宮守の神域   作:銀一色

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東京編です。
週末キツいです……


第220話 東京編 ㉓ 熱

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視点:神の視点

 

 

「体温計とタオル、持ってきましたよ」

 

 戒能良子はコンコン、とドアを叩き扉越しで小瀬川白望に向かってそう言った。小瀬川白望は「うん……ありがと」と返すと、戒能良子はドアを開けて部屋に入ってくる。

 

「フォアナウ。とりあえず体温を計りましょう。脇、失礼しますよ」

 

 戒能良子はそう言って小瀬川白望の服の隙間、首元から温度計を通し、脇を使って挟まさせる。小瀬川白望は(それくらい自分でできるのになあ……)と思っていたが、どうせ言ったところで無意味であろうと悟った小瀬川白望はおとなしく戒能良子に任せる事にした。

 そうして計測してから1分弱が経ち、体温計がピピッという音を発する。それを聞いた戒能良子は小瀬川白望の脇から体温計を抜き取り、表示された温度を見る。

 

「38.5度ですか……それなりにハイですね」

 

「……そんなにあったの?」

 

 小瀬川白望が戒能良子にそういうと、「イエス。ルックアットディスです」と言って温度計を小瀬川白望に渡す。小瀬川白望が温度計をみると、確かに38.5度と表示されていた。いや、実際に見ただけで何かが変わるということは無いのだが、それでも小瀬川白望にとっては少し衝撃的であった。

 

(発熱なんていつぶりだろ……)

 

 そして小瀬川白望がそんな事を考えていると、戒能良子が部屋のタンスから何かを取り出すと、それをベッドの横に置いて小瀬川白望に向かってこう言った。

 

「とりあえず、そのクローズではスリープし辛いでしょうから着替えましょう」

 

「え……ここで?」

 

「イエス。スリープにはパジャマがグッドかと……」

 

「いや、そういう事じゃなくて……取り敢えず部屋から出てって。自分で着替えられるから」

 

「……仕方ないです」

 

 最初ら辺は誤魔化そうとしていた戒能良子であったが、小瀬川白望に直接言われてしまったので渋々納得して部屋から出て行く。小瀬川白望からしてみれば、人に着替えさせてもらうなど恥ずかしくてたまらない。公開処刑のようなものである。

 

(っていうか……別に寝る時用の服は持ってきてるんだけどなあ)

 

 そして小瀬川白望が着替えている途中、彼女はそんな事を思う。正直言って戒能良子から貸してもらった服を着なくとも、自分の服を着ればいいだけの話なのだが、用意されてしまった以上着るしかないだろうと考えて小瀬川白望は服を着る。

 

(私と比べて少し小さい程度だったから……サイズは大丈夫そうかな)

 

 小瀬川白望は自分の身体と戒能良子の服のサイズが合っているかを確認する。戒能良子の身長と、小瀬川白望の身長とでは小瀬川白望の方が若干大きいものの、そんなに大差あるものでもないためその問題は心配無用であった。自分の着ているサイズと同じか、ちょっと小さめのやつくらいの大きさだ。

 

(……こういう時、胡桃とかってどうするんだろ。流石に同年代であの身長はいないような気がするけど)

 

 自分のサイズと戒能良子の服のサイズが合っている事から連想して、小瀬川白望は鹿倉胡桃がもしこうなった場合はどうするのだろうかと考え始める。彼女は中学生とは思えないほどの身長の低さであり、小学生に見られても仕方のないほどであった。本人は自分は成長期が遅く来る晩成型だと言っていたが、正直あそこから身長が高くなるのは望めない、と小瀬川白望は思っている。無論、言ったところで説教を食らうだけなので小瀬川白望は言っていないのだが。

 

(まあ、考えるだけ無駄かな……そもそも胡桃は体調管理ができない人じゃないし……)

 

 結局、『鹿倉胡桃はそういうミスはしない』という一応の結論を出した小瀬川白望は着替え終え、戒能良子を呼ぶ。呼ばれた戒能良子はドアを開けて入ってきて、着替えた小瀬川白望の事をまじまじと見ていた。

 

「おお……白望さんが私のクローズを……グッド、グレイト、エクセレントです」

 

 そう呟いていると、小瀬川白望の呆れたような目線を感じ取ったのか、戒能良子はコホンと咳払いをし、「まあトゥデイはゆっくり安静にしてくださいね」と言って小瀬川白望を再びベッドに寝かせ、額に濡らしたタオルを置いた。

 

「何かあったら直ぐに私をコールしてください」

 

「ん……分かった」

 

 戒能良子はそう言って部屋から出て行く。そうして小瀬川白望だけの空間となった状況で、小瀬川白望は額に乗っかっているタオルの冷たさを感じていた。

 

(冷たい……というか涼しい?まあ……どちらにせよ、気持ちいい……)

 

 そういえばこうして昼間から寝るのはいつぶりなのだろうか。そんな事も小瀬川白望は考えていた。小瀬川白望はこの冬休みが始まってからはずっと関東にいて麻雀を打っているし、結構スケジュールもハードだったので(と言っても自分からハードにしているだけなのだが)、こうして昼間から寝るという事はかなり久々の事であった。それに、ゆっくり寝る事も久々の事であろう。そこで小瀬川白望は初めて自分の体が疲れていると実感する。

 

(確かにまだまだ足りないとは思っていたけど……こんな事になっちゃ駄目だよなあ……)

 

 急ごうとするあまり、体がついて行っていない典型的な自滅行為。これをしていたとようやく小瀬川白望は知る。それによって小瀬川白望だけが被害を被るのはいい。しかしそれで他の人に迷惑がかかってしまうのが小瀬川白望は許せなかった。

 

【……焦っても何も得やしない。お前は少し休んでな】

 

 そしてそんな小瀬川白望に向かって赤木しげるは小さな声で話しかける。小瀬川白望はそれを聞いてふふっと笑って「そうだね……そうするよ」と呟き、瞳を閉じた。赤木しげるはそんな小瀬川白望を見て、【しかし、つくづくお前を見ているとガキの頃の俺を思い出すな……その無鉄砲さ、嫌いじゃないぜ】と呟いた。




次回も東京編。
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