今は、午前6時俺とマリーは朝ご飯を食べている。
「本当に良かったのか?4時に行かなくて」
「大丈夫。愛護も朝4時集合はやりすぎだと思うでしょ」
「まあ、確かに…」
「それに、言い出しっぺのダイヤだって絶対に4時には来れないわ」
「そうか?まあ、大丈夫ならいいんだ」
こうして、俺たちはゆっくり朝食を済ませた。
「じゃあ、流石にもうそろそろ行くわ。パパによろしくね」
「ああ、行ってらっしゃい」
マリーは家を出て行った。その後俺は合宿の用意を確かめたあと、数日家を空けるので念入りに部屋を掃除し、しばらく経つと旦那様が手配してくださった迎えの方が来た。
●●●
「相変わらず良いホテルだよな」
旦那様との待ち合わせ場所であり旦那様が経営するホテルチェーンの一つの「ホテルオハラ」についた俺はホテル内のレストランで旦那様がくるのを待っていた。
「ていうか、ここで会うならわざわざ迎えなんて寄越さなくてもいいと思うんだが…」
前日に迎えを寄越すとだけ連絡されどこに行くか知らなかった俺は目的地に着いて、そう思った。
「そうか、確かにここなら君一人でも来れたね」
俺は一人言のつもりで言っていた言葉に返答が帰ったことに驚きながら声のする方を見るとそこには旦那様がいた。
「あ!旦那様お久しぶりです」
俺は立ち上がって頭を下げ挨拶をした。
「うん、やっぱりいい響きだね「旦那様」。でも、愛護くん、硬い硬い」
「いや、しかし」
「私と君は遠いけれども親戚なんだ。硬くならなくてもいい」
「はあ」
「まあ、それはおいおい慣れていくとしよう。さて、早速だけどマリーと君の話を聞かせてくれないか?」
「あっ、はい」
俺は最近のマリーのことを思い出す限り全てを話した。もちろん、スクールアイドルをまた再開したことも。
「そうか、やっぱりスクールアイドルが好きだったのか」
「はい」
「私は良かれと思って留学を勧めたのだが…」
「いえ、旦那様。留学を勧めたことは絶対に間違いではないです」
「というと?」
「俺はあくまで同じ高校生としてしか相談に乗れません。だから、彼女のやりたい事を後押ししました。けど、やりたい事と役に立つ事はイコールじゃありませんから。もしかしたら、将来留学を切り上げた所為で彼女が苦労することがあるかもしれません」
「まあ、確かにそうだね」
「でも…そんな時も彼女を支えようと思います」
(えっ、もしかしてマリーと愛護くん付き合ってるの?)
「執事として」
(あっ、そういうこと…びっくりした。流れ的にマリーをくださいって言うのかと思った。それにしても…)
「あの時、泣き虫だった君がここまで成長するなんて」
「あの時?」
「ほら、十数年前にウチに君と君のお母さんが遊びに来ただろ?ちょうど鞠莉が内浦に引っ越す直前だ」
「いや、覚えてないです」
「そうか、まあまだ小さかったからね」
「はあ…」
俺とマリーが昔会っている。そんな話聞いたことがないしマリーからも聞いたことがない。まあ、マリーも忘れてるかもしれないのか。
驚きはあったもののやはり思い出せないので考えるのをやめた。
そうして、その後も話が続いたが旦那様の次の仕事の時間になったので終了した。
「今日は楽しかったよ。今度はマリーと一緒に話そう」
「はい」
「じゃあ、合宿頑張るんだよ」
そう言って旦那様はまたどこかへ行ってしまった。
「さて、そろそろ俺も行きますか!」
俺は荷物を持ち、みんなのところに向かった。
●●●
愛護がホテルから出る数時間前の昼ごろ砂浜では…
ーーー曜視点ーーー
「なんで、こんな時に限って愛護さんがいないんですの!?」
ダイヤさんは昨日、朝4時にここに来るために早く寝た(結局、起きれなかった)ため愛くんの連絡を見てなかったらしく……調理担当がいないことに今気づいて叫んでいる。
「もう!ダイヤうるさい!」
「仕方ないじゃありませんか!恥ずかしながら私たち愛護さんより料理が下手なのですよ」
「本当に女の子顔負けよね〜」
「なんで、そんな悠長なんですか!?」
「だって、愛護が来れないのは今日だけだもの今日を乗り切れば明日からは愛護がなんとかしてくれるわ」
「…それもそうですわね」
ダイヤさんが鞠莉さんの主張に納得すると急にやる気を出し始めた。
「やりますわよ!千歌さん、梨子さん。あなたたちはこれを…」
ダイヤさんが千歌ちゃんと梨子ちゃんに渡したのは大きな箱のようなものだった。箱にはこの店のことが書かれていてそれを被らせた。
「あの、ダイヤさん。これは?」
「これで、この店をアピールするのですわ!そして、果南さん!」
「何?」
「スクールアイドルも商売も必要なのは宣伝。あなたのグラマラスなボディでお客を集めてください。他の砂利どもでは魅力に欠けるので」
ダイヤさん、ひどいなー。確かに一番果南ちゃんが色っぽいけど…
「そして、鞠莉さん、曜さん、善子さん」
「ヨハネ!」
「あなたたちには料理を担当してもらいますわ。もちろん、愛護さんみたいになんでも美味しく作れるとは思っていませんわ。だから、一人一つずつ得意料理を作っていただきその三つで今日は乗り切りますわよ」
「まあ、それなら何とか出来るかな。一つでいいならそれに集中できるし」
「よろしい。では、都会の方々に負けない料理でお客様のハートを鷲掴みにするのですわ!」
「うん、面白そう」
「堕天使の腕の見せ所ね」
「じゃあ、Let's cooking!」
「「おー!」」
私たち三人は大きな声で気合いを入れると私は厨房に入り料理を始めた。焼きそばを作り薄焼き玉子を乗せ、ケチャップで絵を描けば…
「美味しいヤキソバ、ヨーソロー!」
完成した私は二人の様子を見ると…
「堕天使の泪、降臨!」
「シャイ煮、complete」
鞠莉さんは何か色々詰め込んだ鍋をかき混ぜているし善子ちゃんは黒い球体を作っていて二人は悪い魔女の実験みたい…
結局、お客さんは増えず来てくれたのは千歌ちゃんが呼んでくれたクラスメイトと数人だけだった。
●●●
俺は夕方、十千万に来るとちょうどみんなが水で体についた砂を落としているところだった。
「あー、間に合わなかったか」
「あ、愛くん。お疲れ様」
「そっちもお疲れ。どうだ?海の家と練習の両立は」
「あー、まあまあって感じかな」
俺が千歌に聞くと千歌は苦笑した。俺はその理由を聞こうとしたがマリーの俺を呼ぶ声に遮られた。
「愛護、お疲れ」
「お疲れ、旦那様が今度は三人で食事しようって言ってたぞ」
「そう。ありがとう愛護。それより愛護、どう水着似合ってる?」
マリーはそういうと俺の前で一回転した。
「ああ、みんな似合ってると思うぞ」
俺は照れ隠しに目線を外しながら言った。
「ありがとう愛護。(本当はまとめず個人的に言って欲しかったけど)」
マリーが俺に笑顔でお礼を言い、他のみんなは顔を赤くし俺含めみんな空気が照れくさくなり黙ってしまった。
そんな雰囲気の中、マリーのお腹の音が鳴り響いた。
「おう、l'm hungry!夕食はまだ?」
「それなんだけど、美渡姉が余った食材は自分たちで処分しなさいって」
「食材が余ったのか。まあ、初めてで完売なんて普通ありえないもんな」
「いや、まあそうなんだけど…とりあえず見てみて」
「ん?」
俺はみんなが着替えた後、千歌に案内され海の家の中に入るとそこには山盛りの高級食材があった。
「なあ、千歌。十千万はいつもこんな高級食材を使ってるのか?しかも、海の家で…」
「そんなことないよ。愛くんも知ってるでしょ、ウチは安い旅館だよ」
「じゃあ、まさか……」
「その、まさか……」
俺は千歌との会話である結論に辿りついた。
「マリー」
「何?」
「これは何だ?」
「それはシャイ煮よ。私が世界中のスペシャルな食材で作った料理よ!」
俺はあまりのアホさに少し面を食らいそして、少し呆れているとシャイ煮の他に丸っこい黒い物体が目に入った。
「ちなみにこれは?」
「それは堕天使の泪!」
善子がポーズプラスドヤ顔で料理名を言ってくれたが正直何のこっちゃわからなかった。
「この二つで海の家を盛り上げようとしたのか?」
「ううん、違うよ。曜ちゃんがヨキソバっていうのを作ったんだ。それは完売したよ」
「ヨキソバ?」
「簡単に言ったらオムソバだよ」
「そうか、それは良かったこの二つだけだと絶対赤字だしな」
「うん」
俺と千歌は海の家のことを考えると同時にため息を吐いた。
「で、でもシャイ煮と堕天使の泪がどんな味がするのか気になります」
「私もちょっと気になるかな」
ルビィちゃんが目を輝かせながら言ったことに果南さんが同意する。
それを聞いて今度はマリーと善子が目を輝かせると冷めきったシャイ煮と堕天使の泪をそれぞれ加熱と電子レンジに入れ温めた。
「「さあ、召し上がれ!」」
温めた料理をテーブルに並べると二人は自信満々に言い切った。
「まあ、残ってしまったんだから今日はこれを食べるしかないんだし頂くか」
俺は覚悟を決めて適当に座ろうとした瞬間、曜に止められた。
「せっかくだし、席順はくじで決めよ」
曜は何処からか割り箸で作ったくじを取り出した。俺たちは別に反対する理由はないので順番に引いていった。
そして、席順はテーブルを挟んで五人ずつで片側は順にマリー、俺、善子、ルビィちゃん、果南さん。もう片側はマリーの正面から順に千歌、曜、花丸ちゃん、梨子、ダイヤさんとなった。
席が決まったことで俺たちは「いただきます」と号令をした後、意を決してシャイ煮を口に入れた。
「シャイ煮美味しい!」
「確かに美味いな。流石高級食材って言ったところか。ポンコツマリーでもこれだけの出来が出来るのか」
「褒めてるのか貶してるのかどっち!?」
「食材褒めてお前を貶してるんだよ!」
「ひどい!」
「ところで、一杯いくらするんですの?これ…」
「さあ、正確なところはわからないけど10万円ぐらいかな?」
さらっとマリーが言った一言に食べていた全員が「ブー」っと吐き出してしまった。
「じゅ、10万円…」
「高すぎるよ!」
「えっ?そうかしら?」
「これだから金持ちは」
「お前の金銭感覚どうなってんだ!」
俺はこの一件により合宿が終わったら一般人の金銭感覚をマリーに植えつけようと決意した。
「えっと、じゃあ次は堕天使の泪を…あーん」
ルビィちゃんが堕天使の泪を口にいれた。みんなはどんな味がするのか気になったのでルビィちゃんに注目し感想を待った。すると……
「ピギャャャャャャャ!!!!!」
ルビィちゃんは叫ぶと同時に海の家を飛び出していった。そして、「辛い辛い」と大声で叫びながら建物の前を走り回り始めた。
「ちょっと、一体何を入れたんですの!?」
ルビィちゃんの反応を見てダイヤさんが善子に問い詰めた。
「タコの代わりに大量のタバスコを入れた。これが堕天使の泪!」
そう言いきると善子は堕天使の泪を一つ口に入れた。
「嘘だろ、平気なのか?」
「oh!strong hot!」
「お前も大丈夫なのか!?」
「ええ、意外とイケるわよこれ」
「…まじかよ」
結局、そんなこんながあったが俺たちは何とかみんなで協力して残り物を食べきったのだった。