宮守の神域   作:銀一色

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東京編です。
風邪は治りました。


第211話 東京編 ⑭ ソロモンの指輪

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視点:神の視点

 

東三局 親:小瀬川白望 ドラ{⑤}

 

小瀬川白望 33600

黒服1   24000

戒能良子  18400

黒服2   24000

 

 

「ロン……」

 

 

小瀬川白望:手牌

{二三四六七八⑥⑥⑥678中}

 

 

 小瀬川白望は「ロン」と宣言し、ゆっくりと牌を倒す。対する戒能良子はまだ現実が受け入れられないようで、逃げるために打ったはずだった暗刻の{中}。それと小瀬川白望の今にも倒れて晒される手牌の背中をただただ呆然と見ていた。

 

「リーチ一発裏……1。7700」

 

 そして小瀬川白望は手牌を完全に倒し終え、裏ドラ表示牌を捲って点数申告をする。裏ドラ表示牌には{三}があり、結果的に一つ乗ることとなった。裏ドラが{⑥}になるという最悪のパターンは避けられたものの、戒能良子からしてみれば裏ドラが乗ろうが乗らまいが関係ないことだった。無論、小瀬川白望からしてみても裏ドラなど正直どうでもいいことであった。戒能良子の事を精神的に追い詰めるのが今の小瀬川白望の目標であるので、裏ドラが乗らずとも今の戒能良子の状態を見ても達成に支障は出ないからだ。

 呆然としていた戒能良子であったが、ようやく我に返ったのか、戒能良子は未だ若干困惑しつつも小瀬川白望に点数を支払いながら小瀬川白望の手牌と捨て牌を照らし合わせる。

 

 

(アンビリーバボー……)

 

 そして戒能良子は驚くべきことに気づく。小瀬川白望の手牌とリーチ宣言牌に使った{⑧}。これを切らずに手牌に持っていたらタンヤオ三色が狙えていた手だ。それを蹴ってあえてこの{中}単騎にしてきたということは、確実に{中}待ちで戒能良子が振り込んでくると確信していたのだろう。そうでなければ、小瀬川白望の行動全てにおいて説明することができない。

 とはいっても、小瀬川白望がどうやって戒能良子が{中}を暗刻で抱えており、そしてオリるために暗刻落としに行くと推測できたのかという謎は残る。しかし、戒能良子は悟っていた。どうやっているのかは分からないが、小瀬川白望には麻雀における不確定要素であるはずの場の流れ、偏りが明確に見えている。確かに理屈も無ければ非科学的である、大層おかしな話ではあるが、自分自身がオカルト使いである戒能良子にはそれを否定することができなかった。

 

 

(……本来ならここで使わずに、南場まで温存しておくべきものなのでしょうが……止むなしですね)

 

 ようやく戒能良子は、目の前にいる小瀬川白望がただの強者でないという事を知る。ただべらぼうに強いとか、そういう無ければ人間の努力で超えれるようなところに小瀬川白望はいない。そういう事実にようやく気付いた。次元、ステージが違うという事を。

 ならば、戒能良子にできることといえばそれと同等のもので対抗するしかない。そう彼女は考えた。戒能良子は自分の指にはめられている指輪に意識を向け、真鍮の部分を触りこう唱えた。

 

(……"ソロモンの指輪"。カモンです、大天使ミカエル)

 

 

 その瞬間、戒能良子がはめている黄金に輝く"ソロモンの指輪"が更に輝きを増し、威圧感を放つ。思わず横にいる黒服や組長なども身構えながら、輝きを放つ指輪をはめる戒能良子の方を見る。小瀬川白望の後ろにいる辻垣内智葉とメガン・ダヴァン、ネリーも圧倒的な威圧感を必死に耐える。その中で、小瀬川白望はただ一人、何も動じずにただ真っ直ぐ戒能良子の事を見ていた。

 

(……この感じ、小薪や霞もこんなんだったような気がするなあ)

 

 心の中で過去に闘った神様を降ろす事の出来る霧島神境にいる巫女たちの事を思い出しながら、牌を崩して山積みを始める。確かに、小瀬川白望からしてもあの気迫、威圧は人間の出せるものではないと評価する。しかし、あくまでも小瀬川白望が思ったのはそれだけ。驚愕するほどのものではないということであった。

 

(まあ……赤木さんと比べるとね。それに赤木さんの唯一の同類の鷲巣さん、だっけ……その人は赤木さん曰く神様を越えてるみたいだし。それにそういう類いとは鹿児島で既に闘ってるけど……面白い。こういう機会、滅多にないしね……)

 

 心の中でそんな事を言いながら、山を積み終える。小瀬川白望の言い振りだと、戒能良子が凄くともなんともないように聞こえてしまうが、それは誤りである。あくまでそれは小瀬川白望の主観からであり、その主観は主に赤木しげるが基準となっている。生涯誰からも理解されてこなかった赤木しげるが基準という時点で、小瀬川白望の主観は常人にはあてにならないという事だ。そもそも、神様やら天使などを降ろしたり操ったりする事ができる時点で、常人からしてみればそれだけでもう既に人外の類なのだが。

 

 

(……恐ろしいですね。ミカエルを見ても尚、眉一つ動かさないとは……)

 

 

 戒能良子はそんな小瀬川白望の事を見ながらも、大天使ミカエルの恩恵を直に受けようとする。ここで和了って、小瀬川白望の親を蹴る。それが戒能良子の今の目標であった。小瀬川白望もそんな戒能良子を見て、こう思考する。

 

 

(……戒能さんが呼び出したものを真っ向から叩いても怯まないのなら……それを操る戒能さん自身を叩くまで……)

 

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東三局一本場 親:小瀬川白望 ドラ{二}

 

小瀬川白望 41300

黒服1   24000

戒能良子  10700

黒服2   24000

 

 

 

(……ビューティフォーな配牌です)

 

 戒能良子は自身の配牌を引いて、自分が起こした事に自分で感動していた。まあそれもそのはずで、こんな配牌、常人なら多分一生麻雀だけをしても見られるかどうかの配牌なのだから。

 

戒能良子:手牌

{①①東東南南南西北白白発発}

 

 点棒が一万点を切ろうとしている圧倒的劣勢の状況だとしても、大天使の力を借りればこの配牌を引く事など造作もない事であった。配牌聴牌、とまではいかずとも{西}か{北}を引けばそれだけで混一色混老頭七対子が確定し、ツモれば倍満となる手であった。しかしこの手、{①}の対子を切り払ってしまえば役満必至となる手でもある。これをどうするかは、戒能良子の采配によるのだが。

 

戒能良子

ツモ{二}

 

 そんな状況の中、一巡目に引いてきた牌は{二}。ドラではあるが、この手牌では使いようがない。{①}の対子を外して重なる事を狙うという手もあるにはあるが、それでは混老頭が消えてしまうため打点的には変わらず、{二}が重なる保証もない。そもそも、役満を狙いに行けばこれは不要な牌。下手に持っていて狙われる前に、ここは切り飛ばしたほうがいい。そう思って切った{二}だが、これを見た小瀬川白望は小さく笑い、手牌から二枚、牌を倒す。

 

 

「……ポン」

 

小瀬川白望:手牌

{裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏} {二横二二}

 

 

 

 




次回も東京編。
さあ、シロはどう攻略するのか……?

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