宮守の神域   作:銀一色

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奈良編です。
王者さんの前に阿知賀編!


第138話 奈良編 ① 雨宿り

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視点:小瀬川白望

 

 

 

(・・・奈良かあ)

 

 

怜たちと別れて四日が経ち、私は大阪から兵庫、京都、滋賀、三重と近畿地方を回っていた。

そして今度は奈良県。小走さんが住んでいる奈良県に私は足を踏み入れた。現在時刻は朝の8時。始発電車で三重県から奈良県に行ったためにこういった早い時間帯に到着してしまったが、小走さんと待ち合わせをしているのは午後1時からだ。つまり、あと五時間程度は何処かで時間を潰さなくてはならない。まあ適当に雀荘なりどこか適当な所に行ってれば自ずと時間を潰すことができるだろう。

 

(・・・なんか天気が悪くなりそうだなあ)

 

私は空を見上げながらそう思う。ちょうど真上の空は曇りなき快晴であるが、そこから少し西の空を見てみるとドス黒い雲が広がっている。天気というものは通常西から東へと変わっていく。つまり、時間が経てば西側に広がっている雲はこちらにまで来るということだ。

これは雨に打たれることも覚悟しないといけなさそうだ。

 

 

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視点:小瀬川白望

 

 

(やっぱり降るよなあ……)

 

そしてあれから30分が経った。案の定天気は快晴から一転して大雨。折り畳み傘くらい持って来ればよかったのに、何故か持ってこなかった自分を恨む。せめて家で一週間の天気くらいは確認しておけばよかった。まだ小走さんとの約束時間までは四時間半もある。早めに行ってもいないだろうし、わざわざ予定の四時間半前に呼び出すのも申し訳ない。そこで私は近くの場所で雨宿りをすることに決めた。

しかし、ここで問題が浮上する。それはここがどこだか分からないという点だ。適当にぶらぶらと歩いていた結果、どこかも分からない場所に来てしまった。

ここがどこかも分からぬまま、足を運んでいると、何やら学校っぽい建物を発見した。ここから見えるということは、然程距離はないだろう。引き返してどこか雨宿りできそうな場所を探すというのも手だが、とりあえず確実性の高いあの学校っぽい建物で雨宿りをすることにしよう。

そうして、私は急いでその建物へと走って行った。

 

 

 

(阿知賀……女子学院?)

 

そしてその学校の校門までやってきて目に留まったのは学校の名前。阿知賀女子学院という学校らしい。この学校が小学校なのか中学校なのか高校なのかは分からないが、とにかく私はその阿知賀女子学院へと足を踏み入れた。校舎内とか敷地内に先生とかいるかもしれないが、事情を言えばなんとかなるかもしれない。そんな淡い期待を寄せて。

 

 

(・・・人?)

 

そうして敷地内に堂々と入った直後、私は校舎内へと入っていく女の子2名を見つけた。その子達は傘を差しており、若干その子たちが羨ましかったが、とりあえずここには誰かしらはいると証明された。私もその女の子の後に続くようにして、私は校舎内へと入った。

そして校舎内に入り下駄箱のあるところについた私は、床に腰を下ろして深くため息を吐く。とりあえずは雨をしのげる場所を確保したが、よりにもよって何も目的がない時に大雨に降られるなど運が悪い。服もびしょ濡れだし、リュックの中身は流石に大丈夫だろうとは思うが、外側は完全に濡れてしまっている。しかし、下駄箱付近にいてもなにもすることが無く、雨もすぐ止む気配はしない。何かをしようと思うといつもダルさが体を襲ってくる私だが、何もしないというのも十分ダルいということが今日分かった。

そしてついにその退屈感とダルさに耐えきれなくなった私は、校内を歩き回ることにした。靴を適当なところに置いて、来客用に置いてあると思われるスリッパを一足分頂戴し、校内を散策し始めた。

 

 

 

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視点:赤土晴絵

 

 

 

「ツモ」

 

「ロン」

 

 

室内に響く「ロン」や「ツモ」の声を聞きながら、私はこの「阿知賀子供麻雀クラブ」の顧問として皆を指導する。まだまだ朝っぱらの時間帯ではあるが、こうして集まってくれている子供たちのためと思えばなんの苦にもならない。

そうして、窓から見える景色をチラッと見る。天気はさっきまで晴れていたのに、少し目を離していたらいつの間にか大雨になっていた。確かに天気予報では急に大雨になるといっていたが、本当に当たるとは思ってなかった。それほどさっきまでは快晴だったのだ。やはり天気予報という技術は馬鹿にできないなと思う。

 

(・・・シズと憧は傘持ってきているかな?)

 

そんな景色を見ながら、私は教え子の中でも2番3番を争う実力者で未だここには来ていない高鴨穏乃と新子憧の事を考える。彼女らの家との距離を鑑みると、彼女らが家を出た時は天気は晴れ。もしかしたら傘を持ってきていないんじゃないかと思ったので、一応タオルを準備しておいた。

そして数分後、シズと憧が元麻雀部室へと入ってくる。彼女らは傘を所持しており、二人は殆ど雨に濡れていなかった。

 

「おー、おはよう。シズ、憧」

 

私はやってきた彼女らに声をかける。彼女らの一個下のギバード桜子が「あこちゃんだああ」と言って憧に向かって飛びつく。憧はそれをしっかりと受け止める。ギバード桜子が憧に抱きつくある意味お約束となっているものだ。

 

「おはよう!先生」

 

それを横目に、シズは私に向かって挨拶をする。あのシズがよく傘を持ってきたなと感心する。

 

「憧はともかくとして、シズはよく傘を持ってこようと思ったな?」

 

「私がシズに傘を持たせたの!」

 

すると憧が胸を張ってそう言う。やっぱり憧が持たせたのか。まあシズが天気予報を見て、晴れているけど一応傘を持って行こうなんては思わないか。これは偏見だが、シズはそもそも天気予報すら見なさそうだし。

一応ということで用意していたタオルは結局使わなかった。私はそのタオルをしまおうとタオルに手をかける。

 

 

(・・・ッ!?)

 

その刹那、急に背中に悪寒が走る。それによって急に体温がスーッと下がったのを感じた。なんだこの感覚は。()()()()()()()()()()()()()()の威圧感、プレッシャー。それがドアの向こう側から発せられていた。

ドアの向こうに何か(バケモノ)がいる。そう感じた私はドアの方を見る。すると、ドアがゆっくりと開いた。そんなに古くはないドアだが、ギギギッと軋んだ音が聞こえてくる。これが幻聴か、それとも本当に発せられているのかは分からない。

 

 

そしてドアが完全に開かれた直後、窓がピカッ!と急に光った。そしてその数秒後、ガッシャーン!!という落雷音が響き渡る。まるでバケモノが登場に合わせて雷を落としているのかと思えるほどほぼほぼ同時のタイミングだった。

 

 

「・・・」

 

 

そしてドアの向こうには白い髪の毛が特徴的で、傘を持っていなかったのか、ずぶ濡れの女の子が立っていた。一見すると普通の女の子に見えるが、私にはどうしても彼女がただの女の子には見えなかった。彼女は何かがある。そう自分の第六感が告げていた。

 




シロの登場シーンはアカギの最初の登場シーンを意識して書きました。
レジェンゴに新たなトラウマが増えそう(小並感)

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