見習い執事?とAqours   作:鳥王族

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16話:伝わらない思い

 

「夏祭り?そんなのあるのか」

「沼津の花火大会って言ったらここら辺じゃ1番のイベントだよ」

「屋台も出るずら」

「なるほど、それはお客さんが来そうだな」

 

俺たちは今、夏祭りの企画で歌を歌わないかとオファーが来ている。そのことについて参加するかどうかを千歌の家にみんなで集まって話し合っている。

 

「これは、痕跡…わずかに残っている気配…」

 

いや、一人全然話に入ってないわ。長椅子に横になって一体何をしてるんだよ。

 

「どうしよう、東京に行ってからすっかり元に戻っちゃって」

「戻ったというか悪化してないか?」

「ほっとけばいいずら」

「花丸ちゃん厳しいな。まあ、でも逆に言えば善子ちゃんの魅力が高まったってことか」

「へ!?な、何よいきなり!ていうかヨハネ!」

 

善子ちゃんは急に顔を真っ赤にしたと思ったら体を起こし迫って来た。

 

「いや、だって千歌が言ってたじゃん。そのままでもいいって今の善子ちゃん好きなこと出来てるからなのか初めて会った時に比べて笑顔が増えていいと思うぞ」

「そ、そんなこと真顔で言うな!」

 

褒めたつもりなのにさっきよりも大きな声で迫られた。

 

「ごめん」

「本当に。で、で、出るの?夏祭り」

 

善子ちゃんは顔を真っ赤にさせながら急に話題を変えた。

 

「私は、今は練習に専念した方がいいと思うけど」

「千歌ちゃんは?」

「私は出たいかな」

「そっか」

「今の私たちの全力を見てもらう。それでダメだったらまた頑張る。それを繰り返すしかないんじゃないかな」

 

千歌のこの一言でみんなの意思が固まった。

 

「ヨーソロー!賛成であります」

 

曜が元気よく返事をする。

 

「変わったね千歌ちゃん」

「この前のことで何か吹っ切れたんだろうな」

「うん」

 

こうして、俺たちは夏祭りに参加することが決定した。…が何か千歌は何か別のことでモヤモヤしているように見える。

 

「どうした?千歌」

「いや、果南ちゃん。どうしてスクールアイドルやめたんだろうって思って」

「それなら、生徒会長が言ってたでしょ。東京で歌えなかったからだって」

「でも、それぐらいでやめちゃうような性格じゃないと思うんだけどな」

 

千歌の言ってることも少なからずわかる。マリーと時折話してるとこを見ていると気が強くて頑固なイメージだ。一度の失敗でくじけるとは思えない。

 

「でも、今の俺たちで考えたって答えは出ないよな。情報が少なすぎるマリーと一緒にいる時間は長いとは言えあくまでも最近の話だからな。当時からずっと一緒にいるってならまだしも」

「…当時から」

「…ずっと」

「…一緒に!?」

 

俺が何気なく言った一言に千歌、曜、梨子の三人が反応した。そして、顔をまるでフクロウのように動かしルビィちゃんを見た。

 

「ルビィちゃん、ダイヤさんから何か聞いてない?」

「小耳に挟んだとか」

「ずっと、一緒に家にいるのよね」

 

三人がルビィちゃんに畳み掛けるように問う。ルビィちゃんは年上の三人に一斉に話しかけられたことによりパニックになり逃げ出した。それを俺もどうしても話を聞きたかったためルビィちゃんの進行方向を塞ぎ壁に追い詰め顔の横に手を置いた。俗に言う壁ドンだが、甘酸っぱいものではなく俺の眉間にはシワがよっている。

 

「ルビィちゃん、逃げないで答えてくれあの三人に何があったのかを!」

「えっーと…」

「頼む!」

「ピギィ!」

 

ルビィちゃんは俺が大声を上げたことに驚いて縮こまって震えだした。俺はそれを見て冷静になった。

 

「ごめん、ルビィちゃん。怖がらすつもりはなかったんだ。本当にごめん」

 

俺はルビィちゃんに頭を下げる。

 

「大丈夫です。ルビィもちょっと驚いただけです」

 

俺が顔を上げるとそこには震えが止まって笑顔のルビィちゃんがいた。でも、俺には普通に接することが出来るようになってたけどルビィちゃんは男性恐怖症の節があることをすっかり忘れていたことに俺は猛烈に反省した。

 

「本当にごめんな。…それで、ダイヤさんたちのことで何か聞いたりしてないか?」

「えっと、ルビィが聞いたのは東京のライブで歌えなかったってことだけです、そのあとはスクールアイドルの話をしなくなったので。ただ、聞いたんじゃなくて理事長さんと話してるのが聞こえたんですけど…」

 

ルビィちゃんによると以前マリーがダイヤさんに会いに行った時、ダイヤさんは果南さんが逃げてる訳ではないから果南さんのことを逃げたと言わないでほしい。と言ったらしい。

 

「逃げた訳じゃないか」

「ダメだ、わからない。逃げただの逃げてないだの」

「そうだよね」

「うーん…もう、よくわかんないから果南ちゃんのことを調べよう!」

「調べるってどうやって」

「それは、やっぱり尾行だよ!だから、みんな明日果南ちゃんを尾行するから早朝にここ集合ね!」

 

千歌がどんどんと果南さんを尾行する話を進めていき、結局明日俺たちは尾行することが決まった。

 

 

 

●●●

 

 

 

「眠い」

 

俺たちは早朝集まって現在果南さんのランニングを尾行している。

 

「それにしてもペース早いね」

「しんどいずら」

「どこまで走るんですかね」

「あのさ、みんなしんどいなら喋らない方がいいぞ」

「そうなんだけど。やっぱり、みんながいると喋っちゃうよ。ていうか愛くんはなんでそんなに楽そうなの」

「いつもみんなと走ってるのと、あとは男だからみんなより体力つくのが早いんじゃないか?」

 

正直俺もこんなに楽に走れるとは思ってなかったからびっくりしてる。

 

そして、果南さんが止まった頃にはみんなゼエハア言ってかなりしんどそうだった。

一方、果南さんはと言うと踊っている。それもかなり楽しそうに。その姿はまるでアイドルのようだった。それを見てるとスクールアイドルが嫌になったとはやっぱり思えない。

 

「…綺麗」

 

一緒に隠れて果南さんを見ていた千歌もついつい声を発してしまうほどそのダンスは魅力的だった。

 

ダンスが終わり果南さんが止まるとどこからか拍手が聞こえるとマリーが出てきた。俺たちと違う所で隠れて果南さんを見ていたのだろう。

 

「復学届提出したのね」

「…まあね」

「やっと、逃げるのを諦めた?」

 

俺は隠れて見ていてマリーが「逃げる」と言う単語を口にした瞬間、果南さんの表情が変わった気がした。

 

「勘違いしないで休学していたのはあくまで父さんの怪我が元であってスクールアイドルは関係ないし、復学してもスクールアイドルはやらない」

 

そう言うと逃げるように果南さんは歩き出した。それを逃さないようにマリーは口を開いた。しかも、いつものふざけたカタコトで英語混じりではなかった。

 

「私の知ってる果南はどんな失敗をしても笑顔で次に走り出していた。成功するまで諦めなかった」

 

マリーの言葉に反応し果南さんは歩みを止めた。

 

「卒業するまであと一年も無いんだよ」

「それだけあれば十分。それに、今は後輩もいる」

 

マリーと果南さんの少し険悪な雰囲気の話に急に自分たちが出てきたことにより千歌たちは緊張し始めた。

 

「だったら千歌たちに任せればいい」

「…果南」

 

自分の知ってる果南さんならば絶対言わないであろう言葉を果南さんが発したことでマリーの目が潤み始めた。だが、そんなことが関係ないと言うが如く果南さんはマリーを責める。

 

「どうして戻ってきたの?私は戻ってきて欲しくなんてなかった」

「相変わらず果南は頑固なんだから」

 

マリーは今にも泣きそうになりながら言う。もはや強がりで、果南さんは頑固であるだけだと自分に言い聞かせるように言った。しかし…

 

「もうやめて。もうあなたの顔、見たくないの」

 

マリーを絶望に突き落とす一言を果南さんは言った。その一言でマリーは泣き崩れた。そして、果南さんはその場を去っていった。

 

でも、俺は感じた果南さんも本当に苦しそうに絞り出してその言葉を言った。だから、なんでそんな風に言うのかわからなくて怒りを覚えたが今は傷ついてるマリーのフォローが優先順位が上だと判断した俺は隠れていたことなど忘れてマリーに近づいた。

 

「あ゛、あ゛いごー」

 

マリーは俺に気づくと俺に抱きついた。俺はマリーが落ち着くまで彼女の頭を優しく撫で続けた。

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