大晦日には南三局が終わりそうですね。(多分)
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南三局 親:愛宕洋榎 ドラ{二}
小瀬川 18,300
照 57,200
辻垣内 1,500
洋榎 23,000
宮永照:手牌
{二赤五七①①②②赤⑤⑥白中中中}
打{九}
小瀬川:手牌
{裏裏裏裏裏裏裏} {東横東東} {九九横九}
「通しだ」
宮永照の満貫振り込みを覚悟して打った{九}だが、小瀬川には当たらず。この{九}は最後の一牌なので、見逃しということもない。つまり、宮永照が切った{九}は当たらなかったのだ。
だが、それも当然であろう。小瀬川がオーラスで不利になるはずの満貫に手を進めるわけがない。至極当然のことであった。
結局、宮永照の肉を切らせて骨を断つような覚悟は言ってしまえば意味はなく、振り出しに戻ってしまった。小瀬川が満貫を張ることはない。そう考えてしまえばもう宮永照にできることといえば、地雷原を突っ走ることしかない。常に何%かの確率がある、悪趣味な博打を。
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特別観戦室
「九萬を切った……?」
胡桃が宮永照が{九}を切ったのを見ると、そう呟いた。最初にツモった時から決してその手の内から出すことの無かった{九}を、ここにきて宮永照が切ってきた。当然、塞と胡桃が疑問に思うのも当然のことで、いったいなにが起こったのか整理が追いついていない。赤木はその心中を察したのか、二人に説明を始めた。
【・・・宮永の譲歩だよ】
「譲歩?」
【宮永は愛宕洋榎の三副露が起こる前は当然、小瀬川に振らないことを目標としてきた。だが、愛宕洋榎の三副露によって場は急転……自分の手牌が全て危険牌となってしまった……そこで、宮永は思考を変えた。
だが、それを聞いても胡桃と塞はまた新たな疑問に首を傾げる。
(それって今のシロの手牌で和了ったら結構危ないんじゃ……)
そう、宮永は満貫までなら振り込んでもいいということは、満貫より下の打点ならもっと小瀬川が逆転する可能性が低くなるということだ。宮永照は小瀬川の手を高くても跳満、安くても満貫といった思考回路で動いているのに、塞と胡桃はそれどころの話では無かったのだ。つまりどういうことかというと……
小瀬川:手牌
{⑧⑧⑧555中} {東横東東} {九九横九}
安手……!!圧倒的安手……!
宮永照にあれだけ跳満、満貫と意識させた小瀬川の手は限りなく低く、対々和のみの安手。ツモでも五十符二飜の800-1,600の手。宮永照が恐れている跳満には程遠く、それどころか宮永照が妥協した満貫にさえも遠い安手であった。
(・・・そうしたらシロの中単騎……これだけは絶対にでない……)
そう、打点の時点で小瀬川の手は危ういのに、それ以上に小瀬川の手には問題があった。それは小瀬川の待ちの{中}単騎待ち。これが一番の問題なのだ。今の宮永照は満貫に届く牌なら切るだろうが、跳満の可能性のある牌は絶対に切らない。
(例えば……)
〜〜〜
宮永照
打{二}
「ロン」
小瀬川:和了形
{二二四四四七七} {東横東東} {九九横九}
〜〜〜
(オーラスでシロの逆転が優位になる跳満……!ドラ待ちの混一色対々和ドラ3……!)
(あるいは……こんな感じ)
〜〜〜
宮永照
打{中}
「ロン」
小瀬川:和了形
{二二二七七七中} {東横東東} {九九横九}
〜〜〜
(字牌待ち……!これだけは宮永さんは避けるはず。徹底的に……)
そう、跳満の可能性がある萬子、もしくは字牌待ちでは宮永照からの振り込みは決して望めない。しかも、{中}待ちでは、{中}が宮永照の手に暗刻になっているということは他者からの振り込みも、ツモも望めない確実に死に手となっているのだ。
つまり、どうあろうとこの手で和了れるわけがない。この{中}単騎は絶対に。跳満が有り得るこの{中}は出ない。そう言い切れるのだ。
(出ない……!シロ……その中単騎は……!!)
そして、塞は心の中で小瀬川に向かって叫んでいた。決して小瀬川には届かぬ叫びを。
(気付いて……!その中単騎が出ないってことに……!)
そんな塞を横で見ていた赤木は、塞と胡桃に聞こえぬように静かに笑った。
(【まあ見てな……あいつがそう易々とは終わらない……追う道はあるのさ】)
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対局室
そして宮永照の{九}切りから場は少し動き、辻垣内から愛宕洋榎のツモ番に回り、愛宕洋榎が牌を切った。
愛宕洋榎
打{⑧}
切った牌は{⑧}。宮永照はこの{⑧}を見て、愛宕洋榎が聴牌したのだろうと推測する。しかし、宮永照のそんな冷静な推測を一発で吹き飛ばすような事態が起こってしまう。
「ポン!!」
(・・・!?)
小瀬川:手牌
{⑧555中} {⑧⑧横⑧} {東横東東} {九九横九}
小瀬川、まさかのポン……!!大明槓でもない、まさかのポン!!当然、喰い変えの関係上、このまま{⑧}を切ることはできない。そしてそこで小瀬川が切ったのは
小瀬川
打{5}
{5}……!!小瀬川、聴牌を崩す……!手牌が見えている観客たちは勿論、手牌が見えていなく、あくまで推測でしか小瀬川の手牌を判断できなかった宮永照ら三人も、小瀬川の鳴きに対して困惑した。
手牌が見えている観客たちは聴牌を鳴きによってわざわざ崩したということに対して。手牌が見えていない三人は小瀬川の手が混一色が有り得なくなったどころか、どう考えていても跳満には至らない手だったという事に対して。特に宮永照は、さっきのさっきまで小瀬川は跳満しか見えていないと推測していたはずなのに、その予想は見事に外れてしまった。
(え……じゃあ、この字牌は……)
そして宮永照は自身の手牌の右端に目を落とす。そう、ドラを打たない限りこの時点で満貫以上しか可能性はないのだから、あれだけ危険視していた字牌の{中}暗刻と{白}がそっくりそのまま通ってしまうこととなる。例え当たっても、どんなに高くとも対々和ドラ3。しかも当たらずとも、{中}ならそれが通っただけで三巡の安全が買えるということ……!
そう、この鳴きは宮永照にとって有り難いことこの上ない事態。宮永照にとって良い事しかないこの鳴きだが、小瀬川はこの鳴きによって新たな変化をもたらした。
それは些細な変化にしか見えないが、後々大きくなってくる重要な変化。
宮永照
打{中}
そう、今まで絶対出ないと言われていた、宮永照の{中}の打牌。先ほど言った通り、宮永照から見て小瀬川の手はドラを打たぬ限り満貫以下で、宮永照の字牌は瞬く間に安全牌となったのだ。小瀬川自ら、条件を変えたのだ……!絶対に出ない定め、そういう運命であった字牌の{中}が出る事となったのだ……!改革……!小瀬川の大胆な方法によって、本来河に放たれることの無い{中}の運命を変えたのだ……他の誰でも無い小瀬川が……!
結局、和了っても小瀬川の手は高くない、そもそも小瀬川はこれで聴牌を崩してしまったと思われたが、まだ道はある。
少なくとも既に無いと思われていた宮永照の、跳満振り込みという可能性が、まだ……
さあここからの跳満……いったいどんな展開になるのか……!?