俺たちはあの後解散し学校に登校して来ている。今日から果南さんも登校してるらしい。
「そういえば愛くん。マリーさんは大丈夫?」
「ああ、今は落ち着いてるはずだ。まあ、あいつのことだしまだ諦めずに果南さんにアタックするんじゃないか?」
「でも、さすがに顔も見たくないって言われるのはきついよねー」
「果南ちゃん、あんなこと言う人じゃなかったのに」
「それほどあの三人の関係が複雑というか噛み合ってないというか何だろう。あっ、あいつ朝のことで弁当を持って行き忘れてたんだ。ちょっと行ってくる」
「いってらっしゃい。ていうか、何で愛くんマリーさんのお弁当持ってるの?」
急に曜が質問して来たので俺は声が裏返ってしまった。
「え!?何でって俺が作ってるから」
ここで、俺は自分の失言に気づいた。俺は要らぬ疑いをされないために執事のことは言ってあるが一緒に住んでることは言ってないんだった。
「まあ、執事さんだから作ってるのはいいとして、別々に住んでたら愛くんが渡し忘れたんだよね。でも、今愛くんはマリーさんが持って行くの忘れたって言ったよね。もしかして一緒に住んでるの?」
曜は面白いことを知ったかのように少しニヤニヤしている。
「あはは、何のことかな!」
「あっ逃げた」
俺は急いでカバンから二つある弁当箱の小さめの方の弁当箱を持って教室を出た。
いつも俺とマリーは一緒に登校してるわけではない。理事長の仕事とかAqoursの朝練とかで二人の登校時間がずれることがあるから、基本的に朝作って弁当箱に詰めて机の上に置いておく。そしたら、マリーが勝手に取って行くんだが…今日は果南さんのことがあってショックだったのか弁当置いて行ったのを後から出発する俺が気づいて今、持って来ている。ちくしょー曜のやつ感が良すぎないか?
まあ、そんなことを言ってもしょうがないと思い俺はマリーの教室に駆け足で向かった。
上の階に向かう階段を登っているといつもより上の階が騒がしかった。すると、三年生の方が俺を見るなり俺に話しかけて来た。
●●●
ーーーマリー視点ーーー
私は今、一年生の頃に着ていたスクールアイドルの衣装を持って果南に勧誘している。
朝はあんなことがあったけど決して本心じゃない。果南は頑固なだけなんだからそう思って話しかけたら果南は怒りだした。そして、今はクラス中を巻き込んでる。でも、私も引けない!
「果南、もう一度やろ」
もう一回、果南に衣装を広げて見せる。すると、果南が近づいてくれた。衣装を受け取ってくれる物だと思った私は掴んでる力を少し緩めたその時、果南は私から衣装を受け取るというより奪う感じで持って行くと外に出て投げ捨てた。
「ちょっと!果南、あれは大事なものでしょ!」
「あれはもう、私には要らないもの。二度とこんなことしないで」
それを聞いた私は無我夢中になって果南にしがみついた。
「ちょっと!何するのよ!」
「果南がスクールアイドルをまたやるって言うまで離さない」
「何よそれ!離しなさいよ!」
「だから、離さない!果南がやるって言うまで!」
「そんなこと絶対に言わない!離せ!離せって言ってるの!」
「離さない!」
私たちは周りを気にせずに大声を出し合っている。そのため、周りも少しさっきよりもざわついてる感じがするけど私は気にせず腕の力を強めた。
「離せ!」
「離さない!」
「離せ!」
「離さない!」
「二人ともおやめなさい、みんなが見てますわよ!」
ダイヤが止めに入るけど私は止まる気がない。
「ダイヤも本当はそう思ってるんでしょ!いつまでもたった一度の失敗でネガティブになって、千歌っちたちはもう乗り越えたわよ!」
「やめなさい!果南さんは再びスクールアイドルをやることはありませんわ!」
「そうよ!私はスクールアイドルはやらない!ていうか、いつまでもはどっちよ!もう二年前のことなんだよ!」
さらにヒートアップする私たち。でも、そんな時ドスっと鈍い音がしたと思ったら果南が動きを止めた。あまりにも急なことだったので私も不思議に思って力を抜いて果南を見ると果南は何かを見て怯えてるように見えた。私も気になり果南の目線を追うとそこにはいつもとは違い恐ろしく黒いオーラを纏っている愛護がいた。
「いい加減にしろ」
…そういえば、ダイヤの他にやめろって言ってる人がいるなーとは思ってたけど愛護だったなんて。それより、愛護って怒ったらこんなに怖いのね。静かなのが逆に怖い。
「三人とも放課後、スクールアイドル部の部室に来い」
「…な、なんでそんなことしなくちゃダメなの!」
果南が少し緊張しながら返答した。わかるわよ果南。今の愛護に反論なんて怖くて出来ないわ。
「来い!」
「は、はい」
でも、それを来いの一言で一蹴した愛護は私に弁当箱を渡して帰っていった。
●●●
放課後になった。俺が怒ったことにより三年生の三人は素直に放課後部室にやってきた。
正直言ってあんなに怒ったの生まれて初めてなんだよな。俺って怒るとああなるのか。でも、野次馬で見てたAqoursのみんなが今俺にほんの少しだけ怯えてるのがちょっとショック。
とか何とか考えてると話が始まった。千歌がスクールアイドルをやめた理由、やらない理由を果南さんに何度も聞くが果南さんは相変わらず東京で歌えなかったからの一点張りでマリーだけでなく千歌までイライラし始めた。
「あー、もうイライラする!」
「わかるわ、その気持ち!ほんと、腹立つよねこいつ!」
「二人が勝手にイライラしてるだけでしょ。とにかく、私はスクールアイドルなんてやりたくないの!」
果南さんはマリーたちに少し強めに言い返した。
「でも、弁天島で踊ってたよね」
「うん」
ルビィちゃんが花丸ちゃんに確認するように言った言葉に果南さんは顔を真っ赤にした。
「ほら〜、やっぱり未練あるんじゃないの?」
マリーが勝ち誇った顔で果南さんに詰め寄った。その時、それを見て何故かダイヤさんが嬉しそうな顔をしたのに俺は気づいた。
「そんなことない!私はもうスクールアイドルはやらない!この話終わり」
果南さんは見るからに強引に話を切り上げると荷物を持って帰っていった。
「まったく、せっかく話し合いの場用意したのに。…ところで、ダイヤさん。何か隠してませんか?」
「えっ、私は何も…」
この人…普段嘘つかないんだろうな。嘘つくの下手すぎる。まあ、それがいいところなんだけど。
「ダイヤさん、隠しても無駄ですよ」
「だから、私は何も…」
「…言え」
「…えっと」
俺はさっき怒った時のように怖いオーラを今度は自力で出してみてダイヤさんを脅す。あまり、いい方法じゃないけど今は致し方ない。おまけで他の人も怯えさせるから乱用は禁止だな、この技。
「わかりましたわ。ここでは何なのでウチで話しますわ」
「ありがとうございます。じゃあ、みんな行こうか」
俺が普段通りに戻るとみんな安心したようにため息をついた。ていうか、そんなに怖いんだろうか?
●●●
黒澤家に着くと早速ダイヤさんが話してくれた…真相を。
東京のライブの時、マリーは怪我をしていた。そのまま踊っていれば怪我が悪化、最悪の場合事故になる危険性もあったため果南さんは歌わなかったらしい。それが逃げた訳ではないという意味らしい。
「でも、それなら怪我が治ってからまた始めれば良かったんじゃ…」
千歌が疑問に思ったことを口に出した。確かに千歌のいう通りだ。でも、俺はもう一つの理由に心当たりがあった。
「留学か?」
「その通りですわ。ですけどなぜそれをあなたが知ってるんですの?」
「以前、マリーの運転手さんに聞いたことがある。何回も留学の話を断っていると」
俺は以前仲良くなった運転手のおじさんが言ってたことを思い出した。
「それなら、辻褄が合うんだ。マリーの将来を考えてわざと離れたんだと思う」
「その通りですわ」
俺の推測をダイヤさんが肯定したのと同時にマリーが走り出した。
「どこへ行くんですの?」
「ぶん殴る!そんなこと一言も相談せずに!」
「おやめなさい、果南さんはずっとあなたのことを見てきたのよ。あなたの立場をあなたの気持ちを…そして、あなたの将来を…誰よりも考えている」
ダイヤさんは説得するために言った言葉は逆効果でマリーは再度走り出し、家を飛び出して行った。
「ちょっと、鞠莉さん!」
「ダイヤさん、無駄ですよ。てことで、俺もちょっと行ってきます!」
「ちょっと愛護さんまで!外は大雨なのですよ、いったいどこに行くんですの!?」
俺も家を飛び出した。果南さんの家に向かって。
●●●
雨の中、ビショビショになりながら果南さんの家のダイビングショップに着くと雨でお客さんがいないのか暇をしている果南さんを見つけると店の中へ入った。
「いらっしゃいま…愛護くん。何の用?もう話は終わったでしょ」
「もう、ダイヤさんから理由は聞きました」
「えっ!?……じゃあ、わかったでしょ。マリーの将来を考えたらこれが一番なの、マリーは歳下とはいえあなたみたいな執事がいるんだよ。私たちとは違うの。あの子の立場を考えると私たちとスクールアイドルをしてるより留学とかした方がいいに決まってる!だから、先生も何回もマリーに留学を勧めてた!」
果南さんはマリーのことなんか嫌いになっていない。それどころか大好きだから一歩引いてマリーのことを考えてる。でも、それが…俺は許せない!
「…なんだよそれ、マリーの立場とかあんたには関係ないだろ」
「何言ってるの!関係あるに決まってる!」
「はあ!!あんたはマリーの親か!?先生か!?違うだろ!なんで一歩引いて勝手に決めてんだよ!あんたは友達だろ!対等だろ、なんで、そんな特別に扱うんだよ!」
「大切な友達だから特別に扱うに決まってる、幸せになってほしいに決まってる!」
「あんたの特別の扱い方が間違ってるって言ってるんだよ!なんで、割れ物を扱うみたいにしてんだよ!もっと雑にしていいだろ、あんたのワガママ言ってもいいしあいつの想いを聞いてやってもいいだろ!……まあ、本当にあんたが何をしたいかは推測は出来ても答えは俺にはわからない。だから、ちゃんと話し合ってこい。今、スクールアイドル部の部室にマリーがいる。そこでちゃんと対等に話し合ってこいよ、それでも変わらないならもうマリーの勧誘をやめさせる」
俺がそういうと果南さんは一瞬迷ったが行くと決め店を出てった。
「はあ、興奮したとはいえついつい先輩に命令してしまった」
俺はさっきの会話を思い出し苦笑した。
●●●
ーーーマリー視点ーーー
ちょうど、果南と決着をつけようと思って果南を呼ぼうとした時、愛護からメールか来た。果南がこっちに向かってるらしい。いったい、あの子は何を言ったのかしら。
「マリー」
そんなことを考えてると果南がやって来てくれた。
「果南、決着をつけましょう。話して果南の本当の気持ちを果南が私のことを考えてるように私も果南のこと考えてるんだよ…私は将来なんてどうでもよかった。留学なんて興味なかった。当たり前でしょ、果南が歌えなかったんだよ。放っておけるわけないでしょ!」
私は涙を流しながら言うと果南は申し訳なさそうな顔をした。私はその顔を思いっきり引っ叩いた。
「私が果南を想う気持ちを甘く見ないで!」
「だったら、だったらちゃんと言ってよ!千歌たちと比べたりするんじゃなくてちゃんと言ってよ!」
「だよね」
私は果南にほっぺを向ける。私だけ殴るなんて卑怯だからお返しにもらうために。でも、少し怖いから目を瞑った。
でも、いつまで経っても来ないから目を開けるとそこには手を広げてる果南がいた。
「ハグ、しよ」
果南がそう言うと私たちは一気に泣きながら抱き合った。今まですれ違ってた分を取り返すほどに…
●●●
果南さんを追って学校に着くと校門前にダイヤさんとAqoursのみんながいた。顔を見る限りうまくいったらしい。
「はあ、良かった。それにしても本当に、ダイヤさんはダイヤさんで二人のこと大好きですよね」
「二人のことは頼みましたわよ。私の大切な友達ですから」
「だったら、一緒にどうですか?ダイヤさんもスクールアイドルが好きなのはみんな知ってますよ」
「そんなことは私には出来ませんわ、私は生徒会長なのですから」
「それなら、大丈夫ですよ。マリーがいて、果南さんがいて、この六人がいて俺がいる。みんなで力を合わせれば何でも出来ますよ」
俺がそう言うとAqoursのみんなも頷いてくれた。
「親愛なるお姉ちゃん。ようこそ、Aqoursへ!」
こうしてAqoursは九人になった。
…そして、夏祭りを九人で参加し新曲「未熟DREAMER」を歌い会場を盛り上げた。
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「ねえ知ってる。私たち三人のグループ名もAqoursだったんだよ」
「へー、そんな偶然」
「いや、偶然じゃないだろ」
「うん、私もそう思う」
「愛くん、どういうこと?」
「俺たち九人はあそこにいる生徒会長さんにまんまとはめられて仲間にさせられてたらしい。本当に困った生徒会長だ」
やっと、Aqoursが九人揃いました!良かったー
さらに今回から愛護に怒ったら怖い属性がつきました。いいのか、これ?とは思ったが後悔はしてません。