シオとサマエル、あとリンドウ   作:飯妃旅立

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このssはそこまで長編にしないつもりです。


ワイルド・プライズ

 

 ヤクシャ。

 基本的に全身が脆く、切断にも破砕にも貫通にも弱い、コンゴウと同じく雑魚扱いされる象のアラガミだ。

 足の蹄、砲塔の蛇腹、優れた聴覚と要素的には象らしいのだが、如何せんその人型からそう見られない事が多いだろう。 ヤクシーなのに。

 

 さて、そんなヤクシャだが現在眼下でセルピナと交戦中である。

 

 セルピナ一体VSヤクシャ三体だが、劣勢はヤクシャ達だ。

 セルピナは光弾を振り回したり蜘蛛のようなフォルムで移動して攻撃したり、兎角攪乱している。 対してヤクシャは……逃走しているのか? オラクル細胞を失って捕食に向かっているのか?

 あ、追いつかれた。 あ、あーあー。

 

 負けた、か。 しかしセルピナは捕食しないんだな。

 んー? オラクル細胞を拡散させたいのか? 何のために?

 

「サマエルー! なんかいたかー?」

「……敵か……」

「キィ……」

 

 んー、これ以上の観察は無意味か。 ヤクシャが拡散しきる前に連れて行ってやるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

「キィ……」

 

 月は基本的にずっと同じ面に太陽光が当たっている。 それは自転周期と公転周期が同一だからだ。 一年がイコールで一日であり、凡そ27日。 まぁ太陽も回っているので一日は29日くらいなのだが。

 しかし、ノヴァが着弾した事でその質量は膨れ上がり、自然環境を形成できるレベルにまでなっている。 つまり重力も変わり、地球との潮汐力までもが変わっているのだ。

 恐らくあと数十年で……早ければ数年で、地球の一日の長さが伸びるだろう。 大陸の移動も起きるかもしれないな。

 

 とまぁ、地球の事はどうでもいいんだ。 もう帰れないだろうし。

 

 そうではなく、月の話だ。

 つまり、現在の月は地球と全く同じような環境になりつつある。

 大気が有り、水があり、植物があり。 アラガミばかりかと思えば既に虫や爬虫類も出てきているのだから驚きだ。 

 ただ、ずっと同じ場所に陽光が当たっているせいで、アラガミの分布、動植物の分布がくっきり分かれているのだ。

 視覚に頼るアラガミは基本的に光のある場所、聴覚に優れているアラガミは暗い場所。 動物も同じで、植物は寒さ温かさで分かれている。

 

 例えばグボロ・グボロなら光のある場所だ。 まぁ水のある場所も光のある場所だからな。 暗い場所は凍ってるし。

 この間見かけたクアドリガや、先程いたヤクシャは暗い面であり、気のせいかこちらの面にいるアラガミばかりがセルピナと闘っているように思える。 

 雨宮リンドウもシオも、暗闇の中でも普通に視界は良い様で問題なく動けている。 俺は聴覚があるから最初から問題ない。 そういえばセルピナも暗い面にいる事が多いな。

 

 暗い面に何かあるのか?

 

 

 

 

 

 

 

「キィ……」

 

 というわけで暗い面に来てみた。

 恐らく寒いのだろうが、如何せんアラガミ2人と1匹だ。 よくわからん。

 

「あぁ……そろそろ飯の時間だな……」

「お腹すいたぞーサマエルー!」

「キィ……」

 

 んー、あ、ラーヴァナがいた。

 こいつでいいか。 って、こいつもセルピナと闘ってるな。 なんだこの遭遇率。 個体数が増えてるのか?

 

「キィ……」

「敵と……飯か……」

「あれネコかー? イヌかー?」

 

 わからん。 多分猫だ。

 

「キィ……」

 

 少し試したい事があるので、俺一人でセルピナに先行する。 お前らは飯を仕留めとけ。

 

「あぁ……お前がやるのか……」

「ごはんー!」

 

 伝わった……だと……!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 セルピナ。 最初の頃はいろんな色が3、4種類いたのだが、最近見かけるのは一種だけだ。

 ボディ自体はツクヨミなのだが、色が紫というか黒というか……全体的に暗い。 元のサイバーチックな色合いから大分劣化した感じだ。

 中身も劣化していて、少し小突けばすぐに結合崩壊する。 いや、オラクル細胞で構成されているわけじゃないから結合崩壊とすら呼べないのか? まぁ呼びづらいので結合崩壊のままでいいか。

 セルピナの結合崩壊で見える断面は、真っ黒に近い。 燃えカスみたいな色だ。

 主に破砕に弱く、斬撃もそこそこ効く。 貫通は試す手段が無いからわからんな。

 弱点属性は明確にはわからないが、雨宮リンドウの炎剣やブレスが問題なく効いているので少なくとも炎は効くのだろう。 後は知らん。

 

 攻撃方法はツクヨミと同じ。 だが、基本的にアラガミを襲う。

 わかっているのはこんな所か。

 

 俺が試してみたかった事というのは、どの方向に行ったときにこいつが強く反応するか、という実験だ。

 暗い面ばかりにいるセルピナ。 これはつまり、暗い面に何かあるんじゃないかと思ったのだ。 セルピナはソレを守るためにアラガミを排除しているんじゃないかと。

 それなら、俺達はその守っている物を壊すなり殺すなりすればいい。 

 

「キィ……」

「……」

 

 月において方角を言うのも解り辛いので、光と闇の境界線を基準にする。

 

 境界線に沿って左右。 反応同じ。

 

 境界線に垂直に前後。 反応同じ――いや、後ろだけ反応が薄い?

 

 うーむ。 よくわからんな。

 

 倒すか。

 

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