宮守の神域   作:銀一色

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北海道編です。
今回カムイが出てきますが、設定とかは勝手に作ったものもあります。私自身もカムイに関してはあまり知識不足なところがあるので、そこのところはご容赦下さい。


第106話 北海道編 ⑤ チセ

 

 

 

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視点:獅子原 爽

東二局一本場 親:小瀬川白望 ドラ{西}

 

小瀬川 41,800

おじさん 17,200

獅子原 22,000

岩館 19,000

 

 

 

 

親である小瀬川から順々に配牌を取っていく。私も上家にいるオッサンに続いて山から配牌を四牌ずつ取り、それが十三牌になるまで続けていく。そして配牌を取り終えると私は手牌を開き、理牌を始める。

理牌をしながら私は小瀬川の方を見て、頭の中で思考する。

 

(カムイもそんなにバンバン使えるもんじゃない……肝心なのはタイミング……)

 

かろうじて残っているカムイ達も無限に使えるものじゃない。そう何発も使えるわけじゃないし、麻雀には到底使いようのないカムイだってある。それに私の"雲"が全部吹き飛ばされて使えなくなったから余計に使うタイミングが重要となっているのだ。すぐに雲が戻ってくる可能性もあるが、断言できない以上迂闊に使ってしまっては取り返しのつかない状況になってしまう。

 

獅子原爽:配牌

{六八④1333赤5679東西}

 

と、思っていたところだったが、私の配牌は索子の割合が多く、混一色清一色の染め手にも行ける好配牌だ。混一色はともかく、清一色に行けば満貫が確定するこの配牌、勝負するしかない。そういうわけで、仕方なく私はカムイを使う。

 

(・・・チセコロカムイ!)

 

チセコロカムイを呼び出す。チセとはアイヌ語で家、巣を意味する。チセコロカムイはそのチセの全体を司る神様。今回私が呼び出したのはあくまでチセパンノキアンパカムイとチセペンノキアンパカムイの二種だが、家の中には数多くのカムイがそれぞれ柱や家屋を司っているので、面倒だからそれらを全部引っくるめてチセコロカムイと呼んでいる。

因みに私が今回主として呼んだチセパンノキアンパカムイとチセペンノキアンパカムイの二体だが、これらはそれぞれ西側の軒と東側の軒を支えている。そして私の手牌には{東}と{西}。そう、これらのカムイは手牌に{東}と{西}がある時に限り{東}と{西}を引き寄せるカムイだ。あまり使いどころの難しいカムイであり、打点も伸びにくく速攻にしか使いようがないカムイであるが、この局の私の風牌は{東と西}。そしてその内の{西}がドラであり、索子の混一色も見えているので、このチセコロカムイを最高の形で使えることができそうだ。

 

 

 

小瀬川

打{⑧}

 

 

小瀬川が{⑧}を捨てて東二局一本場が幕を開ける。確かにこの局、チセコロカムイを使っている私が有利になるのは確定だが、それでも私が和了ると決まったわけではない。小瀬川が和了ってくる可能性もある。いや、むしろそっちの方が大きい事もあり得るかもしれない。

 

(・・・考えても仕方ない、な)

 

だが、私は臆せず小瀬川白望というモンスターに立ち向かう。そして私の第一ツモ。

 

獅子原爽:手牌

{六八④1333赤5679東西}

ツモ{東}

 

 

当然のことながら、私のツモった牌は{東}。やはり小瀬川のさっきの真っ黒いのは意識的に使えるっていうわけではなさそうだ。これで私の推測が確信に変わった。ただ単に小瀬川が気付いていないだけという可能性も無きにしも非ずだが、あの小瀬川がそんな事を犯すわけがない。私はまだ小瀬川に出会って数分しか経っていないけど、そんな感じがするほど目の前にいる小瀬川は強烈だった。

だがまあ、カムイと雲を吹っ飛ばしたあの真っ黒いのが常時発動でなく、尚且つ意識的に使えないのだとしたらこちらにも僅かだが勝ちの目はある。

そしてこの巡、私は{六}を捨てた。もう私には搭子であろうと萬子という時点で見向きはしない。

 

「ポン!」

 

 

岩館揺杏:手牌

{裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏} {六六横六}

 

 

しかもありがたいことに揺杏が私の切った{六}を鳴いてくれた。別に意図したコンビ打ちではなかったが、揺杏には悪いが、この鳴きは私にとっては本当にありがたいことだ。

 

獅子原爽:手牌

{八④1333赤5679東東西}

ツモ{東}

 

何故なら小瀬川のツモ巡を飛ばして私のツモ番へとなるからだ。このツモでも私は{東}を重ねて、これで風牌の{東}が暗刻となった。私はさっき切った{六}の搭子の片割れ、{八}を河へと置く。これで二向聴。まだまだ道があるようにも見えるが、実際は後から{西}も重なるため、実質的には聴牌したも同然である。まあこのまま順当に行けば待ちは{1、2}の変則待ち乃至{9}単騎待ちとなるであろう。どちらにせよ後数巡で聴牌できるのは確実だ。

 

獅子原爽:手牌

{④1333赤5679東東東西}

ツモ{西}

 

そして今度ツモってきたのは{西}。チセコロカムイは、{東、西}が暗刻になろうとも山に残っていれば四枚目でもそれを優先的に持ってくる性質があるので、ここでツモってこれないという事はつまり{東}が一枚配牌の時点で潰されていたのだろう。まあ、その方が却って好都合だ。{東}が四枚になっても槓をすることで聴牌速度は変わらないが、槓をしなければ相手の注目を浴びるリスクは薄まる。まあ小瀬川なら槓をしなくとも警戒してくるだろうからあまり意味はないだろうが、気休め程度にはなるだろう。

 

打{④}

 

私は{④}を河へと置く。あと一巡で聴牌できるという事実に少し安堵していたが、それは束の間の安堵、一瞬のうちであった。

 

 

「リーチ……!」

 

 

小瀬川

打{横六}

 

 

 

リーチ。親からの先制リーチが入る。だが、私が問題視していたのはそんな事ではなかった。小瀬川、小瀬川からの先制リーチだということが問題なのだ。私のムダヅモ無しのチセコロカムイを使っての聴牌よりも早いという圧巻のスピード。しかも、一度ツモを飛ばされているというのに、だ。この状況で、私が和了れるのは最速でも後二巡必要だ。そう、また揺杏が鳴かない限り、リーチをかけた小瀬川に確実にツモ番が回ってしまう。もしオッサンが鳴けば、その分だけ小瀬川のツモ番が二回にも三回にも増えてしまうだろう。

 

(流石に揺杏に鳴かせようと促すようなカムイは無いし……)

 

そう、まさに絶体絶命な状況なのだ。小瀬川ほどの雀士であればたった一回でもチャンスがあれば、ツモってくると考えてもおかしくはないだろう。この魔の親番を蹴る事が出来なくなってしまう。

 

(間に合ってくれ……!)

 

だが、それでも100%ではない。麻雀というゲームである以上、どれだけ確率が高かろうとも、100%の壁を越えることはできない。例え小瀬川がこの一回の内のツモでツモ和了る確率が99.99%だとしても、私はその残りの0.01%に賭けるとしよう。

 

 

 

 




今回も字数少ない現象再び。
2600文字程度でした。毎日投稿とはいえ、一話3000文字以上は書きたいですね……(書くとはいっていない)

そして今更気付いたのですが、この「宮守の神域」、原作:咲-saki-の中で一番話数が多いんですね。この前気付きました。
あまり喜べるものではありませんが、まあ一位ということには変わらないから、まあ多少はね?(尚、文字数は少ない模様)
これからも頑張って書きたいと思います。

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