宮守の神域   作:銀一色

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残念ながら真のお風呂回は次回です。すみません。


第172話 佐賀編 ⑬ 就寝

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視点:鶴田姫子

 

 

「姫子と白望は二人でベッドで寝て。私は布団ば敷いて寝るから」

 

 私と白望さんが手錠で繋がれてしまった場所でもあり、ある意味因縁の部屋とも言えるこの寝室。寝室に入った私と白望さんに、部長はタンスから布団を出しながらそう言った。

 流石に手錠で繋がれているとはいえ、部長のベッドで寝るというのも抵抗がある話だが、昼からの疲れによるものなのか、それとも私が部長のベッドで寝たいという欲が心のどこかであるのかは分からないが、私はすんなりと白望さんと共に部長のベッドへと入る。だが実際、部長を一人だけで、挙句ベッドではなく布団の上で寝かせるのは申し訳ないというものだ。部長のベッドも意外と大きく、私と白望さんがいたとしてもまだ部長が入れるスペースは十分にあった。

 

「部長。そぎゃん水くさい事言わんで、三人でベッドに入りしゅうばい」

 

 そして私は部長に向かって一緒に入ろうと声をかける。それを聞いた部長は振り返ってこちらを向き、「……狭くなるけど大丈夫か?」と聞いてくる。私と白望さんが大丈夫だという旨を伝えると、部長は先ほどタンスから出してきた布団を再びタンスの中へと押し込み、部屋の明かりを消してから私と白望さんがいるベッドの中へと入ってくる。

 

「おやすみ」

 

 私たちはそう言うと、夏だというのに体を寄せ合いながら眠りにつこうとした。一人がパジャマ姿、他の二人が普段着のままというなかなか見られない珍しい光景ではあったが、私は白望さんと部長に挟まれる形で寝る事ができて素晴らしく幸せな状態であった。やはり右手には手錠の輪っかが頻りに当たって違和感があるが、それがどうでもよく思えるほど、私は心の底まで満たされた状態のまま、眠る事ができる。今日は白望さんの事を目の敵にしていた挙句麻雀でボコボコにされた後に結局惚れてしまったり、その白望さんと手錠で繋がれててしまったりなど、色々な事をやらかしてしまった私であったが、その反面良い事もあった。

 明日には、この手錠は外されるだろう。無論、外れる事に越した事はない。しかし、どこか外れる事に対しての寂しさも感じられた。白望さんは多分、明日には居なくなってしまうであろう。メールアドレスや電話番号を交換すれば、連絡を取り合う事は可能かもしれないが、次にこうして実際に会えるのはいつになるだろうか。部長から話を聞いたところ、白望さんは岩手県に住んでいる。佐賀県と岩手県。2県の距離は絶大なものであった。そうやすやすと会えるものではない。だからこそ、もっと白望さんといたかった。そう言う思いが強いのだろう。私は隣で既に寝ているのか、寝息を立てている白望さんの事を見ながら、そう考察する。

 ずっと、このままでいれたらいいのに。そんな叶わぬ願いを心の中で呟きながら、私は瞳を閉じた。

 

 

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視点:鶴田姫子

 

「ん……」

 

 今がいったい何時なのかは分からないが、両隣にいる部長と白望さんが起きてないという事は多分早い時間帯なのだろう。まあ、とにかく目が覚めた私は起き上がろうとして、右手の違和感に気付く。寝て起きて忘れかけていたが、そういえば私と白望さんは手錠で繋がれていたんだった。身動きが取れない私は、とりあえず現在時刻を知るために時計を見る。現在時刻はまだ五時半。こんな時間帯に白望さんと部長を起こすのも悪いので、とりあえず私は二度寝に移ろうと瞳を閉じようとしたが、その瞬間に部長が目を開ける。

 

「おはよ……姫子」

 

 部長は欠伸をしながら私に向かってそう言う。寝ようかとも思っていたが、部長が起きればその必要は無くなった。部長は私に向かって「今何時……?」と目を擦りながら聞いてきた。私は「五時半です。部長」と答えると、「……まだ早いけど、朝食の準備ばしてくるから姫子は白望と待ってて……」と言ってベッドから出て、そのまま寝室から出て行った。

 そうして、寝室には私と寝ている白望さんだけとなった。私は未だ寝ている白望さんを見る。当然の事だが、無防備に寝ているわけだが。そんな白望さんを見て、私は好奇心によるものなのかは分からないが、そっと白望さんの胸を服越しに触ってみた。

 

(柔らかい……)

 

 柔らかいけど、弾力があるなんとも言えない触感が自分の指に伝わってくる。その感触が面白く、また白望さんの胸を触りたい欲求もあってか、私は寝ている事をいい事に何度も白望さんの胸を指でつついたりしてみた。

 

(やっぱり、大きいんだろうなあ……)

 

 果てにはそんな妄想をし始め、いよいよ自分でも今の行為を止める事ができなくなりかけた瞬間、突如白望さんが目を開ける。しかも、タイミングが悪い事に白望さんの胸を指で触っているところで。

 

「あっ」

 

 思わず、声をあげてしまう。白望さんも驚いたような表情で私の事を見ている。私は恥ずかしさのあまり逃げようとするが、手錠で繋がれているため逃げる事はできない。私は顔を赤くしながら白望さんに向かって「すみませんでした……」と謝罪する。対する白望さんは仕方ないといった感じに「別に大丈夫……」と言った。

 あんな事をしでかした私を、こうもあっさりと許してくれるとは。やはり白望さんは聖母かなにかか。麻雀の時はとても恐ろしい悪魔のような人だったが、それ以外の時はまるで聖人、女神のような人だ。やはり変わった人だ。

 そんな事を考えていると、部長が寝室にやってきて朝食の準備ができたという事を伝えに来た。私と白望さんは一緒にベッドから出て、またいつもの如く私は部長と白望さんに。白望さんは部長に朝御飯を食べさせてもらい、そのあとはまだ朝ではあるが、私たちは私と白望さんを繋ぐ手錠を外すべく、鍵がある私の家へと向かった。

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次回こそ手錠を外してお風呂回!

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