「あーつーいー」
「ずらー」
「天の業火に闇の翼が…」
「夏なんだから暑いのは当たり前だろ。さらに暑く感じるからやめてくれ」
「善子ちゃんはその服やめたらいいのに」
テストを無事に乗り切って夏休みが始まった初日。俺たちはダイヤさんに呼ばれて屋上に来ていた。集まって早々千歌、花丸ちゃん、善子は暑さにやられている。そのくせ、善子にいたっては暑そうな真っ黒のローブを着ているからルビィちゃんに指摘されてる。
「あの、ダイヤさん。屋上に集まれって何かあるんですか?」
「よくぞ、聞いてくれましたわ。今日からいよいよ夏休み」
「summer vacationと言えば〜」
「はい、あなた!」
ダイヤさんが適当に千歌に指を指す。ていうか、マリーはわかるけどダイヤさんもテンション高いな。
「えーっと…海…かな?」
「夏って言えばウチはパパが帰ってくるんだ」
「まるはおばあちゃんの家に行くずら」
「夏コミ!」
千歌が答えると刺されてもいない曜と花丸ちゃん、善子も答えた。曜はお父さんが好きなのかかなり嬉しそうだ。
だけど、この答えを聞いた瞬間ダイヤさんが震えだした。そして…
「ぶっぶーですわ!あなたたち、それでもスクールアイドルですの!?片腹痛い、片腹痛いですわ!」
怒りと呆れが混じったような感じで叫ぶダイヤさん。そのあまりの迫力に俺含め他のみんなは「ゴクリ」とツバを飲み込んだ。
「スクールアイドルの夏の過ごし方を私がお教えしますわ!さあ、部室に行きますわよ!」
すると、ダイヤさんは部室に向かって歩いて行った。
「え!?ここで集まった意味は!?」
「うーん、多分ダイヤの雰囲気作りじゃないかしら」
「…まじかよ。そのためだけにこの暑さの中集まったのかよ。あの人、ほんとはアホなんじゃないの?」
「愛護、気づくの遅いわね。ダイヤは学力は高いけど正真正銘おバカさんよ」
「あっ、そうなんだ」
今までの上品で和美人って感じのダイヤさんのイメージが崩れる衝撃の事実を伝えられ、俺はどっと疲労が溜まった気がした。
「何をしているのですか?早く行きますよ」
「あー、はい」
俺は面倒ながらもダイヤさんについて行った。
●●●
部室に着くとダイヤさんは自分が持ってきたカバンの中から巨大な模造紙を取り出すとルビィちゃんにホワイトボードに貼り付けさせた。そこにはスケジュールのようなものが書かれていた。
「いいですか、皆さん。夏と言えば…はい、ルビィ」
「うーん、多分ラブライブ!」
「流石、我が妹。可愛いでちゅね〜、よく出来ましたね〜」
「頑張ルビィ!」
な、何だこれ。俺たちは何を見せられてんだ。見たこともないダイヤさんの言動に俺はさらに疲労が溜まる。
「何、この姉妹コント」
「コント言うな!」
善子の呆れながらの一言に本気で反論するダイヤさん。頼むから自重してくれないかな?今までとの変わりっぷりについて行くのしんどいんだが。
「夏と言えば、ラブライブ!そのためにAqoursはこの特訓を行います!これは私が独自のルートで手に入れた。μ'sの合宿のメニューですわ」
「すごい、お姉ちゃん」
すると、ダイヤさんは先ほど貼り付けてた模造紙を指差した。その中には遠泳10km、ランニング10kmなど見るからにオーバーワークな練習メニューが書かれていた。それを見た他のメンバーも引いてる。だが、果南さんだけ「なんとかなる」とか言い出した。化け物かよ。
「熱いハートがあればなんでも出来ますわ」
「ふんばルビィ」
ダメだこの姉妹。ラブライブへの情熱はすごいけど周りが見えてない。
「なんで、こんなにやる気なんだろう」
「たぶん、ずっと我慢してた分の思いがシャイニしたのかも」
曜の疑問にマリーが答える。
なるほどな、ルビィちゃんもルビィちゃんでお姉さんとスクールアイドル出来て嬉しいんだろうな。
「さあ、外に行って始めますわよ!」
ダイヤさんが張り切って号令を出したがみんな量が量なのであまり外に出る気がない。
「そ、そういえば。千歌ちゃん、海の家の手伝いがあるっていってなかったー」
「あー、海の家を手伝うように言われてるのです」
千歌と曜がほぼほぼ棒読みで言った。たぶん、逃げる口実だろうな。
すると、果南さんも「私も」と言い出した。千歌たちと違って棒読みじゃなかった。
「そんな〜、特訓はどうするんですの」
「残念ながらそのスケジュールでは…」
「もちろん、サボりたい訳ではなく…」
曜、それを言うと逆に怪しまれるぞ。
しかし、ダイヤさんは文句を言わずその代わりに「見抜いてますわよ」と言わんばかりに悪魔かと思うほど気持ち悪い笑みを浮かべた。やめてくれ、俺の知ってるダイヤさんが消えていく…
「じゃあ、昼は全員で海の家を手伝って涼しいmorning&eveningに特訓をしましょう」
「しかし、それでは練習時間が…」
「じゃあさ、夏休みだしウチで合宿しようよ」
「「「「「合宿!?」」」」」
千歌が急に合宿を提案したため全員が同時に聞き返した。
「ほら、ウチ旅館でしょ。一部屋借りればみんな泊まれるでしょ」
「移動がないぶん、早朝と夕方で練習時間を取って練習できるもんね」
「でも、急にみんなで泊まりに行って大丈夫ずらか?」
「なんとかなるよ!じゃあ、決まり!今日はこれで解散にしよ」
「…まあ、そうですね。では、千歌さん頼みますわよ」
「はい、任せてください!」
「それでは、皆さん明日の朝4時に集合ということで」
「「「お、おう」」」
みんなもちろん4時なんて無理だと思いながらもダイヤさんの雰囲気に飲まれ返事してしまった。
そして、解散しみんなが部室から出て行く中、俺は梨子が珍しくぼーっとしてるのに気づいた。
「梨子、どうかしたのか?」
「えっ、何でもないよ」
「そうか、ぼーっとしてるのが珍しいから心配になってさ」
「大丈夫だよ。ちょっと暑さでぼーっとしてただけ」
「そうか、明日も早いらしいし今日は休んどけよ」
「うん、わかった。バイバイ愛護くん」
梨子は笑顔で俺に手を振ると帰って行った。そして、入れ替わるように俺が出てこないのを心配してマリーが戻ってきた。
「愛護何してるの?帰るわよ」
「ああ、悪い。今行く」
俺は荷物を持ち歩き出した瞬間、ポケットの中でスマホが鳴った。
「ん?誰だろ。あっ、旦那様からか」
「旦那様?」
「お前のお父さんだよ」
「なんで、旦那様?」
「なんでって、お前が俺が仕えてる「お嬢様」だろ。それで、雇い主であるお前のお父さんが「旦那様」だ。別におかしくないだろ。あと、そう呼んでくれって言われたし」
「今、その「お嬢様」に悪びれもなくお前って言ってたわよ」
「いつものことだろ」
俺はいつまでも出ないのは失礼なのでマリーとの会話を止め電話に出た。
『あ、愛護くんかい?』
「はい、愛護です。すいません、出るのが遅くなって」
『別にいいよ。それよりマリーは近くにいるかい?マリーに電話しても出ないんだけど』
「いますよ。ちょっと待ってください…おい、マリー。旦那様が電話したけど出ないって言ってるぞ」
「あっ、今日家に忘れたのよ」
「そうか…旦那様、マリーはケータイを忘れたので出られなかったらしいです。それより、ご用件は?」
『あっ、明日久しぶりに午前中と昼過ぎぐらいまで仕事で内浦に行くんだ。時間があれば一緒に食事でもと思ってね。最近の二人の話も聞きたいし』
「そうですか。ちょっと待ってください。マリーに聞きます…マリー、旦那様が明日帰ってくるから一緒に御飯どうだって聞いてらっしゃる」
「うーん、明日から合宿だし断るわ」
「いいのか?」
「うん、自分で断るから電話貸して」
「ああ、…旦那様、マリーと変わりますね」
『わかった』
「ciao、パパ」
『ciao、久しぶりだねマリー。元気にしてるか?』
「大丈夫よ。ありがとう。パパ、食事の件だけど私、school idol始めたの。そして、明日から合宿。だから、断らせてもらうわ。でも、愛護だけでも寄越すわね」
『わかった。明日、家に迎えを寄越すよ』
「うん、じゃあね」
そう言ってマリーは電話を切った。
「いや、待てよ!何勝手に俺だけ行くことになってんだよ!」
「だって、パパが可哀想だし」
「てか、お前はいいのかよ。旦那様、仕事で世界中行き来してて会える日がただでさえ少ないのに」
「うん、寂しくないって言えば嘘になるわ。でも、私にはAqoursのみんながいる。それに愛護もいるわ。だから、今は大切な仲間の方を優先したいの」
「わかったよ。明日、俺は行くのは夕方ぐらいになるってみんなに伝えとくよ」
「うん、ありがとう愛護」
こうして、合宿が決まったりマリーの父親と食事の約束をしたり波乱な夏休みが始まった。
ていうか、自意識過剰かもしれないが合宿初日から俺いなくて大丈夫か?
当たり前ですけど、マリーパパの口調がわからないので捏造しました。
書き終わったあと、マリーパパはマリーのようにカタコトかもしれないと思ったり思わなかったり