宮守の神域   作:銀一色

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200話目です。
早いものですね。


第200話 東京編 ③ 決闘

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視点:神の視点

 

 

「うわあ……久々だなあ、智葉の家」

 

 辻垣内智葉の車に乗せられて彼女の家に連れてこられた小瀬川白望は、初めて辻垣内智葉の家に来た時のような新鮮な感じで家の外装を見ていた。最後に来たのが全国大会が終わって宮永照、愛宕洋榎らと一緒に来た以来で、実に二年ぶりの訪問であった。

 

「前にも、来たことがあるのですカ?」

 

「まあ、二回ほどね」

 

 それを聞いたメガン・ダヴァンは小瀬川白望の耳元までより、小さな声で小瀬川白望にこう言った。

 

「サトハって、一体何者なんですカ?やっぱりジャパンマフィア?」

 

「……さあ、智葉曰く火消しの血を受け継いでいるらしいけど」

 

「……ヒケシ?」

 

「昔の消防隊みたいなものだよ。今の消防隊とは全然違うけど……」

 

「じゃあ、ジャパンマフィアではないと?」

 

「……それはわからない」

 

 結局、結論が出ることはなく、かといって辻垣内智葉に直接聞くのも、ただでさえメガン・ダヴァンは辻垣内智葉に知らない方がいいと言われたため聞くに聞けなかった。そして何よりも、真実を知ったら消されそうな気がするので聞かないことにした。

 

「シロ、メグ。何してる。行くぞ」

 

 そしてそんな二人に向かって先に家に入りかけていた辻垣内智葉が言う。二人はこれ以上は聞かないでおこうと胸に決めて、辻垣内智葉の家へと向かった。

 

 

 

 

 三人が家に入ると、そこに待ち構えていたのは車を運転していたのとはまた別の黒服であった。黒服は辻垣内智葉の事を視認すると、深く一礼し、辻垣内智葉はそんな黒服にこう聞いた。

 

「おい、お前。もうできているか?」

 

「はっ、卓の準備は出来ております」

 

「そうか。今鈴木は空いているか?」

 

 辻垣内智葉の言葉が聞こえたのか、何処からともなくもう一人の黒服がやってきて、「大丈夫です。お嬢」と言う。メガン・ダヴァンは何処からやってきたのだろうといった疑問を持ちながらも、取り敢えず辻垣内智葉についていった。

 

 

 

「よし……始めるか」

 

 辻垣内智葉がそう言って風牌を四枚取り出し、裏にして掻き混ぜる。さっそく麻雀ということになったわけだが、メガン・ダヴァンと小瀬川白望、両者も既にやる気に満ち溢れており、まるで待ってたかのように臨戦態勢に入る。そうして席決めが終わり、親も決めて、辻垣内智葉とメガン・ダヴァン、そして小瀬川白望の三つ巴の麻雀が始まろうとしていた。

 

 

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東一局 親:鈴木 ドラ{二}

 

小瀬川白望 25000

辻垣内智葉 25000

ダヴァン  25000

鈴木    25000

 

 

 

(さて……配牌は、ト……)

 

 東一局、メガン・ダヴァンは配牌を取って立ち上がりの自分の調子を確認する。メガン・ダヴァンが前日辻垣内智葉と話していた彼女の能力である決闘(デュエル)は、この時点では割愛するが聴牌しないと発動することはできない。聴牌するまでは普通の人間であるのだ。故に、最初の立ち上がりが重要であった。ここでいかにして早く聴牌できるか。そこが彼女の最初の課題であった。

 一見、聴牌しないと発動する事ができないため使いにくい印象を受けるかもしれない。しかし、彼女はこの能力に絶対の自信をおいている。特に、相手が日本人なら負けるわけがないと思うほどに。それほど彼女にとって自身の能力は絶対的なものであったのだ。……辻垣内智葉と闘う前までは。

 

(未知数の白望サンはひとまず置いといて……この卓にはサトハもいる。あの時は油断していたとはいえ、それを差し引いてもワタシの完敗でした。……全力でやったりまショウ)

 

 確かに、辻垣内智葉にはなす術なしにやられてしまったが、それでも彼女の中での決闘(デュエル)は彼女の支柱であることには変わりなかった。辻垣内智葉のようなイレギュラー以外であれば、日本人など恐るるに足らず、といった感じであり、未だ日本人を下に見ていた。

 

 

(……まあ、見なきゃ分からんだろうな)

 

 そしてそんなメガン・ダヴァンを見ながら、辻垣内智葉はそんな事を思っていた。確かに、メガン・ダヴァンの決闘(デュエル)は強力である。それは破った辻垣内智葉自身もよく分かっている。しかし、それでは小瀬川白望に勝つことはできない。

 

(懐かしいものだ……最初も私は舐めてかかった挙句、二局でトバされたんだっけな)

 

 小瀬川白望の事を舐めているメガン・ダヴァンを見て、昔の事を辻垣内智葉は思い返していた。最初の勝負は、本当に何もできずまま終わってしまった。

 

(……いや、最初の時だけじゃない。全国大会でもそうだ。私は幾度となくシロに驚かされてきた。私の考え、想像を全て上回ってきた。……決勝戦の時も。私も一発逆転のチャンスが来かけていたとはいえ、オーラス、最終的に争っていたのはシロと宮永だった)

 

 そして辻垣内智葉の過去の振り返りは、どんどん加速していく。全国大会決勝戦、あの時も、辻垣内智葉は小瀬川白望を上回る事は出来なかった。というより、超える段階にすら到達する事はできなかった。

 

(……確かに、シロにはメグを叩き潰せと伝えてある。が、私は殺す気で行くぞ、シロ)

 

 

 常人が感じれば発狂しかねないほどの殺気を放ちながら、小瀬川白望の事を見る。それを感じとった小瀬川白望は、脳内でこんな事を思った。

 

 

(成る程、あくまでも三人の闘いっていう事か……)

 

 そんな事を思いながら、小瀬川白望は手を順調に進めていく。辻垣内智葉、メガン・ダヴァン、両者を突き放すような勢い、圧倒的速度でわずか五巡で聴牌する。

 

(……ダヴァンさんの打ち手も見たいし、ここは様子見かな)

 

 しかし、小瀬川白望はここではリーチをかけずに黙聴をとる。その次巡、辻垣内智葉は小瀬川白望にとっての危険牌を掴んだためにオリる。かなり消極的な判断ではあったが、これは運が良いのやら悪いのやら、辻垣内智葉が止めた牌は小瀬川白望の和了牌であった。

 しかし、一方のメガン・ダヴァンは気にも留めずに手を進めていく。そうして八巡目、メガン・ダヴァンが小瀬川白望に追いつき聴牌すると、ここで初めて小瀬川白望が聴牌している事を察知する。

 

(では、やりますかね……サトハもオリのようですシ)

 

 そうしてメガン・ダヴァンは牌を切って能力を発動させる。そう、これこそがメガン・ダヴァンの能力決闘(デュエル)であった。

 

 

(……初っ端からか。まあ、何にせよ見ものだな)

 

 小瀬川白望の和了牌を止めた辻垣内智葉は、メガン・ダヴァンの事を見てそう思う。どうやら、辻垣内智葉もメガン・ダヴァンが決闘(デュエル)を使った事を感覚で察知したようであった。

 

 

(行きますヨ……決闘(デュエル)!)

 




おい、デュエルしろよ(挨拶)
(因みに黒服の鈴木は、アカギの鈴木と同一人物じゃ)ないです。
あくまでモチーフにしただけです。

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