宮守の神域   作:銀一色

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今書いた1話に続けて2話も投稿…倍プッシュ…!
まだまだ終わらせない…
*赤木の麻雀について語っている部分があります。
実際はもっと凄いとか違うとかは触れないで下さい。


第2話 神域の麻雀講座

 

 

 

 

 

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【…さっきも言ったように、俺の麻雀は奇怪だ。

しかしそれは客観的な話だ。現に俺はこれが普通だと思っているし、この打ち方で勝ってきた】

 

そう幽霊は語る。その話はどこか説得力があり、嘘偽り無いのは明々白々だ。

 

【…そこで、嬢ちゃんには俺の打ち方を普通と思うところから始める】

 

「普通と思うところ…?」

 

【そうだ。時に嬢ちゃん。あんたは麻雀で1番大切なものは何だと思う…?】

 

大切なもの。単に言われても沢山のものが出てくる。

 

色んな要素が頭を巡ったが、私は一つの答えを出す。

 

「運…かな。運が無ければ、どれだけ考えてもどうにもならない時もあるし」

 

【惜しいな。85点ってところか。】

85点。単純に喜ぶべきか、それとも15点分まだ足りないと思うべきか。

 

【確かに運は大事だ。麻雀は運9割という人間も少なくは無い。本当のところ、その答えは100点を出されても良いレベルだ】

 

【けどそれよりも大切なモノがある。と俺は考えている…

それはな、自分の心だよ】

 

「自分の…心」

 

【そうだ。どんなに運が良い状況でも、それを信じて攻める事ができなきゃ、意味は無い。

逆に運が悪い時に、『もしかしたら』で勝負にいって負けるようじゃ話にならねえ…

一瞬一瞬の自分を信じる心が無きゃ、麻雀に限らず、全てに於いて駄目だ】

 

【だから、どんな時でも自分を信じろ。それで失敗しても構わない。問題は、その失敗が、本当にお前が選んだかどうかだ。

自分がそう感じたのならそれでいい。理由はいらないんだ…

例え、無意味だとしても、無謀だとしてもだ】

 

自分を信じる、心。ただ言うのは簡単だが、それを実現させるのは相当の覚悟が必要である。

 

現にこの幽霊は、一度ではない、何度も何度も…

もしかしたら常に死地を潜ってきた様な感じがする。

 

【ククク…まあ精神論はこの辺にしといて、次は麻雀における不確定要素。運…ツキ…流れ…

これらを読み切る事についてだ】

 

【どんなに信頼してても、それが間違ってたら意味は無い。そうだろ…?】

 

「どうやって読むの…」

 

【簡単な事からでいい…場が対子場だとか、順子場だとか…

手が染め手にいくとか、三色にいきそうだとか、些細な事でもいい】

 

【そして場の流れは常に変わっていく。その変化に敏感になることだ。それに信じる心があれば、一気に俺の域に達する事が出来る。

簡単そうだろ?…でも、そうやって出来る人間は殆どいない。俺に似た奴はいたが、少なくとも俺と全く同じ同類はこれまで見たことが無い。

…皆そうだ。アテにならないデシャヴやトラウマ…挙げ句の果てには『自分の保身』という鎖に引きづり回され、迷走する】

 

【だが、お前にはその素質がある。だからお前に麻雀を教えてる】

 

「私に…才能が…」

 

信じられない話だが、良く考えれば下手で当然なのかもしれない。

 

いつも肝心なところで牌効率などの見えない迷路で私は迷っていた。

 

私は私自身の麻雀を打っていなかった。

 

【取り敢えずこんなとこさ。…しかし、それはあくまでも自分自身の事だけ。

麻雀は相手がいて、初めて勝負が成り立つ。

…つまり次は相手のことについてだ】

 

幽霊は私が思い返し終わるのをちゃんと待ってから、話を続ける。

 

【相手と勝負をする時に一番重要なのは相手を知ること…

相手の手の内、思考回路、感情、癖…

相手の全てを知ること。それを土台として戦略を組み上げる。そして初めて勝利が見えてくるのさ…】

 

【こんな状況なら相手はどう動くとか、この状況なら相手は下がるとか…

大変な事だが、これをしなけりゃ勝負とは言い難い…】

 

【今言った事を頭に入れ、今からひたすら対局をする。牌効率、捨て牌の読み方などの戦略は二の次。兎に角そういった『精神と読み』を鍛える】

 

「…うん」

 

【苦行になるかも知れないが、少なくとも俺はお前の歳の頃には完成していた。

…俺が最初に牌を触ったのは、ほんのちょっと後の話だがな】

 

 

こうして私と赤木さんの訓練は始まる。

 

 

 

 

 

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あれから何時間経ったのか分からない程麻雀を打った。

 

基本的に私と赤木さんの二人麻雀で、赤木さんは麻雀牌を触れないので、いちいち私がツモって、指定された牌を切るといった面倒な方法だったが、これしか方法が無かったのだから仕方ない。

 

二人麻雀といったが、実戦に近いように全ての牌を使い、鳴きは全てアリ、流局は二人の捨て牌が合計35になるまでなど、限りなく四人打ちに近づけた。

 

やはり赤木さんは恐ろしく強く、最初は全く歯が立たなくて、上がれるかよりも、半荘を最後までトバずにいられるかで精いっぱいだった。

 

しかし次第に上がれるようになり、それに比例して自分を信じる心も鍛えられた…と思いたい。

 

…結局のところ赤木さんの全勝だったが。

 

4巡で黙聴の3倍満や四槓子裸単騎など思い返しただけで寒気がする。

 

そして赤木さんは決して振らない。例え立直した状態でも当たり牌を掴まない。

本人曰く立直する時は当たり牌を掴む流れかを読むと良いのだそうだ。

何を言っているのかは分からないと思うが、実際掴まないのだからそうなのだろう。

でも少年時代には一回立直後にイカサマを喰らって倍満を振ったらしい。

【思えばそれが一番大きい振り込みかな】と言っている時点で私はもしかしたらヤバい人に教えてもらってる気がしてならないが、ダルいので考えるのをやめた。

 

御飯やお小水以外はぶっ通しで麻雀を打った。

いつぶりだろうか、こんなに麻雀を打ったのは。

 

窓を見れば真っ暗な世界。時計を見ると針は8時半を指している。

 

【今日で嬢ちゃんは、見違えるほどの進化を遂げた。明日からは少し戦法なども交えて麻雀を打つ。今日はもう寝ると良い】

 

赤木さんはそう言うので、私は寝る事にした。

 

…しかし何だろうか?私の心の中をよぎる一抹の不安は。

 

…思えば早起きをして、何かを諦めて、そして赤木さんと出会った。

 

(何だっけ。まあいいか。ダルいし早く寝よ…)

 

 

 

 

その見落としが、19日に悲劇を齎す事をまだ知らない。

 

 

 

 

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