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視点:小瀬川白望
「あ、須賀君……私の買ってきた服、どう?……何か変じゃなかった?」
小瀬川白望が買ってきた服に着替えた須賀京太郎が、扉越しに竹井久が泣き止んだのを確認してからリビングに入ると小瀬川白望が開口一番そんな事を聞いてきた。須賀京太郎はそれに答える前に、小瀬川白望の服には若干濡れた跡が付いていたのを発見する。そして竹井久の事をチラッと見ると、竹井久の顔には涙を強引に拭ったような痕跡が見られた。やはり先ほど竹井久は泣いていたのだと確信すると、須賀京太郎はそれに対しては何も言わずに、小瀬川白望の問いに答える。
「全然大丈夫ですよ。サイズも良い感じですし、ありがとうございます……えっと……」
「ん……白望でいいよ」
「分かりました。ありがとうございます、白望さん」
そう言って須賀京太郎は頭を下げると、改めて小瀬川白望の事をまじまじと見つめた。竹井久も須賀京太郎から見ればかなりの美人であることは間違いないのだが、今じっくりと見てなるほど、これはあの竹井久が惚れるわけだと改めて感じた。外見と性格。人間を評価する上で最も重要になってくる二つの要素であるが、小瀬川白望はどちらも完璧な人間であった。可愛いとも言えるしイケメンだとも言える容姿に、聖人のような優しい性格。そして何より須賀京太郎の目がいったのはその豊満な胸。まさに理想的な女性と言っても過言ではなかった。
(……それにしても、本当に大きいな……竹井さんも普通に大きいけど、白望さんの方が大きいな……何というか、凄い魅力的なカラダだ)
そうして小瀬川白望にクギ付けになっていた須賀京太郎は、自分がジロジロ見られているということに気づいた小瀬川白望からの「……どうかした?須賀くん」という言葉によって我に返る。はっとして竹井久の事を見ると、此方を少し疑っているような疑惑の目で見られている事に気付き、須賀京太郎はすぐに「いや、何でもないですよ……ちょっと考え事してただけで……はは……」と返答する。
それを聞いた小瀬川白望は「そう……なら良いんだけど」と言って椅子に凭れかかった。それを見た竹井久が小瀬川白望の目の前にあるテーブルにコーヒーを置くと「色々とありがとうね。……お疲れ様」と言う。小瀬川白望は「ありがと……久」と言ってコーヒーを飲む。ブラックではあったが、小瀬川白望は気にもせずにグイッと飲み干す。ブラックでも御構い無しに飲む姿を見る須賀京太郎は感心したような表情で小瀬川白望に向かって言う。
「白望さん、ブラック飲めるんですね。俺は苦くて無理ですよ……」
「そうなんだ。まああんまりコーヒーとかに拘りはないけど……っていうか久、何で久は私がブラック飲めるって知ってたの?」
「え?いや……たっ、たまたまよ!たまたま!」
竹井久は偶然だと否定するが、須賀京太郎はそれがどうも嘘としか受け取れなかった。実際竹井久も小瀬川白望の情報が俗に言う『現地妻』同士でのネットワークで行き交っていて、そこから竹井久は情報を得たわけなのだが。
しかし小瀬川白望は余計な詮索はせずに「ふーん……」と言いながら半信半疑に竹井久の言い訳を聞き入れる。
そうして小瀬川白望と竹井久との他愛のない会話が始まろうとしていたところで、須賀京太郎が自分の現状の気まずさに耐えきれなくなったのか、小瀬川白望と竹井久に向かってこう切り出す。
「あ、あの……俺はどうしたら……」
「うーん……別にこのまま居ても良いんじゃない?どう、久?」
「えっ、そ、そうね……白望さんが言うなら……良いんじゃ、ないかな……」
「そうですか……じゃ、じゃあそうさせていただきます……」
そう言って須賀京太郎がソファーの上に座ると、それを見た小瀬川白望がこんな事を言い出した。
「ねえ、須賀くん」
「はっ、はい?」
小瀬川白望は須賀京太郎の返事を聞くと、椅子から立ち上がってソファーに座っている須賀京太郎の目の前までやってくると、そのまま須賀京太郎に向かって腰を下ろした。須賀京太郎は突然の事に驚き、尚且つ大胆な行動に顔を赤らめながら、小瀬川白望に向かって「なっ!なんですか!?」と言う。
「いや……私の友達にさ、私が座っているところに更に座るっていう『充電』?だっけか……それを常日頃やられてるから……どんな感じなのかなって……」
「そ、そうですか……」
須賀京太郎は自分の上に座っている小瀬川白望の後頭部が目と鼻の先にあるのに対して心を昂らせていた。そして小瀬川白望の髪の毛から発せられるシャンプーの香りを感じながら、(何というか役得……というか、どれだけ積極的なんだ、この人……)と心の中で呟いた。一方の小瀬川白望は(うーん……まあ年頃の男の子だし、がっちりしてるのは仕方ないけど、胡桃は私に座ってどう感じてるんだろ……)と感じていた。
「〜〜……!」
そしてそれを見ていた竹井久も、我慢の限界がきたようで「白望さん!」と叫ぶと、須賀京太郎の上に座る小瀬川白望の上に更に座った。須賀京太郎は少し程「うおっ」と呻くが、案外軽かったので二人乗っかったとしても結構苦ではなかったりする。小瀬川白望は須賀京太郎と竹井久に挟まるような形となったが、(ああ……これ、意外にダルくないかも……)と呟きながら堪能していて、小瀬川白望の上に座る竹井久は(の……乗っちゃった……///)と顔を赤く染めていて、座り心地などそういうのは感じる余裕が無かった。
そうして一人の上に更に二人が座るという珍しい光景が竹井久の家のリビングで展開され、それが解散したのは十数分後の話であった
次回も長野編。
私も充電されたいです(殴