宮守の神域   作:銀一色

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東京編です。
書きたいものが書けて満足


第216話 東京編 ⑲ 脅し以上

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視点:神の視点

 

 

「……サトハ?」

 

「ど、どうした?」

 

 

 辻垣内智葉の家の中にある脱衣室へと着いた四人。そこでメガン・ダヴァンは驚愕しながらさっきから顔を赤くしている辻垣内智葉に向かって声をかける。メガン・ダヴァンが驚くのもそのはずで、脱衣室から既に一般の家にある脱衣所とは比べ物にならないくらい広く、大きい部屋であった。……というかそもそも、本来ならば浴室に隣接されているはずの脱衣"所"が脱衣"室"として独立した部屋がある時点で少しおかしい気もするが、そこまで突っ込んでいくとキリがなかった。

 

「……この部屋、広すぎじゃないデスカ?」

 

「そ、そうか?これくらいの広さが丁度良いと思うのだが……」

 

 メガン・ダヴァンと同じく、隣で辻垣内智葉のように顔を赤くしているネリー・ヴィルサラーゼもその部屋の広さと、辻垣内智葉の庶民とはかけ離れた感覚に驚いている。唯一、二年前に一度この広さを経験した事のある小瀬川白望は驚いてはいなかったが、やはりここの広さには慣れていないようで、どこか落ち着かないような様子でいる。

 

「マア……取り敢えずワタシは脱ぎますヨ」

 

 そしてメガン・ダヴァンは辻垣内智葉とネリー・ヴィルサラーゼに言い聞かせるように言い、服を脱ぎ始める。それを見た小瀬川白望も、後に続くようにして服を脱ごうとしたのだが、それを二人の声によって中断させられる。

 

「ちょ、シロ!?」

 

「何……?」

 

 小瀬川白望は顔を赤くして小瀬川白望の事を見ようとしているのかそれとも見ないようにしているのか曖昧な仕草を取る辻垣内智葉に向かって問いかける。そう聞かれて戸惑っている辻垣内智葉の隣には、変な妄想を始めて自分で恥ずかしくなっているネリー・ヴィルサラーゼがいた。

 

「白望のハダカ……///」

 

「……ねえ、何も無いなら着替えていい?」

 

「えっ、いや……その……」

 

(ハア……予想はできてましたケド、ここまで重症とは……)

 

 そんな三人を遠目で見ながら着替えているメガン・ダヴァンは呆れた表情をしながらそんな事を考えていた。小瀬川白望も、辻垣内智葉の物言い(?)を無視し、服を脱いでいく。その光景を恥ずかしそうに見ている辻垣内智葉とネリー・ヴィルサラーゼ。

 そして小瀬川白望とメガン・ダヴァンが服を脱ぎ終えると、メガン・ダヴァンは小瀬川白望にこう言った。

 

「サア、二人が服を脱いでいる間、ワタシ達は先にカラダでも洗ってまショウ」

 

「ん……そうだね」

 

 小瀬川白望はそんなメガン・ダヴァンの要望を聞き入れ、浴室へと向かっていく。うまく小瀬川白望を辻垣内智葉とネリー・ヴィルサラーゼから切り離したメガン・ダヴァンはようやく一息つく事ができた。

 

(……これであの二人も心置きなく服を脱ぐ事ができるでショウ)

 

 そう、これはあくまでも小瀬川白望の目の前で服を脱ぐ事ができない状態であった辻垣内智葉とネリー・ヴィルサラーゼを思っての事、メガン・ダヴァンなりの気遣いであったのだが、どうやらその気遣いは二人には届かず、あろうことかあらぬ勘違いをされてしまっている事は、メガン・ダヴァンの背後から発せらる殺気によって証明されてしまっている。

 

「メグ……もしかして」

 

「……抜け駆けしようとする悪い子には後でお灸を据えなければならんな……」

 

(ヒィィ!?なんか物騒な事になってマスネ!?)

 

 背後から微かに聞こえる辻垣内智葉とネリー・ヴィルサラーゼによる嫉妬の声を聞いたメガン・ダヴァンは彼女らに対して恐怖する。メガン・ダヴァン側は善意のつもりでやっていたため、完全な誤解であった。

 

「……?どうしたの、メグ。何かを怖がってるような表情をして」

 

 そんなメガン・ダヴァンの異様なまでの恐怖心に気付いた小瀬川白望は彼女にそう聞くが、メガン・ダヴァンは「ハハハ、何でもないデスヨ……」と言って誤魔化そうとする。が、しかし。小瀬川白望はここにいる人間の予想を全て裏切っていく。

 

「……もしかして、私が今日メグの事を散々狙ってたことに対して?」

 

「ハ?」

 

「もしそうだったとしたら……ごめんね。まあ私は誰が相手だろうと手加減するつもりなんてハナから無いから……でも、それがトラウマになったんならそれはそれで謝るよ」

 

「エッ、イヤ……」

 

「麻雀を打ってる時は"敵"だけど……今は私の"友達"だからね」

 

 小瀬川白望は自身の頬を掻きながらそう言う。いや、その事に対してはもはやどうでもいい。そう言われた事は確かにメガン・ダヴァンにとっては嬉しいものであったが、時と場合が今はそれを求めてはいなかった。

 

(……ヤバイ)

 

 身の危険を察知したメガン・ダヴァンは、裸体の小瀬川白望の腕を掴んで、浴室の中へとダッシュで駆けて行った。浴室もここは銭湯かと見間違うくらい大きなものであったが、そんな事今のメガン・ダヴァンの頭の中には入ってこなかった。

 

 

「……本当にどうしたの?」

 

「ナ、何でもないですヨ。サ、サア。カラダを洗いましょうか」

 

 そうしてシャワーノズルが何個も設置してあり、もはや銭湯かと言いたくなるような光景が展開されていたが、案外メガン・ダヴァンはそれに素早く順応する。そしてこの時ばかりは普通の浴室でない事に感謝していた。

 

(サスガにこの状況で洗いっこイベントなんて起こったらワタシは今頃海に沈められていましたヨ……)

 

 そんな感じで、辻垣内智葉とネリー・ヴィルサラーゼの殺気から怯えつつ、手早く頭と身体を洗い終える。小瀬川白望はまだ洗っている途中であり、一足先に浴槽に入ろうとしてメガン・ダヴァンの自分の部屋の何十倍も広い浴室を歩いていると、運悪く辻垣内智葉とネリー・ヴィルサラーゼに遭遇してしまう。

 

「……」

 

 ネリー・ヴィルサラーゼは嫉妬している感じを完全に出しているからまだ可愛いものなのだが、対する辻垣内智葉は違った。彼女は気味が悪くなるほど明るい笑顔を浮かべながら、メガン・ダヴァンとすれ違いそうになった瞬間、彼女はメガン・ダヴァンの肩を掴んでこう囁いた。

 

「……良かったな。ここが鉄が錆びてしまって使い物にならない風呂場で」

 

 意訳するとすれば、それは「ここが風呂場じゃなかったら刀で叩っ斬っていた」という事だ。普通の人間が言えばそれはただの脅しの冗談で済まされるのだが、辻垣内智葉が言ってしまうとそれは最早脅しで片付く話ではない。本気でやりかねない。だからこそメガン・ダヴァンは怯えていたのだ。

 辻垣内智葉のさっきの言葉は、言うなれば小瀬川白望が国士無双のブラフをしているようなもの。そんな此処一番という状況で役満手など引けるはずがないというのに、小瀬川白望ならやりかねないような事と同じ事である。

 

 そしてもはや脅しになってすらいない恐怖の言葉を叩きつけた辻垣内智葉は身体を洗うべくシャワーノズルを取ろうと近寄ると、小瀬川白望の一糸まとわぬ背中が視線の中に入ってきた。

 

「……〜〜!!///」

 

 さっきのメガン・ダヴァンを脅す事に集中(?)していたのか、小瀬川白望の存在に今の今まで気付いていなかった。視線の中央で展開される小瀬川白望の背後姿に、辻垣内智葉の頭に熱が昇る。そして辻垣内智葉よりも早く気づいていたネリー・ヴィルサラーゼは顔を隠すようにして小瀬川白望の背後姿を見ている。もう既に限外状態に近いのだが、辻垣内智葉の声にならない叫びによって小瀬川白望が身体ごと振り向いたため、二人は小瀬川白望の裸体をモロに目撃してしまい、もはやノックアウト寸前であった。

 

 

(……確実に二年前より大きくなっている!?)

 

(白望の、本物の身体……///)

 

 二人は悶絶しながらも小瀬川白望の事をまじまじと見続ける。小瀬川白望はそんな二人を見て首を傾げる。

 そしてそんな騒ぎを浴槽の中で聞いていたメガン・ダヴァンは大きい溜息をついた。

 

 

(ナゼ予測していなかったノカ……)




次回も東京編。
今後の流れは
智葉達→戒能さん→照
みたいな感じです。

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