宮守の神域   作:銀一色

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鹿児島編です。
エイプリルフールなんてなかったんや……


第178話 鹿児島編 ④ 御祓

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視点:小瀬川白望

 

 

(鹿児島じゃないところって……一体どういう事なんだ……)

 

 私はそんな疑問を抱えながらも、霞さんたちに連れられて神社(?)の中へと入った。その神社らしき建物は語彙力が低そうにも見えるが、ただ大きい建物だ。としか言い表す事ができなかった。まず私の目の前にあるドア……というより門。それが大きすぎる。まるで自分が小さくなったような錯覚を受けてしまうほど、その門は大きかった。

 

「どうぞごゆっくりですよー」

 

 そんな門の前に立っている初美さんが手を振ってこちらを呼ぶ。私は未だ辺りをキョロキョロ見ながら、その門をくぐった。

 そうして神社……らしき建物に入った私は室内を見渡す。今まで私が見てきたどんな家よりも、そこは広くて豪華であり、そしてどこか神聖な感じがした。

 私がそうしていると、奥の方にいる霞さんに「白望さん。どうぞ此方へ」と言われた。ここで何をするのか、だいたいの予想はできたものの明確には分からない私は霞さんに従うほかなかった。後ろにいる初美さんを見ても分かる通り、この『霧島神境』に来る前から皆はえらく神妙な表情をしており、こうしてこの『霧島神境』へ連れてこられたものの、あまり此方を歓迎するような雰囲気ではなかった。

 

(まあ……別にいいけど)

 

 しかし私はそんな異様な雰囲気にも臆せず、霞さんが呼ぶ部屋の中へと入る。するとそこには霞さんと、よく普通の神社にいったときお祓いで使われている大麻を持った巴さんと巫女服を着ているにしては随分と薄着の春さんがいた。

 

「どうぞ、座ってください」

 

 霞さんは此方を警戒させないようにするためかどうかは分からなかったが、いやに笑顔でこちらに言ってきた。彼女が何を考えているのかは分からないが、それが緊張している時の作り笑顔だというのはすぐにわかった。

 私は霞さんの目の前にある椅子に腰掛けると、霞さんは咳払いをして私に向かってこう言った。

 

「……単刀直入に聞くわ」

 

「……何」

 

「あなた、何かに憑かれてない?」

 

 ……やはりそういう感じか。赤木さんの事を私に取り憑いている悪霊か何かと勘違いしてしまっていたのだろう。私が事情を説明しようとしたまさにその時、間に入るようにして赤木さんが霞さんに向かって声をかけた。

 

【……俺の事か】

 

「!!……やっぱり……」

 

「……なんで出てくるの」

 

【俺が出なければ話が終わらないだろう……フフフ】

 

「何者ですか……貴方は」

 

【まあそう身構えるな……ククク……別に取り憑いているわけじゃあねえよ】

 

「……?どういう事かしら?」

 

 そうして赤木さんが説明を始める。とはいっても随分と端折られたところはあるものの、一応霞さんたちにも理解してもらえたようだ。霞さんは安堵のため息を吐くと、近くにあった椅子に腰掛けた。

 

「という事は、赤木さんは白望さんに取り憑いているわけじゃなくて、ただ近くで見守っているだけ……?」

 

「そういう事……」

 

 有り得ない話ではあるが、実際そうなのだから仕方ない話だ。どういう理屈を並べようとも事実だけは覆す事はできない。霞さんも「前例は聞いた事はないけど……信じる事にしましょう」と言って納得してくれたようだ。私としても素直に納得してくれてよかった。これで霞さんたちに祓われて赤木さんが成仏してしまいましたなんていう事になったら笑い話にもならない。

 

【それに……さっきアンタ達が感じた気配は、俺の気配じゃねえ。こいつのもんだ】

 

「……それは本当の事かしら?」

 

【とはいってもこいつの気配も俺の気配も似たようなものだけどな……】

 

 そうして密かに私が安堵しているうちに、赤木さんと霞さんはどうやら打ち解けていたらしく、二人だけで会話をしていた。やはり巫女さんという職業柄、そういう霊とか神様とかの類と接するのは慣れているのだろうか。

 

「まあ……疑念も晴れたわけだけど……」

 

 霞さんがそう言って大麻を持った巴さんの方を見ると、巴さんも「結局核心には至らず……ですね」と言って大麻を特徴的な筒の中に入れ、私の隣の椅子に座る。どうやら、彼女らの問題は振り出しに戻ってしまったようだ。しかし、ここでまたも赤木さんは口を挟む。

 

【……アンタらももしや感じたのか。こいつの闇を】

 

「鷲巣……巌?」

 

 私も驚いて赤木さんの方を見る。私の闇。一度私を死の淵まで追い詰めたあの闇。結局制御する事は不可能だと判断したきり、現れる事のなかったあの闇を、どうして感じたのであろうか。赤木さんは霞さん達に耳打ちするようにして、私には聞こえないようにして話す。そして話が終わった後、霞さんはこちらを向いて「……白望さん。少し貴方の闇、拝見させてもらいますね」といった。すると隣にいた巴さんが再び大麻を筒の中から取り、「安心して下さい。別に貴方の闇を成仏させたり、取り除くわけではなく、ただ拝見させてもらうだけなので……」と言って立ち上がる。

 

 

「……何やってんの」

 

 しかし、ここで一つ問題があった。別に巴さんのやっている事は何らおかしなことはない。あまり神道の類は分からないが、多分普通の事であろう。しかし、霞さんと春さんのやっている事がおかしかった。突然、巫女服を脱いで全裸になりだしたのだ。それも、さも当然のように。まるでこのための薄着であったと言わんばかりに。

 そうして、あっという間に私の目の前にいた二人は全裸になっていた。一体何をやっているのか、何を思って服を脱いだのか。全然私には理解が及ばなかった。流石にこれは赤木さんも驚いたようで、少し動揺気味に【あらら……】と呟く。

 そして困惑している私の腕を霞さんは掴むと、そのまま霞さんに引っ張られてちょうど霞さんと春さんのちょうど間の位置に連れてこられる。前を向いても全裸、後ろを見ても全裸。目のやり場に困っていた私に、霞さんは信じられない発言をする。

 

「さあ、貴方も脱ぐのよ」

 

「……本気?」

 

 そう言って巴さんの方を見ると、申し訳なさそうな表情をして首を縦にふる。どうやら、本気で脱がないといけないらしい。私は他人事のように此方を見ている赤木さんを睨みつけ、私はおそるおそる服を脱ぐ。

 いや、別に今までも人に全裸を見せたことは何度もある。しかしそれはあくまでも風呂、入浴という大義名分があったからだ。これはそういう大義名分はない。いや、何かそういう大義名分はあるにはあるのだろうが、何も分からない私にとってはただこの場にいる人に全裸を見せるだけにしか思えなかった。……いくらなんでもこれは恥ずかしすぎる。しかし、隣にいる霞さんと春さんは何の躊躇いもなく全裸でいるから恐ろしい。多分、こういうお祓い的なものを何度もやっているうちに慣れてしまったのであろう。……私が巫女でなくて本当に良かったと思った瞬間であった。

 そうして私も霞さんに促されるままに全裸になると、春さんと霞さんが私の事を挟むようにして体を寄せる。彼女らの歳はまだ聞いてなかったが、私と近い年齢だと仮定しても二人の胸はかなり大きい方であった。特に霞さんなんてそれこそ竜華や絹恵よりも大きいのではないだろうか。

 そして大麻を両手に持った巴さんが、全裸三人を前にしても何も動揺することなく、真剣な目つきで「……始めます」と言った。




次回も鹿児島編。
原作の方でも何故御祓の時に全裸になっていたんでしょうかね。霞さんと春ちゃんは。

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