宮守の神域   作:銀一色

205 / 473
鹿児島編です。
そして恒例回です。
そしてそしてリクエスト募集中です。
そしてそしてそしていつもの通りで今回雑です。


第193話 鹿児島編 ⑲ 三角?

-------------------------------

視点:小瀬川白望

 

 

「カラダも洗ってあげますか?」

 

 霞に若干不本意ながらも頭を洗ってもらった私は、流石に身体くらいは自分で洗わせてくれという事で霞の要求は断っておく。しかし、その時の霞の表情がとても残念そうであったのはあえて触れないでおいた。

 そして私に断られた霞は「仕方ないわね」と言って隣のシャワーノズルを取って頭を洗い始めた。……正直、ここが銭湯や温泉のように思えてしまって普通に感じているが、普通家にあるお風呂で二人いっぺんどころか何人も同時に身体や頭を洗えるほどシャワーノズルがあるというのはおかしい。まあこの霧島神境も家と言ってしまっていいのかどうかは分からないが、どちらにせよこのお風呂場の広さは異常である事には変わりない。それを改めて思わされる瞬間であった。

 

 

「……白望ちゃん」

 

「ん……何」

 

 そんな事を思っていると、霞が私の方を向かずに目の前にある鏡を見ながら私の事を呼んだ。そして霞は真剣な表情で私にこんな事を聞いていた。

 

「白望ちゃんは、カッコいいし……何より優しいじゃない?」

 

「……急にどうしたの」

 

「さっきの白望ちゃんの知り合いと話して、なんとなく白望ちゃんが大切に思われているのが分かった。多分……あの人だけじゃなくて、もっと沢山の人から……」

 

「……」

 

「そうなるのは、白望ちゃんが皆に優しくしてるから。……そうじゃないかしら?」

 

「……別に。私はただ麻雀を打って、そこから仲良くなったりしているだけ。特別な事なんてしてないよ」

 

「違う……違うわ。それ、それなのよ。普通の人はそんな麻雀を打っただけで仲良くなるなんて事有り得ない……正直、白望ちゃんの事が羨ましい……。どうしたら皆にそんな仲良く、優しく接することができるのか……って。私の我儘も、あなたはなんだかんだで聞き入れてくれた。普通、そんな事有り得ないわよ。あって初日であんな事聞き入れてくれるなんて」

 

 突然の質問に少し戸惑った私は数秒考える。恐らく、さっきまでの質問は前口上、どうして自分の我儘を私は付き合ってくれているのかというのが聞きたかったのだろう。そして考えがまとまった後、私は口を開く。

 

「……違うよ」

 

「?……どういう事かしら?」

 

「……私はただ場をダルくしたくないから聞き入れているだけ。それに、我儘っていっても、それは霞の願いには変わらない。霞がそう願っているんだから、私はそれを叶える……応えるのが当然の事だと思う」

 

 私の考えを聞いた霞は、少し気が抜けたように笑った。何か変な事を言ってしまったかと思ったが、霞は私にこう言う。

 

 

「……なんとなく、皆が白望ちゃんのどこに惚れたのかが分かった気がするわ」

 

「……どういう事?」

 

「さあ、どういう事かしらね。ふふっ、……私の我儘に付き合ってくれて、ありがとうね」

 

 

 霞に上手くはぐらかされた気もするが、まあそういう事にしておこう。そんな話をしていると、私は身体を洗い終え、初美が浸かっているお風呂に入ろうと立ち上がると、霞がボソッと呟いた。私は何を言っていたか聞き取れなかったので、霞に何を言ったか聞こうとしたが、霞は誤魔化すようにしてシャワーで頭にお湯を流し始めた。またもやはぐらかされてしまったが、もう聞きだせる事もできないと踏んだ私は無理に聞くのをやめた。

 

 

-------------------------------

視点:石戸霞

 

 

(……全く、罪深い人間ね。白望ちゃん)

 

 

 私は白望ちゃんが初美のところを行くのを確認してから、私は深く一息つく。全く、天然すぎて危うく私も落とされかけた……いや、もう既に落とされているのか。

 どちらにせよ、白望ちゃんが絶望的に鈍感であるという事は分かった。あの感じだと、数多くの人が白望ちゃんにアタックしたけど無意味であっただろう。勿論、私のアタックも効いてないようだが。しかし、逆に言えばまだ私にもチャンスはあるという事だ。白望ちゃんのハートをキャッチする事ができる可能性はまだゼロではないという事だ。

 

(……ふふっ。私ったららしくないわね……)

 

 そこまで考えてから、私は我に返ったように冷静になる。いつも初美におばさんみたいな事を言われて茶化されていて、私も実際年相応ではないと自覚していたのに、こんな乙女みたいな感じなど、私らしくないし、似合ってない。

 

「霞ちゃーん」

 

 そう自分に言い聞かせていると、お風呂からあがったのか、初美ちゃんが私のところまでやってきた。私は「どうしたの?初美ちゃん」と初美ちゃんに聞くと、私にこんな事を耳打ちしてきた。

 

「今くらいは乙女でもいいんじゃないですかねー?」

 

「なっ、何を……」

 

「応援、してますよー」

 

 そう言い、初美ちゃんはお風呂場から出て行った。多分、今の私の顔は真っ赤に染まっているだろう。全く、余計な事をしてくれたものだ。

 

(でも……)

 

 

(今くらいは、自分に正直でもいいかしらね……)

 

 

 そうして私はお風呂に浸かっている白望ちゃんの隣へ向かって歩き出した。

 

 

-------------------------------

視点:薄墨初美

 

(まあ……今のところは譲ってあげるですよー)

 

 私は脱衣所で自分の巫女服を身につけながら、風呂場の方を向いて心の中で霞ちゃんに向かってそういった。確かに、私も白望ちゃんの事が気になって仕方なかった。勿論、たとえ霞ちゃんを相手にしてでもこの思いは止められる事はできないだろう。しかし、あの時の霞ちゃんは自分でも見た事がないくらい乙女な表情をしていた。あの霞ちゃんでも、あんな表情ができるのか。そう思った私は、どういうわけか霞ちゃんにいい状況をセッティングしてしまった。

 

(でも……全てを譲るわけではないですよー……)

 

 今のところは、霞ちゃんに譲ってあげてもいい。しかし、それだけで身を引くほど私の想いはちっぽけなものではなかった。




次回も鹿児島編です。
現状として、霞と初美が堕ちてますね……
こっからまだ増えるのか……?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。