宮守の神域   作:銀一色

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東京編です。
嫉妬に燃える2人……若干のキャラ崩壊。


第237話 東京編 ㊵ ギスギス

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視点:神の視点

 

 

「お茶どうぞ。白望さん、宮永さん」

 

「え、ああ……ありがとう」

 

 渋谷尭深の家の中に入ってリビングにある椅子に座った小瀬川白望と宮永照は渋谷尭深からお茶を出される。

 小瀬川白望は未だ拭いきれない違和感を感じつつも、しかし深く追求できないもどかしさを感じながら渋谷尭深のことを見る。さっき彼女が2人にお茶を出す時も、小瀬川白望の時は静かにテーブルに置いたが、宮永照の時は少し力が入っていたような感じもした。

 小瀬川白望は出されたので取り敢えずお茶を口にするが、隣にいる宮永照は一口も飲もうという気配はなかった。

 

(……流石私のライバル。リビングだけじゃなく、さっきチラッと見えた自室も綺麗に整ってる……女子力のなせる業だね)

 

 宮永照はリビングの周りをじっくりと観察しながら渋谷尭深というライバルを見定める。宮永照も認めたくはないものであったが、今の所渋谷尭深は非の打ち所がない完璧人であった。部屋も綺麗、持て成しも十分、礼儀正しい……まるで架空のキャラクターかと思ってしまうほどであった。

 しかし、それで屈する宮永照ではない。というか、屈するという選択肢以外何もないのだが。

 

(……私も今日に備えて部屋はもちろん、あらゆる場所を掃除した。万全の体制なのはこちらも同じ……)

 

 なぜか心の中で勝ち誇っている宮永照を見て、渋谷尭深がわざとらしく「そんなに部屋を見渡して……何かありましたか?」と聞いた。虚をつかれた宮永照は少し動揺しながらも「いや……なんでもない」と返答する。

 それを聞いた小瀬川白望は、改めて渋谷尭深のリビング内を見渡す。そして「そういえば……凄い綺麗だね」と発した。

 

「ありがとうございます。白望さん」

 

「うん……まあただ思ったことを言っただけなんだけどね……」

 

「それだけでも嬉しいです。掃除しがいがありますよ」

 

(むー……渋谷さんばっかり……)

 

 渋谷尭深の家ということでどうしても招く側と招かれる側で話すという構図、つまり小瀬川白望や宮永照が渋谷尭深と話す事が多く、招かれる側同士の小瀬川白望と宮永照が話す機会というのは少ないのは仕方のないことなのだが、それでも宮永照の嫉妬心を高めるには十分だった。

 

 

(照……やっぱり尭深さんと仲悪いのかなあ……?)

 

 そしてそんな宮永照を横目で見ながら、渋谷尭深との関係性についてまたもや考察する。何が原因で仲が悪いのかはもちろん原因である小瀬川白望が気づくわけがなく、答えは出ないままであった。

 小瀬川白望がそんな事を考えていると、渋谷尭深が小瀬川白望に向かってこう話しかけてきた。

 

「あの……すみません、白望さん」

 

「ん……?どうしたの?」

 

 小瀬川白望がそう言うと、渋谷尭深は恥ずかしがりながら携帯電話をテーブルに置いて小瀬川白望にこう言った。

 

「あの……メールアドレスとか、教えてもらっても……」

 

「ああ、全然良いよ。じゃあ照とも交換すれば?」

 

 そして小瀬川白望は要らぬ気遣いを見せる。渋谷尭深が交換しようと言い出した瞬間に小瀬川白望は自慢の思考力でなんの違和感もなく宮永照とメールアドレスを交換させて、仲を良くさせようという小瀬川白望の計らいなのであったのだが、関係が小瀬川白望の考えている以上にギスギスしている宮永照と渋谷尭深にとっては火に油を注ぐような行為であった。

 しかし、小瀬川白望の提案ということで断ることもできない渋谷尭深は宮永照に向かって「じゃあそうしましょうか、宮永さん」と言う。宮永照も「そうだね……そうしようか」と笑って言う。が、その目は全然笑っておらず、それは渋谷尭深も同じであった。

 因みにこの小瀬川白望の提案が原因で、後日宮永照と渋谷尭深のメール上での喧嘩などが度々起こってしまうこととなるのだが、それはまた別の話である。

 

 

「ふう……そろそろ時間かな」

 

 そしてメールアドレスを交換して時間が経ち、宴も闌となったとこで小瀬川白望がそう言う。それを聞いた渋谷尭深は少し不満そうな表情を押し殺して「そうですか……少し残念ですけど、仕方ないですね……」と言う。逆に宮永照は表情を明るくしながら小瀬川白望に向かって「じゃあ、そろそろ行こうか。白望」と言う。

 

「本当は私も行きたいところですけど……親が帰ってくるらしいので、残念です……」

 

「うーん……まあ岩手と東京じゃあ中々会う機会もないしね。でもまあ、そのためにメールアドレスも交換したんだし……暇なときはいつでも話しかけて」

 

 小瀬川白望がそう渋谷尭深にそう言う。もちろん、隣にいる宮永照が動揺と嫉妬の混ざった表情をしている事には気付いているわけがなかった。

 

「そうですね。ではまた、お元気で」

 

「バイバイ、尭深さん……」

 

「『尭深』です」

 

「えっ?」

 

「そう呼んで下さい。さん付けではなく……私もそうしますので」

 

「……分かった。尭深」

 

「さようなら、白望」

 

 

 渋谷尭深は玄関に向かって歩く小瀬川白望にそう言いながら、笑顔でそう言う。渋谷尭深は小瀬川白望よりも年下であったはずなのに、なんとも烏滸がましいものだと感じながら宮永照は歯を食いしばってどうにか渋谷尭深に一泡吹かせたいと思っていた。

 

(そうだ……麻雀でちょっとお灸を据えてやろう……)

 

 こうして後日宮永照がこの時点では初心者であった渋谷尭深をネット麻雀で誘って麻雀を打つことで、後にチーム虎姫の一員となるほどまで成長するのだが、それもまた別の話である。

 

「じゃあ、行こうか。照」

 

 小瀬川白望が宮永照に向かって言う。宮永照は多分記者たちがいつも見ている営業スマイル以上の笑顔を浮かべて「そうだね、白望」と言って手を握って宮永照の家へと向かった。




次回も東京編。
ギッスギスしてますね……

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