宮守の神域   作:銀一色

245 / 473
東京編です。
明日でやっと今週が終わる……


第233話 東京編 ㊱ 鈍感、天然

------------------------------

視点:神の視点

 

「誠子はこれから何か用事とかある?」

 

 さっきまで宮永照と、亦野誠子曰く夫婦のようなやり取りをしていた小瀬川白望は、今も尚若干顔を赤くしながらも亦野誠子にそんな事を聞いた。亦野誠子は別に何も用事とかは無いと言いかけたが、ここで亦野誠子は宮永照と小瀬川白望の方を見てこんな事を考えた。

 

(……これは2人の空間を邪魔しちゃ悪いかな)

 

 これはちょっとした亦野誠子なりの気遣いということだ。それに、も今小瀬川白望が亦野誠子の事を呼び捨てで、尚且つ名前で呼んでいたことにより宮永照の亦野誠子に向ける視線には若干の嫉妬が含まれていた。今も尚亦野誠子が思考を働かせている間も少しムッとした表情で亦野誠子の事を見ていた。亦野誠子はさっきの小瀬川白望の発言からして、宮永照に好意を抱かれているのは気付いていないのだろう。あれだけの爆弾発言をされたのにも関わらずあんな事を言える小瀬川白望はド天然なのであると結論付けながら、亦野誠子はようやく口を開く。

 

「いや……これから連れとちょっと釣りの用事が入ってるので……」

 

 亦野誠子はそう言うが、実際はそんな事はなく完全に亦野誠子の嘘であったが、小瀬川白望は「そうなんだ……」とつぶやく。あの感じからして、亦野誠子の嘘には気付いていないのだろう。

 

(麻雀ではあんなに私の心を読んできたのに、まるで別人みたいだなあ……いや、ただ"そういうの"に鈍感なだけか……)

 

 亦野誠子は思わずニヤついてしまいそうになりながらも、「じゃあ、私はこれで。ありがとうございました」と言って頭を下げる。小瀬川白望は「うん……こっちもありがとう」と言い、宮永照は少し表情を明るくしながら「ありがとうね。亦野さん」と言う。

 そんな亦野誠子は明るい表情を浮かべる宮永照を見て、(この人はこの人で何というか……分かりやすいというか……)と思いながら、宮永照のところまで近づくと、小瀬川白望に聞こえないようにそっと耳打ちするようにこう言った。

 

「宮永さん。頑張って下さいよ」

 

 それを聞いた宮永照はびっくりしながらも、顔をまたもや赤くしながら「な、何を……」と亦野誠子に向かって言うが、亦野誠子はふふっと笑いながら(やっぱり分かりやすい人だなあ……)と思いつつ、「じゃあ、またいつか!」と言い残して雀荘を後にした。小瀬川白望は「じゃあね……」と、宮永照は「え、あの……」と何かを言いたそうにしていたが、亦野誠子はせっせと帰って行った。

 

 

「……行っちゃったね」

 

「ふえっ!?そ、そう……だね」

 

 小瀬川白望がふとそんな事を口にすると、宮永照は驚きのあまり変な声を発しながらも小瀬川白望の言葉に反応する。さっきの亦野誠子の言葉のせいで全く思考が働いていない状況となった宮永照は頭が真っ白になっているが、小瀬川白望はそんな宮永照に向かってこう言った。

 

「じゃあ、私たちも行こうか」

 

 そう言って小瀬川白望は右手を宮永照の左手に向かって差し出す。宮永照は顔を赤くしながらも「うん……行こう」と言って小瀬川白望の右手を握り、雀荘を後にした。

 

(……白望さんの手、あったかい……)

 

 宮永照は小瀬川白望の手の温もりを感じながら、東京の道を2人は歩いていると、小瀬川白望はふと宮永照にこんな事を聞いた。

 

「ねえ、照」

 

「……何?白望さん」

 

 そう宮永照が返事すると、小瀬川白望は「それ。それだよ、照」と宮永照に向かって言う。宮永照はぽかんとした表情でいると、小瀬川白望は宮永照の方を見てこう言った。

 

「……もう知らない中じゃないんだし、別に"さん"付けじゃなくてもいいんじゃない?」

 

 小瀬川白望がそう言うと、宮永照は「そ、そうかな……」と返す。一見して平静を装おうとしているが、しっかりと顔が紅潮してしまっているので、焦りと恥ずかしさでいっぱいなのがしっかりと顔に出ていた。

 

「……それとも、私を呼び捨てで呼ぶのは嫌?」

 

 そしてさらに小瀬川白望が詰め寄ると、宮永照は半ばやけくそのような感じで小瀬川白望に向かって「わ、わかった……!」と答える。

 

「分かったよ……白望さ……じゃなくて、白……望///」

 

 それを聞いた小瀬川白望は少し満足げな表情をして「ありがとう。照」と言う。宮永照はこれまで他人の名前を呼び捨てで呼んだことなど殆どなかった。その上言う相手が想いを寄せている小瀬川白望である。恥ずかしさはまさに絶頂を迎えていた。

 そして落ち着きを取り戻した宮永照は、いきなり名前を呼び捨てで呼べと言ってきた小瀬川白望に対して「でも……いきなりどうしたの。し、白望……」と、未だ慣れない呼び捨てで聞くと、小瀬川白望はこう返した。

 

「いや……みんな私の事を呼び捨てで呼ぶから、照もそうした方が違和感無くて良いかなって……まあ例外はいるんだけど」

 

「え……そ、そう。そうだったんだ……」

 

 そう言って宮永照は少しばかり落ち込む。もしかしたらてっきり小瀬川白望が自分の事を特別視してくれているのかと期待していた宮永照はため息まじりに心の中でこう言い放った。

 

(はあ……期待した私が馬鹿だった……)

 

 そんな宮永照を見て小瀬川白望は「ん……どうしたの?照」と問いかけるが。宮永照は少しむすっとした表情で「ううん……なんでもない」と返答する。小瀬川白望はそれを聞いて、(何かあったのかな……)と的外れな考察をする小瀬川白望であった。

 

 




次回も東京編。
流石天然誑しは違いますね……

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。