宮守の神域   作:銀一色

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東京編です。
月曜日ってあれですよね。一番月曜日感ありますよね(意味不明)


第230話 東京編 ㉝ 迷いの二択

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視点:神の視点

 

東二局一本場 親:宮永照 ドラ{西}

 

小瀬川白望 36700

宮永照   30900

亦野誠子  22400

 

 

 前局、宮永照はダブ東ドラ1の7800、3900オールを和了って親を続行。連荘。依然として宮永照の好調は続き、またもや良手の三向聴が入る。

 

宮永照:手牌

{一②⑥⑦⑨134477白発発}

 

(……これくらいなら上々。むしろ、良すぎるくらい。七対子にも、普通の役牌手でもいける)

 

 宮永照は自分の配牌を見て今後の方針を考える。スピードはもちろん第一優先なのだが、ここはやはり打点も気にしながら打っていきたいところである。宮永照のさっきの和了は三飜。『加算麻雀』を発動させるために必要な十三飜は残り十飜となった。局数だけで見れば、いくら三麻とはいえまだ東二局。今の調子や流れを鑑みても、小瀬川白望の猛追さえ防ぐことさえできれば『加算麻雀』発動は問題はないだろう。……小瀬川白望を抑えることができるかはまた別の話として。

 しかし、小瀬川白望と闘う上で避けなければならないのは長期戦。闘いが長引けば長引くほど、腕や技量が宮永照と比べても格段に違う小瀬川白望の方が有利になっていく。それに小瀬川白望に与える情報量も多くなるであろうし、できることなら短期決戦。早めに役満を和了りたいところではあった。その後、小瀬川白望からどう逃げるかはまた別として、勝てる道があるとすれば断然短期決戦型で挑むことがベストであろう。

 微妙な駆け引きではある。が、これが後の運命を分かつと考えれば容易に決断することは些か危険と言えるであろう。しかし、その僅かな思考のための空白、今一時ではない未来……言うなれば不確定要素を見据えた埒があかぬ思考……小瀬川白望はそれに乗じてある準備を進めていた。

 

 

宮永照:手牌

{②②⑥⑦⑨134477発発}

ツモ{3}

 

(……!)

 

 とはいえ、宮永照が好調なのも真実ではある。宮永照が引いたこの{3}、融通無碍な牌である事は言うまでもない。宮永照は未だ七対子か役牌超特急か決め切れぬ状況にある。そんな状況の下で七対子にも普通の手作りも可能である{3}を引いてこれたのは流石というところか。

 しかし、そんな安堵する宮永照を見て小瀬川白望はそれを一蹴する。

 

(……ズレている。むしろ逆。それを引いたのは幸運でもなんでも無く、照……あなたの心の迷いが招いたもの……)

 

(……結局、手牌が自由すぎるが故にまだ決める事ができていない。そんなに悠長に構えてるなら、こっちだって考えがある)

 

 

 小瀬川白望は宮永照とは全くの逆の立場であり、迷いに迷って道が広がり続ける宮永照に対して、小瀬川白望は一本道。ただ一つの目標に向かって動いている。そうなれば当然、スピードの点でも好調な宮永照を差し置いて小瀬川白望が前へ進む。実際小瀬川白望は既にこの時点で手を一向聴にまで進めていた。

 

(その一瞬の思考……今一時ではなく、浮いた思考……それが命取り)

 

 

 

(……ここから最後の三副露目が鬼門だな)

 

 そして一方の亦野誠子も着々と手を進めてはいるものの、決定的な事が起こらずに四苦八苦していた。二副露までは鳴く事ができても、どうしても三副露目を鳴けることができない。亦野誠子自身、いくら三麻でチーができない、そして尚且つ能力の事が筒抜けだからといって、ここまで露骨に鳴かせてくれないとなると多少苦しいものがある。しかも、ただ運が悪いだけではなく、意図的に鳴かせてくれないのである。宮永照も小瀬川白望も、ポンポン危ない牌は切ってくるはずなのにどういうわけか此方の急所の牌はしっかりと握り潰してくる。まるで牌が透けて見えるのかと思ってしまうほどであった。

 

(よし、だがこれで一向聴……)

 

亦野誠子:手牌

{①④④⑧⑧⑨中} {9横99} {横北北北}

ツモ{①}

 

打{中}

 

 しかしなんだかんだ言いつつも、小瀬川白望が一向聴となった巡目の次の巡、即座に亦野誠子も一向聴となる。{①④⑧}のいずれかが出ればその時点で鳴いて後は和了るのを待つだけ。実質三面待ちと言っても差し支えないものではあるが、あくまでも能力が発動できるだけで、和了れるとは限らないのだが。

 

 

宮永照:手牌

{②②⑥⑦1334477発発}

ツモ{⑥}

 

「リーチ」

 

打{横⑦}

 

 

 そうしてその次に宮永照は七対子を聴牌することができた。宮永照は点棒を投げ入れてリーチを宣言するが、時既に遅く、小瀬川白望の謀略は実行に移ろうとしていた。

 

(……よし)

 

 亦野誠子がツモ切りを終えると、小瀬川白望は山から牌をツモってくる。ツモ牌を確認した小瀬川白望は、チラリと亦野誠子の手牌を視線に入れながら点棒を取り出す。そして点棒を先に投げてからリーチ宣言牌を横に曲げると同時に、亦野誠子は動いた。

 

「リーチ」

 

小瀬川白望

打{横⑧}

 

「ポン!」

 

(!?……)

 

亦野誠子:手牌

{①①④④⑨} {⑧横⑧⑧} {9横99} {横北北北}

 

 

 亦野誠子は内心歓喜する。ようやくいつもの感じで和了れることが出来ると。先ほどのような明らかに和了らされたものではなく、ようやく、和了れる。そう思い希望を繋ぐ{⑨}を叩きつける。しかし、

 

 

 

「……ロンッ!」

 

 

(……は?)

 

 

小瀬川白望:和了形

{①②③④⑤⑥⑨⑨赤555中中}

裏ドラ表示牌{6}

 

 

「リーチ赤1……!」

 

 その希望を、いとも容易く潰されてしまう。それも、先ほど希望を与えたも同然の小瀬川白望が、あっさりと。亦野誠子が驚愕したのは、それだけではない。完全に小瀬川白望は此方の{⑨}を打ち取る気であったという事に気付いたからだ。でなければ一通が無くなるような待ちにする意味はない。ここにきてようやく亦野誠子は気づくことができた。それは遅いのか、もしくは早いのかは分からない。しかし、気付いてしまった以上、亦野誠子は怯え続けるしかない。

 

「……2600は2900」

 

 目の前にいる小瀬川白望は、バケモノなんかとはてんで格が違う。神様……いや、それ以上の何かであるという事に気付いた以上、亦野誠子には打つ手がなかった。

 




次回も東京編。
そういえば、もう五月が終わって六月になるんですね。関係無いですけど……

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