宮守の神域   作:銀一色

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麻雀回です。
今回シロが更にパワーアップします。
どんどん神域に達していきます。


第11話 防塞

 

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視点:臼沢塞

東一局 親:塞 ドラ{白}

 

小瀬川 25000

胡桃 25000

塞 25000

常連 25000

 

 

久々だ。あのダルがりさんのシロと打つのは。

 

彼女が麻雀を辞めて数ヶ月。てっきりもう彼女と麻雀という点で関わることは無いだろうと思っていた。

 

しかし、今私の前にはシロがいる。私の初恋の相手であり、今も尚恋しているシロが。

 

数ヶ月振りに打つ彼女の姿は、前よりも更にかっこよくなっている気がする。

 

姿だけじゃない。麻雀の腕の方も、感触だけで分かる。前のシロとは、まるで別人だ。

 

その証拠に、彼女が放つプレッシャー、威圧感は同年代のソレではない。

 

彼女は確実にパワーアップしていた。

 

(面白いね…シロ。どこまで強くなったのか見せてもらうよ…!)

 

目の前の伴侶を見つめ、配牌をとっていく。

 

塞:配牌

{二萬三萬六萬七萬二筒九筒一索一索四索四索五索五索七索九索}

 

比較的早く、連荘するには良い配牌だ。

ここから行くとしたら平和一盃口。対子場であれば七対子を狙ってみてもいい。

孤立した九筒を切る。

 

打{九筒}

 

常連さんがドラの{白}を切る。

繋がらないと思ったのか、早めに地雷を処理するようだ。

 

そしてシロが{南}をツモ切りする。

あまり運は良くないようだ。

 

胡桃がそれに合わせて手出しの{南}打ち。

 

胡桃はリーチを絶対にしない。黙聴に徹する麻雀である。

オカルト的なものもあるのだろうが、胡桃は聴牌を察知するのが非常に困難である。

故に、予め聴牌しているかしていないかを仮定して進めるしかない。

 

そして私のツモは{白}。

 

ドラではあるが、さっき常連さんが切った牌でもある。

 

何ら迷いもせず、{白}ツモ切り。

 

 

その瞬間牌が倒れる。そして「ロン」の声。

 

音源は目の前にいるシロから。

 

シロが一番端の牌を倒す。それは紛うことなき{白}。

 

そして他の12牌を遅れて倒す。

 

小瀬川:和了形

{二萬二萬二萬七萬八萬九萬二索三索四索東東東白}

 

「6400…」

 

シロが点数申告をする。いや、点数など今はどうでもいい。シロは{南}をツモ切りしたはずだ。

即ち聴牌していたのだ。じゃあ、何故常連さんの{白}で和了らない?

 

そう考えたが、ハッと思い出す。

 

(そうか…あくまでもこれは3人の勝負。だから和了らなかった。シロは。おまけに見逃したおかげで私は完全に油断してた。)

 

「一杯食わされた。って事ね。」

私がそう言うが、彼女は表情を変えず、

「さあ…それはどうかな。」

とクールに返す。

私は6400点分の点棒を支払い、牌を穴に入れ、常連さんがサイコロを回す。

 

(次…いや、シロが親の時か…アレを使わせてもらうよ!)

 

 

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視点:小瀬川白望

東二局 親:常連 ドラ{二筒}

 

小瀬川 31400

胡桃 25000

塞 18600

常連 25000

 

さて、好調なスタートダッシュが切れた。

塞と胡桃は気付いていないが、これで私は流れを掌握する事に成功する。

 

さあ、ここからガンガン攻めようか…

 

小瀬川:配牌

{二萬三萬四萬五萬六萬六萬九萬二筒九索東東南南}

 

萬子の混一色が狙える手牌。流れを掌握した私にとって、この程度の配牌はあまり良いとは言い難い。しかし…

(狙い撃つには持ってこいの"コレ"がある…)

ドラの{二筒}を手で弄び、それを見つめる。

シナリオはできた。

混一色と見せかけての、{二筒}単騎。

 

ならばその準備を進めなくては。

 

常連さんが捨てた{一萬}を早速鳴き、{九索}を切り払う。

 

そして胡桃が捨てた{東}も鳴く。そして{九萬}切り。

 

今、手牌は

{四萬五萬六萬六萬二筒南南} {東東横東} {横一萬二萬三萬}

 

という状況。

3巡で早くも2副露で一向聴。

塞に至っては一回もツモっていない。

 

そして次順。{四萬}をツモる。

私は{二筒}単騎以外は見えていないので、{二筒}を切らず、{五萬}切り。

 

そして塞が苦しい表情をしながらも、{六萬}打ち。

 

私が「ポン」と発声した瞬間、塞がビクっとなったが、「ロン」では無いのを確認して、露骨に安堵する。胡桃も同様に、「ロン」ではないかとヒヤヒヤしていた。

 

私は勿論聴牌には取らず、対子の{南}切り。

 

その次順に再び{四萬}をツモり、聴牌。{南}を切る。

 

わざわざ対子であった{南}を落とすという事は、聴牌の待ちを変えたという事。

前局の和了もあり、萬子の混一色気配だとしても{二筒}は警戒されるだろう。

第一、これは些か露骨すぎる。

 

(まだ足りない…萬子の混一色を取り繕う為には…)

 

そう。まだ足りないのだ。鍵はまだ揃っていない。

 

次順はムダヅモ。{八索}を切る。

 

同順、胡桃が強めの{五索}を切る。十中八九聴牌であろう。

その牌を塞が鳴く。ポンだ。

 

そして私のツモ番。{四萬}。キーは揃った。

 

「カン」

 

小瀬川:手牌

{二筒} {裏四萬四萬裏} {六萬横六萬六萬} {東東横東} {横一萬二萬三萬}

 

このカンはただ{四萬}を晒して混一色の印象を強めただけではない。

 

私が欲しているもの。それは新ドラ。

 

 

しかし、新ドラをのせるのは萬子ではない。

 

 

ドラ表示牌 {一筒四索} ドラ {二筒五索}

 

 

 

 

そう。塞が晒した{五索}である。

そして、ターゲットは胡桃である。

ドラが塞に乗ったこの状況では話は変わってくる。胡桃のこの場で警戒すべき人物は私よりインスタント満貫が確定の塞に向く。向かざるを得ない。

 

 

おまけに塞が危険になったおかげで私の怪しさ満天の混一色モドキも警戒が解けた。この事によって、胡桃は私の混一色モドキは混一色と断定してしまう。

 

おまけに塞の捨て牌には{二筒}がある。

胡桃がオリれば、いずれ打ち出される牌だ。

 

読み通り、胡桃はオリを選択し、9巡目に{二筒}を吐き出す。

 

「ロン」

 

小瀬川:手牌

{二筒} {裏四萬四萬裏} {六萬横六萬六萬} {東東横東} {横一萬二萬三萬}

 

「東ドラ2。6400…」

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胡桃が驚愕する。自分はオリに徹底したハズなのに。

(いや…そもそもあのカンで塞にドラをのせたのもシロの策略?自分の警戒を塞に見事に逸らしたものなのかな…そうだとしたらシロ、メチャクチャ強くなってる!)

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塞も驚きを隠せないでいた。

(あのカンは無意味なものじゃなくて、ちゃんとした意味があったんだ…なかなか、というかすっごく強い。)

 

 

しかし、その瞬間胡桃と塞の目が変わる。

(シロの親番…潰す…)

(親番だし、塞ぐか…)

 

 

少女達は、小瀬川白望という怪物に立ち向かう。

 

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視点:小瀬川白望

 

 

東一局、東二局と連続で和了ったが、その後は徐々に点棒を失っていった。

 

東三局から一向に聴牌に辿り着けない。例え聴牌しても、和了る事が出来ない。

 

(この感覚は…)

 

そう。私の対面に位置する臼沢塞。彼女のオカルトによって、私は塞がれている。

 

彼女の能力は防御最強と言っても過言ではないほど強大な力で相手を封じる。

無論、その代償は大きく、長時間続けたりすると疲れ果てて倒れたりしてしまうほどに体力を消耗する。

今だって例外ではないはずだが、塞にやめる気配はない。それほど彼女が本気だという事だ。

 

いくら赤木さんの特訓を受けた私といえ、オカルトに真っ向から対抗する術はない。

赤木さんのは端から見ると『オカルトに見える』だけで、オカルトではない。

 

故に私が打ち破る事もできず、そこに塞や胡桃が和了っていき、私は南一局に逆転を許す。

 

逆転した後も塞がれ続け、オーラスになるまでに点差はどんどん開いていった。

 

小瀬川 19000

胡桃 34500

塞 27800

常連 18700

 

一応最下位は免れているものの、常連さんは無関係だ。それは常連さんも承知なので、「見」に回っている。常連さんが攻めようが攻めまいが私が負けている事実は覆らないだろうが。

 

 

この時私は焦っていた。

赤木さん相手にも屈しなかった私が、初めて焦っていた。

 

 

(このままだと…負ける。)

 

それは表情には出していなかったものの、額に汗をかいている。

 

ラス親の胡桃がサイコロを振る。

分からない。どうしたらいいのか見当がつかない。打ち崩せる気がしない。

 

敗北。

その二文字が迫ってきている。

 

 

しかし、

(…敗…北?)

 

 

(…負ける?誰が…負ける?…私?私が負ける…?)

 

 

(こ の 私 が 負 け る ? )

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瞬間、私の体から闇が放たれる。

 

幻ではない。この場にいる全員がその闇を確認した。まるでブラックホールのようだ。

 

それと同時。

 

バキ。と音がした。

 

 

塞が驚愕する。

 

(まさか…ありえない…)

 

そう。私は塞の『塞ぎ』を跳ね返した。

故に、私を阻むモノはもういない。

 

 

皆は驚きながらも、配牌を恐る恐るとっていく。

 

(そうだ…)

 

{一萬東九筒南}

 

(私は決めたじゃないか…)

 

{西白北一索}

 

(赤木さんを超えると…)

 

{発九萬一筒九索}

 

(神域になると…)

 

{中}

 

故に…こんなとこで負けていてはいられないのだ。

 

 

胡桃がゆっくりと牌を捨てる。それが何であろうと関係ない。

 

塞がツモ切りをする。瞬間、胡桃が鳴く。

 

(…甘いよ。胡桃。)

牌の位置だとか…鳴きによる流れだとか…

 

関係ない。関係ないのだ。

 

ツモが回ってくれば、それが和了牌。

 

塞がもう一度ツモり、牌を捨てる。それに続いて常連さんもツモって牌を河へ置く。

 

私は深呼吸して山に手を伸ばし、盲牌すらせずにその牌を自分の手牌の横に置き、申告。

 

「ツモ」

 

{一萬九萬一筒九筒一索九索東南西北白発中} ツモ{一筒}

 

 

 

 

 

「8000-16000」

 

 

点数を言い終えた直後、プツリと糸が切れたように私は倒れ、意識を失った。

 

 

 

 

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「あれ…塞?胡桃?」

 

目が覚めるとそこには心配そうな目で私を見つめる2人がいた。

 

「やっと起きた…倒れた時はどうなるかと思ったよ。」

塞が胸を撫で下ろし安堵する。

胡桃は「心配させないでよね!」と私を叱った。

 

私は2人を抱き締めて、謝った。

「ごめん。偶然とはいえ、倒れるような無茶して。」

 

「うぇ!?ちょ…!シロ…!?」

 

「…!??」

 

塞と胡桃がびっくりして、顔を赤く染めている。

 

塞が唐突に話題を変え、私の腕を解く。

「にしても、やっぱりアレは偶然だったんだ」

 

「うん…」

 

「びっくりしたよ。まさか塞いだのを跳ね返すなんて。」

 

「そうそう!シロから変なの出てたし!」

 

「まあ、久々に打てたから楽しかったよ。シロ。」

 

「私も!」

 

 

 

塞と胡桃が笑顔でこちらを見る。

やはり彼女らは大切な親友だ。

 

「じゃあ、もう一回、打つ?」

 

「流石に塞ぐのはもう無理だけど、塞さんに任せなさい!」

 

「塞を狙おうっと」

 

「ええ!?シロじゃなくて!?」

 

 

 

 

 

私達の『祭り』は夜まで続いた。

 

 

 

 

 

 




シロのブラックホールは、アカギのブラックホールのように豪運や能力を打ち消し、鷲巣様のホワイトホールのように強力な運を引き寄せるようなイメージです。

よっぽどシロを追い詰めるか怒らせたりしないと発動させません。
だって、連発できたらチートですやん…

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