんだよ」
その一言を聞くと梨子も海に入っていきゆっくりと千歌を後ろから抱きしめた。
「良かった。やっと素直になれたね」
「だって、私が泣いたらみんな落ち込むでしょ。今まで頑張って来たのに悲しくなっちゃうでしょ。だから…だから」
千歌はAqoursのリーダーみたいでムードメーカーであるから確かにみんな動揺する。だから、さっきまで泣かないように我慢していたのか。そんな、重圧を背負わせていたのか。
「バカね。みんな千歌ちゃんのためにスクールアイドルやってるんじゃないのよ」
梨子が俺の方を向いた。いや、俺の後ろの方を見てる。だから、俺も振り向くとそこには曜、ルビィちゃん、花丸ちゃん、善子ちゃん。みんながいた。
「曜ちゃんもルビィちゃんも花丸ちゃんも善子ちゃんもいる」
「…でも」
「だから、いいの千歌ちゃんは感じたことを素直にぶつけて」
梨子ちゃんがそういうと陽たちも海に入っていった。
「みんなで一緒に歩こう。一緒に」
梨子がそういうと千歌はさらに大声で泣きだした。
「今から、0を100にするのは無理かもしれないでももしかしたら1にすることはできるかもしれない。私も知りたいのそれができるか」
「うん!」
千歌が元気よく答えるとまるでAqoursのみんなを見守るように太陽が顔を出した。
…敵わないな。俺も何か気の利いたことを言おうと思ったんだが、梨子が…みんなが…解決してしまった。
でも、俺も彼女たちの力になりたい!できることをしてやりたい!
「おーい、みんなあがってこい!」
「うん、今行くね愛くん」
千歌たちは俺に呼ばれ海から上がって来た。
「愛くんもごめんね。心配かけて」
「大丈夫だ。俺の方こそごめん。支えるつもりが千歌の背負ってるものに気づけなかった」
「ううん、いいんだよ。みんないるってわかったから。愛くんもこれからも一緒にいてくれる?」
「ああ!」
「ありがとう!」
千歌が突進するように抱きついて来たので慌てて受け止めた。
「じゃあ、よろしくね。愛くん」
「よろしく。…で悪いんだが千歌。そろそろ離れてくれないか?」
「えっ!?あっ、ごめんね。ちょっと抑えられなくなって」
「いいんだよ、これからはそれで。それより、みんな朝ごはんは食べたか?」
「「「朝ごはん?」」」
俺が急に朝ごはんの話題を振ったからみんな素っ頓狂な顔をしている。
「作ってやるよ、みんなの新しい門出を祝ってな!」
俺がそういうとみんなの顔は笑ってくれた。