宮守の神域   作:銀一色

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松実編です。
果てしないR-18感。まあでも、本番(意味深)じゃないからセーフ!


第157話 奈良編 ⑳ いくら姉でも

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視点:神の視点

 

(どうしよう……)

 

 小瀬川白望はがっちりと松実宥の体をホールドしていた。意外にも小瀬川白望の腕の力は強く、というか松実宥自身にそれほど力がないのも相まってか、松実宥が脱出できないのは明白であった。

 しかし、松実宥はそう言ってられない状況にある。もしかしたら今すぐにでも自身の妹の松実玄がこの部屋にやってくるかもしれない。そんなまるで浮気をしているのがバレるのを危惧している浮気相手のような状況に陥っている松実宥は、完全にパニック状態になっていた。

 

(えっ……!?)

 

 そしてそんな松実宥に追撃を放つかのように、小瀬川白望は寝ている状態で松実宥を抱き締める手を自身の方にグッと寄せた。そうなれば必然、松実宥は小瀬川白望の体に急接近。いや、というより密着してしまった。

 しかも、密着している箇所もまた問題であった。松実宥は当初、布団の中でうずくまるようにして小瀬川白望の隣へと入った。その結果、松実宥の顔の位置が小瀬川白望の顔の位置よりも少し下がってしまったのだ。そのような状況で小瀬川白望に抱き締められ、それに加えて引き寄せられて密着してしまったのだ。

 ……つまりどういうことかというと、簡単な話。松実宥の顔面に小瀬川白望の豊満な胸が接触してしまっているのである。しかも、浴衣越しで。ほぼほぼダイレクトに当たってると言っても差し支えなかった。

 

(シロちゃんの……む、胸が……)

 

 これは本来ならばご褒美と言っても過言ではない状況。しかし、松実宥は単純にこの状況を嬉しく思うことはできなかった。今は一刻を争うこの状況。

 しかし、しきりに当たってくる小瀬川白望の胸によって松実宥の冷静さはかき消されていく。どうにかしなければと解決策を考えようとするが、どうしても小瀬川白望の胸の方に意識が傾いてしまっていた。

 

「んっ……」

 

 と、ここで松実宥が少し体制を変えようとしたところ、松実宥の体が小瀬川白望の体と擦れ合った。どことまでは言わないが、あそこが重点的に。それによって、小瀬川白望は寝ていながらも声を発した。

 ちょっと擦れあった程度なら別に大丈夫であった。いや、それはあくまでも密着している松実宥にとっては大丈夫という話であって、普通ならそれでもアウトなのだが。だが、その発した声が問題であった。今小瀬川白望が発した声は、松実宥にとっては極限に殺した喘ぎ声、そうとしか聞こえなかった。いや、正確にはどうかは分からない。正しいのかもしれないし、違うのかもしれない。捉え方によって変わりはするのだが、今の松実宥には完全にソレにしか聞こえなかったのである。それもあってか、松実宥は更に冷静さを失っていく。いや、そればかりか松実宥は少しほど興奮していた。

 

(シロちゃんの声、もっと聞きたい……)

 

 果てには、松実宥は小瀬川白望の体に夢中になっていた。今も尚しきりに松実宥は自分の体を小瀬川白望に擦り付けるようにして動かし、小瀬川白望が条件反射的に発する……発してしまう声を楽しんでいる。

 端から見ればただの変態極まりない行為であったが、極度のパニックとアクシデントに見舞われて更に興奮している松実宥がそんな事に気付くわけがなかった。

 

 

(あっ……)

 

 そうして松実宥は小瀬川白望の体を楽しむこと数十秒、気がつくと松実宥を抱き締める小瀬川白望の手が緩んでいた。あれだけ体を執拗に当てたので、小瀬川白望も自分の手にかける力が弱まったのだろうか。

 それと同時に、松実宥は我に返った。そしてさっきまで自分がやっていた行為の恥ずかしさに少しほど身悶えし、それと同時に罪悪感にかられながら、小瀬川白望のホールドから抜け出した。

 

(シロちゃん……ごめんね)

 

 心の中で小瀬川白望に謝罪をする。松実宥が散々小瀬川白望の胸に体を擦り付けていたため、若干小瀬川白望の浴衣がはだけてしまっていた。直そうとも思ったが、ここで小瀬川白望を起こしてはアウトだ。松実宥は小瀬川白望を起こさないようにと襖をそっと開けて部屋を出る。頭の中は未だ少しほど悶々としながらも、松実宥は本来向かうべきであった寝室へと向かった。

 

 

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視点:小瀬川白望

 

 

「シロさーん、朝ですよ?」

 

 目が醒めると、そこには玄が立っていた。玄はカーテンを開けて、陽の光を部屋へと入れる。外を見れば見事なまでの快晴。しかし、そんな快晴とは裏腹に気温は恐ろしいほど低い。いくら関西といっても、冬の寒さは全国共通のものらしい。私は冷えた体を少しばかり震わせながら、布団から起き上がった。

 

「朝食の用意、できていますので。案内します!」

 

 玄が敬礼して寝起きの私の方を見る。……これは今私が気づいたことだが、私の浴衣が若干ではあるがはだけているのに気づいた。私の寝相が悪いのか、自然にはだけた感じではなかった。まあそれは置いておいて、私はまだ若干寝ぼけている状態であった。しかし、そんな状態でも私は玄に連れられてそのまま朝食を食べた。

 

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視点:小瀬川白望

 

「玄、美味しかったよ」

 

 そうして朝食を食べ終わって部屋へと戻る途中、玄と会ったので玄にそう言った。すると玄は「ありがとうございます」と言って頭を下げた。

 そんなやり取りをしていると、偶然にも宥とも遭遇した。私は宥に向かって「おはよう、宥」と挨拶したが、宥は「シ、シロちゃん!?」と言って驚いていた。

 

「どうしたの……宥」

 

「な、なんでもないから……おはようね、シロちゃん」

 

 そう言って宥は顔を逸らす。おかしい。いや、まだ会って一日も経っていないから正確なことはわからないが、どう見ても今の宥の状態はおかしかった。私はなにかあったっけかな……と昨日のことを思い出そうとするが、困ったことに何も思い当たる節がない。

 まあ、私がどうこうできる問題でもないな。と思考を放棄して私は「そう……じゃあまた。宥、玄」と言って部屋へと戻った。

 

 

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視点:神の視点

 

 

「……」

 

 松実宥と松実玄は、部屋へと戻った小瀬川白望を見送った後少しの間互いに黙っていた。松実宥はこの時、昨日自分がしていた恥ずべきことに気付いているのではないかと内心ヒヤヒヤしているが、松実玄は松実宥に笑って「じゃあ……私たちもそろそろ休もうか、お姉ちゃん!」と言った。

 

「そうだね……玄ちゃん」

 

 松実宥は心の中で安堵して松実玄に向かってそう言う。しかし、松実玄は松実宥の耳元まで接近すると、松実宥に向かってこう囁いた。

 

「いくらお姉ちゃんでも、負けないよ?」

 

 それを聞いた松実宥は驚愕するが、松実玄はすぐに廊下を歩き始めていた。しかもその方向は、先ほど小瀬川白望が去って行った方向。松実宥は呆然と立ち尽くしていたが、すぐに松実玄の後を追うようにして廊下を歩き始めた。




玄ちゃんの姉に対してのライバル宣言……これは取り合いになりますね(確信)
まあライバルは宥ちゃん以外にも山ほどいるんですけどね。頑張れ。
次回で松実編……そして奈良編は終わり……のはずです。

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