宮守の神域   作:銀一色

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サッカー編です。
小学生のサッカーの試合って前半20分後半20分なんですね。初めて知りました。


第117話 大阪編 ③ フリーキック

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視点:愛宕絹恵

 

 

 

「11番マークつきい!」

 

 

「「はい!!」」

 

ゴールキーパーであるウチが後方の司令塔となってディフェンスに相手選手のマークを指示を出す。初っ端のあの超ロングシュートを見る限り、特にそのシュートを打った11番の選手は少なくともこっち側の陣地全てがシュートチャンスとなる。故に、味方が前線で攻めていたとしても、一人乃至二人のマークをつかせておかないと、相手チームにボールを取られてしまったら一気にカウンターをくらってしまう。そう考えれば二人でも少ないのかもしれない。しかし、その11番だけに人数をかけてもいられない。敗北は以ての外、PK戦を避けたいウチらにとって必要なのは先取点。速攻で1点をとって逃げ切ることができるかにかかっている。最大でも二人マークでないと、前線でボールを安定して回すことができない。その他にも、11番以外にも凄い選手が潜んでいる可能性もある。

 

(にしても……キックオフからシュートを打ってくるんか……)

 

ウチは後方に指示を出しながらそんなことを考える。あの最初のロングシュート、正直言って予想外であった。ギリギリ掴めたからいいものの、ほんの少し遅かったら確実にキャッチはできていなかっただろう。良くて弾く、悪くてゴールであった。超遠目からのシュートで多少は精度が落ちているはずなのだが、それでもしっかり枠内に入れてくるほどのキック精度、半端なものではない。

 

(・・・っ!)

 

そう思った直後、味方が相手にボールを取られてしまう。相手ゴール目前ともあってか、多少無理をして突破しようとしてしまったのだろう。そしてウチの予想通り、相手チームはボールをクリアし、おそらくチームの点取り屋、そして要となっている11番にボールを渡した。この距離とはいえ、相手がいつシュートを放ってくるか分からない。だから警戒するに越したことはない。

・・・だが、意外にも11番はボールをキープしたままで、なかなか突破してはこなかった。しかし、その間に相手チームは次々とこちら側の陣地へ侵入してくる。

 

(まさか……!)

 

 

「サイド警戒せえ!」

 

大きな声でディフェンスに指示を出すが、数コンマ遅かったようで、ウチが指示を出した時にはその11番は既にボールを蹴り飛ばしていた。大きくウチから見て右のサイドラインギリギリの所にいる選手へボールが渡る。当然ながらパスの精度も良く、前に向かっていた選手のちょうど進行方向ちょい前くらいにボールを蹴った。

ボールを貰った選手が、サイドからぐんぐんドリブルで突破してくる。味方はその選手を止めようとするが、すんでのところでパスを出されてしまった。

 

(くる……!)

 

そう思って身構えた直後、サイドからセンタリングを上げられた。しかも、高度な技術を必要とするグラウンダーのクロス。もちろんそのグラウンダークロスを受け取るのは11番。11番はボールを足でトラップしたあと、シュートの体制に入ろうとした。

 

(・・・今や!)

 

 

だが、11番がシュートを打つ直前に、ウチがボールに飛びついてボールを手で掴む。もちろん、11番はシュートを打つことができず、体勢を崩す。そして相手はこの時、大勢で点を取ろうと仕掛けてきた。そうなれば当然、守備の人数は比較的少なくなる。

 

 

(行けっ……!)

 

 

手で持っているボールを思いっきり蹴り飛ばし、最前線にいる味方に向かってボールを放った。今度はこっちのカウンターだ。

味方は敵のディフェンスを一人、二人を抜き去り、とうとうキーパーと一対一になった。

そして、味方は思いっきりシュートを放つ。ゴール右上の端、右利きのキーパーならほぼ確実にとれないコースだ。キーパーはボールを取ろうと飛びつこうとするが、すんでのところで届かなかった。

そしてネットが揺れる。

 

「よっしゃあ!ナイスシュート!」

 

ウチは思いっきりガッツポーズをして、自分の陣地に戻ってくる点を決めた味方の方に向かって、抱きついた。この先取点は大きい。まだまだ一点差と、全然安全ではないものの、士気的にもこの一点は数字以上の大きさを持っている。

 

(この一点……死んでも守らんとな!)

 

 

 

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視点:小瀬川白望

 

 

「決めたーっ!!」

 

洋榎が立ち上がって喜びを体全体で表現する。それと同時に周りの観客も沸き上り、絶頂を迎えていた。

 

「凄い……」

 

かくいう私も、洋榎のように体全体で表現したりはしないものの、内心かなり興奮していた。サッカーとかはたまにテレビとかで見ているけど、生で見るのは初めてだ。点が決まった時はこんなにも興奮するなど、予想だにしていなかった。

 

「あの局面で止めて、ほんで正確にクリアできるのは流石絹やで!」

 

洋榎が私の方を見て、嬉しそうに絹恵を指差して言う。確かに、大事な局面で正確な判断ができるのは麻雀にも言えることだ。それを絹恵はしっかりできているのだから、絹恵というサッカー選手がどれほど凄いかがよくわかる。やはりこの愛宕姉妹は姉妹揃って天才だな、と感じた。

 

 

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視点:愛宕絹恵

 

 

こっちが先取点を取ってからハーフタイムまでは、厳しい試合展開であった。先取点を取られたことにより、相手もいつもよりも数段本気でゴールを奪いに攻めにきたのだ。やはり強豪とあって、攻めの手が緩むことはなく、なかなかこちらが攻めるチャンスがなく守りに徹するしかなかった。得点こそ防げたものの、あわやゴールという場面も少しばかりあった。その度にディフェンスが助けてくれたりなどして何とか凌げてはいるものの、非常に苦しい前半であった。そんな意味でも、前半終了時の審判の笛はある意味天の救いであった。

 

(後半……正念場やな……)

 

そしてウチはまたシロさんのことを心の奥で思いながら、グラウンドへと入った。ゴールの手前まで移動し、全員が定位置についてからキックオフが開始される。前半は相手からのキックオフだったので、後半であるこのキックオフはウチらからのものとなる。

 

「ボール、後ろ下げてや!」

 

キックオフをして、後半が始まるやいなやウチは前線からボールを下げる、キーパーであるウチに戻すように要求する。すると味方はボールを下げた瞬間、ゴールへ向かって思いっきり走り出した。

 

「せやっ!!」

 

そうして向かってきたボールをダイレクトキックで前線へ送る。そう、これはウチらのチームでの定石と化している戦略であった。だからこそボールをウチに渡した瞬間前へ走り出すことができたし、ウチも確実にボールを蹴って前へ送ることができた。

 

(後半……行くで!)

 

 

 

 

〜〜〜

 

ピピーッ!

 

 

後半が始まってから15分が経とうとしていたまさにその時、審判が笛を鳴らす。20分ハーフということで、残り五分とアディショナルタイムを凌げば勝利というこの状況で、最大のピンチを迎えることとなった。

 

そう、ファールによるフリーキックだ。しかも、ペナルティエリアすこし前という、超危険な場所からのフリーキックだ。

無論、フリーキックを蹴るのはあの11番。後半が始まってからも、何本もシュートを撃ってきたが、これらは殆どが遠くから、もしくは無理な体勢でのシュートであった。それが今は距離も近く、ボールを置いた状態で蹴ることができる。

ここは止めなくてはならない。後半開始からは点数には変動がないので、ここで決められてしまえば1-1と、同点となってしまう。残り時間も少ないこの時間、決められてしまえばPK戦は避けられないであろう。

 

(来い……!)

 

 

 

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視点:小瀬川白望

 

 

直接フリーキック、という絶体絶命の状況に陥ってしまった絹恵。彼女の目つきは、さっきまでも鋭かったのに、それ以上に鋭くなっていた。

 

「止めてくれ……!」

 

洋榎が手を合わせて願う。私も、絹恵のことを見ながら心の中で必死に祈った。

 

「止めて……絹恵……」

 

気がつけば、私は言葉を発していた。そして、相手の選手がすこしばかり助走をつけてボールを蹴ろうとした。

 

 




さあ絹恵は止めれるのか……?
次回でサッカー回は終わりです。
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